会報 8号 - 日本ビジネス航空協会

刷新版
第
8
号
隔月刊
2009年 7月 1日
(NPO法人)日本ビジネス航空協会
◇
巻 頭
ビジネス航空に携わらせていただくようになって
常務理事・事務局長
佐藤和信
速いもので、私が協会の仕事に関係させていただくようになりまして一年半、事務局
長の仕事を仰せつかってからでも一年以上になりました。
私は今まで 40 年近くを航空業界で過ごしてまいりましたが、そのほとんどを定期航空
運送事業者に籍をおいておりました。そのような私にとりましては、実はこの一年半
は同じ航空業界と言いましても、見ること、聞くことが新鮮な、驚きの連続の一年半
でした。
勿論私の不勉強はありますが、今まで航空業界のマジョリテイーと考えられていた、
定期航空運送事業を中心にした職場や行政に携わってこられた人であればおそらくか
なりの人が同じような経験と感想を持たれたのではないでしょうか。
そのような経験を持つことになるように、ビジネス航空は世界的には素晴らしく、か
つ巨大な世界でありながら、残念ながら日本では、それも世に航空業界と言われる世
界にいる人間にとってすら、その実情、よさが、そしてその業界が抱える問題も又十
分には認識されていないということになるのではないでしょうか。
このようなことになっていった背景には、日本の地理的環境や人口密度、他の交通機
関の発達等ビジネス航空にとって不利な要因が多いことも勿論ありますが、他でも言
われておりますように、第 2 次大戦後の日本の航空業界、航空行政の立て直しが、当
時の時代の要請から定期航空中心になっていったこと、そして未だにその状態、考え
から脱却できていないことが大きな理由のように思えます。
まさにその象徴が、日本の空港であり、航空規則です。業界の鍵を握るこの二つが皆
様よくご存じのように、大型機による定期航空運送事業中心(といいますか基本的に
はそれだけを考えて、後は若干の航空機使用事業と趣味の世界の小型機)にできてお
り、残念ながら今迄はビジネス航空の事等は片隅においやられてしまっていたとしか
言えないような状況だったかと思います。この二つの問題の解決なくしては、更なる
発展は望めませんが、今日はその象徴である、空港についてもう少し述べさせていた
だきます。
我々が最近、時々話題にさせていただくことですが、日本の自動車の世界と飛行機の
世界を少し比較してみたいと思います。飛行機の空港に相当する、自動車の典型的な
拠点は鉄道の駅だと思います。今から 4,50 年前私が子どもだった頃、駅の前には自
動車用の施設としてはバス乗り場しかありませんでした。人々も自動車と言えばバス
と思っていました。しかし今はどうでしょう。駅の前には、勿論バス乗り場はありま
す。しかしそれと同じくらいの比重を占めてタクシー乗り場や自家用車乗り場(ニー
ズに比べ残念ながら駅でもこれが十分でないところが多いですが)が、あるのが普通
です。これは人々の自動車へのニーズが多様化し、それに対応して駅前の施設も変化
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してきた結果です。
それに比べて空港はどうでしょうか。少なくとも日本の空港の多くは、残念ながら定
期便(すなわちバス)のことしか考えずに作られ、運用されているとしか思えない状
況がまだまだ続いています。世界では、すでに飛行機の世界でのニーズの多様化(定
期便(バス)だけでなく、小型機による運航(すなわちタクシーや自家用車)へのニ
ーズに応えるべく、大規模飛行場でも小型機受け入れ態勢を充実したり、小型機用専
用空港を準備しているのが普通になりつつあり、日本の遅れが特に目立ちます。
自動車の世界では、このようにもうかなり前から、大型バス一辺倒の世界から、小型
バスの導入(これは事業的にはあまりうまく行かないケースが多かったように思われ
ます)や定期バス路線の縮小(特に地方で)、そしてタクシー、自家用車の大幅普及の
時代へと変化していきました。航空の世界でも最近は、ニーズの多様化という点だけ
でなく、バス同様、地方間路線を主に定期便廃止の動きが加速され、バスとタクシー
(自家用車)が歩んだのと同じ流れが見えかけています。定期便便数削減、路線廃止
が進む中、お客様がある時だけ必要に応じて、必要なところへ飛ぶビジネスジェット
機を使用したエアータクシー(FAR で言う正式なエアータクシーではなく飛行機のタ
クシー版)のようなものの普及は不可欠のものになっていくことが予想されます。外
国を含めればそのニーズは更に膨らむものと考えられます。
ビジネス機は決して贅沢品ではなく(誰も今は時間効率等を考えた場合タクシーや自
家用車を贅沢品とは考えません)、時代の要請、ニーズの多様化に応えるのに不可欠な
手段として、その重要性に行政当局等でもようやく気がついていただき始めたように
思われます。
追い風が吹き始めた今、我々としても、ビジネス機の素晴らしさや効果をしっかり知
っていただくよう努めると共に、取り巻く諸問題の解決に全力を投球する時期に来て
いると思います。
私も、初心者、かつ微力ではありますが、将来の夢のあるこの業界の発展のため少し
でもお役にたてるよう努めていきたいと思っております。
今後とも、ご指導、ご支援をよろしくお願い申し上げます。
◇
ビジネス航空界のトピックス ・ 新着情報
EBACE 2009
今年の EBACE(European Business Aviation Conference & Exhibition)が 5 月 12 日から 14 日までジ
ュネーブで開催されました。今年は IBAC の理事会が EBACE に合わせてではなく、下記の CBAA
Convention に合わせてモントリオールで開催されたため、協会事務局としては、人を派遣しておりません。
代わりに当協会賛助個人会員でもあるビジネス航空ジャーナリストの 石原達也氏より今年の EBACE に
関する記事をご寄稿いただきましたので、本会報の添付(添付2)として掲載させていただきます。ご参照く
ださい。
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CBAA
Convention 2009
今年の CBAA(Canadian Business Aviation Association)Annual Convention、Trade Show and
Static Display(以下 Annual Convention)が 5 月 27 日から 29 日までモントリオールで開かれました。
CBAA の Annual Convention は今年が 48 回目ですが、今年はカナダにおける動力飛行 100
周年にあたる記念の年であることから例年よりも盛大に行われ、それに合わせて 28 日夜に
は ICAO 幹部(President 等)を招待しての IBAC International Dinner が、又 30 日には
IBAC 理事会が開かれました。
例年より盛大とは言いましても、NBAA Annual Convention や EBACE に比べるとかな
りこじんまりしたものですが、NBAA の力を借りずに行われており、今後日本においても
独自の Show 等を開催する場合の参考になるものでした。
◇
協会ニュース
定例総会の開催
協会の平成21年度第1回総会を、5月8日(金)16 時からメルパルク東京で開催し、昨
年度の事業報告、収支報告、監査報告又新年度の事業計画、予算、新役員についてご承認
をいただきました。(総会後の新年度協会役員体制については添付 1 をご参照下さい)
又合わせて最近の主要協会活動(首都圏空港問題のその後の状況、協会専門委員会の設置)
2009 年 NBAA 視察ツアー、日本のビジネス航空 2008 年の実績等についても報告させてい
ただきました。
尚総会終了後の懇親会には国土交通省前田航空局長、宮下技術部長、甲斐監理部総務課長、
干山空港部計画課長、同省田村大臣官房審議官、在日米国大使館 Gregory Loose 商務担当
参事官等多数のご来賓においでいただき、会員の皆様との交流の場を持たせていただきま
した。
懇親会で御挨拶いただく前田航空局長
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IBAC
第 49 回理事会
at
Montreal
IBAC
の第 49 回理事会が上記 CBAA Convention に合わせて 5 月 30 日にモントリオール
で開催され当協会事務局長がメンバーとして出席しました。本理事会ではロシアを代表し
て RBAA(Russian Business Aviation Association)が IBAC の第 15 番目のメンバーとし
て加わることが承認されました。
首都圏ビジネス機用空港に関する要望書提出後の Follow Up
本件に関しましてはその後も、積極的に関係先への働きかけを続けており、
(1)4 月 30 日には木更津市長を、又 6 月 2 日には木更津市商工会議所並びに自衛隊木更
津基地(陸上自衛隊第 1 ヘリコプター団長兼木更津駐屯地司令)を訪問し木更津空港の今
後について協議し理解を深めていただきました。
(2)5 月 22 日には航空局に局次長及び空港部長をお訪ねし状況の説明並びに今後のご尽
力をお願いしました。
主要協会活動(5-6月)
5月8日
2009 年度総会、理事会及び懇親会開催
5 月 19 日
全航連懇親会参加
5 月 22 日
航空局次長及び空港部長を訪問
5 月 27-29 日
CBAA49th Convention に参加
5 月 30 日
IBAC 理事会 at Montreal に出席
6月1日
定例理事会開催
6月2日
木更津市商工会議所及び陸上自衛隊木更津駐屯地司令を訪問
6月5日
日本航空技術協会総会及び懇親会参加
6 月 12 日
全地航総会及び講演会参加
6 月 23 日
日経とビジネス航空に関する今年の日経フォーラム開催について打ち合わせ
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◇
投稿
前号に引き続き、当協会主催の NBAA ツアーにも御協力いただいた、アメリカでビジネスジェット機のパイ
ロットとしてそして今はエアーラインのパイロットとして活躍中の日本人女性パイロット青木美和氏からのご
寄稿第 2 部を掲載させていただきます。
アメリカにおけるパイロットの養成やビジネス航空の生の話がよくわかるとても興味深い記事です。
「
I love Aviation
アメリカの空を飛びながら想う
」
青木美和
第2部
ビジネス航空のことなど
私の Corporate Pilot としてのキャリアは、言うまでもなく Cessna Encore で始まった。
場所はかの有名な Boeing Field(KBFI)。KBFI はシアトルで一番の離着陸を持つジェネアビの主
要空港。Starbucks や Costco、それに Microsoft などの大企業が自家用飛行機を待機させていま
す。私はシアトル郊外に本社を構える、ある会社の所有する Encore の飛行機のパイロットに
なりました。
ビジネスジェット
Cessna Encore
Flight Safety 社での世界各地からのパイロット達
と言っても一機の飛行機に 2 人のキャプテンと 4 人のコパイロットを抱えている為、出番は
ローテーションになります。それでも、私にとっては喜ばしい機会でした。ビジネスジェット
の世界も色々で、私のように個人の会社専用機を、必要な時だけ飛ばすものもあれば、大会社
Netjet などは、ほとんど Airline と変わらないようなスケジュールを持つ会社もあります。スケ
ジュール以上に違うのは、それぞれの会社の社風だと思います。
この世界に入って、色々なパイロットと話しますが、やはり会社によって飛行機の用途も違
えば、パイロットに対する扱いも違います。ある会社は、会社に関連した行事にしか使用せず、
個人の用事には使わないとか、私の雇用主のように、自分の好きな時に好きなように使用する、
いわば私用重視の会社もあります。ある意味で、とてもアットホームな使い方をしていました。
私の乗せる乗客は、70%がオーナーとオーナーの家族親戚です。孫息子の彼女を大学のある町
までお出迎え!なんていうのもありました。30%は VIP のカスタマーや取引先の方。太っ腹に
も、ある時は近所の方のリクエストまで聞いていました。
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私に任され任務は様々でした。副操縦士としての任務のほかに、まずは飛行機の管理から始
まります。掃除からケータリングの手配、レンタカーの確認、コーヒーを沸かしていつも熱く
しておき、朝一番の新聞を取りに行きます。
乗客のニーズに答え、色々な気配りで好みのワインを選びます。はじめ、ワインの知識の無
かった私は、赤も白もお構いなしにクーラーボックスの中で冷やしてしまったんです。
社長さんは、いやみ一つ言わなかったものの、思い出してみると、赤ワインが好きなはずなの
に白ばかり飲んでいた気がします。赤ワインは冷やさない、という事を知らなかったことでキ
ャプテンから叱られたことも。この時の経験が生きて、やけにワインに詳しくなったんです。
会話も今までに経験した事のないような分野の会話が飛び交います。Business トークが主で
すが、スポーツの結果から政治の事まで幅広く。私などの意見なんか聞かれない、と思いきや、
しばしば意見を聞かれることも。おかげで、世間知らずだった私に新聞を読む習慣がつきまし
た。
オーナーはアイダホ州 Sun Valley に牧場を持っている為、週末にはシアトルから頻繁にアイ
ダホまで通います。Sun Valley は避暑地と聞いていましたが、たかが田舎のアイダホ!と高をく
くっていました。KSUN はとっても小さい飛行場で、谷底に位置しており、周りを絶壁の山々
が囲んでいます。GPS なしでは中々見つける事のできないこの飛行場は、不慣れなパイロット
は IFR で飛ぶ事ができません。実際に、アプローチプレートにも、不慣れなパイロットは IFR
を控えるように、と書いてあります。
毎週のように行くキャプテンの指導のおかげで、私はそう苦労もせずその手順を覚える事が
できました。始めて降り立ったその空港は、私が思っていた小さな山の中にある空港とはすっ
かり違っていました。滑走路は一本ですが、降り立った瞬間、眼に飛び込んできた光景はすさ
まじいものがありました。今までに見た事もない数のビジネスジェット(小さいものから大き
いものまで)が、ぎっしりと狭いランプにひしめいています。
KBFI でも、こんなに沢山のビジネスジェットは見た事はありません。なんなの!ここは?キ
ャプテンは、“ここのパーキングはコツがいるから、やり方を見ておきなさい”と言います。
私は“開いた口が塞がらない”とは、こういうことを言うんだ、と思いました。
ランパーに誘導されたにもかかわらず、キャプテンはランパーのやり方に不満なのか文句を言
いながら、
“ここはいつも場所がないんだ!すれすれでタクシーするので、他の飛行機を傷つけ
ないようにゆっくりと!でもいったんスローダウンしてしまうと、エンジンを吹かすのは無理
だから!なぜなら他の飛行機にエンジンの Wake を掛けしまうからね!”と教えてくれました。
“Incredible!すごすぎる!”とつぶやく私!アイダホの小さい空港ならきっと簡単なフライトだ
ろう、とたかをくくっていた自分を後悔し、緊張します。ビジネスパイロットとしてこのよう
な場所に頻繁に行く事になるのだろう、と与えられる責任感に汗していました。
Sun Valley に行くようになって少し経つと、ここがどのようなところかよーく分かります。
ただの避暑地はありません。全米のお金持ち達の、由緒ある避暑地なのだ!夏は涼しく、冬は
上等の雪が降り、スキーリゾートにはもってこいの場所。ハリウッドのスターたちが都会の慌
しさから離れて、ひっそりとここで休養する場所でもあるらしい。ひしめく豪華な飛行機を始
め、ターミナルもすばらしい。カントリー風のログハウスで出来たターミナルの中は、豪華な
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インテリアで飾られています。
私自身、あまり好きではないんですが、あちらこちらに立派な動物たちの頭が壁に掛けられ、
訪れた人、特に狩人達の血を騒がせているようです。大きな暖炉がロビー中心部にあり、立派
なソファーが囲んでいます。雑誌も高級品専門の雑誌や、ビジネスウイークリーばかりで、私
が日ごろ読む様なものは何一つ置いてありません。トイレも、女性に必要な物が一式そろって
いて、小さなビンに持ち帰り用なのか“香水”も籠にあふれんばかりに置いてあります。何も
かもが新しい経験でした。
ある時、いつもの様に Sun Valley の空港に飛行機をパーキングさせ、スキーを楽しみに来た
お客様を降ろし、レンタカーを機体の横に付けてもらい、スキーの道具を運び込んでいた時の
ことです。私は両肩に、重く背丈の長いスキー道具を担いで運んでいたところ、隣の飛行機か
ら降りて来た女性にこう言われました。
“そんな重い荷物は男性にやってもらいなさい!フライトアテンダントのする事ではないわ
よ!”そう言ってサングラスを少し下に下げ、片目でウインクし歩き去って行きます。
真っ黒い長い髪を揺さぶりながら、片手に飲料水を持ち、スニーカーにヨガパンツの姿は、何
だか私たちがクルマでヨガのスタジオに通うように、彼女も飛行機を使って、ヨガの教室に通
っているような雰囲気さえ漂わせている人でした。
もちろんこれは私の空想で、彼女がヨガに来ているとは思えませんが!(笑)そして、親切にも、
近くの Ramp Agent に“フライトアテンダントにあんな重労働させちゃだめでしょ!手伝ってあ
げてよ!”と言ってくれたんです。私はその Ramp Agent をよく知っているので、すかさずその
女性に“違うんです!これが私の仕事ですから!私パイロットですから!”と言いました。
歩き去ろうとしている彼女は一瞬振り返って立ち止まり“ほんとう?それはごめんなさいね!
勘違いしてしまって!すごいわ!
あなた!パイロットなんて!かっこいい!私もいつか飛行機飛
ばしてみたいのよ!お仕事がんばってね!”と言って立ち去って行きます。私のことをよく知っ
ている Ramp Agent のおじさんに私は“フライトアテンダントに間違えられるのは何時もの事
よ!”と言ってウインクして見せました。彼は近寄ってきて“何時も手伝うって言うのに、美
和は自分でやるって言うからさ!今日も見守っていただけなんだ、ごめん”
ビジネスジェットの女性パイロット達とNBAAで会食!彼女達はアメリカで女性ビジネ
スジェットパイロットのパイオニアとして活躍している。
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実際に、私はこの仕事を始めて、男性の手助けを断るようにしていたんです。女性だから、
と言って出来ないと思われたくなかった、私なりの意地でもあるんです。そして彼はこうも付
け足しました!“彼女、誰か知ってるかい? デミムーアだよ”“え?!”私はとっさに振りかえっ
て、彼女の姿を探しましたが、もう見えません。彼女はここ Sun Valley に家を持ち、子育てを
しているらしい。“初めてアメリカの俳優さんと会話しちゃった!それもデミムーアよ!”と言
うまでもなく、お調子者の私は会話ともいえない彼女との出会いを、友達・家族・同僚に自慢
しました!
この仕事を始めて色々な事を学びました。会話術からワインの選び方まで、実に幅広いんで
す。その中でも最も重視したのは、カスタマーサービスです。私のキャプテンは、オーナーか
ら 100%の信頼を得ていました。このキャプテンに学んだことは、ここで聞いた事、話した事
はここだけの話に留める事。そして、この飛行機は自分の飛行機だ、と思って大切にすること。
そして何より、自分に出来る最善の気配りをする事。
あーそうそう!これは大切!とキャプテンは付け加えました。オーナーはワインにうるさい。
だから、ワインの選択は値段にかかわらず、良い物しか置かない事。私は彼の元で、ビジネス
ジェットの世界を少しずつ学び始めました。仕事にも少しずつ慣れてきた頃、いつも旦那様に
付き添って来られる奥様達がこのようなコメントを残しました。
“自家用機もいいけど、普通のエアラインのファーストクラスに乗れば、フライトアテンダン
トにお酒をサーブしてもらえるし、可愛い航空会社ならではの食器とかも見られて楽しいのに
ねー”と。私からすれば、あまりにも贅沢な愚痴ではないか?と心では思っていました。しか
し同時に、私にも出来る、良いカスタマーサービスのアイデアが浮かんだんです!
それはピンクの花柄のナプキンから始まり、機内にはミモサも用意しました。ミモサは、男
の人が好んで飲むようなものではないので、女性の為に準備した一品です。ケータリングも、
女性らしく淡いピンクの色でまとめ、雑誌もビジネスウイークリーに付け足し、女性雑誌も用
意しました。
Encore は小型ジェットなので、約 9 人も乗ればキャビンは満席になってしまいます。
フライトアテンダントを同乗させるスペースなどありません。男性陣はいつものように仕事の
話などで盛り上がり、ワインを片手に会話に熱中!その傍ら、女性人たちはつまらなそうに見
えます。こんなわけで、いつも男性中心のキャビンの中に、初めて花を添えてみました。私な
りの気配りだったんです。
その日、キャビンに乗り込む男性オーナー達に、私はギャグのつもりでピンクは好きですか?
と聞いてみました。キャプテンは、美和が又何かたくらんでいるよ!とオーナー達に警告して
いました。それもそうだ!いつものように自分の飛行機に乗り込んだら、すべてがピンクで飾
られていたとしたら、びっくりするだろう!(笑)やりすぎるなよ!とのキャプテンの忠告に従い、
淡いピンクで品のある色を選んだつもりでした。
女性人が最初に機内へ入ってきました。私は張り切って“Welcome”といって迎えま
す。”わー凄い!今日はどうしちゃったの“と、目を輝かせて乗りこんでくる 3 人の女
性は、いったんキャビンを出ると旦那さまたちに手を振って“今日は女性貸切でスパ
にでも行ってくるわ”みたいなことを叫んでいました。
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とにかく、嬉しそうでした。もちろん、私も。初めて、彼女たちは会話に花を咲かせていまし
た。男性陣は案の定、ナプキンの色よりビジネストークに忙しそうでした。
フライトが終わった後、オーナーから小切手を渡されました。
“よくやった!これからもよろ
しく”と。手に握らされた小切手を見てびっくり、キャプテンに、これはどういう意味ですか?
と世間知らずの私は聞く。
“美和!それは Tip だよ!貰っとけばいい!”
“えー!こんなに?”初めて、
パイロットとして Tip を頂きました。今朝のことは少し度が過ぎて、オーナーからお叱りを頂
くかも、と内心不安だったんです。そんな心に、“私に出来るカスタマーサービス”としての
基本を改めて確信し、自信を持ちました。
私が航空関係に身をおいて、もう 13 年が経ちます。いろんな事を Aviation から学んできま
した。フライトのトレーニングはもちろんの事、それ以外に学んだ事の方が多いのではないか、
と思います。パイロットに求められている事は沢山ありすぎて、リスト化できないように思え
ます。その中でも最近、エアラインのパイロットして働くようになってから、心に問いかける
事がありました。それは、
“私に出来る、空の上でのカスタマーサービスとは何か?”コックピ
ットにこもりっきりで、乗客との接点は全くありません。
唯一つ言えるとすれば、PA をする時、私は初めて乗客に自分の存在をアピールできるんで
す。PA に賭ける私の思いには、すごいものがあります。声の質にも気遣います。
長くもなく短くもなく、うるさくなく、
しかも聞きやすい PA が出来るように練習するんです。
キャプテンにしばしば“考えすぎ!乗客はそんなに真剣に聴いてはいないよ!”と言います。
自分に出来るカスタマーサービス!そう私はあの時“ピンクに秘めた私の気持ち”ジェネア
ビ時代に培ったカスタマー精神を忘れないようにしよう、と日々心がける毎日なのです。
完
青木美和氏 プロファイル
愛知県豊橋市出身。高校卒業後、米国東部にある大学の ESL で 1 年学んだ後、航空学を学べるワ
シントン州のグリーンリバー・コミュニティーカレッジを経て、1997 年、セントラルワシントン大学航空
学科に転入。航空学で学士、修士号、工業エンジニアリングで修士号を取得。卒業と同時に同大学
の操縦教官になる。7 年間教官を務め、その間、個人用ビジネスジェット機のパイロット等を務めた後、
2008 年 1 月、ホライゾン航空の副操縦士として正式採用される。2007 年、アジアの女性パイロット・
ネットワーク「Aviation for Women in Asia」を発足、シアトルに在住。
CRJ700型機のフライトデッキ
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ホームページのご案内
協会ホームページ
http://www.jbaa.org/
ホームページで、新着情報等より詳しい情報を提供させていただいておりますのでご利
用下さい。
◇
入会案内
当協会の主旨、活動にご賛同いただける皆様のご入会をお待ちしています。会員は、正会員(団体及び
個人)と本協会の活動を賛助する賛助会員(団体及び個人)から構成されています。
詳細は事務局迄お問い合わせ下さい。入会案内をお送り致します。
入会金
正会員
賛助会員
年会費
50000 円
個人
30000 円
団体
30000 円
個人
10000 円
団体 120000 円以上
正会員
賛助会員
◇
団体
個人
20000 円以上
団体
50000 円以上
個人
10000 円以上
ご意見、問い合わせ先
事務局までご連絡下さい。
特定非営利活動(NPO)法人
〒107-0062
日本ビジネス航空協会事務局
東京都港区南青山 2-5-17
TEL: 03-5772-6738
FAX:03-5785-5965
ポーラ青山ビル9F
E-MAIL:webmaster@jbaa.org
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会報 8 号添付.1
協会役職
氏名
所属
会長
窪田 陽一
全日空商事㈱ 顧問
副会長(技術・安全委員会委員長)
中溪 正樹
(株)Kei Knowledge INC 代表
副会長(Conference & Exhibition委員会 田村 和之
日本エアロスペース株式会社 代表取締役社長
委員長)
副会長(情宣・マーケッテイング・会員
金井 大悟
(株)エアロパートナーズ 代表取締役社長
常務理事: 事務局長
佐藤 和信
日本ビジネス航空協会
常務理事 (空港・グランドハンドリング
東山 浩司
㈱ユニバーサル・アビエーション 代表取締役
増強委員会委員長)
委員会委員長)
常務理事(IBAC CNS/ATM WG委員) 加茂 圭介
富士重工業㈱ 航空宇宙カンパニー航空機設計部 部長
常務理事(運航・整備委員会委員長)
越智 信夫
朝日航洋(株)
理事 ・特別顧問
橋爪 孝之
(株)ジャルックス 相談役
理事
上田 真吾
エクセル航空㈱ 取締役企画部長
理事
長江 操
中日本航空(株)
理事
一丸 清貴
三菱重工業(株) 航空宇宙事業本部民間航空機部長
理事
山本 哲也
丸紅エアロスペース㈱ 第二営業本部 本部長補佐
理事
上村 次郎
上村インターナショナル 代表取締役社長
理事
久喜 敏弘
スイスポートジャパン(株)
理事
栗林 顕
双日㈱ 船舶・宇宙航空本部航空事業部長
理事
渡井 洋治郎
静岡エアコミュータ㈱ 代表取締役社長
監事
石岡 達郎
個人賛助会員
監事
千島 則広
㈱ジェイ・エイ・エス 代表取締役社長
常務取締役 航空事業本部長
航空事業本部国際ビジネス機事業室長
代表取締役社長
会報 8 号
添付2
EBACE(欧州ビジネス航空年次大会)2009
取材レポート
文責:石原達也(ビジネス航空ジャーナリスト)
今回の世界的な不況は、各産業の底力を見極める好機ともいえる。ビジネス航空もまた、
数年間の急激な成長と、米国議会の一幕に端を発するバッシングなど急転直下の環境に直
面した産業のひとつだ。その将来性を確かめるため、5月 12~14 日、スイスのジュネーヴ
で開催された EBACE(欧州ビジネス航空年次大会)に参加するとともに、英国およびスイ
スの FBO を訪問し、直近の市場動向などを聞いた。(FBO レポートは別途記載)
【概観】
今回の EBACE は、出展者数 411 社、実機展示数は過去最多の 65 機、参加登録者数は
10,917 人で、EBACE 史上3番目(今回は第9回目)の大規模なものとなった。
ビジネス機メーカーを回ると、
「08 年 10~12 月には需要が急落した」という点では各社
共通だったが、「わずかながら回復し始めている」(ガルフストリーム社)、「6~7月にイ
ンドで新製品3機を納入予定の機種もあり、動きが出てきている」(エンブラエル社)、「緩
やかに再浮上しつつある」
(ボンバルディア社)
、
「2010 年には回復する見通し」
(セスナ社)
とする声が少なからず聞かれた。
景況は依然として厳しく緊張感は感じられたものの、悲観的なムードとは程遠く、会場
は活気に満ちていた。
なお、大会期間中の成約件数などは現在確認中。
↑
過去最多の 65 機が出品された EBACE 実機展示場
↑
活況を呈する機体メーカーのブース会場
↑
機体メーカー以外のブース会場も、大勢の客であふれていた
【大型機材の拡充】
今回の実機展示場では、大型機種の拡充が目についた。
エアバス A319、ボーイング・ビジネスジェット、エンブラエル社の Lineage1000 など
の機内見学は順番待ちの行列ができるほどで、
招待者限定ではない A319 では 20 分刻み(実
際にはもっと長時間に及んだ)で搭乗者整理を行うなど、各機種とも注目を集めていた。
TAG
Farnborough(英)や Jet Aviation(スイス)の話では、フライト需要動向でも、
不況で全体量が減少する中、大型機材のフライトは絶対量で増加しているという(FBO レ
ポートに詳述)。ガルフ 550 やグローバル EX が半ば埋もれて見えた実機展示場の光景と合
わせると、ひとつの潮流を形成しつつあることがうかがえた。
↑
大型機材が目立った実機展示場(エンブラエル社のリネージュ 1000)
【ビジネス機バッシングのその後】
米自動車 BIG3が米国議会に公的支援を申請する際、ワシントンにビジネスジェットで
乗りつけ非難を浴びたことが、他の利用者にどう影響しているのか懸念していたが、少な
くとも欧州では、杞憂と考えて支障はないようだ。
英国 TAG
Farnborough 空港のブランドン・オレイリー社長や、スイスの Jet
Aviation
社のベルナール・ラツィーラ FBO ディレクターらによれば、欧州では「経済効果など、社
会の受けるメリットを多くの人が理解しているので、自国内では非難の声を聞いたことは
ない」という。
事実、ジュネーヴ国際空港でも、英 Farnborough 空港でも、ビジネスジェットの発着は
頻繁に行われ、人目を気にしている様子はない。
また、米国でも、全米ビジネス航空協会のダン・ハバード広報担当役員によると、
1.ビジネス航空に地域経済を支えられている議員たちがワシントンで発言した
2.日常業務にビジネス機を必要としている民間ユーザーが、声をあげつづけた
3.マスコミからの取材は、報道関係者の間に理解が浸透する機会となった
ため、「理解は進んでいる」とのことだった。
1.については、米国全土で 126 万人以上の高賃金労働者、年間 1,500 億ドル以上の経
済効果を生み出している。また、08 年に米国内の 100 の地域から定期航空が全面撤退した
が、ビジネスジェットはこうした地域が陸の孤島とならないためのライフラインとなって
いる(このことは項目2にも関連する)。
また、BIG3に関してハバード氏は「もし公聴会出席中に、デトロイトの本社で深刻なト
ラブルが発生したら、どう対処するのか。定期旅客機では、帰りの便がなければ電話指示
しかできないが、社用ジェットなら即帰社して陣頭指揮を執ることができる。社用ジェッ
トは企業にとって当たり前のビジネスツールであり、当たり前だからこそ彼らは一部議員
の非難に、どう反論して良いか分からなかった。あの一幕は(ぜいたく品という)ステレ
オタイプの認識が引き起こしたものに過ぎない」と指摘している。
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ビジネス航空は、定期航空が路線撤退した空港の活性化にもつながる。EBACE
でも、スイスの6地方空港(小型ビジネス機専用)が合同で PR ブースを出展し
ていた。
【ビジネス航空の社会浸透度】
では、ビジネス航空はどの程度、一般的な産業のひとつといえるのだろうか。
EBACE の開催会場はジュネーヴ国際空港に隣接した PALEXPO。このうちホール6およ
び7がブース会場として用いられるが、その面積だけで約3万 7,000 平方メートル(パシ
フィコ横浜の展示ホール総面積は約2万平方メートル)、実機展示場を合わせれば会場面積
は5万 5,000 平方メートル以上(幕張メッセの1~8ホール合計面積は約5万 4,000 平方
メートル、東京ドームの建築面積は約4万 6,000 平方メートル)に達する。
EBACE を含むビジネス航空の大会は、ヒコーキ好きも集まる航空ショーとは違い、あく
まで社用ジェット機の商談会。12 歳未満の入場は理由にかかわらずお断りで、17 歳までは
常に成人の同伴が義務付けられている。それで、この規模の展示会を毎年開催しているこ
とからも、マーケットの規模が見て取れる。
一方で、ジュネーヴ国際空港内の一般旅客コンコース内には、スタッフ常駐の EBACE
専用案内カウンターが開設されており、安ホテルから呼んだタクシーで「PALEXPO」と行
き先を告げると、運転手が「EBACE に来たのかい」と訊いてくるあたり、地元のイベント
として浸透していることがうかがえる。
ジュネーヴ国際空港の一般旅客コンコースには、ホテルなどへの直通電話とともに、TAG
Aviation ジュネーヴ事務所への直通電話も並んでおり、ここでも市井への浸透度を感じ取
ることができる。
↑ジュネーヴ国際空港一般旅客コンコース内には、空港インフォメーションなどに
交じって、EBACE の案内カウンターも。
↑ホテルなどへの予約電話とともに、ビジネスジェット事業者への直通電話(1番
手前のもの)も設置されている。なお、この通路は定期旅客機の到着口からエス
カレーターを降りた目の前にあり、すぐ外(電話の並びの後ろ)は一般のタクシ
ー乗り場、通路の奥はジュネーヴ市街地への鉄道駅となっている。
↑空港駅構内には、会場と大会登録ホテルを結ぶシャトルバスの案内が
EBACE には日本からの出展者が皆無だっただけでなく、日本人らしい参加者の姿もなか
った(中国人・韓国人は少なからず見かけたが)。航空機産業に参入しようという国が、航
空機を使う側の大規模な動向に無知・無関心というのは、問題ではないだろうか。
以
事務局追記
:
上
今回ご寄稿いただきました石原達也氏は、「ビジネス航空推進プロジ
ェクト」のホームページhttp://www.business-aviation.jp等を立ち上げられて、ビジネ
ス航空分野でご活躍中です。