ハーティング テクノロジニュースレター

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ハ ー ティン グ テ クノロ ジニ ュース レター
ゲスト寄稿者 Herbert Kraibühler
オートメーション化: 射出成型機産業の今後のトレンド
トータルコンセプト - ディバイスコネクティビティ . 都市交通におけるアジアの革命
tec.News 16: Editorial
Philip F.W. Harting
さらなるパフォーマンスを目指して
ハーティングテクノロジーグループは、さらなる飛躍を目指し、効果的なプロセス
とソリューション、そして顧客の皆様の利益となる付加価値を高めることを事業目
標としています。
私たちは今年、アジアにおける流通の充実を図るためルーマニアと中国に新工場を
設立いたしました。そしてオーストリア、ベトナムにおいては販売拠点をたちあげ、
また現地代理店契約の拡大など中央アジアにおいてますます精力的に活動いたし
ます。顧客重視をモットーに私たちのコアビジネス拡大につながる新しい技術への
取り組みとネットワーク化されていく世界の中での新規市場への参入を目指し継続
した努力を行ってまいります。
お客様のすぐそばに
私たちは、お客様とのよりよいコミュニケーションのためにグローバル規模での販
売・生産・開発拠点のネットワーク化の充実を図り、多様な産業分野の顧客ニーズ
を確実に理解し、実現へと結びつけます。エネルギー生成とその搬送、工作機械と
生産機器の管理、そして産業用通信ネットワークを戦略的に活用する場面すべてに、
信頼性に優れ、技術的にも最高レベルの製品を供給しています。私たちの教育され
たスペシャリストが新製品開発に早い段階でかかわることは、製品性能を追求し、
ソリューションを適合し、立ち上げや計画、サービスそしてメンテナンスにかかるコ
ストや労力時間の削減といったメリットを生みだします。
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harting tec.News 16 (2008)
私たちは常に進化する産業界の新しいアプリケーションに備
織、計画そして製造のシームレスなネットワーク化は、オート
え汎用性の高いトータルソリューションを用意しています。オ
メーションITによって実現されます。
フィス環境で常識となった最新の技術、ソフトウェア、そしてソ
リューションを、産業現場にも対応させています。
遠い未来の話?いいえ、私たちはすでに新たに設立された中
国の珠海工場でこのコンセプトは、実際に模範的に実施して
新しいアイディアにオープンであること、またそのアイディア
おります。珠海の制御および通信システムはこの工場内に限
を真摯に実行すること、それが私たちが常に志していることで
定されたものではなく、世界中のハーティングの工場ネット
す。また私たちは有能なビジネスパートナーを歓迎します。常
ワークにリンクされています。
に顧客や他社とのパートナー関係も大切にすることで、それぞ
れ個別では成し遂げることができなかったソリューションの開
顧客重視
発を可能にしています。
しかしこれだけでは十分とは言えません。さらに特筆すべきこ
とは、私たちの掲げる顧客重視姿勢です。そのおかげで成功
昨年度の実績として、大きな空港の分散型駆動システム用の
が持続していることを忘れてはなりません。お客様が何を必
通信と制御ソリューション(シーメンス社との共同開発)、GE
要としているかを知り、早い段階で柔軟に対応することが、ハ
Healthcare社の超音波装置用の高性能で信頼性の高いバッ
ーティングの姿勢です。今後はこれを維持するとともに、専門
クプレーンソリューション、韓国とオーストリアの都市交通に
の部門を設置しより高いご期待に応えたいと存じます。
おけるイーサネットソリューション、TVライブ中継における放
送システム、海洋そして風力発電といった厳しい動作環境下
これまでのハーティングテクノロジーグループの成長を後押
での測定および制御システムなど、わたしたちは多様なソリ
ししてきた研究・開発に熱心に取り組むことで、今後も新製品
ューションを供給してきました。
とソリューション、充実した製品ラインナップをより早くお客
様にご紹介したいと思います。
シームレスなネットワーク
オフィスと工場間の通信で、絶え間なく収束するオートメーシ
なぜこのような努力を続けていくのでしょう?答えは簡単で
ョンITは、ハーティングが最も力をいれている分野です。世界
す。それがお客様にとって有益となるからです。私どもが蓄
中のオフィスで広くイーサネットとTCP/IP プロトコルが採用
積してきた経験と新開発のすべてで、付加価値の向上とお客
されるようになったことが新開発の可能性を生みました。これ
様の満足度を満たすという、たったひとつのゴールを目指し
までは限られた産業現場でのみしか気づかれていなかった点
ています。
です。これはあらゆる産業分野でオフィスと製造プロセスが、
より緊密に成長していった結果です。オートメーションITは、
革新的な製品とプロセスとともに、この成長を促進します。
全製造のための統合ソリューション、プロセスのネットワー
ク化、製造に関連するERPシステムデータの統合、総務、組
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harting tec.News 16 (2008)
Contents
Editorial: Philip F.W. Harting:
さらなるパフォーマンスを目指して _2
安全性
ゲスト寄稿者 Herbert Kraibühler:
オートメーション化:
射出成型機産業の今後のトレンド _6
鉄道インフラの測定ポイントにおける最高の精密性と
速度 _20
ハーティング見本市出展2008年 _86
オートメーションによる効率化
鉄道車両の二重系イーサネットケーブル通信-ハーティ
ングスイッチによるスペシャルソリューション _34
鉄道向けイーサネット _42
イーサネットによる効率の向上 _10
風力発電向けシステムソリューション _62
トータルコンセプト -
ディバイスコネクティビティ _13
深海でのネットワーク環境 _74
Rhythm is it!
オートメーションITが実用性を実証 _46
エンターテイメント
2匹の踊る獅子を操る _50
都市交通におけるアジアの革命 _60
「コピーはご遠慮ください」
ハーティングの新アイデア _66
パワーバスはコスト削減に貢献します _76
テクノロジーにおけるリーダーシップ
ロボカップ世界選手権 _18
ハロー中継車! _78
オペラ劇場に登場:Han® _82
システム提携
MicroTCA用 新世代産業用コネクタ _26
超音波、最前線 _31
シグナルインテグリティ 高速チャンネル _37
確実なる追跡 _56
現場からの多様化するリクエストに対応
MicroTCA™システム _40
産業用コネクタの電気機械的特性に関するシミュレー
ション _70
強力なパートナーシップによるグローバルビジネスでの
大きな競争優位性 _54
Publication details.
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t e c . N e w s 1 6 : ゲスト寄 稿 者
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harting tec.News 16 (2008)
Herbert Kraibühler
オートメーション化:
射出成型機産業の今後のトレンド
ローコストで単純な部品の生産拠点を人件費の安い地域へ移転する傾向は依然顕著であり、逆に高人件費国では受注量が減
少しつつあります。 このようなトレンドに対抗し、高人件費国でも経済的に生産し競争力を確保するためには、部品の複雑性
を高くし、その生産プロセスをオートメーション化する必要があります。
LEDライトストリップをひとつの加工プロセスで
完成状態のLEDライトストリップは、複雑な加工セルの中
でのひとつの加工プロセスとして製造されたものです。 ロ
ボットシステム Multilift V と3ステーションロータリー金型
(サーボ電動式、次のステーションへそれぞれ120°ずつ回転)
を装備した三種異材射出成形機 Allrounder 370 S がこの設
備の中枢となっています。
この工法は、新開発の導電性特殊樹脂の使用と高感度LED
部品のインサート成形により実現しますが、 このためには、
高性能な射出成形機、金型、ロボットシステムに対する要求
が高くなります。
ハウジング成形後、対応する凹部にレンズが注入・成型され、
続いてロボットシステムにより抵抗と3個のLEDが挿入された
後、最後に3つめの材料(通電性、PA材料)が射出されて上部
シェルの加工が完了し、取り出されるという連続加工サイクル
各種機能の統合
は、一見シンプルな印象を与えます。
射出成形分野における未来トレンドとして、生産サイクルへ
の複雑な機能統合があげられます。 どうすれば金型および
実際には金型内でのサブプロセスは非常に複雑です。 三種
プロセスのインテリジェント設計を実現できるか。Arburg社
異材射出成形プロセスの中では、ハウジングやレンズだけで
は技術パートナーOechsler社との提携により、デュッセルド
なく加熱チャンネルの使用により高導電性樹脂が射出され、
ルフの K 2007 国際プラスチック・ゴム見本市でこの具体例
電子部品が被覆・接続されます。 全体的な部品加工サイクル
を発表しました。
時間は約40秒です。 このプロセスは高性能グラフィックベー
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t e c . N e w s 1 6 : ゲスト寄 稿 者
スによるAllrounder画面コントローラSelogicaによって管理
されます。 それぞれのサイクルステップでは3つのプロセス
ステップが同時に実行されます。
挿入される3つのLED用として射出されるレンズは透明ポリア
ミド製、ライトストリップのハウジングはABS製です。 伝
導路は特殊開発の通電性PAで加工されています。 三種異材
射出成形機Allrounder上では、これら3種類の合成樹脂すべて
の加工を問題なくこなします。 後続プロセスではここで加工
された上部シェルに下部シェルと9V電池を取り付ける作業が
実施され、これによりライトストリップが完成します。
図2 完成した射出部品をロボットシステムで取り出します。
プロジェクトパートナーOechslerとArburgは、K 2007国際
統合されるようになり、運搬から生じる破損や汚れを回避し、
プラスチック・ゴム見本市で本設備とLEDストリップ(デモ部
出荷までの時間短縮が図られます。 スループットと保管時間
品)の加工を発表し、今日の射出成形機械・金型が可能とする
の短縮はそのまま在庫軽減につながり、必然的に投資の余裕
加工、挿入、機能統合、組立工程の統合例を発表しました。
を生むことになるでしょう。
後続工程の統合
歯ブラシの多色色射出成形
さらに複雑な射出部品を加工し、コスト・品質的メリットを獲
後続加工プロセスの統合の例として、さらに歯ブラシの多色
得するためには、射出成形工程の後続プロセスをも統合させ
射出成形があげられます。ここではすでに5色射出成形機や6
ることも可能です。 これには例えば組立、梱包や表面のコー
色射出成形機も登場しています。 5色射出成形機上では歯ブ
ティング・塗装・装飾などの各種工程が含まれます。 将来的
ラシ本体の4色の材料が1回の工程でインサート成形され、サ
には、これらの生産工程は射出サイクルの下流により密接に
イクル毎に16本の歯ブラシが4色構成で生産されます。 この
ように比較的複雑な機械技術を導入した目的は「物流の効率
化」にあります。 つまり、機械および射出成形プロセスの統
合化により後続プロセス(ブラシ植毛や包装など)をまとめ
ることで、以前は数日を要した製造・(4種類のカラー構成を
一つの包装単位とした)包装・出荷までの一環プロセスが、
数時間までに短縮されたのです。
前段プロセスの統合
これまでは後続プロセスばかりにあてられてきた統合への焦
点は、今後は上流プロセスにも向けられます。 射出成形分野
においても上流プロセスの統合への注目がますます向上して
います。 例としてはパンチプレス加工や曲げ加工、インサー
ト成形部品の供給などがあげられるでしょう。 しかしこれら
のプロセスは、射出サイクルと比べると一見敏速に処理され、
合成樹脂射出成形分野では統合の必要性が重要視されない
図1 金型内に挿入する抵抗部品とLEDが供給されます。
8
傾向にあります。それでもさらなる統合最適化を図れば、プロ
セス全体としての大幅な簡素化、コスト削減および品質向上
harting tec.News 16 (2008)
が実現されることでしょう。 このような上流プロセスの統合
性を向上させることが機械メーカーそしてユーザーには必要
は、特に携帯電話やスイッチなどに使用される板部品やパン
となるでしょう。 特に人件費の高い国々においては、中枢コ
チプレス部品、および自動車に使用される装飾部品のインサ
ントローラ装備の「インテリジェント」加工セルの使用によ
ート成形分野などでその効果が期待されています。
り各種加工技術を組み合わせて相乗効果の向上を図ること
が、未来を担うことになるのです。
ここでのメリットは納期の短縮化と納品量の軽減にあり、これ
により必然的にコスト低減と流通の信頼性が達成されます。
機械や周辺機器、材料のコストダウンだけが生産コストの軽
減につながるのではなく、全体的な生産能力の向上、ロジステ
ィック処理の安全化および機械停止時間の短縮も生産コスト
の低下に大きく貢献することを示しています。
機械設備は複雑に、制御はシンプルに
完全な加工セルでは、中枢コントローラが重要な役割を果た
します。 ますます複雑化が進む中、機械設備やプロセスの操
Herbert Kraibühler
Managing Director Technology and Engineering
ARBURG GmbH + Co. KG, Loßburg
Herbert_Kraibuehler@arburg.com
作性はそのまま、ではなくむしろ簡素化されなければなりませ
ん。 つまり操作コンセプトや操作画面の統一が必要となりま
す。 このためには周辺機器の統合、操作コンセプトの統一、
Arburg社の概要
簡単なプログラミング、全フローと主要パラメータのわかりや
Arburgは合成樹脂加工用射出成形機を製造する世界有
すい表示、高いプロセス安定性、広範囲にわたる品質管理用
数のメーカーです。同社で製造する射出成形機の型締力
モニタ機能などの特徴を合わせ持つ、すなわちバックグラウン
は125 kNから5,000 kNにもおよびます。 用途分野として
ドを司るインテリジェントなシステムが求められます。
は自動車産業、通信・コンシュマーエレクトロニクス機器、
医療技術、家電製品、包装材に使用される合成樹脂部品の
未来のキーワードは「インテリジェンス」
製造などがあげられます。 同社ではロボットシステムやそ
射出成形テクノロジーの未来にとっても「インテリジェンス=
の他の周辺機器、複雑プロジェクトなどの提供により製品
知能」は重要なキーワードです。 今後は「よりインテリジェン
プログラムを補完しています。 特に同社では自社のプロジ
ト」な機械およびプロセスで機械、金型、材料、プロセスを
ェクト業務部を設け、顧客ニーズに応じたカスタムメイド
全体的に考察することで、生産を安定化させ、操作性と経済
ソリューションの計画から実現にいたるまでをサポートし
ています。 同事業部の設置により、顧客への窓口を一箇
所に集約し、計画、処理、立ち上げ、CE認可およびアフタ
ーセールスサービスにいたるまでの全業務を管理できる体
制を整えています。
Arburg の統合マネジメントシステムはDIN EN ISO 9001
および14001認証を取得しています。 同社は23カ国31拠
点に自社組織を有するとともに、50カ国以上の販売代理
業者と取引しています。 生産活動はドイツ・ロスブルクに
ある自社工場でのみ行われています。 2000名以上の従業
図3 包装までを含むすべての生産プロセスは、歯ブラシ用多色成形のため
の複雑なシステムにより合理化されます。
員のうちほぼ1700名はドイツに勤務し、残り約330名は世
界各地のArburg組織に携わっています。
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t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
Ken Kotek
イーサネットによる効率の向上
新しいテクノロジーが絶え間なく登場し、その技術が急速に発展する一方で、標準規格のソリューションが強い支持を得てい
ます。標準規格の通信ソリューションとイーサネットを産業現場で採用することは、技術革新と方向性を同期します。それら
はむしろ新テクノロジーのバリエーションを増やし、新たなソリューションの実現を促進するプラットフォームであるといえる
でしょう。
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harting tec.News 16 (2008)
いまや産業用イーサネットの時代が到来したことは、ワール
産業用イーサネットスイッチが、プラグ&プレイから複雑なネ
ドワイドな実績でも明らかです。オープンでない各企業独自
ットワーク管理機能まで、多岐にわたる技術開発を後押しし
のプロトコルで動作するケーブルネットが溢れていた時代は
たのと同時に、産業市場におけるスイッチの需要が著しく増
終わりを告げ、PROFINET、DeviceNet、ModBus ZCPとい
加しました。これまでフィールドバス中心であった市場は、新
ったプロトコルはデータハイウェイの大部分を占めるように
しいテクノロジーへと移行しており、こういった製品が活躍
なり、特定用途のデバイスには不可欠なものとなっています。
している市場はもはや多岐にわたります。風力発電、鉄道輸
しかし、産業レベルのさまざまな製造元のデバイス・サブシ
送、医薬産業、自動車産業など新たな分野へもアプリケーシ
ステム間の通信には最適とはいえません。異なるコンポーネ
ョンが拡がってきています。
ントの自由な組み合わせを可能にするためには、共通の通信
規格が必要であり、これこそイーサネットが脚光を浴びてい
風力発電
る所以です。
再生可能なエネルギーは、未来の重要な資源です。二酸化炭
素の低減は、将来のエネルギー供給における最も重要な課題
イーサネットと呼ばれるこの新しいプロトコルは、ケーブル
となっています。風力発電は新たなエネルギー源として今や世
配線の制約をどのように排除するのでしょうか?このソリュ
界的に認められており、産業界ではもっとも成長が著しく、革
ーションを理解するために、最初から説明しましょう。イーサ
新が進んでいる分野です。風力発電機が大きくなり、技術も高
ネット・プロトコルの優れた点は、7層構造のうちの下位3層
度化するにつれ、ソケット(底部)からトップまでのケーブルが
を使用することです。残る上位層においては、Ethernet/IP、
長くなっていきました。現在では100メートル以上のものが標
PROFINET、Modbus TCPなどを割り当てるセグメントとし
準であり、銅線の使用限界距離をとうに超えてしまっていま
て活用できるのです。
す。そこで、2000メートルの限界距離を持つグラスファイバー
が代わりに投入されました。定格温度範囲を広げたハーティ
この下位3層は物理層と呼ばれ、主にケーブルとコネクタか
ングの製品シリーズeCon 3062は、風力発電産業に適した選
ら構成されています。すべてのプロトコルはケーブルとコネ
択といえるでしょう。このスイッチは主に、風力発電機と中央
クタを使用するため、これらが頑丈で規格化されていればい
管理室の設備間のデータ伝送用途に採用されています。
るほど、ネットワークは堅牢性を増していきます。他のプロト
コルはすべて、この物理層上に層をなしています。この物理
鉄道輸送
層が不変である限り、他のプロトコルを問題なく受けいれる
コントローラベースのネットワークは、安全に、そして高い信
ことができます。これがイーサネットが順応性に優れ、オープ
頼性と快適性をもって乗客を目的地に送り届けることを目的
ンであると言われている理由です。
に開発されますが、数年前に比べると、そのソリューションは
さらに現実味を増してきました。これを可能にしたのがイーサ
オープンであることは、多様性をもたらします。
ネットです。鉄道車両製造メーカー各社は、通信プロトコル
多くのアプリケーションと産業界は、このオープンなプロト
にイーサネットを採用する範囲を広げています。安全、運動
コルの登場を歓迎しました。産業用イーサネットの全二重性
監視、温度制御、そして電波無線はアプリケーションの中核
と組み合わせることで、データ転送の高速化と定時応答が可
です。ハーティングのeCon、sCon、mCon製品ラインアップ
能になりました。このオープンな構造、使い易さ、そしてイーサ
は、産業用イーサネットベースとしてシステムに接続され、同
ネットの導入の増加が、新しいアイディアとアプリケーション
種のアプリケーションを強力にサポートします。
を切り拓く扉となっています。
3
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t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
医薬製造業
産業用イーサネット : 生産現場でのスタンダード
医薬品製造プロセスには、厳しい品質管理とバッチ監視が不
イーサネットの導入が増加するにともない、もっとも厳しい環
可欠です。イーサネットスイッチ、eConおよびmConは、そのよ
境において、さらに新しい活用性が注目されています。産業現
うなアプリケーションにも最適です。スムーズでコンパクトな
場に特別に適応させたイーサネットの開発は、ケーブル、コネ
設計は、特に無菌室でその利点を発揮します。医薬品の需要
クタ、イーサネットスイッチ、そしてこれらが動作するプロトコ
はこれからも増加が見込まれており、それとあいまって産業用
ルが、接続するハードウェアと同等の信頼を得ているという事
イーサネットの導入も進んでいくでしょう。
実に裏づいています。接続するハードウェアは、熱や埃、湿
度、振動、極限の温度などからしっかりと保護します。それで
自動車産業
こそ「産業用イーサネット」と呼べるのです。
自動車製造工場と生産システムは、その必然性から常に技術
の最先端を切り拓くことを宿命付けられています。また競合と
ハーティングは、産業用イーサネットスイッチでも幅広い品
価格へのプレッシャーが、より高度なイノベーションに帰結し
揃えを持つだけでなく、厳しい環境の中での使用に耐えうる
ています。大手アメリカ自動車メーカーは、最近イーサネット/
堅牢なケーブルとコネクタ、Plug&Playスイッチから複雑な
IPをディファクトスタンダードとして全製造工場に導入しまし
マネージドスイッチにいたるまで、広範囲な製品群を提供し
た。画像システム、ロボット、塗装および溶接プロセスなどの
ています。
監視や制御といったアプリケーションを、イーサネットが支え
ています。ハーティング製イーサネットスイッチの中でも、特
産業用イーサネット製品と並んで、世界使用にむけた技術コン
にmCon 3100シリーズがこれらのアプリケーションを強力
セプト(Value Based Engineering)も、ハーティングのもっと
にサポートしており、顧客に対して次のようなメリットを提
も重要なアドバンテージです。なぜなら、製品はその背後にあ
供しています。リアルタイムの監視、自動データ収集、ひとつ
る品質、統合性、サポートそしてノウハウといった価値と同じ
のプロトコルで全プロセス制御と通信アプリケーションへ
だけの効用を持つからです。ハーティングでは、シスコ・サー
対応可能であること、そしてスピーディで簡単な設置と優れ
ティファイド・ネットワーク・アナリスト(CCNA)認定者が顧
た操作性です。産業用のハーティング製コネクタ・ケーブル
客のサポートを行い、それぞれの特別なアプリケーションに最
は、産業界の中でもっとも厳しい使用環境であるとされる自
善のソリューションを開発することができるよう支援していま
動車業界で高い評価を獲得していますが、それはハーティン
す。こうしたたゆまぬ努力が、製品とイーサネット・ネットワー
グが身上とする、顧客付加価値をもたらすテイラード・ソリュ
クに対する大きな信頼を築いているのです。
ーションを提供するコミットメントを評価していただいた結
果といえるでしょう。
イーサネットは、これまで独自に展開してきた、もしくは通
信機能が不足していたためにオープン化されていなかったア
これらが、過去数年にわたりハーティングが進出した分野で
プリケーションやプロセスにも拡がりを見せています。産業
すが、製造やサービスといった市場では未開拓に近く、その
用イーサネットは全く新しい可能性を拓き、想像を超えるス
分野には巨大な可能性が潜んでいると考えております。今日
ピードで進化するとともに、コストの削減、ユーザーにとって
ではデータ伝送・通信が行なわれているあらゆる場所で、イ
の使いやすさの向上、堅牢なデバイス、そして高い信頼性を
ーサネットはすでに中心的な役割を果たしており、今はそう
も獲得しています。
でない領域でも、近い将来イーサネットの活躍をみることが
できるようになるでしょう。
Ken Kotek
Senior Product Manager, USA
HARTING Technology Group
ken.kotek@HARTING.com
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harting tec.News 16 (2008)
Matthias Fritsche & Andreas Huhmann
トータルコンセプト - ディバイスコネクティビティ
新世代のネットワークシステムは、複雑化する一方ですが、インターフェイスを統一することで状況は改善へと向かいます。イ
ーサネットの普及はユーザーにとっての使いやすさをますます加速させ、そしてデバイスインターフェイスの定義、すなわちデ
ィバイスコネクティビティが、大きな貢献をはたせる場がここにあります。
工業オートメーションにおける一貫したネットワークコネク
テムのすべてのライン(データ、信号、電力)を接続する、ネ
ティビティについてふれる前に、ネットワーク、設置、そして
ットワークシステムを標準化しなければなりません。その際
ディバイスコネクティビティについての問題を明らかにし、
の400V電源、通信、そしてデバイスへの信号伝送は、どれも
解決しておく必要があります。最初に、オートメーションシス
等しく重要です。
3
POWER
SIGNAL
DATA
13
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
設置にあたって2つの選択肢が
リオを幅広く提供しているため、接続ソリューションのほとん
あります。ひとつは事前にアッセ
どを、簡単かつ迅速に実現可能になります。
ンブリした配線コンポーネント
を基礎に、機能ユニット(機械
小型化、高性能化、転送速度が高速化するイーサネット通信
など)を製造すること。もうひ
といった市場の動向が、インターフェイスに対してこそ特殊な
とつは現場でシンプルな簡素接
要求を持ち出してきます。ハーティングがその全能力と経験
続システムをベースに、ネットワ
を投入したディバイスコネクティビティのコンセプトは、接
ークを設定することです。どちら
続ソリューションの観点から、それぞれのシステム全体を考
の場合もアプリケーションに最
慮することができ、今後も高まり続ける要求に最適な答えを
適となるように、設置すること
提供していきます。
が必要ですが、同時にその他の
内蔵の機能(オートメーション
テレコム・コネクティビティ(通信向けソリューション)から生
デバイス)の考慮も欠かせませ
まれたMicroTCAコネクタは、最近では、駆動、制御、そして
ん。これらのデバイスは、ネット
算出技術デバイス用のボード・ツー・ボートコネクタとして採
ワークに依存するシステム特有
用されています。また新世代プッシュプルコネクタも、堅牢な
のインターフェイスを持ってい
IP 67ケーブル・ツー・ボードソリューションとして、両方の市
ます。よってネットワーク、設置
場分野に使用されています。これは、デバイス接続技術分野
そしてディバイスコネクティビ
に見られるコンバージェンス傾向と、その相乗効果を明示し
ティがチューニングされたシス
ています。この傾向は、市場においてハーティングが占める
テムが完成してはじめて、機能
位置に多大な影響を与えるものです。すなわちハーティング
および設置の観点から、最適と
は新世代デバイスコネクタのサプライヤーとしての役割を超
いえるソリューションに達成する
え、アッセンブリされたユニットから完全なバックプレーンま
ことができるといえます。つまり
で、コネクタのディバイスコネクティビティの全コンセプトを
システムを包括的に見てこそ、細
提供するようになったのです。
部にわたるソリューションを促進
し、機能するディバイスコネクテ
私たちは、ディバイスコネクティビティにおいて、デザイン・
ィビィティ・コンセプトを実現で
イン段階からのパートナーです。
きるのです。
私たちは顧客との協力関係をさらに発展させ、いまや通常の
顧客とサプライヤーという関係を超えています。顧客は製品
図1 プリント基板用の接続システム
14
ハーティングのディバイスコネ
開発とその製造装置開発の段階から、私たちに対し積極的
クティビティ
に関与することを求めるようになってきました。そういった要
工業電子装置に使用される電
求にこたえるために、私たちはスペシャリストとして専門知
子デバイスが多種に及ぶよう
識と技術を提供していますが、その内容は技術的なアプリケ
に、利用可能なディバイスコネ
ーションサポートから、デバイス特有のノウハウ、HF (高周
クティビティのソリューション
波コンポーネント)、EMC (電磁環境適合性)、ハウジング技
も、数多く存在します。ハーテ
術、高耐久メカニズム、高電圧、設置コンセプト(配線クラ
ィングは工業電子部品用に、デ
ス)などに関するスペシャリストチームの派遣まで、多岐に
ータ、信号、電力用ディバイスコ
わたっています。このため事前に適用シュミレーションする
ネクティビティの標準ポートフォ
ことが可能で、公認試験所で開発に伴う各テストを実施す
harting tec.News 16 (2008)
ることができます。ハーティングテクノロジーグループは、
1. システム要件
ディバイスコネクティビティの組み込みで必要となるプリン
P R O F I N E T などの ネットワ ー クシステム は 、P N O
ト基板のSMT、SMC、THTやプレス技術をはじめとする、接
(PROFIBUS Nutzerorganisation) 協会といったワーキング
続技術すべての分野においてキーテクノロジーを保持してい
グループによって作成されます。これらの組織は、HF性能やコ
ます。さらに、ワーキンググループと協力して、国際標準とな
ネクタ面に対する要求を決定します。目下注目すべきなのは、
るディバイスコネクティビティ-・ソリューションを打ち立て
通信分野のみならず、システムに使用されるインターフェイス
ますが、そのさい、デバイスメーカーがデザイン・インの段階
にまで範囲を広げる傾向があることです。今ではPROFINET
で、ハーティングの受け持ち部分を決定します。私たちは最
は24V電圧供給コネクタと400V電源コネクタを定義していま
適なデバイス接続を構築するために下記の3つの方法を提案
す。またイーサネット、IEEE 802.3準拠のデバイスの電圧供
しています。
給用のコネクタは、PoEベースで規定されています。機械製
造産業においても、ISO 23570で、データ用、電圧供給用、
1. デバイスメーカーは、DeviceConカタログの中から適合
また電源用インターフェイスの明確な仕様が定められていま
するデバイス接続システムを見つけ、技術アプリケーション
す。これらの規定は広範囲にわたりさまざまな影響を引きお
サポート部によるサポートを受けながらデザイン・インを独
こすため、組織や団体におけるハーティングの責務が、それ
自に行う。
ぞれデバイスの将来性を確保し、最適なコネクティビティを
確実にするため大変重要です。
2. デバイスメーカーがデバイスインターフェイスの仕様を決
定し、ハーティングがデバイス接続システムの選択をサポー
2. 設置における要求
トする。
各組織や団体は、基本的にコネクタに対する機能要求を定義
するだけで、実際の設置についてはユーザー次第となります。
3. デバイスメーカーが個々のデバイス接続システムを使用し
通常、大量生産用の機械には、プリアッセンブリの配線ユニッ
た、新しい世代のデバイスを計画し、ハーティングとの共同プ
トが好んで使われますが、ネットワークを現地で設置する場合
ロジェクトとして、新しい世代のデバイス接続システムを決定
は、ユーザーにとって使いやすく適切な接続システムが大変
する。そのようにして、大量生産用にオーダーメイドでありな
重要となります。シンプルで、スピーディ、しかも確実な接続
がら低コストであるソリューションを打ち出す。
を確保するべきコネクタの機能性が、ポイントとなります。ハ
ーティングは、Han Quick Lock® 接続システムをソリューショ
3番目の形でのハーティングと顧客の協力こそが、新しい開
ンとして提案しました。これは、現地でアッセンブリすること
発レベルへ、すなわち性能の最適化を高いレベルで実現する
ができ、しかも高密度の接続を約束するものです。
だけでなく、特に顧客サイドの開発プロセスにおいて潜在的
なコスト削減へと導くことができます。ディバイスコネクティ
最適な設置コンセプトを打ち立てる場合には、ユーザーと協
ビティは、一貫した工業オートメーションソリューションで求
力が不可欠です。そしてデバイスは、この設置システムをサポ
められる、システム、設置、デバイスの3つの要求を考慮してい
ートし、適するものでなくてはなりません。例として、ドイツ
ます。ネットワークシステム依存して、デバイスインターフェイ
の自動車メーカーの設置コンセプトを見てみましょう。この
スに対する技術的要求が発生します。ユーザーのアプリケー
ケースでは関係者すべてが、将来一貫したソリューションとし
ションの段階で、設置における要求が出されます。そして電子
て利用できるよう、意識的に集まり、話し合い、決定を下しま
およびデバイスの構造が、最終的に搭載方法を決定します。こ
した。またこのコンセプトは、システムの観点からも考慮され
の3つすべての分野で、ディバイスコネクティビティの包括的
るよう、PNOとの密接な協力関係のもと実行されました。自
なコンセプトを実現するために、ハーティングは全力を投じ
動車メーカーはユーザーとしての立場から、整備の専門家ら
ており、その努力は確実に実を結んでいます。
3
15
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
がそのノウハウをもって設置作業に貢献し、ハーティングを
て、3つのすべての分野において優秀な製品を開発し、それに
含むデバイスメーカーとコネクタメーカーは同じテーブルに
伴う複雑な要求に応えることができる唯一のメーカーである
ついて一緒に、ソリューションを決定しました。
ハーティングは、ディバイスコネクティビティ、設置コネクテ
ィビティ、そしてネットワークシステムを戦略的に展開し、複雑
3. デバイスの要求
なシステムソリューションも提供できるトータルサプライヤー
インターフェイスが適切であるということは、どの設置コンセ
として位置づけられています。
プトでも重要な鍵となります。デバイスメーカーの観点からす
ると、これは大きな問題ではありません。なぜなら自社のデバ
私たちはプッシュプルのコンセプトにより、すでに、新しい
イスに最適なコネクタを、選択するだけだからです。しかしシ
標準を打ち立てています。ドイツの自動車メーカーがHan®
ステムサイドの要求、またユーザーサイドの要求は、多くの場
プッシュプルを設置したことを受け、私たちは機械への設置
合考慮に入れられていません。これではさまざまなデバイスメ
に向けた新たな取り組みという、次の段階に進んでいます。
ーカーが異なるコネクタを採用し、結果として設置とシステム
通信技術がイーサネットへ移行したことで、機械への設置を
の要求に互換性を失うことになります。
画期的なまでに簡単にすることが可能となりました。コンパ
クトな機械を大量生産するにあたり、スペースを広げる余裕
デバイスメーカーサイドのコネクタに対する要求には、それ
がない点を考慮すると、それぞれの高性能デバイスを狭い間
が後に標準化したソリューションに対応できるものである、
隔で、中央制御することができるよう配置しなくてはなりま
というもっともな根拠があります。デバイスにはプリント基
せん。これにはスター型トポロジが最も効率が良く、最高の
板が装備されるので、プリント基板上に他のコンポーネント
性能を発揮します。
とアッセンブリし、一回のプロセスではんだ付けることがで
きるコネクタのみを採用します。ここでSMT (表面実装技術)
ハイブリッドスター型トポロジのコンポーネントの電圧供給
が、デバイス製造では、汎用技術となっています。特殊なデバ
は、根本的にライン型、もしくはリング型トポロジと異なりま
イス設計のため、コネクタをプリント基板に搭載することが
す。また、スター型でカスケーディングがなくなるため、通電
できない場合は、例えばフラットケーブルを通じてコネクタ
容量を個々のデバイスに適応させることができます。機械の
をプリント基板に接続するといった、別のコンセプトが必要
スター型トポロジでは、5Aで充分です。この低減により最適
となります。IP67保護等級エリア、例えば機械の中など、厳
なハイブリッドコネクタが可能となります。
しい環境で使用されるデバイスは、さらにデバイスメーカー
とハウジング用組み込みコンセプトを個々に取り決める必
さらに、イーサネット通信もサポートできる電源コネクタを開
要があります。
発しました。ハーティング製プッシュプル ハイブリッドです。
このプッシュプルハイブリッドはデバイスメーカーのミニチュ
例)ハーティングの「プッシュプルハイブリッド」ネットワー
ア化に伴う要求にも対応し、このコネクタは、小型のデバイス
クから設置、デバイスコネクタへ。
にも搭載できるようになりました。
これらの変化するシステム、設置、デバイスの3つの要求は、
最適なディバイスコネクティビティを開発するために、トータ
DeviceConセレクションガイドが、簡単で適切なディバイス
ルコンセプトにコネクタコンセプトとして取り入れる必要があ
コネクティビティを検索。
ります。システム責任者、ユーザーそしてデバイスメーカーと
ハーティングは3つの要求 (システム、設置、デバイス) をシス
密に連絡を取ることを心がけてきたメーカーのみが、そういっ
テム化し、DeviceConカタログの構成要素であるDeviceCon
た設置分野での新しい規格を定義することができます。そし
セレクションガイドの製品情報の最新版に掲載しました。
16
harting tec.News 16 (2008)
図2 DeviceConセレクションガイド
デバイスメーカーがコネクタを自社のデバイスに搭載、また
に判断することができます。ハーティング製コネクタは、一貫
そのユーザーがそのデバイスを設置する場合に、システム全
したオートメーションソリューションのトータルコンセプトに
体におけるデバイスの互換性という観点から、注意を払うべ
常に位置し、デバイスメーカーにもエンドユーザーにも最適な
きすべてのポイントを、デバイスメーカーはコネクタを選択す
デバイスインターフェイスを提供しています。
る最初の段階から考慮できるようになりました。そうすること
によって、例えばあるコネクタをHARAX® 接続システムを利
用し、現場で簡単にアッセンブリができるSMT実装として投
入できるかどうか、PROFINET要求に準拠するかどうかを即座
Matthias Fritsche
Product Manager Device Connectivity, Electric
HARTING Technology Group
matthias.fritsche@HARTING.com
Andreas Huhmann
Director Strategic Marketing, ICPN
HARTING Technology Group
andreas.huhmann@HARTING.com
17
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
Prof. Dr. Martin Riedmiller, Dr. Volker Franke, Wilhelm Finke, Frank Tegeler
ロボカップ世界選手権
今日、人工知能の世界は、ロボットが私たちの身の回りで日々の仕事を補助する時代へと、その道を開きつつあります。オス
ナブリュック大学とハーティングは、オスナブリュック大学のサッカーロボットチームが再び世界タイトルを勝ち取れるよう
研究を続けています。
この人工知能の世界への楽しい第一歩は、ブレーンストーマ
研究は、人工知能の主要基本概念をベースにしています。すな
ー・プロジェクトとして1998年にスタートしました。このプロ
わち、コンピュータプログラムは、トライ&エラーを繰り返し
ジェクトは、複雑な環境下で学習可能な自律(じりつ)エージ
ながら、自主的に正しい決断を下すことを学習します。
ェントを研究することが目標で、このアプリケーション分野の
この人工学習プロセスの原理は、1990年に発表されて以来、
開発のために、ロボットサッカーが選択されました。なぜな
研究班は現在、実用化に向けて複雑な問題の根底にある原理
ら、サッカーには複雑な一連の動作だけでなく、プレイに必
を探ろうとしています。ロボットサッカーは、このための研究
要な知能と勝つためのチームワークが要求されるからです。
の出発点として起用され、世界各国の研究チームと新たな戦
ロボットサッカーチームは、ロボカップ選手権に出場し、試
略や技術を競い合えるチャンスを与えてくれるでしょう。
合経験を積んでいます。
18
harting tec.News 16 (2008)
ロボカップは、
「人工知能」と「自律移動ロボット」分野の研究
どんなに洗練された人工知能システムも、適切な機械的ソリュ
促進のための国際規模のプロジェクトです。この科学と技術の
ーションなしには、その潜在能力を完全に引き出すことができ
チャレンジは、2050年までに人間の世界チャンピオンチームに
ません。これにはボールをプレイ状況に合わせて動かすことが
勝つようなロボットチームを開発することです。
できる能力、つまりシュートの強度に変化をつけられることが
年に一度開催される世界選手権で、各チームはそれぞれの新
必要です。シュート機構のメカをさらに開発していくことで、
しい発見や研究をお互いに比較し、交換します。こうすること
これは将来可能となるでしょう。
で新しいアイディアを、瞬く間に効率よく広めることができる
新しいシュート機構と学習機能を改善したソフトウェアを搭載
のです。
したことで、ロボットの機能は大幅に強化されました。ブレイン
オスナブリュックのブレインストーマーチームは、2003年以
ストーマーチームは、ハノーバーメッセで2008年4月に開催さ
来6機のロボットでMidSize(中型)リーグに参加していま
れるロボカップ選手権ドイツオープンに参加して、新しいプレ
す。2006年と2007年には優勝し、世界タイトルを手に入れま
イレベルを披露することになるでしょう。タイトルを再び防衛
した。成功の秘訣は、ロボットのソフトウェアのほか、ボディか
することが期待されています。
らアクチュエータ、センサー、コンピュータ、そして電源供給に
オスナブリュック大学の新情報学ワーキンググループとハーテ
まで、適切なハードウェアにあります。
ィングテクノロジーグループとの連携プレイで、ブレインスト
ここでハーティングテクノロジーグループが協力し、第一段階
ーマーチームのシュートがすでに決まったも同然です。ハーテ
として、シュート機構の進化に取り組みました。
ィングテクノロジーグループの豊富な経験と開発力が、すばら
競技用ロボットの最も重要な構成部分は、シュート機構にあ
しい人工知能の世界への楽しい第一歩を支えているのです。
ります。相手チームロボットのセンサーとリアクションスピー
現在人の手によって行なわれている仕事の多くを、あまり遠く
ドに対抗できるよう、高さを自在に変えながら、正確で速いシ
ない未来に、ロボットが引き受けるようになるでしょう。ロボ
ュートをうてるようになることを目標としています。またチー
ットたちは、そのためのトレーニングをもうすでに開始してい
ムが勝つためには、柔軟な強さをもつ正確なパスの能力も大
ます。
切です。現在のところ、シュート機構は、この要求のうちひと
つにしか応えることができません。ボールの最高速度は秒速
9メートル、シュートの高さは4メートルを超えることもありま
す。このメカトロニクスデバイスは、さまざまな空圧やスプリ
ング、電磁装置の一次エネルギーを利用しますが、省スペース
におさまるようコンパクトに、しかも省電力で実現されなくて
はなりません。また押しや、衝撃、衝突に対して最高の強靭性
Prof. Dr. Martin Riedmiller
Neuroinformatics, Information Engineering and
Cognitive Science Department
University of Osnabrück
も要求されますが、観客やオペレータに危険がないように定
められた安全基準も、厳守しなくてはなりません。
ハーティングは、まずブレインストーマーチームのシュート機
構の実際の性能を、主に光バリアとコンピュータプログラムか
Dr. Volker Franke
Managing Director Applied Technologies
HARTING Technology Group
volker.franke@HARTING.com
ら構成される速度測定器を使用して検査しました。速度測定で
はボールの飛ぶ角度も考慮し、また高速カメラを使用して動き
の流れも精密に分析しました。
この測定と画像の初回の分析によりシュート機構の向上方法
が明らかになり、シュートシリンダを新しく選定することにな
りました。初回のテストからすでにスピードが倍増しました。
また次のステップとして、ボールの軌道制御方法を検討してい
ます。
Wilhelm Finke
Director Measurement and Testing Technology
HARTING Technology Group
wilhelm.finke@HARTING.com
Frank Tegeler
Measurement and Testing Engineer
HARTING Technology Group
frank.tegeler@HARTING.com
19
tec.News 16: 安全性
20
harting tec.News 16 (2008)
Dietmar Maicz, Walter Gerstl & Britta Rohlfing
鉄道インフラの測定ポイントにおける最高の精密性
と速度
速くそして詳細な列車のデータ情報を集積することは、鉄道インフラ事業者側にとっては、非常に重要です。ARGOS ®測定
ポイントは、運行スピードで走る列車の流動的な走行状態を、必要な正確性と信頼性をもって測定します。コストと性能に
おいてメリットのあるハーティングの製品コンセプトは、ハイレベルで、堅牢なソリューションであり、また設置にかかる時間
も削減することができます。
3
3
21
tec.News 16: 安全性
1. 鉄道インフラにおけるステータス測定
自由市場であるヨーロッパの鉄道交通市場において、どの鉄
道交通企業も、鉄道専門用語でいうフリーアクセスつまり、国
内および地方の鉄道網を使用する権利があります。鉄道イン
フラ事業者は、鉄道網をトラブルのない状態に整備すること
にたいして責任を負っている一方、鉄道車両事業者は、車両を
規格に定められた品質を維持する必要があります。鉄道車両
事業者と鉄道インフラ事業者が経営上目指すものは異なって
います。鉄道車両事業者は、できる限り多く積載し、可能なか
ぎりコストを抑えた車両で運送したいと考えています。コスト
を抑えた車両は、概して走行特性が悪く、これは鉄道インフラ
維持管理費に不利に影響します。鉄道インフラ事業者は、鉄
道インフラ使用料金を実際のインフラにかかる負担に相当さ
せて算出し、採算をとることです。鉄道インフラ事業者は、将
図1 Han Modular ® -Compactとハーティング製D-Subコネクタとメタル
ボックス
来、鉄道網を使用する顧客を多い場合には、各清算を、自動
システムによってかなり簡素化することができるでしょう。
ARGOS®測定機器は、通常の鉄道交通の妨げには決してな
ÖBB(オーストリア連邦鉄道、Infrastruktur Bau 株式会
りません。ARGOS®を装備した区間は、全レール域と同じよ
社、Stab Forschung & Entwicklung)は、HBM社またその
うに、まくら木を突固めたり、削ったり、また再形成など作業
ほかの共同出資社とともに、メンテナンス戦略を最適化で
の支障にはなりません。
きるよう、ARGOS®測定システムを開発しました。そのうえ
ARGOS®で集積されたデータは、鉄道車両の走行安全性を
測定しようとする車両は、トランスポンダ(中継器)やそのほ
コントロールするのに役立ちます。ハーティングは部品・ケ
かを備えた装置などの追加は必要としませんが、オプションと
ーブルハーネスのシステムサプライヤーとして豊富な鉄道向
して、車両認識システム(トランスポンダ/RFID)または光学
け製品レンジと実績を保有、お客様のニーズに合わせたソリ
式車両ナンバー認識装置を搭載することができます。
ューションをご提供いたします。
センサーと計測アンプシステムの配線は、悪天候の中に置か
2.モニタリング
れ、そして電磁干渉を受ける鉄道運行において、全体のシステ
ARGOS®の現場の測定ポイントは、車両と車両上部荷重の
ムを見たときに非常に重要な役割を果たします。
状態を継続的に監視します。測定器上を通過するたびに、そ
れぞれ車両一台ずつ、それこそ車輪ひとつずつの品質レベル
ARGOS®システムのライフサイクルコストを最適化すること
の評価が施行されます。ARGOS®は、どんなレベルが必要
を目的に、汎用のプラグイン構造を採用しました。システム関
とされるにしても、正確な測定を提供するように開発されま
連のビジネスパートナーと緊密に作業し、ハーティングは、
した。測定値の精密度が高いほど、鉄道車両事業者と認可
モジュラー式の標準化された配線システムを開発し、わずか
局での受け入れられる可能性が高くなります。それに加え、
に異なる基本コンポーネントを使用しつつ、あらゆるソリュ
もともと技術的な観点から適切といえる監視を可能にする
ーションのバリエーションを実現しました。システムコスト
ためには、多くの規格範囲があり、非常に高い測定精度を必
が低く抑えられているほか、交換パーツの在庫管理において
要とします。
大幅なコスト削減が可能、その上設備計画とメンテナンスを
簡素化できました。
22
harting tec.News 16 (2008)
該当区域の装置を、短時間で設置するという基本的要求は、
運転手にとっては、個々の脱線した車軸に即座に気づくことは
このオーダーメイドのソリューションにより解決に導かれま
不可能であり、危険な路線区間の技術的な監視システムを通
す。実際の運行時だけでなく、設置中(主に夜実施される)
じるという回り道が必要となります。
であっても、現場で簡単にしかも迅速にまたエラーなく、は
め込むことができる、プリアッセンブリと検証済みのケーブ
ARGOS®レベル1は、脱線した車両を感知し、その情報を信
ルにより、設置作業コストを大幅に削減できます。よく考え
号装置に転送します。ARGOS®レベル1の特筆すべき利点
られた、またわかりやすいマークシステムで、作業の手間を大
は、両方のレール間全部の場所を監視することができる点
幅にはぶけます。
です。これは、ほんのわずか車輪がレールの脇で固着部品上
を走ったケースの脱線でさえ感知することができることを意
ハーティングのシステムは、IP 67保護等級に準じる高級ケ
味します。
ーブル、ケーブルスクリュー、そしてコネクタ(ハウジングシリ
ーズHan-Modular Compact、Han® 3AとHan® Q7/0および
典型的システムは、車輪が跳ねて脱線した場合(高速走行
D-SubのInduCom)から構成され、周囲に電磁干渉のある状
のに現れる問題)を感知するために、4つの順番にスイッチ
態で、天候や動作環境による影響、たとえば、衝撃、振動、太
の入るまくら木に取り付けられたセンサーから構成されてい
陽光線、埃、雨、氷そして油などから最大限にガードします。
ます。詳しい試験で、このシステムは時速300km以上のスピ
全ケーブルハーネス、センサーから計測アンプまで、ハーテ
ードでも問題なく機能することが証明されています。そのほ
ィングは、プロジェクト用のセンサー技術と測定データ集積
かのARGOS® 製品と同様、このシステムも非常にメンテナ
に責任を持つHottinger Baldwin Messtechnik社の仕様に基
ンスが容易になりました。すべてのレール固着部品は、レベ
づき納品しています。
ル1センサーを取り外すことなく、目視でき、メンテナンスが
できます。
3. ARGOS®システム レベル1 から4
ARGOS®システムは、必要に応じて4つのオプションおよび
木材、コンクリート、鉄鋼といったまくら木および直結軌道
測定レベルがあります。(概観図2 a~d参照)
上に装着可能です。レベル1センサーは、特別に形成された
l
レ
ール脱線発見(レベル1)
プレートに接続された、産業現場での使用に耐えうる動力
l
自
動列車監視(Q荷重、車輪形状の変化)(レベル2)
計から成っています。シンプルで機械的に堅牢な構造と全セ
l
自
動列車監視と脱線防止測定ポイント(Q
3
とY荷重、車両走行、車輪形状の変化、騒
音、車両認可) (レベル3)
l
E
N14363に基づくテスト線路(レベル4)
レベル1: 脱線の発見
過去起こった事故の中で、特にリスクの高い
場所(トンネル、橋、転轍器)で起こった大
事故は、長距離に渡りレールをはずれて引
きずられてきた、たったひとつの車軸の脱線
によるものです。事故にまで至らなかった場
合でも、脱線した車輪のため長い区間に損
傷があります。これは、直結軌道を含む路線
区間で起こると、復興作業に手間がかかるた
め事故後の費用が高くつきます。
図2a ARGOS ®レベル1 脱線発見
23
tec.News 16: 安全性
非円形の車輪フラット
積荷状態 操車
動的輪重
レベル3 Y/Q荷重測定
レベル2に加えて、レベル3装備
は、横圧(Y)も測定します。動的
な輪重・横圧の情報を継続的に集
積します。
輪重・横圧と車輪形状の測定により
車両の機能不全を適時に発見するこ
とで、脱線を予防することができま
す。レベル2と同様に、レベル3の
図2b: ARGOS ®レベル2 積荷状態と車輪踏面
測定ステーションも、最長でも120
ンサー部品の論理的連結により、誤警報は、ほぼあり得ませ
秒以内(平均30秒)に長期間安定した測定結果を、分散型運
ん。ARGOS®
Level 1は、シンプルで確実な動作そして経済
行指令センターに送ります。通常、この装置で測定される、貨
的なシステムで、トンネルや橋、ポイントといったリスクの高い
物列車の不平均な積荷の状態のため、あるいは、車輪欠陥の
場所での車輪の脱線を確実に発見することを保証します。
発生に起因する、不安定な車両走行は問題です。また車両の
騒音防止策が原因となるレールの震えも、振動として測定さ
レベル2 Q荷重および車輪欠陥
れます。計測部品要素であるハイグレードなセンサー、配線
ARGOS®レベル2により、車両の不規則さと車輪欠陥(車輪
およびコネクタは、揺れには影響を受けることがないよう設
形状の変化)を輪重(静止および動的輪重)を測定すること
計されており、これは全システムの質の高さを特徴づける大
で、発見します(図3参照)。この信頼性の高い測定ポイント
切なポイントです。
を採用することで、車両の機能不全を従来の車両監視よりは
レベル4 EN14363に基づくテスト線路
るかに詳細を感知することが可能です。
従来よく使われていた個々の測定ポ
イントでは、多軸車両の車軸の相互
YおよびQ荷重
遠心力
振動特性
作用を感知し、考慮することは不可
能でした。これは、認可走行におい
て、再現できない測定結果をもたら
す可能性があります。そのため法に
則る証明を出すためには、最高度の
正確性をもつ測定値が必要です。
広範囲で論理的であり、また実用
YおよびQ荷重
不安定性
レール変位力
騒音防止
的な研究作業を助けに、システム
は開発され、継続的なYおよびQ力
を過去到達することができなかっ
た正確性をもって解析することが
できるようになりました。実際の測
定の経験から、そして鉄道技術のノ
ウハウにより、ARGOS®レベル4と
図2c: ARGOS ®レベル3 流動的な経過
24
いう鉄道車両製造業者にとって、ま
harting tec.News 16 (2008)
きます。特に、貨物車は、
>2a+ +2a*
実際に輸送される積荷と
技術的な状態の監視によ
<2a* min
16,8 m
り維持コストを最適化す
4,2 m
位置は選択可能
ることができます。
4,8 m
4,2 m
>3 m
ARGOS ®レベル2および
ド1
測定フィール
走行方向
3は、関連する規格に準
測定
フィー
ルド
2
じた測定結果を転送し、
現地のTSIスポット調査
の大部分をオートメーシ
図2d:
ARGOS ®レベル4
ョン化することができま
EN14363に基づくテスト線路
す。ARGOS ® システムの
た、認可局のために欠かすことのできないソリューションが生
信頼性と正確性は、安全レベルを引き上げ、騒音と震動の
まれました。
削減により環境への負担を減らし、利用者に対しては、正当
な鉄道インフラ使用料、もしくは乗車料金へ導き、またイン
4 システムの質
フラ事業者と車両事業者にとって、コストを削減することが
ARGOS®レベル1は、リスクの高い場所の前で、脱線後に引
可能になります。
き起こされる被害を最小限に食い止めるために、車輪の脱線
を確認するための、理想的なシステムです。ARGOS®レベル2
ハーティングのシステムソリューションとともにコンポーネン
は、Q計測で車両状態の精密なデータ(車軸荷重および不適
トケーブルハーネスは、さらに進化しました。設置時間を低減
格な積荷)を車両の通過後すぐに転送することができます。さ
しライフサイクルコストを抑えるほか、標準化したモジュール
らにARGOS®レベル3は、Y/Q計測により、事故を予防し、そ
利用のソリューションは、大量のARGOS®装置を製造するこ
して車輪・レールの相互作用における精密なデータを、測定
とも可能にします。
後、遅くとも1分以内に転送します。必要であればARGOS®レ
ベル2および3により、追加として車輪形状の異変を正確に感
知することができます。オプションで、高い騒音防止対策を施
した車両と地面の振動の原因を感知することも可能です。
車両に起因する負荷が、耐えうる路線の構造の限界を超えれ
ば鉄道インフラのライフサイクルコストはずっと高くつきま
Dietmar Maicz
Project Director Railway
Hottinger Baldwin Messtechnik GmbH, Austria
dietmar.maicz@HBM.com
す。例えば車輪踏面によって、維持コストが大幅にあがるこ
とがあります。これと同じことが、限界値を超えた静的およ
び動力にもあてはまります。新しいシステムは継続的な監視
を確実に実現します。
ARGOS®データは、鉄道車両の最適化したメンテナンス戦
略として有効に活用できます。ARGOS®は、個々の車両の故
障を感知し、そして故障の経過を追跡することが可能であり、
そのためメンテナンス作業の計画も最適に立てることがで
Walter Gerstl
Market Manager Transportation, Austria
HARTING Technology Group
walter.gerstl@HARTING.com
Britta Rohlfing
Market Manager Transportation
HARTING Technology Group
britta.rohlfing@HARTING.com
25
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
Michael Seele & Gert Havermann
MicroTCA用 新世代産業用コネクタ
現在産業界で最も注目を集めているハードウェア・プラットフォームを規格化したAdvancedTCAとMicroTCAは、テレコミュ
ニケーションおよびデータ通信分野に、圧倒的な勢いで普及しています。ハーティングはこのシステムのために2種類のアタ
ッチメントを用意し、コネクタを頑丈に、そして産業用として厳しい環境で使えるよう工夫しました。
MicroTCAは、将来産業界において標準規格となる可能性が
年もスタンダードな技術として採用されているものですが、こ
あります。コンパクトでサイズの変更が簡単なこと、また機
のインターフェイスを産業用に使用するためには、もっとずっ
械的に頑丈であり、かつ高性能であることがその理由に挙げ
と高い水準の技術が必要となります。まず振動や衝撃を与え
られますが、すでに市場では、まさにこの強みを生かしたさま
られても、高い信頼性を保証するためには、機械的に安定し
ざまなシステムが活躍しています。
ていることが条件です。加えて工場内の厳しい環境の中では
腐食が起こりやすく、金パッドとカードエッジコネクタの接
しかしながら、MicroTCAのカードエッジ部分の接続に、まだ
続障害を起こす可能性があります。
問題が残っています。AdvancedMCモジュールはプリント基
板の端部の金メッキパッドを通じて、キャリア(ATCAの場合)
これまでの使用経緯から、AdvancedMC モジュールの狭
もしくはバックプレーン(MicroTCAの場合)と接続されます。
い許容公差を厳守することは、今日の製造技術では不可能
この方法はPCIやAGPといったオフィス機器では、すでに何
に近いことがわかっています。まず嵌合面の幅が問題となり
26
harting tec.News 16 (2008)
ます。モジュールの最小許容嵌合面幅は、すでに許容誤差値
ュールを常にコネクタの逆側サイドへ押しつけようとすると同
0.25mmまでに至り、これはコンタクト部の3分の1に相当し
時に、逆側の壁を、0.075mm中央に向けて動かします。これに
ます。規格では、コンタクトが少なくとも金パッドの一部と接
より、プリンタ基板とコネクタのセンターラインのズレを最高
触していることとしていますが、それでは安全性が十分とは言
60%まで削減することが可能になりました。
えません。
コンタクトを保護することにより、製品寿命を延長
よって、接続の信頼性を高める必要があります。ハーティング
con:card+コネクタは、コンタクト部分にさらに2つの改良が
のテクノロジーグループは、ept GmbH & Co. KG と協力して
加えられました。第1に、コンタクトの表面を極めて平滑に仕上
「con:card+」を開発しました。GuideSpring(ガイドスプリ
げることで、金パッドの磨耗を抑制しています。con:card+コネ
ング)と呼ばれる小さなスプリングが位置決めをし、許容差
クタと従来のAdvancedMCコネクタを200回の挿抜テストで
を補正することができます。スプリングがAdvancedMC モジ
比較したところ、con:card+コネクタにはほとんど磨耗の形跡
3
27
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
試験でさらに値が低下してしまい、使用上のリスクと
なります。
con:card+コネクタは、圧入方式によってバックプレー
ンに実装されます。流通している表面実装タイプのコ
ネクタと比較すると、ショックと振動の耐性が確実に
高く、圧入方式により製造されたコネクタは、産業上
の厳しい環境でも安定した強固なコンタクトを提供し
ます。ネジどめの作業などが不要なため、加工もスピ
ーディで経済的、信号伝送速度においても、圧入方式
は要求されている12.5Gbpsに向けて有利です。
図1 革新的なスプリングガイドが位置決めによりコンタクト断絶を予防
リスクゾーン - カードエッジ
が見られませんでした。金パッドが破損すると、工場内の空
ATCAおよびMicroTCA用のAdvancedMCコネクタ・イン
気の中、あっという間に腐食がすすみ、接触の信頼性を損な
con:card+クオリティの特徴は、明らかに頑丈であること
う可能性があります。
です。コネクタメーカーは、接続の一方しか管理できないた
め課題に直面しています。挿入の相手側の部品、すなわち
第2に、パラジウム・ニッケル合金メッキをコンタクトの表面
AdvancedMCプリント基板カードエッジが、非常に余裕を
に施すことで、AdvancedMCカードに起因する激しい摩耗
もたせた仕様となっているからです。con:card+コネクタは、
に対応しています。金パッドのエッジ部は一部非常に鋭くな
この問題を大幅に解決し、そして多くのリスクを削減しまし
っており、またプリンタ基板のエッジがガラスファイバーを
た。しかしカードエッジコネクタのいくつかの欠点を克服する
含有するプラスチック素材のため、挿入操作時にコンタクト
ためには、根本的な修正を加えることが必要となります。それ
面に決定的なダメージを与える場合があります。純金の表面
は、2つ目のコネクタを使用することです。
と比べると、パラジウム・ニッケル合金メッキの耐磨耗性は
30%ほど高くなります。
この目的で、ハーティングはAdvancedMCプラグコネクタを
提供しています。このプラグは、プリント基板の金パッドに取
振動に強い圧入式
って代わるものです。バックプレーン・コネクタへの接続は、
コネクタが、どんな厳しい産業環境の中でも振動に強く、安
プリント基板からダイレクトに行うのではなく、モジュールコ
定した機能を発揮するには、バネのコンタクトに十分な接圧
ネクタを介して行います。
を備えておかなくては
なりません。con:card+
コネクタはその製品寿
命が尽きた時点で、コ
ンタクトあたり0.5Nの
接圧を下回ることがな
い仕様になっています。
これは応力緩和評価に
より証明されています。
接圧が最初から低いコ
ネクタでは、温度負荷
28
図2 金パッド検鏡試片 銅が露出し、アンダーエッチングし
たエッジは、腐食しやすい
図3 鋭角で亀裂の入った金パッドは、コネクタの磨耗の原
因となる
harting tec.News 16 (2008)
一貫した品質は、長期の製品寿命を保証
コンポーネントと一緒に、一回のプロセスで半田付けをするこ
プラグはもともと、MicroTCAキャリアハブ用に開発された
とも可能です。この効率良い、また安定度の高い加工のほか、
もので、2種類のバージョンがあります(枠内を参照)。最初の
コネクタを交換することも可能です。嵌合面が破損したため不
バージョンはAdvancedMCプラグで、標準のAdvancedMC
合格品となり、すでにマウントしたモジュールを処分しなくて
モジュールにも搭載し使用することができます。最大の利点
はならないようなコストを回避することができます。
は、バックプレーン・コネクタに対して非常に強固なコンタ
クト部をもつことです。金パッドの表面は、PICMG規格によ
特別な設計と最小限の厚さまでに抑えた嵌合面により低挿入
り電解金メッキと仕様が定められています。ところが、電解
力が実現されたことは、もうひとつの大きな利点となっていま
金メッキに対する明白な定義がありません。当然のことなが
す。さらに信号伝送特性においては、金パッドを装着したカー
ら、金の抵抗力にも市場のモジュールにおける表面構造にも
ドエッジより、この経済的なプリント基板の構造のほうが優れ
大きな差異があります。金パッドの電解メッキによる製造プ
ています。それは信号がPCB表面上にルートされる必要がな
ロセスにより、銅がニッケル/金表面の下に露
出することを招くため、頻繁な挿抜操作を行
うと、また工場内の空気の中、またたく間に
腐食が発生する可能性があります。最悪の場
合、挿入時に金表面の一部に亀裂が入ること
があります。
市場経験が示唆するように、AdvancedMCモ
ジュールに要求される200回の挿抜は、プリン
ト基板メーカーが保証できるものではありま
せん。しかし、ユーザーはプラグコネクタの搭
載により、ハーティング製con:card+コネクタ
とともに200回の挿抜試験に合格する、最高の
耐摩耗性を手に入れることができます。またバ
図4 プラグコネクタを装着したAdvancedMCモジュール
ックプレーン上のコネクタは、機械加工された
粗い目のFR4材とは違って、射出成形された滑らかなモールド
くなるためです。AdvancedMCモジュールの厚みは、仕様に
面と接続することにより、受けるストレスが減ります。
よって制限があります。なぜならカードエッジコネクタが、厚
さの許容差1.6mm (10%)までを、受け入れることができるか
プラグが嵌合面を定義
らです。プラグコネクタを採用すれば、嵌合面がプラグによ
射出成型法の製造許容公差は、プリント基板製造よりずっと
って定義されるため、この制限から開放され、さまざまな大
正確です。プリント基板では許容値は、10分の1ミリですが、
きさのカードを挿入することができます(システムのガイド
射出成型法では100分の数ミリです。プラグの嵌合面は、幅
機構の許容範囲内が許す限り)。
いっぱいに設置され、ガイドスプリングを使用しない通常の
バックプレーン・コネクタを使用しても、挿入されたカードと
交換可能性により、不合格品の処分コストを削減
プラグには、ほとんど遊びがありません。
ハーティングプラグコネクタを投入することで、コストを削
減することも可能です。コネクタを2つ使用するため一旦コス
機械的な安定を確保するため、プラグをPIH方式(Pin in hole
トが上昇しますが、次の段階で生じるさまざまな効果により
intrusive reflow)でプリント基板に半田付けで固定していま
相殺することができます。例えば今日、金パッドの製造段階
す。プラグはまたピックアンドプレース式でPCBに載せ他の
3
29
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
で、電解メッキにより高いコストが発
生します。また許容誤公差は厳しく、
不合格品の率が上がります。プリント
基板エッジは、コンタクトパッドを破
損させる恐れがあるため、さらに問題
となるポイントです。ハーティングの
プラグは、簡単なボードレイアウトと
スルーホールを必要とするだけである
ため、不合格品が発生しにくく、低コス
トで製造できます。欠陥のあるプリン
ト基板エッジが、高価なコンポーネン
トをボードにマウントした後に発見さ
れれば、さらに不合格品の処理コスト
を増加させることになってしまいます。
ハーティングのプラグはモジュールを
図5 MCHモジュール用に重ねたプラグ・コネクタ
交換することにより、不合格品の処理
コストを削減することができます。
MCH (MicroTCAキャリアハブ)は、MicroTCA用のマネジ
メントモジュールです。コンタクト数が多く、最大で4つま
プラグコネクタは、PICMG仕様MTCA.0 R1およびAMC.0
で嵌合部を持つことができます。PICMG仕様では、MCH
R2準拠であるため、MicroTCAとATCAのどちらでも採用
モジュールが機械の許容誤差に対応できるよう、スタッ
することができます。ハーティングのプラグを使用する
クコネクタを推奨しています。ハーティングのコンセプト
と、AdvancedMCモジュール上でも規格の接続クオリティ
は2種類のコネクタをベースにしています。AdvancedMC
を保証することができます。よってハーティングは産業上の
プラグは、最初の嵌合面用に使用します。最大で3つまで
使用にも対応した、接続の信頼性が非常に高いソリューショ
MCHプラグをモジュラーシステムに差し込むことができ
ンを、バックプレーンメーカーに対してはcon:card+によっ
ますが、機械的に安定させるために重なる部分を金属ピン
て、またモジュールメーカーに対してはプラグによって提供
で強化します。3番目と4番目の嵌合面間には、ハイスピー
します。
ドデータ伝送(スイッチファブリック)が利用可能となるア
ダプタがあります。
ハーティング・テクノロジーグループ とept GmbH & Co.
KGは、既存のAdvancedMCコネクタのさらなる進化と
Michael Seele
Global Product Manager Metric Connectors,
­Electronics
HARTING Technology Group
michael.seele@HARTING.com
Gert Havermann
Signal Integrity Engineer, Electronics
HARTING Technology Group
gert.havermann@HARTING.com
30
高い接続信頼性を実現するため、2005年に共同開発に
乗り出しました。の結果が新世代AdvancedMC信号コ
ネクタであり、ハーティングとeptによる品質保証つきの
「con:card+」を市場に送り出すこととなりました。両社
は明確に規定された品質基準を確立するとともに、ユー
ザーにはデュアルソーシングの利点の提供も実現したの
です。
harting tec.News 16 (2008)
t e c . N e w s 1 6 : システム 提 携
Ole Christian Ruge
超音波、最前線
今日の医療分野において、画像出力とデータシステムは診断装置の中心的存在です。世界有数のメーカーであるア
メリカ、ミルウォーキーに拠点を置くGE Healthcare社は、クリニカルシステムの分野において、病院や医者への超
音波スキャナの提供で世界最大の企業です(*)。2001年より、1万4千枚以上のハーティング製バックプレーンがGE
Healthcare社の超音波機器用に採用されています。
3
(*)Klein Report on Medical Diagnostic Ultrasound Marketから。
31
t e c . N e w s 1 6 : システム 提 携
今日、超音波システムは、現病歴と診断において標準装備と
なっています。昔の2次元モノクロ装置から、今では4次元カ
ラーシステムへと進化し、診断の精密度は著しく向上しまし
た。その使用と表示におけるバリエーションが広がったことも
さることながら、信頼性に対しての期待も高まり、またシステ
ムの拡張も可能となりました。医療機器を開発・製造する場
合は、細部にわたるプロセス制御が求められます。例えばア
メリカでは、FDA(食品医薬品局)の規定が重要視されてい
ます。FDAは、製品と製造プロセスを記録することを義務づ
けており、エラーや変更などの要求にどのように対処したの
かも記録するとともに、高度な品質を保証しなければなりま
せん。また医療機器メーカーの下請け業者も、同様の規制に
対応していかなくてはなりません。
GE Healthcareは、革新的な超音波システム
を医療の4つの分野に集中して開発していま
す。すなわち、放射線科、産学科と婦人科、循
環器科、救急医療と手術における診療用アプリケ
ーションです。このラインアップの中には、各分野固有の
システムファミリが含まれており、アメリカ、ノルウェー、オー
ストリア、中国、日本、韓国、インドそしてイスラエルにおける
エキスパートセンターで、常に開発が進んでいます。
GE Vingmed Ultrasound VIVID 7
最新のGE Healthcare超音波機器は、高速走査アルゴリズ
ムと4次元画像(4次元目は時間)を使用しています。従来の
リックコネクタを供給するサプライヤーとして、HARTING
制御・操作卓であるコンソールは、エルゴノミックの観点か
Integrated Solutionsは2001年にGE Vingmed Ultrasound
らシステムが進化し、今日ではキーボードとモニターは、3種
(GEVU)と関係を築き、当時の新製品シリーズの製造にお
類のポジションに変化させることができるようになっていま
いて生じた、基本的な問題のソリューションを提供しまし
す。またソフトウェアの性能は常に進化を続け、超音波機器
た。GEVUは、VIVID7スキャナを市場に売り出したところで
はユーザーにとって使いやすく改善され、最新の技術開発に
したが、バックプレーン・メーカーはその当時、傷つきやすい
対応していくことができます。コンパクトなラップトップ型
金メッキのマザーボードに、ハードメトリックプラグを圧入
の超音波システムがここ数年出回ってはいますが、コンソー
することに問題をかかえていました。
ル使用のソリューションは市場で、今もって目覚しい成長を
遂げています。
ハーティング製品、 完全自動圧入装置CPM 2001はこれら
問題点へのソリューションを提案します。2001年の国際規模
バックプレーンサプライヤーとして
での入札ではこのソリューションがきっかけとなり、VIVID 7
HARTING Integrated Solutions (HIS)は、工業ソリューシ
用のバックプレーンのサプライヤーとして選出されました。
ョンのためのバックプレーンシステムを開発する、世界でも
製造はノースアンプトン(英国)のハーティング工場で開始
有数のメーカーです。GE Healthcare社のCEM (Contract
され、ノルウェーのHARTING ASから、GEVU Elektronik-
Electronics Manufacturer)サプライヤーへ2mmハードメト
Hauptlieferanten Kitron ASAへ出荷されました。
32
harting tec.News 16 (2008)
技術的側面
GE Healthcare - サプライヤー(協力会社)条件
VIVID 7のバックプレーンは、多層PCBに40以上のハードメ
GE Vingmed Ultrasound社の戦略ソーシング・マネージャー
トリックコネクタを装着しています。ドーターボードへのイ
であるJan Sollid氏は、GE Healthcareへ戦略的に重要な製
ンターフェイスとしてのプラグは、すべて250回挿抜を保証し
品のサプライヤーに対しては、厳しい要求を課していると強調
ています。GEVUはバックプレーンに、はんだ付けのかわりに
しています。サプライヤーは常に、需要を迅速かつ効率的に把
圧入方式を採用しています。なぜなら非常に信頼性の高い接
握し、供給することができなくてはなりません。バックプレー
続が得られる上に、はんだ付けより製造のスピードが速く、コ
ンはGE Healthcareにとって戦略的な要素であり、また超音
ストも安く施工することができるからです。
波システムにおける最も重要な機能部品です。このコンポー
l
l
l
l
圧入方式は、はんだ付け時に発生する温度ショックを回避
ネントに関連する部品の納品が遅れると、全製品の納品スケ
することができます。
ジュールに大きく悪影響を及ぼすことになります。
完成したプリント基板のクリーニング工程を不要にしまし
た。
新しいシステムを開発するさい、ラインアップ内での相乗効果
HAL(ホット・エアー・レベラ)方式と同様、圧入方式は、ほ
を狙うため、GE Healthcareの国際プロジェクトチームは、研
とんどのプリント基板に適用することができます。
究と開発を一手に引き受けています。GE Healthcareにとっ
圧入方式によるコンタクトは、修理が必要となった場合に、
て、バックプレーン設計と製造プロセスの品質は、世界中の
簡単に引き抜くことができます。
サプライヤーから選択をするさいの重要な判断基準となって
おり、ソーシングもまたグローバルに行われます。戦略的に
経験 - 実践を通じて学ぶこと
重要と位置づけられるサプライヤーに期待する最重要ポイン
VIVID 7バックプレーンは、私たちにとって国際的なバック
トは、製品とプロセスの品質、期限厳守の納入、また、供給関
プレーン・メーカーへと成長をとげるための大切なステップ
係にある中で、効率を持続的にアップさせることなどがあげら
となりました。技術的な観点から、非常に滑らかな表面に、
れます。GE Healthcareは、サプライヤーのネットワークを最
高密度の接続を実現することが要求されます。SMD(表面
大限に活用することに力を入れ、特にイノベーションとコスト
実装型)コンポーネントも必要となったため、HISは自社の
削減に協力をよびかけています。
SMD実装ラインを設置することを決定しました。
「VIVID 7
バックプレーンが、全製造工程の発展を推進するきっかけと
2001年のプロジェクトスタート以来、ハーティング製バック
なりました。」 HARTING Integrated Solutions のオペレ
プレーンは全体で1万4千枚以上GE Healthcareの超音波シス
ーション部取締役、Paul Atkinson氏はこのように述べていま
テムに採用されてきましたが、これで安泰というわけではあり
す。
「2003年にハーティングが発表した新しいVIVID 7 PCB
ません。
「多数存在するGE社のサプライヤー間での競争に打
は、ROHS指示を見込んで、当初から鉛フリーで製造に取り
ち勝つために、コストを意識した製造工程の改善に常に取り
組んでいました。」
組んでいます。」そうJan Sollid氏は主張しています。超音波シ
ステムを世界市場に向けて開発し続けるGE Healthcareのサ
ロジスティックの観点からもまた、VIVID 7は私たちにとっ
プライヤーは、ハイレベルなアッシーを世界中に供給をできる
て非常に大切なプロジェクトでした。なぜなら 多数のGE
よう求められています。
Healthcareのプロジェクトが、例となり後のプロジェクトに
影響しておよぼしていくことになるからです。2002年と2004
年、イスラエルにVIVID 3用とレントゲン・スキャナLOGIQ 9
用のバックプレーンを納品したことで、流通チェーンのグロ
ーバル化は進行しました。私たちはそれ以来、イギリスから
ノルウェー、イスラエル、そしてアメリカにも製品の出荷を継
続しています。
Ole Christian Ruge
Managing Director Norway
HARTING Technology Group
ole.c.ruge@HARTING.com
33
tec.News 16: 安全性
34
harting tec.News 16 (2008)
Dalibor Kuchta & Tomas Ledvina
鉄道車両の二重系イーサネットケーブル通信-
ハーティングスイッチによるスペシャルソリュー
ション
デジタルカメラシステムは、今日の旅客車両では標準装備となっています。しかしながら、鉄道に特有な環境と、列車による構
成の違いによって、必要とされるソリューションはそれぞれかなり異なります。列車の長さ、伝送の品質やネットワーの物理的構
成はすべて重要なポイントです。ハーティングはさまざまな局面で、信頼性の高い特別なソリューションを提供します。
Ostrava-Hrabuvka に拠点を置くチェコの鉄道下機器メーカー、LOKEL s.r.o.社
が採用されていますが、これは最も広く
は、新しい4両編成のED74型都市交通電車用に、デジタルカメラシステムを開発
普及しているソリューションであり、コン
しました。この電車は、総長80メートルです。LOKELはこの電車に、制御システ
ポーネントが手に入りやすいという理由
ムとカメラシステムから構成される電気サブシステムを供給していますが、この
によるものです。
システムはハーティング製イーサネットスイッチsCon 3100-Aで接続されていま
す。車両一台につきカメラ2台の計8台のカメラから構成するこのカメラシス
テムは、車内のオンライン監視を保証するものです。すべてのカメラか
ネットワークは、次の基本コンポーネン
トより構築されています。
らの画像は、完全にビデオストリーム品質(1.2 Mbit/秒、すなわち
毎秒12枚の画像を24時間撮影するということ)で記録されま
– ビデオサーバ(アナログカメラから
す。カメラシステムを使ったこれまでのプロジェクトの経
MPEG4データストリームへの信号伝
験から、特に電気駆動列車でのノイズを完全に防止す
るためには、アナログ伝送技術をデジタルに切り替
えることが必要という結論に達しました。この
技術にはもうひとつ、ネットワークトポロ
ジ全体を簡素化できるというメリット
がありました。ビデオデータの伝
送のために、IEEE802.3 およ
びIEEE802.3u標準に準
送用)
– PCモニター(個々のカメラの撮影を表
示するため)
– 産業用PC(記録用)
– イーサネットスイッチ(ネットワークの
個々のセグメントをリンクするため)
– GSMモジュール(インターネット接続
を確立するため)
じたイーサネット技術
10/100Base-TX
3
35
tec.News 16: 安全性
コンフィグレーション可能なハーティング製二重系パラレルスイッチ
sCon 3100-A
運転席のビデオモニター
カメラが撮影した画像を表示するための録画ソフトと特殊ソ
このシンプルで低コストな方式は、自動結合に採用すること
フトは、LOKEL s.r.o.社が開発しました。
ができます。このソリューションでさらに高い信頼性を得るた
めには、すべての接続を二重系配線します。このソリューショ
個々の車両間のすべての電気とエアラインの接続は、Dellner
ンはあらゆるケースで障害や故障がなく、またネットワークの
の自動連結器により操作します。すべての電気系統は二重系
すべての場所で機能することが証明ずみです。
とすることで、イーサネットの信頼性はより向上します。
現在、ED74型電車が製造されていますが、新モデルもすで
しかしながら、イーサネット10/100Base-TXネットワーク内
に開発中です。この次世代の電車はイーサネットネットワー
のパラレル接続においては問題を残しています。アンマネジ
クによる新しい機能とサービスを備えています。4台の外部
ドイーサネット標準スイッチを備えたシステムでは、2つのノ
カメラから成るシステムはバックミラーとして使用されると
ード間に2本の独立したケーブルをパラレル接続することは、
のことです。
基本的にできません。結合の直前に1本のイーサネットケー
ブルが中断し、HUBスイッチを使用してリンクすることとな
ED74型は、ポーランドの鉄道車両が2007年以来製造してお
った場合、伝搬時間差や故障により、信号障害を引き起こす
り、ダンツィヒとワルシャワ間、そしてワルシャワとロッツ間を
可能性があります。
運行する予定です。2008年に14両が納品される予定です。
この問題は、ハーティング製冗長性スイッチsCon 3000を
採用することで解決できます。このアンマネジドコンフィグレ
ーション可能なスイッチは、2つのお互いに依存しないポート
の設定を実現します。この機能は、冗長パラレルと呼ばれて
います。2つのスイッチに選択されたポートは、2本のケーブ
ルでお互いを接続します。作動中は冗長パラレルのため、2
Dalibor Kuchta
Software Development Manager
LOKEL s.r.o., Czech Republic
Kuchta@lokel.cz
本ケーブルのうち1本のみがアクティブ化し、もう1本はバッ
クアップ用ケーブルとして使用されます。アクティブケーブル
にエラーが起きると、ユーザーが処理することなく自動的に
無効化され、同時にバックアップ用ケーブルがアクティブ化
されます。
36
Tomas Ledvina
Product Manager Networks & Connectivity,
Czech Republic
HARTING Technology Group
tomas.ledvina@HARTING.com
harting tec.News 16 (2008)
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
Gert Havermann
シグナルインテグリティ 高速チャンネル
高速化するデータ伝送に対応するため、データ通信プロトコルの定義は常に更新され続けています。マルチギガビットコネク
タには、現在だけでなく将来の高速転送技術にも対応できることが求められています。コネクタは伝送チャンネルの一部に
すぎないため、データ伝送の性能をシステム全体を考えずに単独でコントロールすることは不可能です。では伝送チャンネル
とはどんなものでしょう?
電子システムには異なる信号様式があります。DVDからハー
伝送パスの入力信号と出力信号に対する最低限の条件は、非
ドディスクへ送られるデータ、クオーツ時計の秒針を動かす
常に異なります。しかも、チャンネル(モジュールカード、バッ
出力パルス、世界のどこかで交わされる携帯電話での通話
クプレーン、コネクタなど)の物理的特性に対しては、まった
などさまざまです。秒単位のギガビットで測定、Gbpsと表示
く規定がありません。よってすべてのシステムを別々に考慮す
される高速転送用の電子コネクタの分野では、銅線、ガラス
る必要があります。
ファイバ、または電波伝搬により、信号が送信側のチップか
ら受信側のチップへと伝送されます。シグナルインテグリテ
ハーティングは、目下40社からなる規格策定団体PICMG
ィとは、受信する側にとって十分なクオリティをもつ信号を意
(PCI Industrial Computers Manufacturing Group)のリーダ
味します。このクオリティを保証するためには、送信側の伝送
ーとして、伝送チャンネルについての基本的規則と仕様を定義
パス(チャンネル)は、受信側へ低挿入損失、リターンロス、低
するPICC (PICMG Interconnect Channel Characterization)
漏話(クロストーク)などの条件を満たす必要があります。ど
に取りくんでいます。例えば、チャンネル個々のコンポーネン
の条件をどの程度まで満たすべきかは、伝送プロトコルまた
トを、シミュレーションと計測用に同じインターフェイスを装
は使用する半導体によって決まります。
備するよう定義します。そうすることで、これまでは不可能で
あったチャンネル個々の部品の電気的シミュレーションモジ
現在主流となっているのは、バックプレーンをベースにしたマ
ュールが交換できるようになり、計測結果の比較も可能にな
ルチギガビットシステムです。これはモジュールカード上で生
ります。
成された信号が、バックプレーンのコネクタを通じて、受信側
周辺のモジュールカードに転送されるしくみです。
この伝送方式では、パス毎に異なる転送速度の伝送プロト
3
4FOEFS
送信機
&NQGjOHFS
受信機
コルを採用することができます。
–PCI Express @ 2.5Gbps, 5Gbps
–Serial Rapid IO @ 6.25Gbps
–イーサネット規格
.PEVMLBSUF
モジュールカード
4UFDLWFSCJOEFS
コネクタ
– IEEE802.3ap (10GBASE-KX4) @ 4 x 3.125Gbps
– IEEE802.3ap (10GBASE-KR) @ 10Gbps
#BDLQMBOF
バックプレーン
チャンネル
$IBOOFM
図1 バックプレーンシステムの伝送パス
37
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
チャンネルの動作に影響するコネクタ
ルドにあるので、できる限り小さなスルーホールを施すべきで
バックプレーンチャンネルのクオリティに大きな影響を及ぼ
す。これには2つの根拠があります。スルーホールの静電容量
すのは、伝搬損失、挿入損失、漏話です。伝搬損失は、主に
を最低限におさえるためと、スルーホール間にPCBトレース
システムのインピーダンスの整合性と、使用される素材によ
のためのスペースを最大限に確保するためです。ビアの直径
るものです。漏話は、信号パスの誘電性と静電結合により生
が小さければ、スルーホールの間隔が広くなり、漏話が低減
じます。バックプレーンをベースにしたチャンネルのほとんど
します。特にバックプレーンコネクタにおいては、接続フィー
は、PCBトレースから構成されています。インピーダンス(ト
ルドにPCBトレースための十分なスペースを取ることが、シ
レース形状)また漏話(PCBトレースの間隔)に関しては、そ
グナルインテグレーションのために非常に大切です。というの
れぞれのシステムからの要求にごく簡単に対応させることが
は、バックプレーンにおけるスペースが比較的狭く、接続フィ
できます。伝搬損失は、トレース長の最短化と低損失のプリ
ールドによりPCBトレースのスペースのほとんどが占められて
ント基板材を使用することで制限できます。
しまうからです。同じレイヤ上に並列したPCBトレースが多け
れば多いほど、当然必要とする全体のレイヤ数が少なくなり、
このチャンネルのコネクタにはあまり融通性がなく、コネク
スタブによる影響が低減します。
タ内のインピーダンスは、個々の部品が複雑なために一定し
ていません。また成端(圧着、スルーホール、表面実装)のイ
コネクタにおけるスタブによる影響
ンピーダンスは、プリント基板との施工後に確定します。イン
スタブ(信号の主伝送線路から電気的に不要な枝分かれした
4FOEFS
ピーダンス変化点で信号反射が発生すると、挿入損失が悪化
部分)による影響とは、スタブにより生じる信号反射のことを
します。漏話は信号を転送する部品の距離に依存して、起こり
指し、ほとんどすべてのコネクタとプリント基板で発生し、避
ますが、これが、コネクタの信号密度が高まるトレンドと対立
けることができません。適切な措置をとることで、この影響を
しています。通常は、うまく端子を配置することで漏話を最小
低減することはできますが、これにかかる手間と、その効果と
限に食い止めることができます。コンタクトが短いため、伝搬
の線引きが重要です。
損失の発生は比較的少なくすみます。
このスタブによる影響は、コネクタ内の2ヶ所、コンタクトの
高速コネクタの特徴
固定場所とコンタクトゾーンで発生します。コンタクトの固
インピーダンス - コンタクト形状を丁寧に配線し、
できる
定場所は設計次第なため、設計者がコントロールすることが
かぎり平坦なインピーダンス・プロファイルを生成します。マ
できます。非常にシンプルな設計のコネクタであれば、コン
ルチギガビットはほとんどLVDS (Low Voltage Differential
タクトには絶縁体ハウジン
Signaling)でのみ処理されるため、差動インピーダンスが
グにスナップインする保持
100Ωとなるようにコンタクトを配置しなくてはなりません。
ピンが装備されています。
(個々のコンタクトは可能であれば、簡単な信号をうまく伝
このコンタクト上で伝送さ
送できるように50Ωを示すようすべきです。)コンタクトを巧
れる信号は、保持ピン脚部
みに配置し、75Ωにすることができれば、より良いでしょう。
で分岐し、ここに入力され
(多くのシステムにまだ見られます。)
る信号の一部分は終端で
全反射して分岐点に戻り
クロストーク - コンタクトの間隔が十分でない場合、信号
ます。この反射した信号は
コンタクトをシールドすることで、クロストークを低減する
さらにコンタクトの脚部で
ことができます。
分岐し、送信機と受信機に
成端の影響-コンタクト密度が高い場合、インピーダンス断
絶や漏話の主な原因はプリント基板のコネクタの接続フィー
38
図2 位置決めボスのコンタクト
向かい、そしてそこで希望
波と混信します。また、コ
ンタクトをオーバモールド
harting tec.News 16 (2008)
形成で保持する方法もあ
スプリングコンタクトの面取り部も、同じようにスタブによる
ります。そうすれば保持ピ
影響をもたらします。必要とする面取り部の大きさは、コネク
ンの大部分は必要なくな
タ個々の部品の製造段階で到達できる許容範囲次第です。ほ
ります。
かでは、スタブは、特に接続システムに影響を及ぼしており、
それはつまり、バックプレーンシステムの場合はプリント基板
コンタクトゾーンのスタブ
&NQGjOHFS
で影響があるいうことになります。
による影響は、コネクタを
FS
あと付けするシステムの機
多層構造のバックプレーンは通常24レイヤですが、30レイ
械的な構造によって、おお
ヤを超えることもあります。構造の厚みは、その途用により
くの部分が決まってしまい
2.4mmから5mmの間となります。信号層はレイヤ構造に均等
ます。ほぼすべてのバック
に配置されるため、スルーホールは信号層に依存して、深刻な
プレーンシステムでは、モ
スタブを生成します。表面に接触するコネクタでは、ここで、
ジュールは差込みをしてか
ブラインドビア、すなわち、表面から信号層までのビアを完全
らフロントパネルに固定さ
なスルーホールを使用せずに活用することが可能です。しか
れます。そのために、フロ
しながら、このような技術を使用しているプリント基板は、非
ントパネルとモジュール側
常に高価につき、信頼性に欠けることが多くあります。
のプラグ嵌合側の間隔と、
図3 オーバモールド形成したコンタ
クト、差込済み
4FOEFS
フロントパネル固定部とバ
圧入方式であれば、バックドリル加工でスルーホールの“不要”
ックプレーン側のプラグと
な部分を前もって除去しておくことができます。そのさい、プ
&NQGjOHFS
の間隔によって、コンタク
リント基板の完成後、裏側からの貫通する穴を、より大きな
トの嵌合相手に差し込む
直径で深さを調節しつつ開けます。残った実際のパッドは、
ことのできる深さが決まり
表面から信号レイヤのすぐ下までに到達するのみです。この
4UFDLWFSCJOEFS ます。よってコネクタはシ
ための条件は、コネクタの適切に調節された圧入ゾーンであ
ステムの許容範囲にかかわ
り、接触する部分は、完全にプリント基板の残った銅パッド
らず、常に確実に接触する
内に位置しなくてはなりません。
.PEVMLBSUF
#BDLQMBOF
$IBOOFM
図4 スルーホールのスタブによる
影響
ように設計されています。
ということは、差込の深さ
コネクタをマルチギガビットの分野用に開発するという電子
はさまざまで、2mm以上
部品の最大の課題に、ハーティングは取り組んでいます。質の
に差異が出ることもあり、
高い信号の統合性を実現するためには、コネクタを採用する
そのような場合はプラグ
システムにおいて非常に詳しい知識が必要とされています。
上のブレード・コンタクト
を延長して対応します。こ
のコンタクトの余剰部分
は、また差込の深さにより
図5 バックドリルによるスルーホー
ル(右)バックドリルなしのスルーホ
ール(左)
ますが、反射に起因するノ
イズの影響を少なからず引
き起こすことになるスタブ(図3)になるでしょう。
Gert Havermann
Signal Integrity Engineer, Electronics
HARTING Technology Group
gert.havermann@HARTING.com
39
t e c . N e w s 1 6 : システム 提 携
Vollrath Dirksen & Uwe Markus
現場からの多様化するリクエストに対応
MicroTCA™システム
産業用アプリケーションにおける要求はあらゆる角度において高まっています。開発時間の短縮、よりよい拡張性、柔軟な
サイズ調整、性能の向上、装置のライフサイクルコストの削減、そして多様なタスクのためのシステムコンポーネントの実用
性。N.A.T.社は、そのために必要なアプリケーションを提供しています。そしてハーティング製AMCプラグおよびMCHプラ
グが、その機械的精度とコンタクトの高信頼性を支えています。
最新のシリアル高速バスをベースにしたMicroTCA™標準規
エラーメッセージを送ることで、規定の安全措置を実施する
格は、高いプロセッサ性能を備えるシステムに十分な電力を
ことができます。
供給し、またリモートサービスとリモートメンテナンスを容
易にします。MicroTCA™システムは、コンフィグレーション
モジュールはオプションで機能を追加することも可能で
に多様な選択肢があるため、またサイズを容易に変更できる
す。この場合、モジュールはバックプレーンのほかに、ギガ
ため、さまざまなアプリケーションに対応することができま
ビットイーサネット、10ギガビットイーサネット、SRIO バス
す。MicroTCA™システムの中枢部は、MCH (MicroTCA™ キャ
(Serial Rapid IO)またはPCIexpressを切り替えることに
リアハブ)であり、N.A.T.は、MCHをモジュール化しました。
よりMicroTCA™システムにおける内部データ交換のための
バックボーンとして動作します。
モジュールは、システムの簡易マネジメントコントローラとし
て搭載することができますが、必要に応じ、イーサネットやシ
マネジメントパス、コントロールパス、そしてデータパス
リアルインターフェイスを通じて外部との接続を保つことが
は、MCHから放射状にすべてのスロットに導かれているの
できます。さらにEキーイングがバックプレーンに適合しな
で、MCHをフルに拡張した場合は、プラグを4つまで装備で
いモジュールがシステムに挿入されることを防ぎ、過剰な通
きます。ハーティング製プラグは、簡単で正確なMCHモジ
電や無効な設定の機器構成からシステムを守っています。ま
ュールのスタックを可能にし、またバックプレーンプラグは、
た追加機能として、該当するポイントでアラームや、外部へ
センタリングピンにより、コンタクト面を最大限に有効活用
3
40
harting tec.News 16 (2008)
図1 NAT-MCH: モジュール構造
します。先行ピンのため、バックプレーンに4つのプラグを装
備したMCHでも、簡単に挿入することができます。特にホッ
トスワップ機能を必要とするシステムでは、常に精密なハー
AMCプラグ
ティング製プラグによって、障害のないシステムを確実にし
N.A.T.社は、データおよびテレコミュニケ
ています。
ーション分野のアプリケーションためのハ
イテク製品を専門としています。製品ライ
MCHに他に,ATCA®
システムズ、MicroTCA™用 I/O AMC
カードも提供しています。
ンアップは組み込みシステムをターゲット
とし、LAN(構内通信網)
からWAN(広域
通信網)までのソリューションを提供してい
これらのフィールドバスAMCカードは産業オートメーショ
ます。N.A.T.製品ラインアップは、LANと
ン対応 IPモジュール とHilscher COM モジュールのキャ
WANネットワーク用の標準インターフェイ
リアカードとして使用されています。 NAMC-8560-8E1/
スで、AdvancedMC™、MicroTCA™、VME,
T1/J1, NAMC-STM-1、 NAMC-STM-4 これらを含むWAN
CompactPCI、PMC、PCIといった規格準拠
AMCカードは通信向けアプリケーション対応。 AMC DSP,
の部品をベースにしています。
AMC FPGA およびAMCカードはハイパフォーマンスDSP
を搭載、FGPA はハイスピードデータ分析をサポートしま
N . A .T.社 の 埋め 込 みプ ラットフォーム
す。NAMC-EXT-PS エクステンドカードはテスト目的のバ
は、ISDNやSS7、ATMそしてTCP/IPといった
ックプレーンとAMCモジュール間の信号を提供します。パッ
プロトコルで補足され、それによりリアルタイ
シブエクステンダカードにはハーティングのバックプレーン
ムシステムに対応しています。AdvancedMC
接続プラグとAMCモジュール対応プラグが搭載。 2つの可
モジュールの高い信頼性を実現するために、
動式ジャンパーはマネージメントとパワーサーキット上の実
ハーティング製AdvancedMC™プラグ・コネ
際の電力消費を測定します。
クタが採用されています。AdvancedMC™プ
ラグ・コネクタは厳しい許容交差を守りつつ、
プリント基板特有のエッジによる接続やカー
Vollrath Dirksen
Strategic Business Development Manager
Gesellschaft für Netzwerk- und Automatisierungstechnologie mbH (N.A.T.)
vollrath@nateurope.com
Uwe Markus
Sales & Account Manager ECS & EP, Germany
HARTING Technology Group
uwe.markus@HARTING.com
ドエッジコネクタによる接続における過度の
摩耗や腐食に対応します。また機械的なイン
ターフェイスを明確に定めプリント基板の品
質に依存することなく高い接触信頼性を実現
します。
41
tec.News 16: 安全性
Dr. Andreas Starke
鉄道向けイーサネット
今日、多くの産業分野で、さまざまな装置やプロセス制御に、バスシステムが採用されています。鉄道車両にも同様のシス
テムが搭載されていますが、今後増加するデータ量を考えると、既存のシステムでは対応が充分ではないことは明らかです。
また、これまで採用されてきた多くのシステムを標準規格に統一する必要があることを考慮するとイーサネットは最適なソ
リューションといえるでしょう。
42
harting tec.News 16 (2008)
安全上不可欠である重要なポイントは、ネットワークのアベ
(例えば各車両にそれぞれひとつリングを搭載する場合)、ネ
イラビリティに対する絶対的な要求があることです。ネット
ットワークアグリゲーションを高めることができます。
ワークトポロジの選択が、ここで大きな意味を持ちます。簡
単なスター型トポロジまたはライン型トポロジでアベイラビ
また、オフィスと車両で採用されるイーサネットでの相違点
リティを高めるためには、リンクアグリゲーションを使用し
は、OSI階層モデルの個々の層にもみられます。物理コン
ます。この機能により、2つのスイッチ間の複数の回線をたっ
ポーネント(レイヤ1)を始め、鉄道のイーサネットシステム
たひとつの論理的接続のために使用できるようになります。
は、その動作環境の条件のため、多くのことがオフィスの場
ということは、一本の回線が落ちた場合のエラーのみをカバ
合と異なります。
ーするということです。スイッチ自体が切れれば、やはりネッ
トワークのダウンを引き起こしてしまいます。
車両間にケーブルを配線するさいには、ケーブルの保護とい
う観点から特に注意が必要となります。一般的には、それぞ
高いアベイラビリティを備える、真の意味でのネットワークに
れの導線をケーブル外装チューブに通して配線を行ないます
おける冗長化は、リング型構築で実現されます。ひとつのコン
(図)。ケーブルの一端もしくは両端を車両に接続するため
ポーネント(回線やスイッチ)のシャットダウンにより、リング
にはIP68コネクタを使用します。イーサネットに接続するた
の情報の流れが途絶えてしまっても、ネットワークがダウンす
めには、鉄道の防火基準を満たした100 Ohm Cat. 5 銅線が
ることはありません。複数のメッシュ型リングを採用すると
使用され、コネクタはそれに伴い装備されます。
3
43
tec.News 16: 安全性
オフィスでのイーサネットと産業/鉄道用イーサネット比較
機能
オフィス
産業
鉄道
ケーブル断面図
AWG 22 ~ 28 (0.34 ~ 0.08 mm2)
AWG 22 ~ 26 (0.34 ~ 0.14 mm2)
AWG 20 ~ 22 (0.5 ~ 0.34 mm2)
ケーブルシールド
×
○
○
ケーブル外装
PVC
PVC
LS0H (ロースモーク < ゼロハロ
ゲン)
防炎性およびハロゲンフリー/低煙
性規格に準じる断熱材
コネクタ
RJ45
RJ45
M12
IP保護等級
IP 20
IP 30 ~ IP 67
IP 30 ~ IP 67
動作環境温度
0 ~ 50°C
- 20 ~ 70°C
- 40 ~ 70°C
ショックおよび震動
要求なし
EN 60 068タイプ試験
EN 61 373
ネットワークアベイラビリティ
中
高
高
リアルタイムデータ伝送
×
一部
一部
EMV障害
稀
高
EN 50 155特殊要求
寿命(仕様により)
5年以下
5年~15年
30年まで
供給電圧
230 V AC
230 V AC, 24/48 V DC
24, 36, 48, 72 または 110 V DC
OCIモデルのレイヤ2では、イーサネットフレーム、データの
しながら、将来的にはデジタルカメラの採用が増えることが予
優先権制御(QoS, Quality of Service)、V-LANタグの使用
測されており、鉄道仕様のスイッチを採用し、ネットワークに
あるいは高位プロトコル識別子よるデータ交換が実行されま
ダイレクトに組み込むことができるようになるでしょう。
す。RSTP(rapid spanning tree protocol)も冗長ネットワー
クを論理的ループから解放するためこの層で動作します。
中核となるデータを管理するための機能として、ビデオサー
バが採用されています。ビデオデータは、カメラから運転席
OSIの上位層では、既存のさまざまなIEEE 802.xx規格プロ
のモニターにダイレクトに転送されます。プラットホームの監
トコルが、ほとんどのアプリケーションの要求にこたえること
視用のカメラでは、リアルタイムな情報が必要となるため、適
ができます。しかしながら、調節、場合によってはゲートウェイ
切なネットワークレイアウトが必須です。
管理が既存の鉄道規格IEC61375などに必要となります。
インターネットグループマネジメントプロトコル(IGMP)の使
アプリケーション
用するとなると、ビデオデータは他のタイプのデータに比べて
ずっと広域な通信帯域幅を必要とします。IGMPは、使用する
ビデオ監視
スイッチ(スヌーピング)の相当する機能とともに、ビデオ
安全性を高めるために、今日の多くの列車にビデオ監視システ
データストリームを必要とされている受信機へのみ伝送する
ムが採用されています。搭載されるカメラの多くはまだアナロ
ことができます。これにより、ネットワークにかかるデータ量
グ技術を使用していますが、デジタル信号へ変換し、チャンネ
による負担を最小限にとどめることができます。
ルアグリゲーションを実現するシステムを備えています。しか
44
harting tec.News 16 (2008)
乗客案内とエンターテイメントシステム
探していかなければなりません。実行にあたっては、なにをお
乗客案内のためのスピーカー、LED表示、そしてフラットスク
いても安全面への考慮が不可欠となります。
リーンモニターには、データが送信されなければなりません。
新しいソリューションで場合によって必要となるリアルタイ
車内放 送にはこれまでアナログ技術が使われてきまし
ム機能に関しては、WTB規格で定められた100ms反応時間
た。LED表示には特別なシステムに接続されていました。特
を目安とすることができます。これは、トポロジの関連と、そ
に座席内蔵モニターなどのフラットスクリーンモニターは、客
して各セグメントに対するアクセス数に適するよう構築され
車では利用できませんでした。今日ではそういったシステムが
たネットワーク、そしてQoS機能の適切な利用により、IEEE
どんどん採用され、イーサネットは、そういったデータ伝送用
802標準プロトコルによって列車を運行させ得るということ
のネットワークとして使用されています。可能なコンセプトと
を意味します。
して、すべてのアプリケーション用のデータを伝送する、たっ
たひとつの帯域ネットワークの使用があるでしょう。そのため
列車専用の機能には、専用のアプリケーションとプロトコル
には洗練されたプロトコルと、データパケットの優先順位、及
の開発が必要となります。数日のうちにTCNからイーサネッ
びリアルタイム機能を実現するネットワークトポロジが欠かせ
トへ切り替えることは不可能なため、一定の期間、2つのネッ
ません。ここでV-LANコンセプトは、ひとつのソリューション
トワークが平行して存在することになります。その結果、車
です。もちろん、各アプリケーションに個別のネットワークを
両制御ユニットも両方のネットワークで動作しなくてはなら
使用することもまたひとつのコンセプトです。ただし配線の手
ず、TCNデータクラスをイーサネットに実装する必要がある
間をかけずにネットワークを物理的にひとつにまとめることの
ということになります。またさらに独特な点は、
「処女運行」
恩恵を受けることはできなくなります。
時、つまりシステムを起動させた時点で、自動的にネットワー
クを設定するということです。実際の列車設定、すなわち、
車両制御ネットワーク
車両の数とタイプ、順番がここで考慮され、システムに表示
さまざまなネットワークおよびプロトコルシステムがありま
されます。これはWTBの標準機能である一方、イーサネット
すが、現在業界をリードするメーカーは、IEC 61375に基づ
のためには対応するアプリケーションを開発しなければなり
いたTCN(列車内情報制御伝送系)を採用しています。これ
ません。
は2つの冗長性設計の配線を施したバスシステムから構築
されています。すべての車両を相互に接続する「列車BUS」
現状と展望
WTB (Wired Train Bus)と、駆動、ブレーキおよび扉コントロ
目下、IEC 61375に基づくTCNがこの重要なバスシステムで
ールユニットなどすべてのコントロールユニットを一台の車両
あり、IEC/TC9委員会WG43グループが、イーサネット導入
で相互に接続する「車両BUS」MVB (Multifunction Vehicle
のために作業中です。イーサネットを採用した初めての列車
Bus)です。
が運行を開始しましたが、主に乗客案内、安全面には関連の
ない制御機能、そしてビデオ監視に利用されています。乗客
これらのバスシステムは、約20年間にわたって使用され、こ
エンターテイメントシステムとワイヤレスLANアクセスが近
れからの要求に答えるには充分ではありません。大容量のデ
く続く予定です。イーサネットが列車制御のためのバスシス
ータおよびイベントログプロトコルは、TCNが用意した通信
テムとして完全に認可されるまでには、いましばらく時間が
帯域幅では不足です。100 Mbit/秒の高速イーサネットの出番
必要でしょう。
となったわけです。イーサネットが推奨される理由は、世界中
のノウハウの集積であること、インターフェイスやツールなど
が規格化されていることにあります。そうは言うものの、場合
によってはリアルタイム機能、列車制御のための専用の機能、
そして必要となる上位互換性といった問題のソリューションを
Dr. Andreas Starke
Market Manager Transportation, Electric
HARTING Technology Group
andreas.starke@HARTING.com
45
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
Andreas Huhmann
Rhythm is it!
オートメーションITが実用性を実証
オートメーションITは工業生産分野におけるあらゆるプロセスに使用できる汎用通信プラットフォームです。 ハーティングは
この広範囲にわたるコンセプト、スタンダードを提案し、製品化しただけではありません。 ハーティングの中国・珠海新工場
ロ
セ
ス
ケ ティン グ
マー
工
企
ケ
7. アプリケーション
6. プレゼンテーション
ョン
ム
ォー
フ
5. セッション
通信プロファイル
発
通
アプリ
シ
信プラット
加
ー
オートメーション化プロファイル
アプリケーションレベル
業
プ
では、実際にこのオートメーションITが使用されています。
互換性が必要
3. ネットワーク
通信プラットフォーム
開
4. トランスポート UDP TCP
Automation IT
厳守が必要
IP
TCP/IP
Suite
2. データリンク
イーサネット
MAC
IEEE
1. 物理層
物理的
イーサネット
802.3
サ
イー
ネ ット
OSI リファレンスモデル
図 1: プロセス図
図 2: OSI 階層モデル
イーサネットはオフィスITにおける通信スタンダードとしての重要
とから、今日ユーザーに広く受け入れられているプロフィバスでは、
性をますます高めています。このためオートメーションITでもイー
アプリケーションプロファイルをともなうこれらの用途には使用で
サネットへの対応がますます強化されています。 ここでは、標準
きません。オートメーション化には通信ソリューションが不可欠で
化されたシームレスな通信が最も重要視されます。 このようなシ
すが、もちろん広範囲にわたるアプリケーションプロファイルも必
ステム上では、イーサネットIEEE 802.3への互換性が確保されて
要です。つまり今日のオートメーション化ソリューションでは通信
いる場合にのみこの一貫性が達成されますが、 本来、イーサネッ
以上に上層レイヤーへの対応が重要視されているのです。
トはオフィスIT環境プロセス向けを目的として開発されたもので
オートメーション化という観点からみた場合、通信とは単なる前提
す。 これに対しオートメーションITでは定時反応とリアルタイム
条件にすぎません。なぜなら従来のフィールドバス分野で20年以
処理という特殊なオートメーション化への対応が求められ増す。
上にもわたって培ってきたオートメーション化での経験を新たなイ
つまり、IEEE 802.3規格への互換性拡張がオートメーションシス
ーサネット分野にも応用できてこそ、オートメーション化にイーサ
テムの国際的標準化を実現し、オートメーションITプラットフォー
ネットを使う意義が生まれるからです。 将来的にはイーサネット
ム上での使用が可能になっています。
とのつながりが深い2種類のフィールドバスが市場で広く浸透す
ることになるでしょう。 世界のフィールドバス市場の約3分の2を
オートメーションITとオートメーション化用通信プロファイル
誇るこれらのフィールドバスは、イーサネットへの対応によりさら
今日の工業生産オートメーション化分野では生産プロセスへの適
にそのシェアを高めることが予想されます。
合をフィールドレベルで最適化できるソリューションが求められて
います。標準イーサネットはOSI 7層モデルのレイヤー2にあたるこ
46
3
harting tec.News 16 (2008)
47
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
1. Ethernet/IP
このようなアプローチは産業分野にも望まれますが、フィールド
Ethernet/IPはイーサネットベースによるDeviceNetの拡張版です。
バス環境においては特に普及を遂げていません。 産業用建物の
ここでの通信プロファイルは通信メカニズムIEEE 802.3を標準と
中では通常、システムの据付前に配線が実施され、機械設備も
しています。 したがってEthernet/IPは標準的なイーサネット通
コンセントに接続できることから、このアプローチも問題なく適
信プラットフォーム上で機能します。 ODVA(Open DeviceNet
用できるためです。
Vendor Association)は、CIP(Common Industrial Protocol)に
機器または部品レベルを検討する場合、このアプローチには限界
より一般的な通信コンテキストにあるアプリケーション的な問題
があります。オートメーションの世界では、ネットワークがよりアプ
を解決し、CIPを通信プラットフォームとは独立した形で使用して
リケーション重視になるためです。
います。 つまり、これは通信プラットフォームの標準化を支持しよ
うとする明確なメッセージです。
オートメーションアプリケーションに必要となるトポロジ
ケーブリングとイーサネット・ネットコンポーネントの関係は必要
2. PROFINET
となるトポロジの多様性にも反映されています。 完全にスイッチ
PROFIBUSの拡張版がPROFINETです。通信プロファイルと
されたイーサネットの中では、複雑なトポロジが常に問題となり
IEEE 802.3の標準イーサネットとの互換性が実現されています。
ます。つまり、射出成形機などで使用されるスター型トポロジだ
TCP/IPチャネルに加えてオートメーション化アプリケーション用
けがケーブリングとネットワークコンポーネントの分離を可能と
レイヤー2へのリアルタイムチャンネルを実現したPROFINETのリ
するのです。 コンベヤ設備などで多用されるライン型トポロジ
アルタイム拡張機能は、通信プラットフォームの開放性をさらに強
は、それぞれにスイッチを装備したプロフィネットのようなシステ
化させています。 オートメーション化用ネットワークの利用性を
ムでのみ実現可能です。
確保するためには、この拡張機能は不可欠なものとなるでしょう。
このためハーティングはオートメーションIT分野でもPROFINET
オートメーションITケーブリング
への対応を強化しています。
オートメーションITには使用企業の全領域に適したそれぞれの
ただし通信プロファイルに関しては、これらの拡張がイーサネット
ケーブリングコンセプトが必要となります。ISO/IEC 11 801では
IEEE 802.3には互換性を有しているにも関わらず、これらの拡張
オフィスIT環境で既に定着しているケーブリングソリューション
同士には互換性がないという点に対する批判もあがっています。
が定められています。 さらにISO/IEC 24 702規格では特殊な産
つまり、現在の状況ではいずれかの通信プロファイルに決定しなけ
業環境条件への適合および産業用建物内でのトポロジを扱って
れば通信プラットフォームの構成が行えないのです。
います。
オフィスITとオートメーション化の要求を実現するため、ハーテ
オートメーションITインスタレーションシステム
ィングおよびLeoni Kerpen GmbH(ドイツ・シュトルベルク)で
ワークステーションなどにあげられるように、オフィス環境では高
はISO/IEC 24 702を一貫して実現するケーブリングコンセプト
度に均一化されたアプリケーションによる汎用インスタレーショ
を設計しました。 この規格は産業用建物内でのケーブリングを
ンシステムが実現しています。 ここでは長い期間にわたってオフ
ISO/IEC 11 801と完全互換としています。これによりオフィス
ィスビルをできる限り柔軟に使用できるインフラストラクチャが要
ITおよび産業用オートメーション化アプリケーションの全て
求されます。 この場合、イーサネット・ネットコンポーネントとオフ
をカバーするケーブリングが誕生したのです。 ここではVario
ィスPCが数回交換されることになりますが、新たに配線を実施す
Keystone(Leoni Kerpen)やPushPullテクノロジー(ハーティン
る必要はありません。 このことから、配線はイーサネットコンポー
グ)などに代表される、Leoni Kerpen社とハーティングの相乗効
ネントに対する独立したインフラストラクチャであるという見方が
果が生んだ好例です。
定着しています。 このような見方は現行の規格にも反映されてお
機械や設備内でも産業用建物ネットワークを継続するには、
り、これがコネクタおよびケーブル、またはイーサネット・コンポー
IEC 61 784の一部で定義されたケーブリングを有するオート
ネント(スイッチなど)にのみ適用されている理由です。
メーションプロファイルへの配慮が必要となります。 ドイツの自
48
harting tec.News 16 (2008)
トポロジ
コネクタ
スイッチ
産業用建物
標準化された通信プラットフォームを有するオートメーションIT
はスタンダードイーサネットの技術革新も推進しています。 つ
まりネットワークコンポーネントのパフォーマンスは常に「State
HARTING PushPull
mCon 1000
of the art Ethernet(最先端のイーサネット)」を基準としている
のです。
設備
プラットフォーム戦略のキーポイントはネットワークマネジメント
Han® PushPull
mCon 3000
機械
にあります。 この分野ではインテリジェント・ネットワークコンポ
ーネントの使用を前提条件とする高性能なツールが提供されてい
ます。 ハーティングでは、産業現場レベル向けの追加用イーサネ
HARTING PushPull Hybrid
mCon 6000
図 3: 産業用建物、機械設備上での配線
ット・ネットワークコンポーネントを開発し、Nexans Deutschland
Industries GmbH & Co. KG(ドイツ・ハノーファー)と共同で市場
化しています。 産業スタンダードに適合されたデザインでありな
がら完全にハイエンドなオフィスパフォーマンスを提供するこれら
のスイッチは、より標準ネットワークマネジメント向けのパフォー
動車メーカーでは例えば共通のインスタレーション標準を開発
マンスと互換性を確保するとともに、ISO/IEC 24 702に準拠した
し、PROFINETスタンダードをIEC 61 784-3-4の中に組み込んで
産業用ケーブリングの理想的な製品展開を可能にしています。
います。 このインスタレーションコンセプトでは、通信だけでなく
フィールドバス分野とは異なり、今日のオフィス環境分野では
24 V電源供給にも使用できるハーティングのPushPullテクノロジ
ネットワークマネジメントが標準仕様となっています。有望視され
ーが採用されています。 ここでもハーティングはオートメーショ
ているこのネットワークマネジメントは、オートメーション化分野
ンITパートナーとのソリューション共同開発に参画しています。
でも今後その利用価値が認められることでしょう。 このため今後
は産業用イーサネット・ネットワークコンポーネントでも現在オフ
オートメーションITネットワークコンポーネント
ィス分野で定着しているネットワークマネジメント機能を有するよ
例えばセキュリティーという観点から考えた場合、産業用イーサ
うになり、機械設備上で利用できるようになることでしょう。 ハ
ネットと標準IT技術は一体であるべきです。 さらにオフィスIT分
ーティングのmCon 3000および6000スイッチでは今日すでにシ
野における技術革新ニーズは非常に高いレベルにあり、これが優
ンプル・ネットワークマネジメントプロトコル(SNMP)機能を有
れた技術開発や革新技術を促進するベースともなっています。
し、集中的マネジメントを可能としています。 さらにこれらのシ
そしてオートメーションITはそれらの恩恵を利用するだけでよい
リーズでは、Ethernet/IPのIGMPスヌーピングやPROFINET I/O
のです。
の統合を実現するオートメーションプロファイルに必要な拡張機
当初はファストイーサネットが有力な産業向けソリューションとさ
能を備えています。
れていましたが、今日ではギガビット技術などにあげられるように
これによりハーティングは建物インフラストラクチャと生産シス
追加された帯域幅が産業アプリケーションとしても利用されてお
テムおよび機械設備上での使用における特殊なニーズに対応し、
り、これがオートメーション化用パフォーマンスを大幅に向上させ
オートメーションITパートナーとの共同開発によりフィールドレ
ています。 さらにこの技術が持つ開発的およびコスト的要素も重
ベルにも通用するオートメーションIT通信プラットフォームを提
要なポイントとなっています。 つまり、新たな帯域幅技術はオフ
供しています。
ィス環境分野でも大量に使用され、いわば資金的メリットが得ら
れることから、中期的にみればファストイーサネットと変わらな
いコストで利用できるのです。 この新テクノロジーはボイス技
術やビデオ技術といったアプリケーションの産業分野への移行
にも貢献しています。
Andreas Huhmann
Director Strategic Marketing, ICPN
HARTING Technology Group
andreas.huhmann@HARTING.com
49
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
Wolfgang Klinker & Anne Bentfeld
2匹の踊る獅子を操る
ハーティングテクノロジーグループは、中国の珠海(Zhuhai)に新しい製造工場を建設しました。生産能力を拡大し、今後ア
ジア市場に対してより大きく貢献していきます。最先端の物流センターがハーティングのアジアにおける市場拡大を促進する
とともに、最新のオートメーション、通信、制御システムを新工場に構築します。
50
harting tec.News 16 (2008)
2007年10月19日、珠海にオープンした新しい工場の開設祝賀
製造を続けている同グループが、アジアで成功するためにす
パーティには、400人ものゲストにお集まりいただきました。
べきことを熟知していることを強調しました。
「初期段階で
パーティにはハーティングファミリー、珠海市の高官、駐中
投資をおしまないこと、それが、アジア太平洋経済圏からの
国ドイツ外交官、市内の大学からのVIP、そしてビジネスパー
高まる需要に対する、経営者としての答えです。中国の市場
トナーの方々が招かれ、中国政府の代表、ドイツから当社テ
は非常に「洗練」されています。アジア圏における私どもの
クノロジーグループの監査役会員とEspelkamp市長である
経験を生かし、顧客との接点を大事にします。メーカーとし
Heinrich Vieker氏、またイギリス、ドイツ、アジアの諸国そし
て直接に、そして継続的にビジネスパートナーと対話を続け
て珠海現地の従業員も参加させていただきました。ハーテ
ていくことで、その国特有の要求と嗜好を把握し、欠かせな
ィングKGaAのMargrit Harting副社長が歓迎の言葉を述べ
い”嗅覚”を養うことできるのです。」Dietmar Harting氏はそ
た後、2匹の獅子舞による中国の伝統芸能が披露され、開催
う述べました。中国伝統の縁起をかついで11時38分ぴったり
セレモニーが開かれました。経営者であるMargrit Harting氏
に、ハーティング一族とゲストによりテープカットが行なわれ
とDietmar Harting氏の息子であるPhilip F. W. Harting氏は、
ました。このような荘厳な儀礼の合間にも生産はフル回転で
過去2年間アジア担当常務取締役として、拠点を置く香港か
行われていました。製造自体は、この開会式を待たずにすで
らハーティングのアジアにおけるビジネスをリードしてきま
に開始されていました。
した。Philip F. W. Harting氏はパーティのスピーチで、オー
ナー企業にとって新しい市場の開拓を推進することは、非常
「ドイツ式」の導入
に大きな意味を持つことを強調しました。株式公開企業が短
ハーティングは好景気にわく中国の産業市場でも広く認知さ
期的な成功を優先するのに対し、オーナー経営企業では中期
れており、今日ではテレコミュニケーション、交通、輸送、機械
および長期の目標達成を優先していきます。
製造およびエネルギー産業市場向けに製品を供給していま
す。ハーティングは、高品質に加え工場間の相乗効果を特に
ゴール: マーケットリーダーシップ
重要視しています。たとえばドイツ本社が製造に必要な工具
ハーティングは、アジアにおいて高い目標を掲げています。
や機械を準備する一方で、工場長はドイツ人です。
厳しい競争下においてもアジアのコネクタ市場で主導権を握
りたいと考えており、珠海工場はそのための重要なステップ
珠海の新工場の設立は、ハーティングのアジア地域における
と位置づけられています。
戦略的発展の決意の表れです。環境保護と雇用者の安全確
保を両立することは、中国のみならず世界中で遵守徹底され
在中ドイツ連邦国大使館の経済部長Werner H. Lauk氏は、
ています。
ハーティングのこれまでの社会奉仕活動と、中国国内で工場
用地選定プロセスを賞賛しました。珠海は広東省にある成
Dietmar Harting氏にとって中国という製造拠点をもつこと
長著しい、数百万人が住む大都市であり、香港から車で1時
は、戦略的な重要性以外にも大きな意味があります。中国で
間ほどの交通至便の地にあり、かつてポルトガル領マカオに
生産するということは、競合他社による類似品に対して価格
隣接しています。
競争力をもつ高品質な製品を製造するチャンスであり、低価
格なコピー製品を排除することにつながります。
新しい製造工場は中国人建築家によって設計され、市の技
術・経済ゾーンに建築されました。2万m²におよぶ製造およ
オートメーションIT - 通信プラットフォームを最上層から末
び流通フロアを新設するため、ハーティングは約1千200万
端まで
ユーロを投資しました。珠海工場では現在、250名の従業員
中国工場の技術的および組織的基盤は、最先端のレベルにあ
が勤務しており、ハーティングは現地での従業員数を倍増
ります。工場内を結ぶ一貫したイーサネット通信網が、工場フ
したことになります。ハーティンググループの最高責任者で
あるDietmar Harting社長はスピーチで、1998年から珠海で
3
51
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
図1: ハーティング珠海工場
ロア内をリンク、工場と世界中のハーティング工場をITネット
ブル配線は、CAT 6ベースです。新しい製造工場では、約1万
ワークで連結しています。
5000 mの標準CAT 6ケーブルが配線されたのに加えて、イー
サネット用に1,200 mのハーティング製CAT 6ケーブルが製造
ハーティングはこれまでの見本市で、シームレスなオートメー
フロアにて製造機器の接続に使われています。合計で296ネッ
ションIT通信プラットフォームのメリットを紹介してきました。
トワークアウトレットが工場内に設置されました。
中国南部、珠海の新工場ではドイツ本社の判断により同プラ
ットフォームの完全導入を実施、パッチパネルを備えたイーサ
加えて1本2 mの長さのハーティング製パッチケーブルは、300
ネットケーブル、スイッチ、ルータ、アウトレットを、全階層レ
本使用されています。Ciscoのスイッチ(Catalyst 2960 24/48、
ベルを通じて、すべての部屋と作業場所に設置することによ
Catalyst 3560)およびCisco ルータ (2621 XM)が、VPN
り、通信と生産プロセスが最適化されました。
および WANアプリケーションの上層ネットワークレベルに
使用される一方、工場内ネットワークには、ハーティング製
テクノロジーグループのビジネスのプロセスは完全にITを
mCon7100タイプのIP67保護等級マネージドスイッチが採
ベースに運用されています。ハーティングテクノロジーグルー
用されています。
プのIT部長Claus Hilger氏によると、すべてのグループ企業は
SAPをベースに、エスペルカンプの中央ITに連結しており、そ
Ralph Xia氏のチームは中央ITと調節しながら、ネットワー
れによりハーティンググループ企業のすべてのERPアプリケ
ク化を実現し、Cisco-VoIPソリューションを搭載したITアプ
ーションと商品流通は、中央で集中管理されています。
リケーションを実施しました。またこれも計画どおり、ビデ
オ会議用に十分な帯域を確保することもできました。
「次の
他のITインフラが、一部、時間をかけて徐々に構築されてき
ITプロジェクトは、ハーティンググループの全テレコミュニ
たのに対し、新しい珠海工場では、Ciscoとの提携によりまっ
ケーションをインターネット電話(VoIP)に切り替えることで
たくの基本から一度に構築していくことになりました。Claus
す。」と、Claus Hilger氏は話しています。
Hilger氏と珠海工場のITマネージャーRalph Xia氏の報告で
は、珠海現地のオフィスのデスクの端末や製造機械をリンク
製造機械のモニタリングは、重要なアプリケーションであ
するネットワークのインフラは、ひとつのギガビットバックボ
り、すでに実現されています。
「ノーザンプトン工場の同僚た
ーンと100Mビット接続から構成しているということです。ケー
ちでさえも、珠海のSMD実装機とVPNを通じてリンクして
52
harting tec.News 16 (2008)
オートメーションITとは?
オートメーションITとは、製造を行う企業すべてのプロセスに
向けた汎用通信プラットフォームです。
オートメーションITを展開するためには、企業内すべてに適
切な設置コンセプトを導入しなくてはなりません。ISO/IEC
11801は、オフィスのIT環境における安定した配線ソリュー
ションを提供します。しかしオートメーション技術におけるア
プリケーションは、今なお改革が必要です。ここでオートメー
ションITは、産業用の建物、システム、機械にシームレスな設
置コンセプト提供します。
図2: 珠海工場におけるハーティング製品の使用例; 電源装置
pCon7095-24A および10ポートスイッチ mCon 7100-A
ハーティングにとっては何を意味するか?
ハーティングの製品ラインアップは、産業現場での投入に適
し、さまざまな環境下におけるユーザーのアプリケーション要
求に応えるため、最適なソリューションを提供します。
おり、機械の監視と設定を遠隔操作することができます。」
とClaus Hilger氏は報告しています。このように離れた距離
からでも世界中のグループ企業すべての安全を、ITシステム
により確保しています。Hilger氏は、
「当然のことながら、私
–現場での組み立てが可能なコネクタ、システムコードおよび
アウトレット(RJ45 / M12)
–スイッチキャビネットおよび分散型設置用の電圧供給(高レ
ベルの保護等級にも対応)
たちは本部で規定されている安全対策を基本に、外部との
–スイッチキャビネットやターミナルボックスなどスペースに
接続、現地で使用する機器、通信方式の安全確保に努めて
余裕のない設置場所に最適化されたイーサネットスイッチ
います。 ハーティングはファイヤーウォールを使い、中央
(plug&play)
管理者のアクセス権利、クライアントファイヤーウォール、そ
製品ファミリーeCon 2000およびeCon 3000シリーズ
してすべてのノートブックPCから情報漏洩を防止するため
–広範囲に配置された装置、あるいは電磁波影響のある環境
のデスクトップ暗号化、またそのほか多くのセキュリティ対
でのネットワーク用の光ファイバインターフェイスを備えた
策を実施しています。」
イーサネットスイッチ。
製品ファミリーeCon 3000 およびmCon 3000シリーズ
–パラレルまたはリングトポロジー用に最適化された、冗長化
ソリューションを備えたイーサネットスイッチ
–イーサネット企業ネットワークにおける製造装置の統合用
に、セキュリティの機能を搭載したマネージドイーサネット
スイッチ
–分散型の装置と機械のコンセプトを実現するための、高い保
Wolfgang Klinker
Journalist (Landsberg am Lech, Germany)
Chief editor of the mpa journal
wklinker@t-online.de
Anne Bentfeld
General Manager
Communication and Public Relations
HARTING Technology Group
anne.bentfeld@HARTING.com
護等級を達成するマネージドイーサネットスイッチおよびア
ンマネージドイーサネットスイッチ
–制御キャビネット用の19インチ形状のバックプレーンインタ
ーフェイス付き、またはバックプレーンインターフェイスなし
のマネージドイーサネットスイッチおよびアンマネージドイー
サネットスイッチ。
製品ファミリeCon 9000および mCon 9000シリーズ
53
t e c . N e w s 1 6 : システム 提 携
Fritz Aldag
強力なパートナーシップによ
るグローバルビジネスでの大
きな競争優位性
ハーティング社とシーメンス社は、分散型ドライブ・オートメーションシ
ステムにおいてパートナーシップ契約に合意したことを発表しました。
現在、すでにドバイ空港、ソウル空港そして北京空港における最初の大
型共同プロジェクトが進行中です。
ハーティング社はコネクタ業界におけるリーディングカンパニーであり、
シーメンス社との密接な協力関係は、彼らのフィールドバス技術の開発時
点にまでさかのぼります。この提携の主な狙いは、センサー制御モジュー
ル、モータスタータ、周波数変換機、ギア、モータなどの分散型制御デバ
イスを対象とした、データおよび電力インターフェイスの構築です。
Han-Compact ®、Han-Brid® そしてHan® -EMV 製品シリ
特に、受託荷物コンベア装置、すなわちチェックインからスーツ
ーズの開発・改良により、これらのアプリケーションへの
ケースをベルトコンベア上で受け取るまでの装置に、分散型ド
対応を可能にしてきました。ハーティングとシーメンスの
ライブ(モータスタータ、もしくは周波数コンバータを含むモ
低電圧回路技術部門との共同開発により、HARTING社製
ータ)が必要となり、トータルで、1万3,000台のデバイスユニッ
Han-Power ® Sによるパワーバスシステムが生まれ、シーメ
トが、ドバイに設置されました。必要に応じて故障のさい、短時
ンスのモータ・ギア分散型制御用リモートI/OであるSimatic
間でコンポーネントを交換することが保証できるように、空港
ET 200 X、ECOFAST、Simatic ET 200proの各シリーズ、そ
運営会社サイドの特別な仕様として、すべてのデバイスをプラグ
してモーションコントロールシステムSinamics G120Dへと応
イン可能なバージョンで納品することが要求されました。
用されました。
最新の空港では、乗り換え旅客の受託荷物用の一時集積所も
大型プロジェクト:ドバイ空港
含んだ全自動制御システムが導入されています。ドバイ空港で
複数の小規模案件を手がけたのち、ドバイ国際空港ターミナル
は、約90kmにおよぶ搬送および集積レーンを用意、稼動開始
IIIにシーメンス社製、分散型ドライブシステムの導入が決定し
しました。最終的には、1時間に1万5,000個の受託荷物と、年間
たのは2003年12月のことです。シーメンスは同空港ターミナル
7千万人もの旅客をスムーズに処理することができるようになり
向けに分散制御ドライブシステムに手荷物ハンドリングシステ
ます。ドバイ空港の流通システムは将来的に1時間あたり8千人
ムを納入する予定です。
以上の旅客処理能力を持つ予定です。特にエアバスA 380をは
54
harting tec.News 16 (2008)
じめとする新型の大型旅客機の導入や、世界経済の統合が進む
ほとんど同時にBCIA (北京首都国際空港)プロジェクトが立ち
ことによって、世界の旅客数は今後さらに増加することが見込
上がりました。ここでもまた、プラグイン可能なシステムコン
まれます。このため、現在世界的な大空港は増大するこれらの
ポーネントが計画されました。ここで空港運営会社とシーメン
需要を満足すべく施設を拡充、準備を整えつつあります。
スは、ASIバスシステム・ソリューション(アクチュエータ・セン
サー・インターフェイス)の採用を決定しました。シーメンスは
ここでは、400 Vの電力供給用にハーティング製Han-Power ® S
このプロジェクトのためにライプツィヒにあるシーメンスA&D
とHan®
CDにおいて、特殊なモータスタータを開発しました。
Q4/2が採用されました。モータスタータにはHan®
モータ本体にはHan®10
Q8
Eが採用され、プラグインでの結線を
実現しています。アッセンブリケーブル用には、DIN規格に匹敵
北京プロジェクトのために、2007年の12月まで7,500m以上
するイギリス規格(IEC60332-1、60754-2、61034)に準拠する
のシステムケーブルとHan-Power ® S を出荷しました。ほぼ
特殊ケーブル(ハロゲンフリー、耐オイル性・耐火性)を採用し
400のチェックインカウンターが設置され、2.1 kmに及ぶトン
ました。さらに、固定の金属ケーブルダクト外の部分すべてに
ネルシステムを一部通過する、旅客の受託荷物の搬送システ
は、ハロゲンフリーの材質で、機械的な破損から電気ケーブル
ムが完成されました。高速コンベアシステムは、受託荷物の
を保護することが要求されています。
搬送を最短の時間で可能にします。大きな空港では、コンベア
システムは総延長が非常に長くなりますが、ここでは大型旅客
データバスには、Han-Brid®
Profibusが採用されました、ハー
機(660名から700名までの乗客を乗せるエアバスA380)の旅
ティングは、0.5m から100m に至る幅広いレンジのシステム
客の荷物であっても、短時間で処理しベルトコンベア上で受け
ケーブルを供給しています。ハーティングが供給したProfibus
取れるようになります。
ハイブリッドケーブルは、2007年の12月までに総延長150km
以上にも及び、多くの実績に支えられています。
2007年6月、シーメンスとハーティングはさらに密接な関係構
すべてのケーブルは製造後検査ののちシリアル番号により全品
築と大いなる成功を期すため、新しい契約の枠組みを作り上げ
管理され、万一欠陥があった場合のトレーサビリティと問題早
ました。このシーメンス・ソリューション・オートメーション・
期解決手法を確立しています。
パートナーシップのもと、ハーティングはシステムケーブルと
コネクタコンポーネントを、分散型リモートI/OであるSimatic
さらなる大型プロジェクト、ソウルと北京。
ET 200X、ECOFAST、Simatic ET 200pro、Sivacon MCUお
シーメンスは、後続の大型プロジェクトとして2004年と2005
よび Sinamics G120D用に供給します。
年に、仁川国際空港(韓国、ソウル)向け電力装置および手荷
物ハンドリングシステムを受注、そして2008年開催のオリンピ
製品情報
ックのために新設される北京BCIA空港(北京首都国際空港)
この製品シリーズは、シーメンス・ソリューション・パートナー
のための装置の受注も獲得しました。
検索 (Distributed Field Systemカテゴリー)を通じて、シーメ
ンスのウェブサイト上で、PDFファイルとしてダウンロードす
ここでも、ドライブシステムの結線はプラグイン可能接続が
ることができます。ハーティングのウェブサイトでは、このシ
可能となります。仁川国際空港プロジェクトのために、同様に
ステムのアドオン製品用に作成された全資料をPDFファイル
Profibusハイブリッドを用いた分散型ECOFASTシステムが採
として用意しています。
用されました。ここで、特別なHCSファイバ(硬質クラッドシリ
www.HARTING.com/solution-partner
コン)を使用した、200m以上のケーブル区間を実現しました。
確実でエラーのないデータ交換により、旅客システムと受託荷
物コンベアシステムの安定した運用を確実なものにします。
Fritz Aldag
Project Manager
HARTING Technology Group
fritz.aldag@HARTING.com
55
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
Gerhard Bentzien & Jörg Hehlgans
確実なる追跡
ハーティング社製RFIDトランスポンダは、鉄道貨物輸送における厳しい環境下で
確実な追跡調査を実現します。
56
harting tec.News 16 (2008)
現代の物流、そして今日の生産管理のためには、詳細で正確
私たちはこの問題に取り組むため、どんなに厳しい動作環
な貨物および商品のID情報の取得と、所在の確定が最も重
境においても確実な動作を可能にするRFIDトランスポンダ
要です。小包の配送サービスですでに日常化しているこの追
(Radio Frequency Identification)を、UHF (極超短波)域
跡調査は、貨物列車とその貨物を処理するためには適してい
において開発しました。ハーティング製RFIDトランスポンダ
ませんでした。要求が複雑すぎること、そして従来利用可能で
のHARfid LT 86 (HT)タイプにより、通過する列車のID情報
あった電子モジュールでは、動作環境があまりに厳しいため、
と所在を明確に認識することができ、それにより車両の停車
信頼のおける追跡を確実とすることが困難でした。
3
57
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
図1 鉄道の物流で活躍するRFIDトランスポンダ。ここでは溶解炉から重量計量ステーションへ移動する製銅所のスラグ輸送車両のID情報の取得。
位置や商品の所在情報をリアルタイムで得ることが可能にな
話を走行中のID情報取得に戻しましょう。堅牢で天候に左右
りました。
されない読み書きデバイスを輸送区間中の鉄塔に設置し、そし
て2メートルほど離れたところから輸送貨物のトランスポンダ
高速度走行中におけるID情報の確実性
を読み取り・書き込みをすることができます。貨物車両1台に
RFID分野でEPC Gen2プロトコルが標準として定着し、そし
2機のトランスポンダを装備します。これにより双方向走行に
てさまざまなトランスポンダメーカーが、幅広い受信可能域
1台のリーダユニットで対応可能、設置コストが削減できま
をもち金属表面上への実装を提供するようになって以来、世
す。駅や分岐点といった重要なポイントに読み取りステーシ
界中の物流企業とシステムインテグレーターは、鉄道貨物の
ョンを設置した上で、産業用イーサネットを使って相互にリ
アプリケーションに注目するようになりました。トランスポン
ンクするだけで、確実な貨物の追跡を実現します。
ダとリーダユニット(読み書きデバイス)間のデータ転送速度
は非常に速く、EPC Gen2で車両が時速80~100キロで通過
トランスポンダ耐久テスト
した場合でも、そのID番号を読み取ることができます。トラン
RFIDトランスポンダ搭載の貨物輸送車両の追跡システムの
スポンダへの書き込みは、データ量によっては所要する時間
実用化を完了したと同時に私たちは、更なる高い要求に直面
は異なりますが、貨物駅や操車場などでの停車時間内に調
しました。溶銅温度の耐高温トランスポンダです。システム・
整を行う仕組みです。
インテグレータMarie-Bentzにより、高温のスラグ(鉱滓)を
工程中の温度
車両
トランスポンダ 時間
実装場所
スラグの流し込み
1000℃
120℃
10分
輸送中の冷却
900℃
80℃
30分
帰還走行中の冷却
約300℃
50℃
60分
輸送
一日のサイクル 約12回
ID番号の読み取り
時速約20 kmでプロジェクト仕様による
外気温度
–5℃ ~ + 40℃
58
図2 スラグからの粉塵によりほとんど可視できない状
態であっても、車両のHARfidトランスポンダは、常に読
み取り可能。
harting tec.News 16 (2008)
厳しい動作周囲温度での鉄道車両の走行車両重
量計測システムおよび自動データの集積
他社が敬遠しがちな問題でも、ハーティング製の
RFIDトランスポンダは信頼できるサービスを提供
します。ブルガリアの銅溶鉱炉のスラグ湯出し作業
は、決して快適な場所とはいえません(図3)。パッ
シブUHF トランスポンダ、HARfid LT 86 (HT) タ
イプは、熱いスラグに近く、高温度でまた粉塵の
図3 1000℃での耐久試験 – 銅高炉のスラグ湯出し作業の近距離で使用
されるHARfid。
多い環境でも、確実に仕事をこなします(図2)。
ハウジングの堅牢性と気密設計、そして非常に高
い溶解温度をもつ合成樹脂を使用したことで、ト
ランスポンダは毎日24時間の使用に耐えることが
できます(図4)。
課題-
製品の追跡および車両の自動重量計測と識別
開始-
図4 HARfid LT 86 (HT) – 高温でのトランスポンダの使用。
2007年6月。試験運行2007年8月まで。
ソフトウェア-
Marie-Bentz, Winscale ®
輸送する車両に、このトランスポンダが搭載されました (図 1)
アプリケーション
。 トランスポンダ上で自動重量計測機からの情報を含んだID
車両の重量計測、製品統計、ID情報の認識および
番号を読み取り、スラグに残存する銅含有量の情報も得るこ
走行時間。
とができます。このデータにより、転炉スラグからの銅の回
車両-
収率が著しく向上するでしょう。輸送貨車運用効率の改善と
車両積載能力は鉱車を含む総量120トン
輸送キャパシティの確保にも役立ちます。RFID技術の採用
製品-
は顧客のニーズにあわせて調整され、必要な場合にはトラン
高炉スラグ
スポンダの書き込み機能も使用可能です。
特徴-
高炉スラグを流し込むさい、車両から溢れること
があります。そのため、上部と側面から敷設を保
護する必要があります。排出中はスラグが飛び散
るので、トランスポンダをさらに石綿布で包みま
Gerhard Bentzien
Technical Manager
Marie-Bentz, Burgas
した。読み取りデバイスとトランスポンダ間の距
離は、平行で約5 メートル、2機のトランスポンダ
の間隔は最低1メートルとし、車両を一台ずつ認識
Jörg Hehlgans
Director Marketing & Sales, Mitronics
HARTING Technology Group
joerg.hehlgans@HARTING.com
できるようにしました。スラグ輸送車両と列車に
実装されたトランスポンダは始動時より確実に機
能しています。
59
t e c . N e w s 1 6 : エ ンター テイメント
Byoung-Jeen Jone, HeeSam Choi & Holger R. Dörre
都市交通におけるアジアの革命
韓国では、都市交通システムの抜本的な改革がすすんでいます。
「静かな朝の国」計画の中でも最も重要なものに、ドライ
バーレスによる新型路面電車(LRT)があり、バスにかわる交通機関として、㈱宇進産電が開発をすすめています。ハーティング
は長年にわたり、宇進産電と緊密なパートナー関係を築いてきました。
韓国政府が交通システムに強い関心を寄せるのには、理由が
また輸出面でも韓国メーカーは積極的です。輸送分野では、
あります。韓国は、世界でも最も成長著しく、第8番目に大き
鉄道システムメーカーの大手、現代ロテムと宇進産電が現
な産業国ですが、わずかな大都市に、そして地理的な条件によ
在、世界市場を新たなターゲットとしています。ライトレー
り、国土のおよそ30%に人口が集中しています。今日の韓国の
ルなどが代表的製品で、その推進に力をそそいでいるとこ
インフラは非常によく整備されていますが、年間約5%に達す
ろです。
る成長率により、予想より早く限界に達するみこみとされてい
ます。ソウルと、隣接したベッドタウンに約2,300万人の住民
2年ごとに開催される韓国鉄道&流通フェアは、韓国の鉄
が住んでいるため、特にラッシュ時に深刻な交通問題がおき
道業界における重要な見本市として発展し、定着してきまし
ており、インフラの発展は非常に重要な意味を持ちます。
た。2007年に釜山で開催された見本市には150におよぶ企
業が出展しましたが、中でもドイツが最多の出展社を送りだ
つまり、
「静かな朝の国」計画におけるインフラ投資は、今後
しました。新型路面電車(LRT)または別名ライトレールカー
ますます強化されることを意味しています。鉄道は、韓国の都
(LRV)も、この見本市で紹介されました。
市交通において最も重要な要素のひとつです。コレイル韓国
鉄道公社の報告によると、2006年から2010年までの間に、
新型路面電車(LRT)は、宇進産電が7年の歳月と5千100万US
新しい鉄道車両材に約210万ユーロを、また車両の取替え、
ドルをかけ製造した、韓国鉄道技術研究院(KRRI)による大掛
改修に約1億9,300万ユーロの投資を見込んでいます。そのさ
かりな開発プロジェクトの成果です。韓国製自動ガイドウエイ
い、駅や鉄道車庫の新築と改築も大きな着目点となります。列
輸送システム(K-AGT)の開発が目標で、2010年から釜山の公
車の輸入、コンポーネント、レール材における2006年の輸入
共交通網に投入される予定です。これにより、バスなどに取っ
高は約6,200万ユーロにおよび、また1,570万ユーロに相当す
て代り、環境にやさしい交通手段を実現することになります。
る鉄道信号用電気設備が輸入されました。ドイツは、この約
また首都ソウルもLRT導入を検討しているところです。
30%を占める重要なサプライヤーです。
LRTは、韓国鉄道技術研究院(KRRI)と、HARTING Korea Ltd
鉄道分計画の重要ポイントは、高速鉄道網(KTXおよびTTX)
の緊密なビジネスパートナーである宇進産電社が共同開発し
の拡大です。ソウルや釜山などの集中都市における市内電車
ました。都市電車には完全自動の無人システムが装備され、
網の拡張と、低速走行のリニアモーターカーの開発のため
高い安全性とより速い運行速度を提供します。
に、2012年までに約3億3,300万ユーロの予算が確保されて
います。韓国政府が国内での技術開発を優先とすることは明
さらにこの都市電車は上り坂やカーブ時の走行性に優れ、ま
らかですが、難しい技術が必要となる部分においては、海外の
た環境にやさしいという特徴もあります。LRTにはゴム製の
ビジネスパートナーも歓迎されています。
車輪が装備されており、セメントで形成されたレール上を走
60
harting tec.News 16 (2008)
図1: 都市交通におけるアジアの革命 新型路面電車(LRT)
ります。これにより建設費用を大幅に削減し、特にレール下部
構造の建設にかかる費用を省くことができます。
ハーティングは長年にわたり、韓国の産業界で高い評判を得
ています。輸出を目的とする企業においては、輸送、自動車製
図2: Han ® Coax Eジャンパ接続
3.電車内部の乗客情報システム用にイーサネットスイッチ
ESC 67-10 TP05Mを搭載しています。
4.DIN 41 612は、電車制御システム(TCS)のためのハーティ
ングの実績のあるソリューションです。
造、機械事業において、また最近では再生可能なエネルギー
分野の開発分野で、ハーティングの製品が採用されています。
ハーティングをビジネスパートナーとして選択した主な根拠
私たちは常に高品質で革新的な接続システムを納品していま
は、私たちのもつ専門知識と、トータルソリューションをお客
すが、このLRTプロジェクトにおいても同様です。
様に提供・実施することが可能だという点にあります。ハー
ティングは多用化する現代の電車に欠かせない乗客情報シ
私たちは、このプロジェクトの開発に非常に早い段階から関
ステム用のコネクタやイーサネットスイッチにおいて、より高
わっていました。接続システムはすべてハーティング製であ
レベルなソリューションの提供を目指します。
り、特にドライバーレス輸送システムといった分野では、接続
技術に対する高い要求を包括的に満たすことができます。ハ
ーティングはこのシステムに多くのソリューションで貢献し
ました。
1.駆 動モーターではモーターと電源を接続するために
Han® K3/2が装備されています。このソリューションは、
非常に限られたスペースでのモーター接続を可能にし、
Byoung-Jeen jone
General Manager R&D
Woojin Industrial Systems Co., Ltd. - Seoul
アクシャルスクリュー接続が最短の取り付けを可能にし
ます。
2.Han® Coax E をHan® 48 HPR保護カバーとハウジング
で組み合わせたジャンパ接続は、乗客情報システム(PIS)
へオーディオとビデオ信号を同軸ケーブルで伝送するため
のジャンパ接続は最も効率的なソリューションです。
HeeSam Choi
Business Manager Korea
HARTING Technology Group
HeeSam.Choi@HARTING.com
Holger R. Dörre
Managing Director Korea
HARTING Technology Group
holger.doerre@HARTING.com
61
tec.News 16: 安全性
Jürgen Michaelis, Heinrich Schmettkamp & Udo Schoss
風力発電向けシステムソリューション
風力発電は次世代のエネルギー資源としてとても重要な役割を担っていることで
注目されています。その新しいシステムのソリューションには高い生産性と可用性
が求められています。
62
harting tec.News 16 (2008)
風力発電システムは次世代のエネルギー資源としてワールド
スリップリング結合のパーツAとB(図1)の間にあるインター
ワイドで活躍する様々な企業から注目されています。これに
フェイスは、防水加工をしておりIP 65保護等級に準拠して
は、エネルギー供給を再生可能な資源に切り替えたいという
います。ハウジングの製造は、特殊な永久鋳型アルミニウム
政府の意向も大きく関与しています。そのため、大型のプロ
です。
ジェクトを実現できる実力をもつ企業が、市場に参加するこ
ピッチシステムの制御信号をハブに伝送する電気的インター
とが求められ、数年のうちには、世界中で2桁の成長率が予
フェイスは、Han-Modularコンタクトアタッチメントをベース
測されています。
にしています。それにより、100 Aモジュールで三相交流電圧
ハーティングは長年にわたり、風力発電事業のビジネスパー
供給、Han® -Quintax を備えた4ワイヤバスを2個(CANバス
トナーであり、製造業者および協力会社と緊密に協力し合っ
から高速イーサネットまでなど)、そして24制御信号を保証し
て革新的なシステムソリューションを開発してきました。ハ
ます。また制御信号は、Han® DDDモジュールにより、34ピン
ーティングのすべてのシステムは、電力発電産業の、動作環
出力に拡張が可能です(図4)。
境温度-40℃~+80℃に耐えるという高い要求を満たすこと
プラグイン結合は、適切な長さに調節されたケーブルアッセ
ができます。機械的にも、そしてまた電気的にも高い安全性
ンブリを含む、トータルソリューションとして納品します。両
を誇り、回転、振動また衝突に対しても強固です。最近の例
方のコンポーネントは、別々に製造され検査されます。パー
として、スリップリング用のプラグイン結合とリチウムイオン
ツAは、風力発電機に実装されるもので、パーツB は、まず
バッテリーをベースにしたバックアップバッテリーの開発をあ
スリップリングと接続します。Plug&Playコンセプトの威力
げることができます。
は、建設現場で発揮されます。始動のさい、両方のパーツを
つなぐだけですむので、現場での手間のかかる設置やアッセ
パート1 スリップリング用のプラグイン
ンブリ作業は必要がなくなります(図3)。
風力発電機では、定期的に交換されるコンポーネントとして
同じことが、メンテナンス作業にも当てはまります。4本のネ
スリップリングがありますが、これはハブ(回転)とナセル(静
ジをはずすと、スリップリングを取り外せるので、そこで新し
止)の間のインターフェイスを形成しています。
いスリップリングを実装します。風力発電機は、たいした停
新しいプラグイン結合により、スリップリングの交換が容易
3
になり、また停止時間を短縮することができます。メンテナン
ス作業では、ピッチシステムに介入することなく、また接続ケ
ーブルを取り外すこともなく、スリップリングを交換すること
パーツA
ができます。特殊な工具も必要としません。結合処理では、2
パーツB
つの真ちゅうブッシュ2本にある頑丈なステンレスボルトを
ガイドとします。そのあと、フロートベアリングのHan®ドッ
キングフレームとHan-Modular ®アーティキュレートフレー
ムが、正確な電気コンタクトの位置決めをし、確実な稼動を
可能にします。
ハーティングのスリップリング結合は、電気的なインターフ
ェイスのほか、断熱層を内蔵しており、油地温度が上昇した
場合に保護ができるように追加機能をもっています。またす
でに設置されている装置にも、簡単にこのスリップリング結
合が実現、設備のアップグレードが可能です。
断熱層
(ギア部)
玉軸受けのフィッティング
(スリップリングへ)
図1スリップリング用プラグイン結合
63
tec.News 16: 安全性
止時間もなく、再び電源につなぐことができます。取り外し
パート2 バックアップバッテリー「最悪の場合」用のリチ
たスリップリングの加工作業は、ゆっくりと工場でおこなう
ウム
ことができます。
同時に2つの悪条件が運悪くぶつかった結果、例えば、嵐と
コンセプトを練る段階からすでに、設計を最適化するために
同時に停電となった場合に、ピッチシステムの「非常作動」
各シミュレーションを実施しました。そのさい、実際にコンポ
を可能とするような風力発電機のエネルギーのバックアップ
ーネントのプロトタイプを利用して、通電容量の試験や、振
において、さらに工夫できる点があります。そういった非常時
動のある状態や安定した状態におき検査しました。プラグイ
には、風力発電機は、瞬時に停止しなくてはなりません。発
ン結合では、まず構造をエレメント分析システムにより最適
電機のブレードは、そのような極端な場合、数秒以内に風か
化、そして再び検証を行いました。
ら向きを変えられます。この機能が非常に重要なのは、ピッ
まず150 kgの重さをスリップリングの末端にかけて、さまざ
チシステムの故障が、風力発電機の全損を招いてしまう可能
まな負荷予測手法でシミュレーションを行いました(図2)。始
性があるためです。
動とメンテナンスには負荷がかかることから、すべての構造を
ピッチシステムのすべての軸は、非常事態には、ニュートラ
堅牢に設計しました。認定を受けているハーティング試験所
ル位置まで回転します。通常は、風力発電機、一機につき、3
で、シミュレーションの値を初回サンプルを使い、機械的な負
つのバックアップバッテリーを必要とします。モジュラー構
荷をかけて検査しました。そのさい、実測値が理論値を上回っ
造のため、バックアップバッテリーは簡単に交換することが
ていることが、確認されています。
できます。
[mN/mm2]
Han ®ドッキングフレーム
(ガイド部品を備えたフロートベアリング)
24 制御信号Han
DD ®モジュール
図2 150 kg 負荷シミュレーション
2 x4ワイヤバスHan ® -Quintax
ガイドピン V2A
ハブ
ギア
ナサル
パーツA
トップボックスへ
パーツB
図3機能原理
64
スリップリング
図4 ガイド部品を備えたHan-Modular ®アー
harting tec.News 16 (2008)
コンパクトな設計と、長期間メンテナンスを必要としない製
ッチが、始動準備の完了しているピッチ制御へのコントロー
品寿命という要求は、例えば、従来の鉛酸バッテリーといっ
ルされた入力を保証します。
たものでは、完全に満たすことは難しいかもしれません。し
中央制御部との通信は、CANバス(D-Sub 9ピン)により行
かし、ハーティングのバックアップバッテリーは、リチウムイ
います。監視とコンフィグレーション用には、別のインターフ
オン・バッテリーセルが装備されており、またコンパクトな
ェイスが用意されています。BMSの状態は、RS232ポート
設計のため、回転や振動に影響を受けません。
(D-Sub 9ピン)を通じて、いつでもチェックすることができ、
堅牢で、塗装を施した鋼鉄プレート製ハウジングは、機械的
ハイパーターミナル機能により、それぞれのバッテリーの状
にも、また熱による影響からも保護し、欠かすことのできない
態の情報を得ることができます。
接触防止の機能も果たしています。総内部抵抗は、RI < 24
それぞれのバッテリーの充電状態の冗長性監視は、Han® 3 A
mOhmまで低減されました。
インターフェイスを通じて行います。2目のHan® 3 Aコネクタ
バックアップバッテリーは定格電圧86.4 Vで180 Aを通電
は、必要な稼動電圧である24 Vの供給に使われます。
しますが、そのほかの電圧と電流もこのコンセプトで可能で
開発にともなう各検査において、振動とショックのさいのコ
す。BMS(バッテリーマネジメントシステム)により監視され、
ンタクト抵抗に特に重点をおき実施されました。目標は、極
順に切り替わる24のリチウムイオン・バッテリーセルで常に
端に厳しい使用条件下で、ケーブル断面と接触部を最適化
準備ができています。低コンタクト抵抗を備えた高電流スイ
することでした。これにより、現在の最適化された設計とな
りました。
考慮されたのは、以下の規格です。
l
振動検査DIN EN 60 068-2-6
l
ショック検査DIN EN 60 068-2-27
l
連続ショックDIN EN 60 068-2-29
l
製品寿命シミュレーションDIN EN 61 373
ガイド部品を備えたHan-Modular ® アーティキュレートフレーム
ーティキュレートフレーム。コネクタ投影図
ガイドブッシュMS
電力 (100 A) Han ® -軸ボルトモ
ジュール
外部パッキング (IP 65)
Jürgen Michaelis
Key Account Manager System Integration
HARTING Technology Group
juergen.michaelis@HARTING.com
Heinrich Schmettkamp
Project Manager VAB, Germany
HARTING Technology Group
heinrich.schmettkamp@HARTING.com
Udo Schoss
Director Project Management VAB, Germany
HARTING Technology Group
udo.schoss@HARTING.com
65
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
66
harting tec.News 16 (2008)
Andre Beneke
「コピーはご遠慮ください」ハーティングの新アイデア
必要なスペースは圧着接続と同じでありながら、スピーディで簡単操作、しかも常に確実な接続。新しい産業用コネクタ
ハーティング製Han-Quick Lock ®は、新開発の放射状のスプリングクランプを採用しています。高い接点密度に理想的な Han-Quick Lock®は他のどの接続システムより優位でありながら、これほど簡単で省スペース、そしてスピーディなシステムは他
にありません。組み立てに必要なのはドライバー1本だけです。
ハーティング製産業用コネクタHan®は、その高いクオリティ
と汎用性から、これまでにない広い市場での歓迎を勝ち取り
ました。堅牢なコネクタは、何よりも産業分野に適しており、
フレキシブルな自動車製造や機械製造におけるモジュラー性
もサポートし、列車や風力発電機、エレベータやクレーン、 3
67
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
このハーティングの新製品は、圧着システムのメリットはそ
のままに、接続にかかる工数を大幅に削減しました。圧着シ
ステムを採用したコネクタは高いパッケージ密度を実現する
一方で、接続に特殊な工具を必要とするというデメリットが
ありました。他の接続システムは、特別な工具を必要とする
ことなく機能するため、ネジ接続やケージクランプの場合は
簡単なスクリュードライバーで事がすみますが、接続部分を
大きめに設計しなければなりません。一方で最適なコストと
性能を実現するためには、機械はコンパクトで省スペースで
あることが求められます。
Han-Quick Lock ® 接続式Han ® プッシュプルパワー4/0
耐振動性
Han-Quick Lock®コネクタは、圧着システムとほぼ同サイ
ズにとどまる省スペース設計です。導線の接続や取り外しに
必要なのは、ごく一般的なドライバー一本だけ。それでいて、
ウェハー製造装置でさえ活躍しています。これらのアプリケ
汎用のケージクランプコネクタに匹敵する耐振動性も備え
ーションは、それぞれに固有の要求条件があり、サイズや保
ています。
護のタイプ、電気的な伝搬特性などさまざまです。
技術的分類では、Han-Quick Lock®の原理はラジアル状のス
コネクタの接続システムに対する要求もまたさまざまで、ア
プリングクランプです。円形のステンレス製のスプリングク プリケーションによって異なるソリューションが必要となりま
リップが組み込まれており、接続されたケーブルの一本一本の す。ハーティングが長年にわたり培ってきたテクノロジーを搭
導線を、センターの円錐の淵に放射状に挟むことで、良好な
載し、接続システムのラインアップに新たに革新的なオプシ
電気的接続に必須である広い接触面積を実現します。この
ョンを加えました。それがHan-Quick Lock®コネクタです。
ようなスプリングクランプの設計により、最大限の耐振動性
を実現します。アクチュエータ(端末処理部)を覗いてすぐ目
につく接続部の先端は、個々の導線を広げることにのみ使用
され、導線を接触させるものではありません。
接続はいたって簡単です。導線ケーブルの絶縁被覆を取り除
き、Han-Quick Lock®のコンタクト部分に差し込みます。そ
れから、ドライバで下方に押し付けて、
できあがり。クリップ
部分を再解放するためにはドライバーを使用して押し上げる
だけの作業です。
省スペース
アクチュエーターの位置は、目視によって簡単に確認できま
す。ハウジングで的確に遮断し、すべてしっかり接続されてい
るかを目視で確認します。導線ケーブルを接続部へ挿入するさ
いに、ほとんど力を必要としないため、細い素線を折ることな
Han-Quick Lock ® 接続Han ® Q12
68
く、確実に接続部に導入することができます。
harting tec.News 16 (2008)
同じ導線は、何回でも接続することができます。コンタクト部
の型締する力は、従来のケージクランプ構造のスプリングク
ランプと同等です。Han-Quick Lock®に接続できるのは他芯
線のみで、単芯線は接続できません。しかし産業用コネクタを
採用するアプリケーションでは、単芯ケーブルは稀であり問題
にはなりにくいといえます。
ハーティング製のHan-Quick Lock®は、現在までのところ
ケーブル断面積、0.5 mm²から 2.5 mm²用に提供されていま
す。そのほかの断面積のバリエーションは準備中です。Han®
プッシュプルパワー 4/0、Han® 4A そしてHan® Q5/0は、 Han-Quick Lock®テクノロジを初めて採用した製品です。プッ
シュプルパワー 4/0は、コンパクトな高性能コネクタでプッシ
Han-Quick Lock ® 接続Han ® Q5/0
ュプルロックシステムを搭載しており、230/400 Vで16A用の4
つの電力コンタクトと、GNDを提供します。このコネクタは特
にオートメーション機器への組み込みに適しています。
Han-Quick Lock® 接続システムの採用により、アプリケーシ
ョンに超小型コネクタを使用することができるようになり、ま
目視検査
た特殊工具を持たないエンドユーザーであっても、コネクタ接
Han® 4A そしてHan® Q5/0は、すでに長年にわたり市場実
続の変更が可能になります。
績がありますが、これまではそれぞれ別の接続システムのみ
で用意されていました。Han® 4Aはネジ接続で、Han® Q5/0
Han-Quick Lock®は、ほとんどのアプリケーションに適して
は圧着式でした。新しいHan-Quick Lock®のバリエーション
います。オートメーションシステムから機械設計までの広い
は、電力コンタクトのほかにQuick Lockシステムにおける
範囲に、大きなメリットをもたらします。鉄道分野や風力発
GND接続も提供していますが、これは製品の耐振動性を強
電機でも特に耐振動性は非常に重要で、電気モーターのコ
化します。Quick Lock®版もこれまでのタイプと互換性があ
ネクタ採用においても同様のことがいえます。
ります。
新しいHan-Quick Lock® 接続システムのプロモーションビ
12の圧 着コンタクトを持つモ ーターコネクタである デオをwww.HARTING.comでご覧いただけます。そこで導
Han®
線ケーブルの接続と取り外し工程を映像をとおしてわかりや
Q12も、Quick Lock 接続方式のGNDコンタクト提供
します。これにより、簡単接続が可能になり、さらに耐振動性
すくご覧いただけます。
もアップしました。
近い将来、Han-Quick Lock® の特性を生かした新しい製
品、Han®7D、 Han® DDモジュールそしてHan® EEモジュ
ールをリリースする予定です。
Andre Beneke
Director Product Marketing
Han® Industrial Connector, Electric
HARTING Technology Group
andre.beneke@HARTING.com
69
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
Dr. Achim Brenner
産業用コネクタの電気機械的特性に関するシミュ
レーション
機械シミュレーションと電熱シミュレーションは貴重な開発ツールであり、開発期間の劇的短縮に貢献します。 これにより市
場のニーズを先読みし、顧客付加価値の高い理想的なアプリケーションの開発を図ることができます。
市場そして市場ニーズはめまぐるしく変化し、それとともにテ
高い接触信頼性を確保するためには、コンタクトの寿命末期
クニカルスタンダードも変化を求められ、アプリケーションの
における接触力が 0.5 N 以下とならないことが必要です。 そ
開発も絶え間なく行われます。急速な変化のなかで、ハーテ
してこれは薄いプリント基板上で使用する際にも達成されな
ィングではお客様のご要望に敏速に反応するだけにとどま
ければなりません。 接触力が高くなると摩擦が生じることか
らず、むしろこれを先読みすることが必須と感じています。
ら、同時に挿入力も高くなります。 しかし一つ一つの接触子
これにより最適な製品を適切なタイミングで市場へ送ること
の挿入力は微小であってもこれが多極コネクターとなるとそ
ができるようになるのです。 製品開発にあたっては昔ながら
れぞれの挿入力が結集されて大きなものとなるために、メン
の試作や高速なプロトタイプ製作に加え、シミュレーションの
テナンス時の操作性が低下するだけでなく、プリント基板に
重要性はますます高まってきています。 シミュレーションの
大きな機械的負荷がかかる原因となってしまいます。 このた
目的は製品を完全にコンピュータでモデル化することにあり
め、最大挿入力を 100 N 以下に抑えることが目標として設定
ます。ソフトウェア開発者を突き動かすヴィジョン、それがバー
されました。 機械的設計作業が終了すると、高圧タイプの通
チャルプロトタイプなのです。
電容量をチェックする必要があります。
ターゲット
スプリングの設計 1 - ラフデザイン
プラグインコネクタの主要な特長とはどんな点でしょうか?
今日のCAEツールでは材料の弾塑性特性を考慮することで幾
簡単な挿抜性、ライフを通じて安定した接触、そして許容温
何学的非線形問題も簡単に解決できるようにはなっています
度を超えることなく高い電流を流すことができること、これ
が、設計初期にはほぼ必ずバネ特性の大まかな分析が実施さ
らがコネクタ設計時に求められる基本的要求です。ここでは
れます。ここでは非線形作用は考慮されませんが、ほぼ現実に
接点がプリント基板に直接接触するダイレクトコネクタの例
即した分析推測が可能となります。 図1では、接点バネの寸
をあげています。安全な設計を期するため、プリント基板の厚
法形状を示しています。
さに 1.44 mm ~ 1.76 mm の公差があることを考慮しなけ
ればなりません。
70
harting tec.News 16 (2008)
図1 バネ形状
スプリングは長方形の断面を有しています。 この部品はパン
チプレスで加工されることから、バネ幅 w は一定であること
が前提条件となります。 これに対し、バネ高さ h は可変で
も構いません。 実際のスプリングで塑性変形を回避するた
めには、最大たわみ時にも最大繊維応力が伸張限度 Rp0.2
を大きく下回ることが理想的です。
3
71
繊維応力[MPa]
t e c . N e w s 1 6 : テ クノロジ ー におけるリー ダー シップ
x [mm]
弾性モデル E、垂直力 F、バネ長 l、バネ幅 w およびバネ高
さ関数 h(x) を入力すると、曲げモーメント M(x) および断面
二次モーメント I(x) から曲げ曲線 y(x) と表面応力曲線s(x)
が求められます。
図3 最適化された繊維応力挙動
図2および3では、3種類のプリント基板厚さに対する特殊な
バネ高さ関数とその応力挙動(表面応力)を表しています。
生じると微小な塑性変形が発生します。 スプリングに生じ
理想的な表面応力曲線ではバネ高さが接触点でゼロになる
る可能性のある残留変形を求めるためには、引っ張り試験か
のが望ましいですが、現実的には不可能です。
ら正確な応力・伸張データを得ることが必要です。 さらに、
大きなバネたわみとそこから生じる接触点の移動が与える作
図3に表示された応力挙動からは、表面応力が一定となる x=0
用、および(200 µm の材料厚では10 µmのニッケル皮膜も軽
(バネの根元)から x=4.75 mm の領域でバネ高さ関数 h(x)
視できないことから)皮膜材料によるバネ剛性の変化もここ
が最適化されることがわかります。 その後、最低バネ高さ
で考慮することができます。 ここでは二次元計算方式によ
は hmin=0.25 mm 以下とならないことから、表面応力は低
り最終的な形状最適化が実施されています。 その後、挿入
下します。
プロセスの三次元シミュレーションを行うことによりさらに
正確な結果が得られました。 図6では、挿入した状態にある
スプリングの設計 2 - 有限要素法による仕上げ
接点上での応力分布を示しています。
事前分析結果から形状パラメータが定義されると、この値を
仕上げ設計用として活用が可能となります。 残念ながら接点
図6の分析により、プリント基板厚さが最大となった場合にも
バネ材料は完全な弾性体ではないことから、 少しでも応力が
材料の降伏点を充分に下回ることが判明しています。
力 [N]
h (x) [mm]
シミュレーション
シミュレーション
信号コンタクト下
測定
信号コンタクト No.1
距離 [mm]
図2 バネ高さ機能h(x)の例
72
図 4 シミュレーション/測定の比較(垂直力、個々の接触子)
harting tec.News 16 (2008)
電流フロー
(接触部分)
I=I(?)
電気的シミュレーション
静または過渡電流(表皮効果…)
電流分布
I=I(?,?)
熱シミュレーション
電流による発熱、熱伝導、放熱
図 6 挿入シミュレーションと繊維応力配分(ROT 約540MPa)
電流シミュレーション
対流
温度分布
T=T(?,?)
図 5 連動する問題をともなう部品温度の計算
流および熱放射により周囲環境へ放出されます。 そしてこの
熱放出は部品の温度に依存します。 全体の電流熱が放出し
つくされるまで部品温度は上昇します。 多くの材料データ
は温度に依存することから、電気的、熱的、流動(対流)的な
スプリングの設計 3 - 理論と実際が近づく
問題を同時に解決することがここで必要となります。 このよ
理論と現実に差はないと言われますが、実際には厳然と違い
うなケースは連動的計算またはマルチ物理とも呼ばれていま
が存在する - これは、現代のCAEツールにはもはや当てはま
す。 図5ではこのような相互作用を表しています。
りません。 このため設計フェーズの後、それまでの予測が正
しかったかどうかの確認が行われます。 どのモデルも単なる
図7ではシミュレーションモデルのある一部を表しています。
現実の模型にすぎません。事前に正確な推測が行われていな
すべての供給線や絶縁体は表示されていません。このように、
かったことが判明した場合には、その他の挙動・作用もシミュ
測定技術ではアクセスが困難な領域も、シミュレーションで
レーションの中で考慮することが求められます。 幸い、今回
は表示できることが大きなメリットです。 このケースでは12
のプロジェクトでは垂直力の測定結果から推測内容との相違
Aの電流が供給されました。プリント基板がパフォーマンス
があまりなかったことが判明しました。すなわち、コンタクト
限界の要因となっていることが一目瞭然です。 そしてこのコ
の機械的設計作業はこれで完了したことになります。 ただ
ネクタが指定された通電容量を満たしていることが、このシュ
し、機械的配置・設計は標準的ルーチンであり、もしここで
ミレーションで立証されたのです。
相違が生じていたとしてもこれはモデル自体の問題ではなく
単なる入力ミスが原因であることが考えられます。
温度 [℃]
最大コンタクト温度 85℃
いつも冷静に
今日多くのコネクタでは大電流伝送に対応した仕様が施され
ています。 標準的な電流供給に加え、”ワーストケース”に備え
た想定が必要です。 つまり、すべての接触子にいわゆるハイ
パワーコンタクトが装填され、同時に電流が送られた場合を
想定したコネクターの挙動を推測する必要があります。
特定の電流供給時における部品温度を計算する作業は容易
ではありません。 このような場合、各コンタクト内での電流
密度が計算されます。 この電流密度と導電性が電流熱を決
定付けることになります。 さらにこの電流熱は熱伝導、熱対
最大トレース温度 91℃
雰囲気温度 [℃]
電流 12A
図 7 電流12 Aを流した際の部品温度
Dr. Achim Brenner
Director Simulation Technique
HARTING Technology Group
achim.brenner@HARTING.com
73
tec.News 16: 安全性
74
harting tec.News 16 (2008)
Hans Langaas
深海でのネットワーク環境
水深300メートル、深海という特殊環境においても、ハーティング製スイッチmCon 7050-Aはその機能を発揮します。アメリ
カのヒューストンに拠点を置く海洋設備のメーカー、FMC Technologies社がmCon 7050-Aを北海の石油とガス坑井用ワー
クオーバーコントロールシステムとライザーレスインターベンションシステムへの採用を発表しました。
この海洋設備向けシステムはノルウェー領をはじめとする世
2009年より、本システムの導入が開始され、新たにまた長期
界各領海域において採用が予定されています。
的に安定した原油と天然ガスの供給に、大きく貢献をするこ
とを期待されています。
FMC Technologiesは、石油とガス摂取のための、サブツ
リー、
マニホールド、電力供給ケーブルそして生産制御システ
FMC Technologieは、サブツリー、コントローラ、配給と接続
ムなどトータルシステムを提供しています。マニホールドを備
システムのリーディングカンパニーであり、海底生産システム
えたテンプレートは、海底に設置され、生産プラットフォーム
の重要なサプライヤーです。顧客と緊密な協力体制を築き、
に接続されます。
その結果、油田における最大限の採収を可能にするテクノロ
ジーを開発しました。FMCは、システムエンジニアリング、流
こうしたプロジェクトには、更に厳しくなった新ISO安全規
量保証、流量測定、そしてプロジェクト管理などといったエン
格が適応されるため、厳しい動作環境においても、製品の高
ジニアリングとサポート業務を提供しています。
品質と信頼を確保できる製品が求められます。様々なメーカ
ー部品と高い互換性をもつ標準コンポーネントを採用し、加
えて、トランデューサのデータの集積や坑井に設置されたに
チュービング・ヘッド(クリスマス・ツリー)に介入するために
使用される坑口装置を制御するため、海底制御モジュールに
”テンプレート”とは海洋油田開発に際し、開発
イーサネットスイッチが使用されています。そしてグラスファ
井を掘削するために海底面に設置される複数
イバケーブルにより海面とリンクされているメインスイッチと
の「マニホールド」をもつ台座のことです。
「マ
通信します。ハーティングのmCon 7050-A は、様々な必要要
ニホールド」は、多岐管で、坑井から集められた
件を満たしさらに安定した接続性を確保できるという点から
原油、あるいは海水を坑井に流し込み、表面に
採用にいたりました。
浮上させた原油が流れます。
Hans Langaas
Product Manager ICPN, Norway
HARTING Technology Group
hans.langaas@HARTING.com
75
t e c . N e w s 1 6 : オ ートメー ションによる効 率 化
Thomas Wolting
パワーバスはコスト削減に貢献します
標準化された接続テクノロジーを導入しデバイスを分散型構造にすると、コストを大幅に削減することができます。電源供給
に適したバストポロジを採用することで、この開発はさらに発展します。ハーティングは、新開発のHan-Power ®コンポーネン
トによりこのアプローチをサポートしています。
技術システムのトポロジ開発に伴い、エンジニアはコンポー
Han-Power ®Sは、ライン型構築の電力配分用に最適なシス
ネント数と冗長性を減らすこと、つまり信号および電気伝送に
テムです。Han-Power ®S製品は、メインのバスを中断する
スター型設置を回避することに明確な目標を置いています。こ
ことなく電源分岐を実現します。バスケーブルはカットせず
れまでは、それぞれモニターごとに、スイッチキャビネットから
に、Han-Power ®Sで導線にタップを施します。
延びる電源ケーブルに接続し、すべての接続、センサーそして
アクチュエータはパラレルに配線されていました。
より複雑なシステムの解決には、Han-Power ®Tを採用し
ます。すべての送電より線を複数のセグメントに分岐します
周波数変換器を中央設置するとなると、最適化され、かつ手
が、Han-Power ®Tを差し込むことで、機械や装置のモジュ
間のかかるシールドを施された高価で特殊なケーブルが必要
ールをスピーディに電気接続できます。Han-Power ® S、
であり、かつ他に選択肢はありません。このトポロジの明らか
Han-Power ®Tそれぞれに利点があり、使用目的により選択し
な欠点として、従来の技術では全体の経費が高く、また広い
てお使いになれます。Han-Power ®ソリューションは、モジュ
スペースが必要となっていました。そのためコンベア技術とい
ラーシステムの輸送ラインなど、大型のシステムで特にその威
った運搬システムなどは分散型構造にする強い傾向にありま
力を発揮します。これらのコネクタは双方とも、どのような場
す。インテリジェンス機能をもつモータ制御ユニットは、直接
合でも、スピーディかつ長時間の耐久性を実現します。
機械またはコンベア経路に分散配置されます。この設置シス
テムの変革は、Han-Power ® 製品グループ部のハーティング
Han-Power ®シリーズ
テクノロジーグループがサポートしています。
この新しい製品シリーズを採用するには、保護機器の交換が
必要となります。分散型設置システムの新しいスイッチキャビ
分散型構造
ネットは非常にコンパクトになっており、製造工場のスペース
新しい配線技術におけるキーエレメントとして、パワーバスシ
をより効率的、経済的に使用することが可能になります。分
ステムは国内外の関連規格に準拠しながら、複数の周辺機器
散型設置システム用に最適化されたスイッチキャビネットに
を一本のケーブルで接続することを可能にします。
は、ショート対策用の安全スイッチなどの保護機器や、コネ
クタを通じたパワーバス用の電源供給部品といったコンポ
コネクタは、コンパクトで堅牢であり、かつ極数や電圧・通電
ーネントが装備されます。
容量の要求を満たすものでなければなりません。ISO 23 570
では、この分野で使用されるコネクタと、その使用法を規格
Han-Power ® T Modular Twin
化しています。
ハーティングはPowerTソリューション分野で、柔軟性を特
徴とするもうひとつのバリエーションを提供しており、それが
これらの要求に応えるため、ハーティングは新しい製品シリ
Han-Power ®T Modular Twinです。Han-Power ®T Modular
ーズHan-Power ®シリーズを誕生させました。ライン型シス
Twinは、PowerTのひとつで、Han-Power ®T Modular Twin
テムと複雑なシステムとでは、電力配分に違いがあります。
コネクタをインターフェイスとして提供します。モジュラー
76
harting tec.News 16 (2008)
グループの中から、ひとつは電源用、もうひとつは信号伝送
用として、2つのモジュールを統合したものです。これによ
り、400/690Vで40Aまでの電流対応が可能です。同時に2
つの24V用のコンタクトと、システム内ですべてのコネクタ
が差し込まれているかどうかを感知する機能が搭載されて
います。Han-Power ®T Modular Twinは多目的な使用が可
Han-Power ®S
能で、お客様のアプリケーション個々に対応することがで
パワーバス線は、分散型配置のモータ制御ユニットへの
きます。その際、信号コネクタと電源スイッチのコンビネー
送電を考慮せずに配線可能です。電源分岐は、ひとつの
ションを別々に使用することも可能です。フルに装着した
Han-Power ®Sで、パワーバスを遮断することなく実現でき
Han-Power ®T Modular Twinを使用することで、あらゆる分
ます。
岐点に使用できます。
電源ケーブルの被覆を取り外し、Han-Power
® Sに接続し
ケーブル出力は送電のみに使われ、Han Modular Twinハウ
ます。絶縁された芯線は高い信頼性を誇るIDCにねじ留め・
ジングに、電力モジュールが設置されます。信号モジュール
ピアシングされます。IDCターミナルは、分散した周辺機
器への相電流が流れるだけです。この新しい設置システム
は、HARAX®コンタクト技術を集成したもので、コンタクト
部の長期安定性と対短絡電流性など電力分野で国際標準と
なっています。コンベアシステムにおいては、また別の新しい
アプローチが必要となり、異なるアプリケーション(自動車産
業、空港システム、そして一般の物流センター)にあわせて設
計されることが不可欠です。
バスシステムソリューションは、装置の設置とメンテナンスを
も最適化します。ハーティングのもつ配電およびコンタクト分
野の経験から、幅広いターゲット市場でのビジネスチャンスが
生まれました。最適な使用特性と追加された断面構造による
不意な開放を防ぐロックパネルを装着した
Han-Power ® T Modular Twin
先進の設置ソリューションは、お客様に更なる付加価値をも
たらします。Han-Power ®S Metalでは初めて、電力分配と電
源分岐がケーブル断面積10mm²まで可能になりました。
は、ダミーモジュールで代用します。信号分配には、逆の構
造も可能です。
2つの周辺機器をごく近距離に配置した場合、PowerTを直
接、相互接続することができます。システムケーブルも、延長
ケーブルが必要となる場合には、常に直接コネクタで接続す
Thomas Wolting
Product Manager Han® Industrial Connector,
Electric
HARTING Technology Group
thomas.wolting@HARTING.com
ることが可能なように設計されています。組立済みシステムケ
ーブルだけでなく、お客様サイドで特別な工具なしにケーブル
アッセンブリを行なっていただくことも可能です。
77
t e c . N e w s 1 6 : エ ンター テイメント
78
harting tec.News 16 (2008)
Jens Grunwald
ハロー中継車!
大手の放送局は、常に高い放送技術を求めてきます。SAT.1、RTL、ProSieben、WDR、viva、ZDF、ARD そして Premiereな
どの放送局との仕事となると、照明やショー、舞台が、常にスムーズに運ぶように技術面でサポートしなければなりません。オ
ルデンブルグにあるConnex Elektrotechnische Stecksysteme 社は、この分野において世界でも有数の経験豊かなサプライ
ヤーの一つです。ハーティングの製品技術は、中継車からのライブ放送というアプリケーションにおいて迅速かつ確実なデー
タ伝送と制御を実現します。
ショービジネスの世界では、言うまでもなくどんなに厳しい
常に速くなっています。これまで同軸ケーブルを投入していた
条件下においても制御とデータ伝送は確実に行なわれなけ
部分には、短距離においても効率が良く、高い信頼性をもつ光
ればなりません。高品質な画像と音声を配信すること、そし
学ベースの伝送ケーブルが必要とされている一方で、電力とコ
てカメラ、照明、音声技術には正確な操作が要求されます。
ントロール信号には、これまでどおり銅線が使用されていま
最新の技術では、次の2つの理由から光ファイバーケーブル
す。この双方の伝送メディアを利用したものが、ハイブリッド
が採用されています。長距離信号伝送においては、様々な要
接続システムであり、米国映画テレビ技術者協会(SMPTE)で
求に高いレベルで対応すること、Audiomatrix(画像)および
規定されています。この世界共通の標準規格は、あらゆる種
Interkommatrix(音声)に対して電磁的適合性があることが
類のカメラシステム、録音機器、ステージボックス、HDTV信
求められます。特にHDTVの採用によりデータ転送速度が非
3
79
t e c . N e w s 1 6 : エ ンター テイメント
号伝送、そして安全スイッチを搭載した屋外中継用機材に、制
合、予備のカメラに切り替えられるため、観客や視聴者に気
限のない互換性を備えた出力インターフェイス(光ファイバー
づかれることはありませんが、実は舞台裏の労力は大変なも
レンズおよび銅コンタクト)を可能にしました。
のでした。このような故障のリスクが、制作側の構想に大きな
影響を及ぼしていました。
規格
米国映画テレビ技術者協会(SMPTE)は、ニューヨーク、ホワ
スポーツなどイベントに中継車を導入する場合、設営と撤去
イト・プレインズにある映画と、特にビデオ業界の国際組織で
作業の連続はシステム機材に大きな負担を与えます。雨、暑
す。SMPTE(設立時は映画テレビ技術者協会SMPE)は、分
さ寒さ、泥や埃といった厳しい環境条件にあっても、機能は
野標準規格の策定、研究、科学活動、ネットワーク通信、そし
常に確保しなければなりません。
て急速に進化する動画の世界、研修・教育をサポートするため
に、1916年に設立されました。SMPTEは、標準規格を作るこ
19インチプラグインモジュールの背面に、電力とコントロー
とはせず、議論の場を提供したり、ドキュメンテーション担当
ルのためのハーティング製プッシュプル・コネクタを装着し
局としてその役割を果たしています。映画・ビデオ業界のメー
た新しいFiberfox FCMイーサネットモジュールを搭載する
カーのほとんどが会員となっており、そのためSMPTEの承認
ことで、中継車のインフラが総合的に見直されることになり
と、ITU国際電気通信連合とANSI米国規格協会が発行した
ました。中継車における背面の配線全体と、実装、信号およ
標準規格は、業界の基盤となっています。
び電源ライン用の19インチプラグインモジュールの装着に
より、スター型およびライン型トポロジの分散型構造が実
中継車の接続ユニット背面の電力およびコントロール配線
現しました。
は、これまではターミナルブロックで使用されていました。そ
のため故障が発生すると、中継車の専門スタッフが手作業で
広範囲
配線を変える必要がありました。これは非常に時間のかかる
Fiberfoxシステムは、非常に多彩な可能性を提供するので、
作業で、ライブ中継時にカメラシステムを修復するためには、
シンプルなコネクタカバーから非常にフレキシブルなモジュ
長い中断時間を強いられました。このような事態になった場
ール構造まで、ユーザーはニーズに合わせて選択することが
図1: 電力とコントロール用ハーティング製プッシュプルコネクタを装着したFiberfox FCMイーサネットモジュール
80
harting tec.News 16 (2008)
できます。19インチ接続フィールドが、主に既存のラックユ
であるSMPTEの特殊な要求、すなわち、付加的なハウジング
ニットをサポートするのに対し、FCMコンポーネントは多様
ロッククリップを使わない確実ロッキング、コンタクトエレメ
なオプションを提供しています。スタンドアローン・オペレー
ントの分極、IP 65 / IP 67、プロテクトインターフェイスが確
ション、ラック・マウント、アウトレット・ボックスなど、あらゆ
保されました。
る対応が可能です。短時間でモジュール交換ができることで、
高い冗長度を保証しながら、時間のかかる実装作業や中断時
プッシュプル・コネクタは、Fiberfox-FCM伝送モジュールに
間を回避することができます。LWL-SCデュプレックスコネ
おいて、パワー(パワー5 A / 250 V AC)と制御信号(コント
クタから出力し、背面のハーティング製LWL-SCパッチケー
ロール1 A / 48 V DC)用に使用されます。これまでは、手作業
ブルに接続することで、ほぼすべてのシステムに装着するこ
で行わなくてはならなかった手間のかかるFiberfox-FCM伝
とが可能です。これが、Fiberfox-FCMシステムがハーティン
送モジュールと、そのほかのコンバータなどの機器やインタ
グ製IP 65 / IP 67プッシュプルコネクタを投入することで、中
ーフェイス間との背面部の配線作業(電圧供給、制御信号、
継車、スタジオライブ中継において国際標準となった理由の
電気制御盤キャビネットまたは19インチラック)は、いまや
ひとつです。またプッシュプルコネクタを交換することで、よ
過去のものとなり、メディア界の伝送や制御技術は飛躍的に
り幅広い機能に対応も可能です。
向上されました。
省スペース
幅が狭くコンパクトな設計のため、19インチプラグインモジ
ュールは、小さなスペースにも、モジュラーシステム式に並べ
て数多く配置することができます。さらに順位を変えたり、分
岐も可能です。挿し込みが可能になったこと、そしてプッシュ
プルコネクタ接続ケーブルのプリアッセンブリにより、誤配
線を削減、プラグアンドプレイのシステム配線を実現しまし
た。プッシュプル・コネクタ・ソリューションにより、規格機関
図2: Top Vision中継車に搭載されているFCMイーサネットモジュール
Jens Grunwald
Area Sales Manager Germany
HARTING Technology Group
jens.grunwald@HARTING.com
図3: Top Vision中継車のミキサ
81
t e c . N e w s 1 6 : エ ンター テイメント
82
harting tec.News 16 (2008)
Tom Egil Svartsund
オペラ劇場に登場:Han®
新オスロオペラ劇場。ノルウェーの有名なデ・
ノシュケ・オペラ
(DNO)がすでに記念講演を予定しているこの劇場は、オスロ
の中心街に位置し街の新しいシンボルとして注目されています。
ハーティングは当劇場の最新音響システムと照明設備にHan®
コネクタとケーブルハーネスを供給しています。
3
3
83
t e c . N e w s 1 6 : エ ンター テイメント
このコンセプトの中心的構成要素は、最新のソーラーシステ
ムの使用にあります。建物の正面は港に向かって南向きであ
り、外壁に設置された太陽光発電装置はノルウェーの最大ソ
ーラーシステムとして電力発生量は年間、約2万600キロワッ
トにのぼります。
「ECOカルチャー」推進プロジェクトでは、最適化された設計
と、技術システムのオートメーション化も対象となります。当
劇場は、照明、換気、暖房、そして冷房のエネルギーを従来の
建物に比べて大幅な低減を目指し、エネルギー節約の処理に
より、年間75キロワット/m²の節約、それは全体の消費率の約
図1 オスロオペラ劇場のメインホール
25%にあたります。
音響・照明システム
この新しいオスロのオペラ劇場は、ただの
オスロのオペラ劇場は、監督や演出家にあらゆる自由を与え
劇場ではありません。場内に駆使される様
る、世界で最新の舞台技術を備えています。多くの照明のオ
々なテクノロジーが、建築家たちの関心を
プション、ゆとりをもって設置されたシステム。舞台には、全
集め、着工には数ある候補の中から国際的
長1万2000 mのケーブルが装備されおり、照明装置には、さ
な建築事務所Snøhetta ASが勝ち取るこ
らに12万mのケーブルが配線されています。メイン舞台の上
とになりました。劇場面積は3万8,500 m²
には、35メートルの高さのタワーがそびえ、非常に複雑な舞
に総数1,100にのぼる部屋数、600名のスタ
台技術的な処理や手配も可能になります。
ッフが従事する予定です。コンサートホール
は大きくわけて3つ、メインホールの1,356
Elpag AS社、YIT Building Systems社、Satema社を通じ
座席、第2ステージ440席、リハーサルルー
てハーティングの産業
ム200席が用意されています。このプロジ
コネクタHan ®とケー
ェクトの予算は33億ノルウェークローネ(
ブルハーネスはオペラ
約4億ユーロ)、開館は盛大な祝典ととも
の音響・照明システム
に、2008年4月12日を予定しています。
に実装されました。製
品はプリアッセンブリ
目標: エネルギー効率の向上
で、設置を簡単にまた
当劇場にはEUプロジェクト「エコ・カル
素早く行うことができ
チャー」の一環として省電力設計が施され
ます。機械フレームユ
るなど、国立不動産会社STATSBYGGは、
ニットとスイッチキャ
ノルウェーの文化・教会省(KKD)の任命支
ビネットに搭載するア
援をうけてから期間を経てついに完成をむ
タッチメント、ケーブ
かえました。
ルハーネス製品と、高
図2 照明装置
84
harting tec.News 16 (2008)
電圧および厳しい環境エリアにはヘビーデュー
ティが使用されます。技巧を凝らしたスポットラ
イト装置と照明制御間の電流ケーブル(図3)
は、オランダで実装されました。
このプロジェクトは、ノルウェーの人々の大きな
関心をひく重要なプロジェクトです。私たちは、
最高の性能、最高のテクノロジーを提供できる
よう準備してきました。音響・照明システムの接
続システムにおける長年の経験により、私たち
は、ほかの競合会社に対して優位にあり、この
プロジェクトを勝ち取ることができました。ま
た企業間提携という点で、過去のプロジェクト
を通じて協力関係を築いた企業が多く参加し
ていたことも理由の一つでしょう。
図3 Elpag AS社製の接続ケーブル
ビジネスパートナー
1946年以来、照明、スタジオ、そして舞台技術の分野での設
た実際の実装においてもフレキシブルに対応。黒いハウジン
備とサービスと提供してきたスペシャリストであるElpag AS
グを採用できるということは、私たちにとっては新しく、また
が、今回の音響・照明システムのサプライヤーです。このノルウ
顧客にも大変好評です」とSjømoen氏は述べています。
「黒
ェーの企業は顧客に、劇場、公共施設、文化財団、そして個人
は、音響・照明システム産業で今非常に人気のあるカラーで
の企業をもち、新オペラ劇場の設計とプロジェクト管理、また
す。」と付け加えました。
組み立てに取り組みました。Elpagは、過去50年にわたり、ス
タジオと舞台市場で900以上の設置を担当してきましが、デ・
YIT Building Systemsの設置の責任者であるErik Norderud
ノシュケ・オペラは過去Elpagが手がけた仕事の中で、規模が
氏は、高品質のロックレバーの絶対的なメリットにふれていま
最大なだけでなく、最も誉れの高いプロジェクトです。
す。このロックレバーにより、シンプルでスピーディな着脱が
可能、そして必要に応じてレバー部分のみ交換することができ
取り付け作業を担当する企業 YITは、ノルウェーの、ビルシス
ます。照明装置は、通常手の届きにくい場所に設置され、また
テムにおける大手のサプライヤーです。YITは、電気や水道、空
接続部品も常に必ず丁寧に扱かわれるわけではありません。
調をはじめとするすべての技術的取り付け作業にトータルソリ
堅牢設計と、取り扱いやすさが、ハーティング製品の非常に優
ューションを提供しています。双方の企業は、私たちとの共同
秀な点だ、と評価を得ました。
事業が非常にうまくいったこと、そしてハーティングの製品の
独特なセールスポイント、USPを強調しています。
私たちの貢献
ハーティングは、音響・照明システム産業における大きな優位
点をもっていた、とElpag ASのPer Sjømoen氏から次のよう
にコメントをいただきました。
「適切なビジネスパートナー
を選択することは難しくありませんでした。私たちは、ハー
ティングの製品の品質とサービスの質に納得しています。ま
Tom Egil Svartsund
Product Manager Cabling, Norway
HARTING Technology Group
tomegil.svartsund@HARTING.com
85
t e c . N e w s 1 6 : ハー ティン グ見 本 市出 展 2 0 0 8 年
ハーティング見本市出展2008年
08.04. – 13.04.08
09.04. – 11.04.08
17.04. – 20.04.08
21.04. – 25.04.08
24.04.08
07.05. – 11.05.08
12.05. – 15.05.08
13.05. – 17.05.08
20.05. – 22.05.08
20.05. – 23.05.08
26.05. – 29.05.08
03.06. – 07.06.08
12.06. – 16.06.08
16.06. – 19.06.08
16.06. – 19.06.08
17.06. – 20.06.08
28.06. – 30.06.08
02.09. – 05.09.08
09.09. – 12.09.08
09.09. – 13.09.08
12.09. – 16.09.08
15.09. – 19.09.08
16.09. – 18.09.08
22.09. – 25.09.08
23.09. – 26.09.08
24.09. – 26.09.08
24.09. – 27.09.08
25.09. – 28.09.08
30.09. – 03.10.08
01.10. – 03.10.08
07.10. – 10.10.08
07.10. – 11.10.08
14.10. – 15.10.08
14.10. – 17.10.08
21.10. – 23.10.08
28.10. – 01.11.08
11.11. – 14.11.08
12.11. – 14.11.08
13.11. – 18.11.08
25.11. – 27.11.08
02.12. – 05.12.08
86
Korea, Seoul, SIMTOS
日本, 東京, SEA JAPAN 2008
China, Shanghai, Chinaplas 2008
Germany, Hannover, Hannover Messe 2008
Belgium, Antwerpen, VIK Industrial Automation Days
Malaysia, Kuala Lumpur, Automax 2008
UK, Birmingham, IFSEC 2008
Brasil, São Paulo / SP, Feira da Mecânica
Italy, Torino, ExpoFerroviaria
Slovakia, Nitra, MSV Nitra
Norway, Lillestrøm, Eliaden 2008
Taiwan, Taipei, Computex
India, Chennai, ACMEE 2008 - Industrial Exhibition
North America, Las Vegas, NV, NXTcomm
China, Guangzhou, GIMT 2008 & Canton Machine Tool Fair
Singapore, Singapore, Communic Asia 2008
China, Beijing, Wind Power Asia
India, Bangalore, Componex / Electronic India 2008
日本, 東京, Logis-Tech Tokyo 2008
Germany, Husum, Wind Trade Fair in Husum
The Netherland, Amsterdam, IBC 2008
Czech Republic, Brno, MSV Brno
Switzerland, Zürich, Focus Technologie Forum
Germany, Stuttgart, Motek 2008
Germany, Berlin, innotrans 2008
España, Zaragoza, PowerExpo
Brasil, Curitiba / PR, EXPOMAC
India, Mumbai, Automation 2008
Netherlands, Utrecht, Aandrijftechniek
Finland, Jyväskylä, Tekniikka 2008
Austria, Linz, VIENNATEC
日本, 東京, Tokyo Pack 2008
Belgium, Brussel, MOCON
Slovakia, Trenčín, ELOSYS
North America, Santa Clara, CA, AdvancedTCA 2008
España, Madrid, Matelec
Germany, München, electronica
China, Beijing, EP China
España, Madrid, Rail Forum
Germany, Nürnberg, SPS/IPC/Drives
Russia, Moscow, Electricheskiye seti Rossii
harting tec.News 16 (2008)
87
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