GAC株式会社 - SolidWorks

C A S E
S T U D Y
GAC株式会社
SolidWorksとCOSMOSFloWorksで、設計期間30%削減に成功。図面生成時間も2次元CAD時代より大幅に短縮
長野県安曇野市に本社を置く空調機メーカーのGAC(ジー・エー・シー)株式会社。同社は、デンソー
のグループ会社として車載用エアコンを製造するとともに、自社ブランドの業務用エアコンを設計・
製造している。自社ブランド製品を設計する穂高工場では、2004年に、COSMOSFloWorksとそ
のモデリングツールとしてSolidWorksを導入。さらに2006年4月、SolidWorksを本格的に導入
して、設計の全面3次元化をスタートした。
注目されるのは、全面3次元化のスタートからわずか6ヵ月で、
「設計期間の30%短縮」という大き
な成果をあげたことである。同社が、
「3次元設計の垂直立ち上げ」に成功した理由は何だろうか。
設計品質向上と試作費低減を目標に3次元解析から導入
2006年4月、自社ブランド製品を設計・製造する穂高工場ではSolidWorksを一気に16ライセン
ファストフードショーケース。コンビニエンスストア店内で
揚げ物などの食品を陳列するもので、内部を温風が循環し
て食品を長時間保温する。
ス導入して、自社ブランドの業務用エアコン設計の完全3次元化をスタートさせた。現在では、設計
のほぼ90%の3次元化を完了している。1セットずつのCOSMOSWorksとCOSMOSFloWorks
を活用して、設計と解析の連携も実現した。
注目されるのは、3次元化をスタートしてからきわめて短い期間で、成功プロジェクトが成果をあげ
たことである。
長野県安曇野市に本社を置く空調メーカー。
まず、スタートしてわずか6ヵ月後のプロジェクトで、企画から計画図(概念設計の最終形、各部品の
デンソーのグループ会社として車載用エアコ
詳細設計に入る直前の組み図)作成までにかかる時間を30%削減できた。
ンを製造するほか、自社ブランドで業務用エア
続く別のプロジェクトでは、計画図作成までの時間短縮に加えて、製造部門に渡すための2次元図面
コンを設計・製造。同時に、空調で培ったコア
作成時間を、従来の3分の1に短縮できた。
技術を生かして、工作機械制御盤用などの多
「 短期間でこれだけの大きな成果をあげることができたのは、先立つ2004年から解析を目的に
様なエアコンをはじめ、ワインセラー、農家用
COSMOSFloWorksとSolidWorksを導入して使い込んでいたからです」と、技術管理室 室長 田
米保冷庫など、新分野へ次々にチャレンジしな
中光義氏は説明する。設計3次元化への移行を成功させるための対策を2∼3ヵ月かけて企画し、前
がら斬新な製品を送り出している。
倒しで準備を進めたのである。
さらなる成果は、SolidWorksのデザインライブラリ機能を徹底的に活用したナレッジ共有化だ。
「散在していた設計ノウハウを整理してナレッジ化し、SolidWorksのデザインライブラリに集約して
登録。設計作業がシンプルになるように工夫しました」と、情報システム室 室長 中田忠勝氏は説明
する。
さらに、SolidWorksのマクロ、API、カスタマイズ機能を活用して、製造部門へ渡す2次元図面の作
成時間を短縮するための図面生成自動化ツールを整備した。
3次元画面上で、品番などの必要事項を順番に入力していくだけで、表題、重量、部品構成などが記
載された表が生成される。設計段階で、部品をマウスで配置するだけで属性情報も同時に入力され
るからこそ、図面生成まで自動化できたのである。
「せっかく3次元で設計したものを、
『2次元に変換して寸法を入力する』という手順を極力短くしま
した。わたしたちはライブラリを豊富に作り、その情報とマクロで活用することで、2次元図面生成時
間短縮という大きな壁を乗り越えたのです」と、技術管理室 の南山雄一氏は語る。
もうひとつ、2次元設計は図面を描く道具であったが、3次元設計ではモデル製作よりも「何故その
形状になるのか?」を考え、形に表すのが大事だという観点から、設計者教育も徹底的に行った。操
作教育のマニュアルは、社内の業務内容に合うように南山氏が自作した。また、CAD教習の仕上げ
には、コンテスト形式のテストを行う。受講者それぞれが「基板カバーの設計」という課題を最適設
計して、重量の軽さを競うのだ。
「2次元設計と3次元設計の違いを実感し、操作教育で学んだこと
を自分のものにするのに、課題テストはとても効果的」なのである。
アニメーションを駆使したプレゼンテーションで営業力も強化
成功プロジェクトのひとつが、
コンビニエンスストアに設置する「ファストフードショーケース」の設計だ。
「温風がケース内部を循環して食品を長時間保温する機器ですが、
これまでは温風の流れを把握す
るのに、試作品を作り、ファンの向きを変えて測定を繰り返していました」と、設計4室 室長 宮澤幸
央氏は説明する。
ところが計画図を作る段階で、COSMOSFloWorksを使って風の流れを解析したところ、食品を置
く棚にちょっとしたすきまを作ることで、理想的な流れを形成できることがわかった。
「試作と測定のトライ&エラーが省略できましたし、3次元データを渡すことで試作づくりの時間も短
くなりました。もともと、空気を流して冷やしたり温めたりするのは同社の得意なところ。その技術を
企画から試作までの期間30%短縮
試作費・部材費30%削減
製品の品質向上
プレゼンテーション力・営業力向上
2008年6月作成
W W W . S O L I D W O R K S . C O . J P
チャレンジ:車載用エアコン製造に取り組む
うまく活かして、他社よりも高品質の製品を短期間で作ることができたのです」と田中氏は解説する。
GACの豊科工場では、1998年から、デンソー
設計面でも、複雑な曲面の設計に、3次元が威力を発揮した。外側のフードが大型であるため、金型
グループ標準のハイエンド3次元CADで3次
元化が進んでいた。しかし、自社ブランド製品
を設計する穂高工場には、50名弱の設計者が
集結しており、ハイエンド3次元CADを全員に
配布するのは困難だ。そこで穂高工場の技術
管理室は、まず解析を導入して、設計品質向上
と試作費低減に取り組むことにした。
内での樹脂の流れを最適化するために、曲面形状を工夫したのだ。
「2次元図面を渡していた頃は、樹脂金型の業者から必ず問い合わせが来ていましたが、今回は、問
い合わせゼロで、設計変更回数が低減しました」と南山氏。
お客様へのプレゼンテーションも効果的に行えた。
これまでは、2次元図面では説明がしづらいため、試作品の写真が一番の資料だった。今回は、温風
の流れの解析結果を提示するのはもちろんのこと、
「仮想コンビニ」の3次元データを作り、新製品
を設置した場合の店内の様子をさまざまな角度からアニメーションで示したのである。
「身長160センチの店員がレジカウンターから店内を見たとき、ショーケースが邪魔にならないか。
2004年、コストパフォーマンスの高いCAE
子どもの来店客がショーケースのそばを通ったときに、中まできちんと見えて『おいしそう』と感じて
としてCOSMOSFloWorksを選定。技術管
くれるかなど、目に見えるプレゼンテーションをしました。コンビニ会社では大変喜んでいただき、社
理室で利用して設計部門へフィードバックする
内会議にもアニメを使っていただいたくらい。これからのさまざまな自社製品営業にも役立つ、良い
形で成果をあげていた。
武器を手に入れました」と宮澤氏は力強く語る。
さらに2005年、同社は長期ビジョンを策定し、
市場競争力に満ちた独自性の高い製品を生み
独自製品開発に向けての進取の気概も盛り上がり
出していくために、全社全工程で3次元データ
ショーケース開発プロジェクトが示すように、3次元設計は、期間短縮、製品の品質向上、営業力強化
を活用していく方針を打ち出した。
に大きな成果をあげている。同社では、2010年までに、期間短縮30%、試作費削減30%という成
果を、全プロジェクトに定着させる計画だ。
ソリューション:それでは3次元CADは何を
「さまざまな取り組みの複合効果ですが、企画構想段階で仕様の9割が決まります。その段階でしっ
選定するか。
かり形状を固め、後工程である計画図をバラして設計する単品図作業も、ナレッジ化とマクロの活用
2004年、CAEのモデリングツールとして導
で、50%以上削減できています。設計のケアレスミスはほとんどなくなり、設計変更の件数は4割減
入し、そのコストパフォーマンスの高さを評価
少しました。次の目標は、生産技術とのコラボレーションです。量産準備まで3次元で一貫していき
していたSolidWorksに白羽の矢が立った。
たい」と中田氏は意欲的に語る。
解析と連携できるうえに、低コストで、習得も
容易だ。板金・型設計・治具設計など、導入済
若手設計者の意欲的な発言も目立って増えてきた。
「従来とは違ったやり方でも、解析などできちんと説明できれば採用されることがわかり、前向きな
みのツールとデータ互換性があり、
これらのツー
発言が多くなりました」
「設計者の力と気力が伸びていく手応えを感じます」と、宮澤氏と南山氏は口々
ルを既存のハイエンド3次元CADとつなぐと
に語る。
きの仲介役にもなる。
3次元設計は、同社らしい独自製品を生み出す「進取の気概」も後押ししているのである。
2006年4月、ついにSolidWorksをベース
にした全社3次元化がスタートしたのである。
複雑な曲面の設計に、3次元が威力を発揮した。外側のフー
ドが大型であるため、金型内での樹脂の流れを最適化す
るために、曲面形状を工夫したのである。
GAC株式会社
本社:長野県安曇野市豊科1000
穂高工場:長野県安曇野市穂高北穂高2027-9
設立:1966年7月
資本金:8億円
温風の流れを制御して、風が食品に直接当たるのを防ぎ、
フード内で大きな弧を描いて回転させたい。
COSMOSFloWorksで流体解析した結果、理想の風の
流れを実現する設計のポイントを短時間で割り出すこと
ができた。
(株式会社デンソー57.5%、
トヨタ自動車株式会社42.5%出資)
年商:326億円(2007年度単独)
従業員数:1000名
事業概要:自動車用・業務用空調システム製品、
食材鮮度維持機器の開発・製造。社
名は、米国ゼネラルエレクトリック
(GE)
社と三 井 物 産の 合 弁 会 社として設
立された当 初 のゼネラルエアコン
(General Aircon)に由来。
「 仮想コンビニ」の3次元データを作り、新製品を設置し
た場合の店内の様子を、さまざまな角度からアニメーショ
ンで示すことで、提案力・営業力を高めることができた。
http://www.gacjp.com/
ソリッドワークス・ジャパン株式会社
〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目8番2号 第一鉄鋼ビル3F
TEL.03-6270-8700(代表)
FAX.03-6270-8710(代表)
E-mail:info@solidworks.co.jp
URL:http://www.solidworks.co.jp
SolidWorksは米国ソリッドワークス社の登録商標です。
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SWJ-CSD-91-0608