書籍関連サイトと連携した研究室規模の 蔵書管理システムにおける登録

書籍関連サイトと連携した研究室規模の
蔵書管理システムにおける登録と購入の機能
Accession and Purchase Functions of a Library Management System
in a Laboratory Scale Cooperated with Book Service Sites
Koji
蔵本 幸司, 川鯉 光起, 富永 浩之
KURAMOTO,
Koki KAWAGOI,
Hiroyuki TOMINAGA
香川大学工学部
Faculty of Engineering, Kagawa University
Email: s09t234@stmail.eng.kagawa-u.ac.jp
あらまし:書籍関連サイトと連携した研究室規模の蔵書管理システムを開発している.登録作業では,
バーコードリーダで ISBN を読み取り,NDL API で書籍情報を取得する.貸出返却では,利用者の区分
に応じた適切な貸出ルールを適用する.蔵書には,レビューコメントや推奨評価を付加できる.また,
蔵書候補の要望を受け付け,他の賛同者の意見も集約し,販売サイトからの実際の購入を代行する.
キーワード:研究室支援,蔵書管理,書籍関連サイト,Web サービス連携
1.
はじめに
近年,書籍の検索や販売のサイトが幾つか運営さ
れている.書籍名や著者名などの単純なキーワード
だけでなく,売上順位や書評などからも検索できる.
表紙の画像,目次,本文の一部など,実際に本屋で
手に取るかのような情報も取得できる.サイトの
Web サービスを利用すれば,各自がアプリケーショ
ンを開発できる.購入直前までの処理も代行できる.
公開された API を活用すれば,個人単位でも豊富な
DB の構築が容易になる.
本研究室では,教員の蔵書およびサークルで購入
した図書を共同で管理している.卒業時に学生によ
る教科書などの寄贈もある.分野は,情報系や数理
系を中心として,就職関連の本も含まれる.ゼミ生
やサークル生だけではなく,教員の授業を受講する
学生も図書を借りに来ることがある.このような研
究室規模の蔵書管理をオンラインで行うには,個人
向けのツールでは不十分である.小規模図書館シス
テムもあるが,共同所有の権限管理に対応していな
い.本研究では,外部の書籍関連サイトと連携した
研究室規模の蔵書管理システムの開発を目指す(1).
2.
Web API を活用した書籍情報の取得
外部の書籍検索サイトとの連携としては,登録と
検索の作業を効率的に実現する.書籍情報を検索す
る API を公開している商業サイトには,Amazon(2)
や楽天 Books(3)などがある.これらは,近日公刊な
ど,最新の情報を取得することができる.しかし,
購入の促進を前提としており,他のサイトとの比較
の制限など,利用目的や頻度の点で制約がある.
一方,公的機関として,2010 年より国立国会図書
館(NDL)がオンラインサーチ機能 (4)を提供している.
非営利であれば,クレジットの明記のみで利用でき
る.ただし,特定のサーバから過剰なアクセスがあ
ると,制限されることがある.NDL が提供する API
には,複数の種類がある(図 1 左).基本的な利用方
法としては,検索キーワードを UTF-8 エンコードし,
リクエスト URL に付加してリクエストする(図 1 右).
検索結果は,XML や HTML で返却される.
図 2 蔵書管理システムの全体構成
3.
図 1 国立国会図書館のリサーチ機能の API
蔵書管理システムの登録部と検索部
本システムの全体構成は図 2 の通りである.登録
部では,書籍 DB と蔵書 DB への登録を行なう.書
籍情報の取得は,バーコードリーダで ISBN を読み
取り,NDL API を利用する.ISBN のない書籍も扱
うため,独自の書籍 ID を発行する.複数の著者,
翻訳書の英名と和名,監修や翻訳などの著者の役割
についても対応する.蔵書 DB では,同一の書籍に
は,冊数番号を発行し,セマフォとして用いる.た
だし,所有者が異なる,一方が傷んだり書込みがあ
る,などの場合は個々を区別する.また,所有者や
収納位置を格納する.貸出中や持出禁止など,利用
状況も保持する.
本棚 DB では,本棚の位置と書籍の分類を格納す
る.蔵書は情報系分野がほとんどであるため,UNIX,
DB,C 言語,ネットワークプログラミング,資格
試験など,独自の書籍分類を設定する.本棚の位置
と収納する蔵書の分類が対応するよう,適宜,分類
を再編する.検索部では,蔵書のみの検索と,書籍
全般の検索を行う.前者では,本システムの蔵書
DB を用い,収納位置を背表紙で視覚的に示すバー
チャル本棚として提供する.後者では,NDL API で
検索をかける.蔵書については優先的に表示し,蔵
書 DB の情報も付与する.
5.
書籍販売サイトからの購入支援
購入部では,書籍購入の希望申請と注文実施を行
う(図 3).前者では,利用者が購入してほしい書籍を
希望する理由を選択肢から選んだり,個別の要望が
あれば備考欄に記入する.購入を希望する書籍が申
請されていない場合,新規の申請となる.既に申請
があればその申請への賛同が行える.また,書籍販
売サイトと連携し,販売サイトの在庫状況なども反
映される.後者では,教員やサークルの会計係が購
入希望の申請状況を考慮して,実際に注文を行う.
この時に,Amazon の提供する Web サービス AWS
を利用する.AWS を実際に利用する API としては,
各種プログラム言語に応じたものがある.本研究で
は , Ruby 言 語 で カ ー ト 機 能 に 対 応 し て い る
ruby-aaws を利用する.これにより,Amazon の Web
ページから購入する書籍を検索し,カートに入れる
までの動作を代行することがきる.これにより,購
入時の作業が大幅に効率化できる.発注が完了した
書籍は,蔵書 DB に加えられ,注文済や入荷待など
の利用状況が随時更新される.
4. ユーザ区分と蔵書の貸出返却
ユーザの権限に応じて,教員/ゼミ生/サークル生
/TA/一般教員/一般学生/学外者の区分を設ける(5).学
内者は,学内共通のアカウントを認証 ID とする.
身分証には IC チップが搭載されており,カードリー
ダで認証を行える.教員は,購入した個人蔵書を提
供したり,関連予算での書籍購入を承諾するなど,
全ての権限が与えられる.ゼミ生は,研究室に常駐
するため,自分の机での長期の保管(移動貸出)を認
める.サークル生は,部費で購入した書籍を共有し,
連絡も取りやすいため,中期の貸出と購入依頼を認
める.TA と一般教員は,事前に登録できるため,中
期の貸出を認める.一般学生は,授業で指定された
参考書を借りる際に,個別にユーザ登録を行うので,
短期の貸出のみとする.学外者は,頻繁に来学しな
いため,長期の貸出を認める.認証 ID には,申請
したメールアドレスを用いる.
貸出 DB では,貸出返却に必要な情報を格納する.
貸出 ID を発行し,借手と蔵書の ID,貸出の開始と
終了の日付を保存する.貸出ステータスは,貸出中
や返却済のような状態を表す.貸出部では,ユーザ
の権限に応じた利用を管理する.貸出時は,ISBN
をバーコードリーダで読み取り,蔵書を特定する.
貸出の種類としては,通常以外に,指定日での予約
や,長期の移動を認め,持出の禁止も含める.返却
に際しては,期限内かどうかを記録し,延滞状況に
よっては,該当者への貸出制限を行う. 貸出を通し
て,蔵書には,レビューコメントや推奨評価を付加
できる.他のユーザは,これらの情報を参照し,目
的に合った蔵書を探し出す(6).例えば,先行研究の
先輩が参考にした書籍,共同で輪講を行いたい書籍
などを検討することができる.
図 3 書籍販売サイトからの書籍購入
6.
おわりに
書籍関連サイトと連携した研究室規模の蔵書管理
システムを開発している.登録と検索には,NDL
API を,購入支援には,AWS を利用している.貸出
返却については,ユーザの権限に応じたサービスを
提供する.今後の課題として,蔵書の利用履歴やユ
ーザによる評価を記録部として整備する.これを,
文献共有による学習支援にも繋げる.
参考文献
(1) 川鯉光起,富永浩之:“書籍販売サイトと連携した研
究室規模の蔵書管理システム - DB 設計と基本機能
-”
,情処研報,Vol.2011-CE-108, No.2, pp.1-10(2011)
(2) Amazon, http://amazon.co.jp/
(3) http://books.rakuten.co.jp/
(4) http://iss.ndl.go.jp/information/api/
(5) 川鯉光起,中矢誠,富永浩之:“書籍販売サイトと連
携した研究室規模の蔵書管理システムの試作”JSiSE
第 36 回 全国大会, pp.218-219, (2011)
(6) 川鯉光起,中矢誠,富永浩之:“研究室規模の蔵書管
理と文献共有による学習支援の検討”JSiSE 第 37 回
全国大会, pp.356-357, (2012)