Special Article − Full Translation 特別寄稿 European Association for Haemophilia and associated disorders(EHAD) 血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 European principles of haemophilia care B. T. Colvin, J. Astermark, K. Fischer, A. Gringeri, R. Lassila, W. Schramm, A. Thomas and J. Ingerslev for the Inter Disciplinary Working Group Barts and The London – Queen Mary’s School of Medicine & Dentistry, London, UK; Department for Haematology and Coagulation Disorders, Malmö University Hospital, Malmö, Sweden; Van Creveld KLINIEK, Department of Haematology, UMC Utrecht, The Netherlands; Centro Emofilia A. Bianchi Bonomi, Milan, Italy; Department of Haematology and Coagulation Disorders, Helsinki University Hospital, Helsinki, Finland; Abt. Hämostaseologie u. Transfusionswesen, Klinikum der Universität München, München, Germany; Paediatric Department, Royal Hospital for Sick Children, Edinburgh, UK; and Centre for Haemophilia and Thrombosis, Skejby University Hospital, Aarhus, Denmark 要 約:血友病治療は複雑であるため,この疾患を や定期補充療法で使用される凝固因子製剤を含 もつ患者については常に関連領域の専門家からなる む)。全国的な患者登録システムを構築するととも 集学的医療チームが種々の診療を速やかに提供でき に,治療統計を収集することが推奨される。総合的 る体制を整えておかなければならない。本稿では, 血友病医療は,集学的医療の性質が強いため,関 欧州において総合的血友病医療を確立するための基 係するすべての医療スタッフの教育・研究プログラム 本的方針を提示する。各国において,臨床サービス が特に重要となる。本稿は,欧州 19 ヵ国からの血 および検査サービスを総合的に提供する専門家から 友病専門家 45 名からなる Interdisciplinary Working なる血友病総合医療施設(Comprehensive Care Cen- ters)を監督する国立組織を創設するべきである。そ Group により作成されたものであるが,著者欄に記 載されていない会員については,その氏名を第 4 節 の国の血友病患者数とその地域的分布によっては, に記載した。 小規模血友病治療センターのネットワークも必要で あるかもしれない。安全な凝固因子製剤の供給を確 Key words:血友病,血友病医療,管理,基本的 実にするための体制の整備も重要である(在宅療法 方針,治療 Other members of the Inter Disciplinary Working Group are listed in the Appendix. Correspondence: J. Ingerslev, MD, Centre for Haemophilia and Thrombosis, University Hospital Skejby, DK-8200 Aarhus N, Denmark. Tel.: +45-89495182; fax: +45-89495192 e-mail: Ingerslev@ki.au.dk Haemophilia( 2008),14,361–374 ©Blackwell Publishing Ltd. 本稿の構成 第 1 節:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的 方針 第 2 節:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的 方針 ̶ 詳細と参照文献 第 3 節:血友病治療ガイドラインの要約 第 4 節:著 者 特別寄稿:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 第 1 節:血友病医療に対して欧州がとるべき 基本的方針 我々は,欧州全域を通じてすべての血友病患者が 血友病医療の提供における連携 血友病医療に関する国家的あるいは地域的な意思 決定においては,臨床医に加えて患者団体の代表者 が参加すべきであるが,同等に重要なこととして, 安全かつ最適な医療サービスを受けられることを確 保健衛生当局,社会福祉当局,さらに National Hae- 実にするための強くかつ決定的なアクションをとるた mophilia Co-ordinating Group のように公的機構を め,本稿を通じて欧州連合(EU)および各国の医療 通じて血友病医療の提供に携わっている組織とパー 政策策定機関に協力を要請する。欧州各国で提供 トナーシップを組むべきである。 されるべき血友病医療の要素として,我々は次に挙 げる方針を強く支持する。 至適治療を可能とする安全かつ有効な凝固因子製剤 至適レベルの安全かつ有効な治療を血友病患者に 地域の血友病治療センターによって支持される中央 組織の創設 このような体制を整えておくことにより,患者の身 それぞれの国において地域レベルで医療を提供し 体的健康,余命,生活の質(QOL)を改善すること ている施設によって支持される,血友病医療のため が可能になるとともに,この疾患が患者とその家族 の中央組織が必要である。この組織は,正確に医療 にもたらす社会心理学的,経済学的悪影響を軽減す 記録を蓄積するとともに,血友病医療が効果的に提 ることができる。さらに,このような体制の整備は, 供されることを確実にする責務を負うべきである。 医療機関が提供し続けなければならない資源を長期 このようなアプローチをとることによって,優れた診 的に軽減する。 速やかに提供できる体制を整えておく必要がある。 療サービスに関する施設間での情報交換や研究にお ける協力体制が促進される。 在宅療法と家庭への医薬品の配送 迅速かつ効果的な治療を容易にするため,各国に 全国血友病患者登録 おいて在宅療法および家庭への医薬品の配送を提供 各国において,前述の中央組織により管理される できる体制を整えるべきである。これは患者の来院 全国血友病患者登録を開設するべきである。患者登 の必要性を軽減するとともに,短期的および長期的 録に蓄積されるデータは,投資計画や医療資源の割 身体障害の予防,さらに,血友病患児および成人患 り当てを決定するうえで有用であるとともに,患者 者の日常生活を他の一般健康者の日常生活と同等 数や処方傾向,患者の地理的分布,有害事象に関 のレベルへ近づけることを可能とする。 する正確な情報源となる。 患者登録に蓄積される情報の取り扱いについては, 秘密性や法令,地域の倫理規定に特に注意を払わ なければならない。 定期補充療法 定期補充療法は,慢性関節疾患を予防・改善す ることが証明されており,血友病患者がこの治療を 受けられる体制を整えるべきである。さらに,定期 血友病総合医療施設と血友病治療センター 血友病患者が種々の専門的臨床サービスそして適 補充療法は,患者の健康と福祉を促進するとともに, 疾患による負担を軽減する。 切な検査サービスを受けられることを確実にするため, 血友病総合医療施設(Comprehensive Care Center; CCC)と血友病治療センター(HTC)を設置するべきで ある。 専門医療と救急医療の提供 血友病患者は個々に特有のニーズをもつため,こ れらの患者の治療では様々な領域の専門サービスが 必要とされる。 また,血友病患者の緊急を要する状況に備え,救 Full Translation: B. T. Colvin, et al. 急部門を通じて患者が速やかに治療と熟練 サービ 地理的に小規模であるが人口密度の高い国では, スそして様々な分野の専門スタッフへアクセスできる 自転車のハブとスポークのように,大規模な中央組 体制を整えておかなければならない。 織を中心に小規模施設が放射状にリンクする診療提 供モデルが好ましいかもしれない。一方,町と町が インヒビター保有患者の治療 離れている,人口が散在している,あるいは人口が 一部の血友病患者では,凝固因子製剤による補充 極めて限られた数地域に集中している国では,異な 療法を無効とするインヒビターが出現する。インヒビ るモデルが適していると考えられる。欧州では地域 ターの出現した患者には,直ちに最適な治療を行う によって地理的条件や人口密度が異なるため,人口 必要がある。適切である場合には,十分な臨床資源 に基づいて必要とされる施設数を一律に定義するの と検査機器の整った施設において,必要とされる技 は適切ではない。 能をもつ医師が免疫寛容導入療法(ITT)および止血 治療を行うべきである。 経済力と前述の中央組織設置モデルが血友病患者 のアウトカムに与える効果については,既に数編の 研究で検討されている。これらの研究で使用された 教育と研究 将来的に質の高い医療を維持していくためには, 主なパラメーターを Table 1 に示す。 すべての研究において,このモデルによって血友 血栓止血分野における人材の確保・教育が重要であ 病医療が改善し,この患者集団の余命向上に多大 る。今後優先的に研究が必要とされる領域としては, な効果をもたらすことが示されている。凝固因子製 消失半減期が延長し免疫原性が抑制されるよう分子 剤による補充療法が使用可能となって以来,凝固因 修飾された第 VIII 因子(FVIII)製剤および第 IX 因 子製剤消費量は増加し,重症血友病患者の平均寿 子(FIX)製剤の開発,新たな投与技術の開発,イ 命は 1930 年代には 19 歳であったが,2001 年には 71 ンヒビター出現の機序とその予防,遺伝子治療が挙 歳まで延長し,著明な改善を遂げた(1 ,2)。この傾向 げられる。さらに,患者とその家族に対するケアを は,発展途上国間でも認められており,1 人当たり 確立するため,これまでとは異なるタイプの診療提 の国民総生産が 2,000 ドル未満の国々では成人血友 供モデル,治療効果測定指標,QOL 測定指標など 病患者 – 血友病患児(13 歳未満)比は 0.35 であるが, を検討していく必要がある。 10,000 ドル以上の国々では 3.7 であることが以前の 研究で示されている(3)。在宅療法の導入は,患者の 第 2 節:血友病医療に対して欧州がとるべき 基本的方針 — 詳細と参照文献 治療へのアクセスを改善するとともに,直接的医療 コストを軽減する(4)。 中央組織設置モデルは,発展途上国(3)においても 地域の血友病治療センターによって支持される中央 組織の創設 欧米諸国においてもアウトカムを改善する。Soucie 欧州各国において,血友病医療を充実させるため Table 1. Parameters studied to describe outcome of centralized haemophilia care. の中央組織を創設する必要がある。地域の施設は, 適切に記録を蓄積するとともに,十分な組織基盤を もつべきである。 この中央組織は,次の点を確実にするうえで中心 的役割を果たすべきでる ― 安全な凝固因子製剤の 供給,効果的な資源配分,凝固因子製剤の使用に 関するデータ収集,有害事象に関するデータの蓄積, 施設間における新たな診療技術の共有,研究のコー ディネート。 Parameters studied Determinants of care Outcome parameters Evidence Clotting factor use (GNP) Centralized care (HTC/CCC) Home treatment Survival Short term: costs Visits, hospital admission Unemployment Long term: joint status Disability +++ + ++ ++ No data No data HTC, Haemophilia Treatment Centre; CCC, Comprehensive Care Centre. 特別寄稿:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 らの研究では,HTC で治療された米国人患者におけ て裏づけられている(12 ,13)。これらの文献では,中 る死亡率の低下が報告されている(5)。さらに,他の 央組織を中心とする医療提供モデルを確立すること 数編では,中央組織設置モデルを導入したことによ の重要性が強調されているとともに,血友病医療を る短期アウトカムの改善が報告されている。これら 既存の医療システムに統合させ,すべての医療従事 の研究で使用された主なパラメーターは,受診頻度, 者に教育プログラムを提供していくことが極めて重 入院,失業率であった。短期アウトカムについて検 要であることが指摘されている。また,発展途上国 討したいくつかの研究が,Baker らによって要約され においては,常に治療を提供できるという環境を整 (6) ている 。 えておくため,当該地域においてクリオプレシピテー (7 ,8) 英国 (9) と米国 の初期および最近のガイドライ ンでは,血友病医療は指定された HTC に集約すべ トや他の血液製剤を生産することが非常に重要であ ると提言されている。 きであるとされている。さらに,これらのガイドライ ンでは,HTC が満たさなければならない詳細な条件 も提示されている。 その主な条件を以下に列記する。 ● 質の高い専門技能を維持するとともに,血友病医 療を提供するための訓練されたスタッフを擁する。 ● FVIII(または FIX)活性レベルが 2 %未満の患者 40 例以上のケアに当たっている(これは,英国の ガイドラインのみで推奨されている)。 ● 集学的医療チームによるサービスを提供している。 ● 専門的サービスを提供している(例えば,出生前 診断,整形外科手術,遺伝カウンセリング) 。 ● 在宅療法を支援している。 ● 診療に関係する全国のネットワークを維持している。 ● 全国患者登録を提供できる(英国のガイドライン のみで推奨されている) 。 ● 診療技術を改善するための研究活動を行っている。 これらの条件が適切であることは,米国で最近行 われた研究(6)そして英国からの総説(10)で確認され ている。 Isarangkura の研究では,発展途上国における血 友病医療で改善が必要とされる領域として主に次の 4 領域が特定されている ― 臨床診療,検査設備, 血液製剤の供給および生産,患者組織。さらに,こ れらの各領域をレベル 1(なし)∼ 6[最も専門化さ れた形のケア(例えば,血液凝固異常症を専門とす る三次施設)]で評価し, それぞれの領域をレベルアッ プさせていくアプローチを提唱している(11)。これら の知見が適切であることは,後の Chuansumrit によ る研究そして世界血友病連合(WFH)の勧告によっ 基本的方針 1:参照文献 1 Mejia-Carvajal C, Czapek EE, Valentino LA. Life expectancy in haemophilia outcome. J Thromb Haemost 2006; 4: 507–9. 2 Plug I, Van der Bom JG, Peters M et al. Mortality and causes of death in patients with haemophilia, 1992–2001: a prospective cohort study. J Thromb Haemost 2006; 4: 510–6. 3 Evatt BL, Robillard L. Establishing haemophilia care in developing countries: using data to overcome the barrier of pessimism. Haemophilia 2000; 6: 131–4. 4 Ross Degnan D, Soumerai SB, Avorn J, Bohn RL, Bright R, Aledort LM. Hemophilia home treatment. Economic analysis and implications for health policy. Int J Technol Assess Health Care 1995; 11: 327–44. 5 Soucie JM, Nuss R, Evatt B et al. Mortality among males with hemophilia: relations with source of medical care. Blood 2000; 96: 437–42. 6 Baker JR, Crudder SO, Riske B, Bias V, Forsberg A. A model for a regional system of care to promote the health and wellbeing of people with rare chronic genetic disorders. Am J Public Health 2005; 95: 1910–6. 7 Department of Health and Social Security. Health Services Development Arrangements for the Care of Persons Suffering from Haemophilia and Related Conditions, Health Circular 4. United Kingdom Government, London, UK: Department of Health and Social Security, 1976. 8 NHS Management Executive Health Service Guidelines. Provision of Haemophilia Treatment and Care, HSG 30. United Kingdom Government, London, UK: NHS Man agement Executive Health Service Guidelines, 1993. 9 PL 9463. The Public Health Service Act Establishing the He mophilia Diagnostic and Treatment Centre Program. No. 1131 of Public Las 9463. Washington, DC: Government Print ing Office, 1975. 10 Bolton-Maggs PHB. Optimal haemophilia care versus the reality. Br J Haematol 2005; 132: 671–82. 11 Isarangkura P. Haemophilia care in the developing world: benchmarking for excellence. Haemophilia 2002; 8: 205–10. 12 Chuansumrit A. Treatment of haemophilia in the developing countries. Haemophilia 2003; 9: 387–90. 13 WFH. Guidelines for the Management of Haemophilia, Full Translation: B. T. Colvin, et al. 2005. Available at: http://www.wfh.org (last accessed 14.1.08). に重要な問題となる。新たに導入された凝固因子製 剤の市販後調査でしばしば 100 例未満のデータが報 告されるが,検出力の計算ではインヒビター出現頻 全国血友病患者登録 度の 30%(28 ∼ 38%)の増加を a = 0.05 ,検出力 各国は,全国血友病患者登録を開設するべきであ 90%で検出するためには少なくとも 225 例が必要で あることが示されている。 る。 全国患者登録は,血友病やその関連疾患といった 全国患者登録に基づくサーベイランスの有効性を 稀な疾患に関する重要な情報を収集するうえで有効 改善するためには,全国患者登録と他の国際患者登 なツールとなる。このような情報は,有病率や患者 録との互換性をもたせるべきである。 患者登録を継続していくためには,秘密保持,法 分布を正確に把握することを可能とすることに加え, 疾患の自然経過や治療様式に関する貴重な洞察をも たらす 令順守そして最良の倫理に基づく運営という点に特 別な注意を払わなければならない(7)。 (1 ∼ 3) 。 患者登録に蓄積されるデータは,どの程度のレベ ルの治療が標準的となっているかを分析することを 基本的方針 2:参照文献 可能とし,さらに臨床・検査サービスを査定するう えでも有用である。また,診療の質的向上および資 源配分の計画にも役立つであろう。 患者登録では,関連するすべての臨床・検査デー タを収集することが重要である。これによって,も たらされる情報の質が保証されるのみならず,血友 病患者の健康と福祉にとって重要な情報,教育資料, そして他の有用な情報を広く提供していくコミュニ ケーションネットワークの形成が促進される。遺伝子 治療関係のグループのような血友病臨床ネットワーク の成果も,患者登録を通じて収集された質の高いデー タがあれば強く後押しされると考えられる(4)。 全国患者登録および国際患者登録のネットワーク は,血友病治療の安全性をモニタリングする包括的 かつ有効なサーベイランスシステムの基礎となる。患 者登録は,インヒビター出現や輸血感染症,他の治 療関連有害事象のデータを収集するうえで理想的な ツールとなる。検出力の計算では,治療歴のある患 者における 1 ∼ 3%のインヒビター出現の増加をa = 0.05 ,検出力(1 – b )= 90 %で検出するためには, 少なくとも 430 例が必要であることが示されている。 このことは,新たな FVIII 製剤導入後のインヒビター 出現の増加を認めたオランダでの研究(5)と,遺伝子 1 UKHCDO 2006. Annual Report 2006. A Report from the UKHCDO and NHD United Kingdom Haemophilia Centre Doctors’ Organisation, Royal Infirmary, Manchester, UK (November 2006, ISBN: 1 901787 10 9). 2 Evatt BL, Black C, Batorova A, Street A, Srivastava A. Com prehensive care for haemophilia around the world. Haemo philia 2004; 10(Suppl. 4): 9–13. 3 Soucie MJ, Rickles FR, Evatt BL. Surveillance for haemo philia and inherited hematologic disorders. In: Khoury MJ, Wylie B, Thomson EJ, eds. Genetics and Public Health in the 21st Century: Using Genetic Information to Improve Health and Prevent Disease. USA: Oxford University Press, 2000; Part II, Chapter 8. 4 Krebs H, Domsch C, Adelhard K et al. The national GTH hae mophilia registry as database within the scope of the German human genome project. Hamostaseologie 2003; 1: 18–23. 5 Rosendaal FR, Nieuwenhuis HK, van den Berg HM et al. A sudden increase in factor VIII inhibitor development in multitransfused hemophilia A patients in The Netherlands. Dutch Hemophilia Study Group. Blood 1993; 81: 2180–6. 6 Giles AR, Rivard GE, Teitel J, Walker I. Surveillance for factor VIII inhibitor development in the Canadian Hemophilia A population following the widespread introduction of recombinant factor VIII replacement therapy. Transfus Sci 1998; 19: 139–48. 7 Greenough A, Graham H. Protecting and using patient information: the role of the Caldicott Guardian. Clin Med 2004; 4: 246–9. CCC と HTC 血友病は,診断と治療が複雑な疾患である。血 組換え型凝固因子製剤への切り替えの影響を追跡 (6) 調査したカナダでのサーベイランス研究 でも明ら 友病患者の健康と QOL を改善するためには次の点 かにされている。治療歴のない患者における新たな が鍵となる。 凝固因子製剤導入後のインヒビター出現頻度は,特 ● 出血予防 特別寄稿:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 ● 関節・筋肉損傷の長期的管理 ● 治療関連合併症の管理 ① 治療を無効とし,重篤で止血困難な出血を引 き起こしうるインヒビターの治療。 ● 24 時間体制でアッセイに対応できるとともに,イ ンヒビター力価を迅速に測定できる検査室をもつ。 ● 外部精度評価を受けている検査室をもつ。 ● 病院勤務を主とする看護師がいる。施設によって ② 過去に投与された血液製剤を介して感染し, は病院勤務を主とし,地域社会へも活動範囲を広 長期治療を必要とするウイルス感染。 げる看護師がいると有益であるかもしれない。 世界保健機関(WHO)や WFH によって推奨され ● 献身的な理学療法を提供する用意がある。 ているように,上記のゴールは,専門医療スタッフに ● 社会福祉士へのアクセスがある。 より構成されるチームが包括的ケアを提供することに ● よって最も良好に達成されうる。CCC と HTC は ① 効果的に,そして献身的にデータを管理すること ができる。 その国の物理的・政治的地理,② 人口密度および ● リウマチ科または整形外科へのアクセスをもつ。 人口分布,といった条件に合わせて創設し,血友病 ● 歯科へのアクセスをもつ。 医療の中心として機能するべきである。 ● 産婦人科へのアクセスをもつ。 すべての血友病患者が CCC で医療サービスを受け ● 心理学的支援へのアクセスをもつ。 る権利を有し,CCC の数はその国の血友病患者人 ● (患児を診療する施設の場合)小児救急部門,小 口に至適ケアを提供することを条件に調節するべき 児デイケア,小児病棟および小児専門看護師をも である。さらに,十分なケアが提供されることを確実 つ。 にするために,HTC の統制に注意を払わなければな ● 遺伝子検査室へのアクセスをもつ。 らない。患者数の少ない HTC も十分な専門技術を ● 遺伝カウンセリングを遂行できる。 もたなければならず,必要である場合には CCC から ● 出生前診断へのアクセスをもつ。 適切な支援を得ながら血友病患者のケアに当たらな ● ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者および C 型 ければならない。 肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療を提供する CCC と HTC との密な協力体制は,ケア全般の質 を維持・促進していくうえで必要不可欠である。 CCCの概念はWFHによって提唱されたものであり, CCC は少なくとも 40 例の重症血友病患者のケアに 当たらなければならないと規定されている。 ● CCC は,次の条件を満たさなければならない。 経験豊富なスタッフによる 24 時間体制のサービス を提供する。 ことができる。 ● 身体障害者が利用できる施設である。 ● 定期的に患者を追跡する。 ● 在宅療法を提供している。 ● 定期補充療法を提供できる(特に,患児または適 応となる他の患者に対して) 。 ● 高い信頼度で記録を維持・管理する。 ● 臨床監査を行っている(内部監査は必須であるが, ● インヒビターの治療を提供する。 ● 免疫寛容導入療法を提供し,新たにインヒビター ● 医学教育を提供している。 の出現した患者を優先的に治療する。 ● 研究活動に参加している。 血友病患者に安全かつ有効な凝固因子製剤を提 ● 止血に関する幅広い経験をもつ。 供する(患者,特に小児には病原体感染リスクの ● 血友病診療のコンセンサスガイドラインに準じて診 ● ● 外部監査も受けているほうが望ましい) 。 最も低い凝固因子製剤を使用する) 。 療を提供する(コンセンサスガイドラインは,欧州 24 時間体制で 1 名以上のフルタイムまたはそれと 各国がもつべきである) 。 同等の医師が院内で熟練サービスを提供する。 ● ● 治療,治療器具,在宅療法プログラム,患者・ 一方,HTC は,次の条件を満たさなければなら 家族教育をコーディネートする専任看護師がいる。 ない。 家庭・学校訪問を含め,地域社会と連携する。 ● 24 時間体制で適切な血液学的治療を提供できる。 Full Translation: B. T. Colvin, et al. ● ● CCC との協力体制の下,インヒビター治療および 療を提供する(コンセンサスガイドラインは,欧州 免疫寛容導入療法を提供できる。 各国がもつべきである) 。 血友病患者に安全かつ有効な凝固因子製剤を提供 する(患者,特に小児には病原体感染リスクの最 参照文献は,基本的方針1,2 の参照文献に準じる。 も低い凝固因子製剤を使用する) 。 ● 止血治療の経験をもつフルタイムまたはそれと同 等の医師 1 名以上が 24 時間体制で血液学的治療 を提供する。 血友病医療の提供における連携 血友病は複雑な疾患であるため,効果的な診療を 行うためには集学的医療チームによる包括的診療プ 24 時間体制でアッセイに対応できることが理想的 ログラムが必要とされる。したがって,各専門分野 であるが,夜間の遅れは許容される。 のスタッフが意見を交換し合い,治療プロトコールと ● 外部精度評価を受けている検査室をもつ。 治療と関連する他のすべての側面について合意を形 ● 看護サービスを提供している。 成しておくことが重要である。 ● 社会福祉士へのアクセスをもつ。 ● 効果的にデータを管理することができる。 保健衛生当局および(または)資金供給に関する権 ● CCC のリウマチ科または整形外科と密な関係をも 限をもつ当局の代表者らが全国血友病医療調整グ つ。血友病患者が抱える問題を認識し,地域の ループ(1)を組織し,協力し合うことによって見いださ 理学療法士へのアクセスをもつ。小規模施設は, れる。このグループは法定的または非法定的に組織 全般的に治療を提供できるよう,理学療法士の支 されうるが,明確な協約の下に運営されるべきであ ● ● 援を受けるとともに,CCC と密に連携する。 る。この協約には,次の点に関する助言と推奨事項 産婦人科へのアクセスをもつ。 を含めるべきである(2)。 (患児を診療する施設の場合)小児救急部門,小児 ● デイケア,小児病棟および小児専門看護師をもつ。 ● 至適治療は,血友病専門医,全国血友病患者組織, 全般的精査のための CCC への紹介の前に,予備 的な遺伝カウンセリングを提供することができる。 HIV 感染や HCV 感染の治療へのアクセスをもつ (必要な場合は CCC を介して)。 ● ① ケアと治療に関するすべての側面。 ② 資金(必要な様々なサービスを十分に提供できるだ けの資金を確保するため) 。 ③ 組織,診療提供とそれに関連する秘密保持(専門 医療も含める) 。 ④ 精度管理システムと監査。 ● 身体障害者が利用できる施設である。 ⑤ 医療従事者の教育と訓練。 ● CCC との協力体制の下,定期的な患者追跡と在 ⑥ 血友病患者とその家族のための教育,周知および 宅療法を提供できる。 ● 健康の促進。 CCC との協力体制の下,定期補充療法を提供でき ⑦ 血友病に関する研究の成果,進展。 る(特に,患児または適応となる他の患者に対し ⑧ 血友病に関する情報の出版。 て) 。 ● 高い信頼度で記録を維持・管理する。 全国血友病医療調整グループは,① 鍵となる関連 ● 臨床監査を行っている(内部監査は必須であり, 各方面の協力体制を強化することができる,② 治療 外部監査については,CCC の協力を得ながら何ら 形態を合意の下に体系づけることができる,さらに, かの形式の監査を受けることが重要である) 。 ③ 国家として凝固因子製剤をどの程度優先して調 ● 医学教育を提供している。 達する必要があるかを評価することができる,と想 ● 研究活動に参加している(必須ではないが,参加 定される。治療と診療システムに必要とされる資源 が望まれる) 。 のプランニングに当たっては保健衛生当局の代表者 ● 止血治療の経験をもつ。 に加わってもらったほうが好ましいと考えられるが, ● 血友病診療のコンセンサスガイドラインに準じて診 このグループは血友病医療に関係する特異的なニーズ 10 特別寄稿:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 について当局側に理解をより深めてもらううえで重 以来 20 年以上が経過しているが,血液製剤を介 要な役割を果たしうる。また,このような組織は, して HIV もしくは HCV に感染し,現在も闘病して 国家の優先事項や資源の割り当てについて合意を形 いる患者の割合は依然として高い(1)。 成したい場合に効果的なパートナーシップモデルにな 輸血関連感染症(HIV や HCV ,B 型肝炎ウイルス, るとともに,各方面の意見の相違を調整する公式の A 型肝炎ウイルス,ヒトパルボウイルス B19 ,未知 (3 ∼ 5) の病原体およびプリオン)に対する懸念は依然とし メカニズムにもなりうる 。 て解決されておらず,ウイルス・病原体感染リスク 基本的方針 4:参照文献 1 The Haemophilia Alliance. A National Service Specification for Haemophilia and Related Disorders. Available at: http://www.haemophiliaalliance.org.uk, 2006. (last accessed 14.01.08). 2 NHS Management Executive Health Service Guidelines. Provision of Haemophilia Treatment and Care. United Kingdom Government, London, UK: HSG 30, 1993. 3 Baker JR, Crudder SO, Riske B, Bias V, Forsberg A. A model for a regional system of care to promote to promote the health and well-being of people with rare chronic genetic disorders. Am J Public Health 2005; 95: 1910–6. 4 National Haemophilia Council (Establishment) Order. S.I. No. 451 of 2004. Available at: http://www.oireachtas.ie, 2004. (last accessed 14.01.08). 5 O Mahony B. A Legislative approach to organisation of Nation al Haemophilia Care. Haemophilia 2004; 10(Suppl. 3): 41. を最小化するための研究が継続されている。これま での研究により次のような進歩がみられている。 ● ドナー選択とドナースクリーニング検査の厳格化, 凝固因子製剤製造プロセスへのウイルス不活化・ 除去工程の導入によるヒト血漿由来凝固因子製剤 の安全性の改善。 ● いくつかの製造工程でヒトまたは動物由来物質が 添加されているが,ヒト血漿由来ではない遺伝子 組換え型凝固因子製剤の開発。 ● ヒトまたは動物由来物質を全く含有しない遺伝子 組換え型凝固因子製剤の開発。 至適治療水準の必要性:現在 EU では,血友病患 者の生存と福祉を確実にする安全な凝固因子製剤に よる補充療法を十分に受けられるか否かという点で 格差が存在する(1)。次に示す Table は,凝固因子製 至適水準の安全かつ有効な治療 剤による補充療法を十分に受けられる状況下と受け 現在血友病は, 欠乏凝固因子を補充することによっ られない状況下における血友病患者の死因の相違を て治療されている。この治療は,通常適切な治療薬 表すものであり,ルーマニアにおいて後者の特徴をみ の静脈内輸注によって達成され,次のいずれかの形 てとれる(Brian O. Mahony の私信)。 態で投与される。 ● 出血発症時。これは“出血時投与療法”と呼ばれ る。この治療により,出血部位に十分な凝固因子 が到達したときに止血が達成される。 ● 出血を予防するために定期的に投与する。これは, “定期補充療法”と呼ばれる。 安全な治療の必要性:当初の補充療法は,ヒト Causes of mortality for people with haemophilia 2005: Switzerland Romania Germany AIDS: 29.16% Haemorrhage: 90% AIDS: 14% Cancer: 20.83% AIDS: 5% Hepatic cirrhosis: 14% Cardiovascular: 12.5% Other: 5% Cancer: 23% Haemorrhage: 16.66% Haemorrhage: 10% 血漿由来凝固因子製剤を使用したものであった。し かし,この治療を通じてウイルス感染が蔓延したこ 血漿由来凝固因子製剤による補充療法 とが現在広く認識されている。特に HIV 感染は驚異 血漿由来凝固因子製剤については,単一患者にお 的で,1980 年代に多数の血友病患者が血液製剤を いても患者集団においてもここ数年間にわたり臨床 介して感染するという悲劇がおこった。また,その 疾患やセロコンバージョンが報告されていないことが, かなり以前からヒト血漿由来凝固因子製剤は肝炎リ ウイルスに対する安全性の間接的証明となっている。 スクを伴うことが知られ,その後の研究でこれらは しかし,より正確な情報を得るためには,血友病患 HCV によるものであることが証明された。 者大規模コホートを追跡する必要がある。 11 Full Translation: B. T. Colvin, et al. 米国疾病予防センター(CDC)のユニバーサルデー タベースは,1988 ∼ 2002 年の血友病患者における セロコンバージョンについて調査したものである。HIV についてはセロコンバージョンが認められた患者はな く,HCV については 1 例のみで認められた。登録さ れた他のセロコンバージョンは,すべて A 型肝炎ウイ ルスおよび B 型肝炎ウイルスに対するワクチン接種に よるものであった。同様に,後方視的検討と前方視的 検討(2 年間)とを混合する形式でオーストリア人血 safety monitoring among persons with bleeding disorders — United States, May 1998–June 2002, MMWR 2003; 51: 1152–4. 3 Muntean W, Zenz W, Falger J et al. Sixteen years of treatment with pasteurized human clotting factor concentrate in children and adolescents: a pharmacosurveillance investigation comprising 727 patient years. Semin Thromb Hemost 2001; 28(Suppl. 1): 63–73. 4 Schneider B, Becker M, Brackmann H-H, Eis-Hübinger AM. Contamination of coagulation factor concentrates with human parvovirus B19 genotype 1 and 2. Thromb Haemost 2004; 92: 838–45. 友病患者 81 例における感染性疾患の発症を追跡した 研究(総追跡期間:727 患者年)でも,凝固因子製剤に 関係する感染性疾患の発症は認められていない(2 ,3)。 ヒトパルボウイルス B19 は,ウイルス不活化処理 在宅療法と家庭への医薬品の配送 過去 30 年以上にわたり,血友病患者は在宅療法 が可能であると認識されてきた(1 ∼ 3)。在宅での血友 に高度の抵抗性をもつため,ウイルス汚染のマーカー 病の治療は,病院で治療を行った場合と比較して, として有用である。凝固因子製剤の製造における精 ヘルスケアシステムに対する経済的インパクトの軽 製工程では,いくぶんウイルス量は減少するが,様々 減をもたらすとともに,患者およびその家族の QOL な形態のヒトパルボウイルス B19 が血漿由来凝固因 をも改善する(4)。 (4) 子製剤で依然として検出されうる 。 在宅での治療は,出血が発症した際の速やかな凝 他の未解決の問題として,変異型クロイツフェル 固因子製剤の投与を可能とするとともに,必要とさ ト・ヤコブ病を引き起こすプリオンが,見た目は明 れる凝固因子製剤の量の最小化を可能とする。さら らかに健康であるが潜伏期間にあるドナーの血液を に,短期間の身体障害を減少させ,長期的な関節 介して感染するか否かが挙げられる。これまでのと 損傷を回避することを可能とすることから,結果と ころ,血友病患者におけるこのような感染は報告さ して関節機能の独立性を維持することにも寄与す れておらず,リスクは極めて低いと推察される。 る。早期に治療を行えば,より速やかな止血が可能 であるため,凝固因子製剤の使用を若干軽減できる 遺伝子組換え型凝固因子製剤による補充療法 ことに加え,罹患を有意に減少させることができる。 遺伝子組換え技術を使用して製造された凝固因子 在宅療法を導入することにより,進行した血友病性 製剤が 1990 年代半ばからいくつかの国で使用可能に 関節症をもつ患者の割合は減少するが,皆無にする なった。承認前の試験や承認後のサーベイランス研 ことはできず,特に高齢患者では難しい。また,在 究で,HIV 1 型(HIV-1)や HCV のようなヒトに感 宅療法には次のような利点がある ― ① 定期補充 染するウイルスに対する安全性について検討されて 療法の恩恵に患者が浴することを可能とする,② 緊 いるが,現在承認されている凝固因子製剤は安全で 急輸注のために患者が地域の血友病治療センターあ あることが示されている。 るいはプライマリーケア施設を受診しなければならな 遺伝子組換え型凝固因子製剤の製造技術は最近 い必要性を減ずることができる,③ 患者とその家族 さらに進歩し,製造工程におけるヒト・動物蛋白質 が可能な限りノーマルで活動的な日常生活を送れる 成分の除去が段階的に達成されている。 ようになる。 在宅療法と自己投与が可能になったことにより, 基本的方針 5:参照文献 1 World Federation of Hemophilia Global Survey 2004. Available at: http://www.wfh.org. (last accessed 14.01.08). 2 Hollinger FB, Kirvata A, Oakley M, Soucie M, Evatt B. Blood 12 血友病患者は単独での遠距離旅行も楽しめるように なった。最近では国際的治安に対する脅威が高まり, 医薬品(液体や,注射針その他の鋭利な医療器具) の交通機関への持ち込みに関する規則がより厳格化 特別寄稿:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 されている。しかし,血友病コミュニティーの自立性 供給業者が医療機関と契約し,医薬品の購入,在 は堅持していかなければならず,この問題については 庫管理,家庭への配送に責任を負うことになってい 関連当局と調整し,解決していかなければならない。 る。このシステムは,経済的ベネフィットが見込める 在宅療法のプログラムは,HTC を既存のヘルスケ とともに,患者への医薬品の供給を容易にすると考 アシステムに組み込み,HTC の指導の下に提供さ えられる。 れるべきである。しかし,凝固因子製剤が適切に使 用されることを確実にするため,地域に実践的な教 育的プログラムを提供することが重要である。また, 有意な出血が発症した場合や治療が速やかに奏効 しない場合には,専門家へ助言を求めるよう助言し なければならない。患者とその家族に集中的な教育 と訓練を提供することによって,ヘルスケアチームへ これらの集団を大切なメンバーとして取り込むこと ができるとともに,多大なるベネフィットがもたらさ れると考えられる。 在宅療法が提供されている国々では,施設受診頻 度と入院件数の減少,そしてその結果としての公立 医療施設の負担軽減が認められている。しかし,患 者の全体的な健康と凝固因子製剤使用量を評価す るため,さらに,保管記録の精度を維持するために, 頻度は低いが定期的に患者が受診することを確実 にしておく必要がある(5 ,6)。 基本的方針 6:参照文献 1 Strawczynski H, Stachewitsch A, Morgenstern G, Shaw ME. Delivery of care to hemophilic children: home care versus hospitalization. Pediatrics 1973; 51: 986–91. 2 Levine PH, Britten AF. Supervised patient-management of hemophilia. A study of 45 patients with hemophilia A and B. Ann Intern Med 1973; 78: 195–201. 3 Le Quesne B, Britten MI, Maragaki C, Dormandy KM. Home treatment for patients with haemophilia. Lancet 1974; 2: 507– 9. 4 Levine PH. Delivery of health care in hemophilia. Ann N Y Acad Sci 1975; 240: 201–7. 5 Chuansumrit A. Treatment of haemophilia in the developing countries. Haemophila 2003; 9: 387–90. 6 Adewuyi JO, Coutts AM, Levy L, Lloyd SE. Haemophilia care in Zimbabwe. Cent Afr J Med 1996; 42: 153–6. 7 Arnold E, Heddle N, Lane S, Sek J, Almonte T, Walker I. Handheld computers and paper diaries for documenting the use of factor concentrates used in haemophilia home therapy: a qualitative study. Haemophilia 2005; 11: 216–26. 記録の保管は,在宅療法プログラムに必要不可 欠の要素である。これらの記録は,治療を提供して 定期補充療法 いくうえで貴重な補助になるとともに,何らかの問 重症血友病患児における定期補充療法の早期開始 題を知らせる重要な警報にもなりうる。また,患者 は,完全にまたは著明に至死的出血の発症,慢性関 に記録をつけてもらうことにより,その患者の特異 節疾患および身体障害を予防し,結果として,外科 的なニーズに関する患者自身の表現能力を高められ 的治療の必要性を軽減するとともに,血友病患者の るとともに,関係者間のコミュニケーションの改善に 健康と福祉の改善に寄与する(1 ∼ 3)。 もつながる。また,記録の蓄積は,凝固因子製剤 これまでに報告されているデータは,血友病患者 のより適切な在庫管理を可能とし,浪費を最小限 の治療において定期補充療法が出血時投与療法に比 に抑え,高価な資源の最適な活用を可能とする。 べて有意に有効であることを強く示している(4 ,5)。 コンピューターを使用した在宅療法のモニタリングシ また,報告されているすべての臨床比較試験で,本 ステムが現在開発途上にあり,将来は,より容易な 療法を受けた患者における出血頻度の減少が証明さ (7) モニタリングが可能になるであろう 。 れている。 在宅療法は,HTC からより独立した治療を可能 コスト – ベネフィット分析を含め,定期補充療法 とするが,これのみでは患者は依然として凝固因子 の結果をより詳細に精査するとともに,欧州の地域 製剤や医療器具を受け取りに HTC まで足を運ばな 間で,さらには国際的に比較する必要があるが,こ ければならない。 れを行うためには定期補充療法の標準的定義に関し 患者自宅への医薬品配送パッケージが既に開発さ て国際的合意が必要である(6)。しかし,一般的に「一 れている。この配送システムでは,運送会社または 次定期補充療法」は,出血とその影響を予防するこ 13 Full Translation: B. T. Colvin, et al. とを目的としているため,小児期の早い段階で開始 今後さらに評価する必要があるが,標的関節の保護 され,多くの場合,いずれかの部位で出血が発症す と出血予防については既にその価値が確立している。 る前または最初の関節内出血の発症時に開始され 軽症患者については,臨床状態を有意に悪化させる る。このタイプの定期補充療法は,凝固因子製剤の ことなく出血時投与療法へ切り替えることが可能で 使用量が多くなるため(少なくとも初期段階におい あるかもしれない。定期補充療法が既に導入されて て) ,コスト高であることが短所である。一方,「二 いる欧州の一部の国々ではこれまでに達成されたサー 次定期補充療法」は,再出血予防のために開始され, ビスのレベルを維持していくための努力が必要であ 小児期の早い段階での凝固因子製剤の投与は避けら り,未だ定期補充療法を導入できていない国々では れる。しかし,このタイプの定期補充療法は,その これを促進していく努力が必要である。 性質上,より重症の関節障害と関連している。 定期補充療法が最初に考慮されたのは,1950 年 代である。当初は凝固因子製剤が現在のようには普 及していなかったため,低用量が使用され,血友病 性関節症の発症後に定期補充療法が開始されること もしばしばであった。ともあれ,これらの治療によっ て患者の健康状態と QOL は著明に改善したと報告 されている。その後,時間の経過とともに定期補充 療法のレジメは強化され,かつ,より早期に開始さ れるようになった(2)。出血時投与療法と比較した定 期補充療法のもう 1 つの利点は,インヒビター出現 リスクを低下させると考えられることである(7 ,8)。 定期補充療法と出血時投与療法の臨床的利点を 後方視的または前方視的に比較したいくつかの研究 では,前者を行った場合には出血頻度が有意に減少 し,その後の疼痛および関節障害が抑制されること が示されている。最も良好な結果は,関節内出血が 未だ発症していない,あるいは最小限度である早期 の段階で定期補充療法を開始した患者集団で認めら れているが,どのような方式であれ定期補充療法を 行った患者集団では,出血時投与療法を受けた患者 集団に比べて関節のアウトカムが良好である(1 ∼ 3 ,5)。 若年成人では出血時投与療法のコストと中間用量を 基本的方針 7:参照文献 1 Nilsson IM, Hedner U, Ahlberg A. Haemophilia prophylaxis in Sweden. Acta Pediatr Scand 1976; 65: 129–35. 2 Hoots WK, Nugent DJ. Evidence for the benefits of prophylaxis in the management of hemophilia A. Thromb Haemost 2006; 96: 433–40. 3 Manco-Johnson MJ, Abshire TC, Shapiro AD et al. Prophylaxis versus episodic treatment to prevent joint disease in boys with severe hemophilia. N Engl J Med 2007; 357: 535–44. 4 Royal S, Schramm W, Berntorp E et al. Quality-of-life differences between prophylactic and on-demand factor replacement therapy in European haemophilia patients. Haemophilia 2002; 8: 44–50. 5 Tagliaferri A, Rivolta GF, Rossetti G, Pattacini C, Gandini G, Franchini M. Experience of secondary prophylaxis in 20 adolescent and adult Italian haemophiliacs. Thromb Haemost 2006; 96: 542–3. 6 Ota S, McLimont M, Carcao MD et al. Definitions for haemo philia prophylaxis and its outcomes: The Canadian Consensus Study. Haemophilia 2007; 13: 12. 7 Morado MA, Villar Y, Jimenez V, Quintana M, Hernandez NF. Prophylactic treatment effects on inhibitor risk: experience in one centre. Haemophilia 2005; 11: 79–83. 8 Santagostino EM, Mancuso E, Rocino A et al. Environmental risk factors for inhibitor development in children with haemo philia A: a case-control study. Br J Haematol 2005; 130: 422–7. 9 Fischer K, Van Den Berg M. Prophylaxis for severe haemo philia: clinical and economic issues. Haemophilia 2003; 9: 376– 81. 使用する定期補充療法のコストがほぼ同等で,後者 を行った場合には出血と血友病性関節症の発症が有 専門医療の提供 血友病患者は,しばしば様々な領域の専門家への 意に減少することが示されている。一方,高用量を 使用する定期補充療法は,追加的利益がわずかで, (9) コストは約 2 倍になることが示されている 。他の 医療相談が必要となるため,これらの領域の診療を 効果的に調整する必要がある。 診療や医療相談に連携が必要とされる主な診療科 研究では,二次定期補充療法のコストは出血時投与 療法より高いが,さらなる臨床的改善と福祉をもた を以下に列記する。 らすことが示されている(5)。 ● 救急医療科と急性期外科 ● 小児科 成人期における定期補充療法の有用性については, 14 特別寄稿:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 ● 感染免疫科(特に HIV と HCV) いた。全例の 60%以上の家族が診断の遅れを感じ, ● リウマチ科,整形外科および理学療法科 客観的な評価では全診断の 80%が遅れていた。最も ● 歯科 頻度の高かった症状は軽症皮下出血であったが,血 ● 産婦人科 腫が 39%に,他の出血が 22%に認められた。一方, ● 遺伝科 24%では親による虐待が疑われた。血友病を疑うべ ● 社会心理学的支援 き臨床特徴および検査値の特徴を医療スタッフが十 ● 疼痛管理 分に認識しておくことが重要である。 貧困家庭の血友病患児は救急部門の受診頻度が高 一般外科,泌尿器科,耳鼻咽喉科,神経科学(脳 く,血友病患児の中の特別な一集団と考えられる(5)。 神経外科,神経内科および精神科)も重要で,CCC 血友病や若年性糖尿病,貧血,喘息,てんかんなど ではこれらの領域の診療も提供されるべきである。 複雑な慢性疾患をもつ貧困家庭の小児は救急部門を 現在の血友病治療は安全性が高いが,過去におい 受診する頻度が最も高い。 ては治療関連の悲劇が発生してしまい,今後も我々 は HIV(または AIDS)感染患者,HCV 感染患者お 救急医療の提供 よびその家族のために必要とされる資源を供給して (1) いかなければならない 。 救急部門では様々な疾患をもつ多数の患者が医療 資源のために順番を競わなければならない状況がし 1991 ∼ 2001 年の 10 年間に血友病患者 103 例に発 症した頭蓋内出血(ICH)に関するフランスでの調査 ばしばみられるが,この環境下で血友病患者を待機 させるのは危険である。CCC あるいは HTC は,血 結果が最近発表され,その臨床所見と治療,予後につ 友病患者が救急治療のために来院している場合には, いて報告された(2)。ICH 123 件が登録され,うち 2/3 救急部門を迂回して診療時間内を通じて日帰り病 は重症血友病患者で発症していたが,軽症∼中等症 棟で治療を受けられるよう調整するべきである。常 患者も重篤合併症に対するリスクが有意に高かった 時患者が熟練スタッフによる評価・治療を受けられ (軽症∼中等症患者は,そのほとんどが出血時投与 る体制を整えておくことが重要であり,夜間そして 療法を受け,疾患に関する知識も限定的であった) 。 土・日曜日のスケジュールの調整は不可欠である。 ICH の半数は 15 歳未満の患児で発症し,67%は外傷 後の発症であった。10 例は新生児で,うち 3 例が死亡 した。全体の死亡率は 22%で,長期罹患率は 60 % しかし,傷害あるいは疾患が重篤である場合には は,血友病治療センターのスタッフは迅速に救急部 であった。死亡と関連する予後予測因子としては, 門へ行き,必要な助言と専門技能を提供し支援し 血小板減少症,HCV 感染,脳室内出血または脳実 なければならず,また,このような場合に常に備え 質内出血が見いだされた。全例の 43%では診断の遅 ておくべきである。小児である場合には,それに応 れが,37%では補充療法の遅れが認められた。また, じた適切な準備を整えなければならない。 救急部門での処置が適切であり,このような場合に 全例の半数は,初期段階に救急外来で処置されてい このようなポリシーでケアを提供していくため,患 た。ICH における症状早期発見の重要性,典型的症 者には特別な診察券または携帯型記録装置を発行す 状と予後不良因子に関する情報を日頃医療スタッフ るべきである。 と患者およびその家族に強調しておくべきである。 救急部門を受診した患児を対象とした数編の研究 では,様々な程度の血友病確定診断の遅れが証明さ 将来的には,主に次のような点で電子警報器が有 用になるであろう。 ● (3 ,4) れている 。うち 1 編では,診断前の救急部門受診 他の処置が行われる前にこのような事態を知るこ 回数は 1 ∼ 19 回とバラツキがあり,平均値は 4 回で あった。この遅れは,部分的には家族歴のない新た な遺伝子変異の頻度が高い(30%)ことと関連して 補充療法を必要とする緊急事態が生じた場合に, とができる。 ● 必要とされる個々の補充療法および投与量を適切 に見いだすことができる。 15 Full Translation: B. T. Colvin, et al. ● 治療に影響を与える他の疾患[HIV 感染(または ● 術中出血の予防 AIDS)や HCV 感染]の併存の有無を列記・記録 ● 血友病性関節症の予防 しておくことができる。 ● すべての血友病患者がインヒビター出現リスクを 速やかに CCC を受診することの重要性について助 もつと想定すべきであり,速やかな診断が不可欠で 言を提供できる。 ある。インヒビターの診断と定期的なインヒビター力 価のモニタリングではベセスダ法で測定し,特異度 基本的方針 8:参照文献 1 Taylor G. The emerging needs of persons living with haemo philia and HIV/AIDS in British Columbia. Haemophilia 1999; 5: 1–8. 2 Stieltjes N, Calvez T, Demiquel V et al. Intracranial haemor rhages in French haemophilia patients (1991–2001) clinical presentation, management and prognosis factors for death. Haemophilia 2005; 11: 452–558. 3 Morgan LM, Kissoon M, de Vebber BL. Experience with the haemophiliac child in a pediatric emergency department. J Emerg Med 1993; 11: 519–24. 4 Minhas HL, Giangrande PLF. Presentation of severe haemo philia – a role for accident and emergency doctors? Emerg Med J 2001; 18: 246–9. 5 Pollack HA, Dombkowski KJ, Zimmerman JR et al. Emer gency department use among Michigan children with special health care needs: an introductory study. Health Serv Res 2004; 39: 665–92. と信頼度を高めるために Nijmegen 変法を使用する べきである(この測定法は,国際血栓止血学会の Factor VIII and Factor IX Scientific and Standard(3) 。 ization Subcommittee によって承認されている) しかし,この方法によっても変動係数(CV)は約 25%と依然として高く,特異度,感度,検査室間・ 検査室内 CV のさらなる改善が必要である。 インヒビターを消滅させることにより,費用対効 果が最も良好で標準的な凝固因子製剤による補充 療法が可能となるため,インヒビターの除去はこの 集団における治療の主目標である(4)。高用量凝固因 子製剤の定期投与を行う ITT によって,全インヒビ ター保有症例の 3/4 でインヒビターを除去することが 可能である。したがって,小児,成人を問わず,ハ イレスポンダー( > 5 BU/mL)ではインヒビター出現 後できるだけ速やかに ITT を施行するべきである。 インヒビター保有患者の治療 血友病患者の一部ではインヒビターが出現し,凝 インヒビター保有患者では出血や小手術も致命的 結果を招きうるため,治療を行う場合には適切なタ 固因子製剤による補充療法が無効となる。凝固因子 イミングかつ適切な手法で行わなければならない。 製剤に対するインヒビターの出現は,現在の血友病 インヒビター力価の低い患者( ≤ 5 BU/mL)では,欠 治療における最も重大な合併症である。 乏凝固因子の高用量投与により止血が得られると 重症血友病 A におけるインヒビター出現頻度は約 考えられるが,インヒビター力価の高い患者( > 5 30 %であるが,有病率は低く,一部では自然消失 することが示唆されている。血友病 B における出現 頻度は,血友病 A と比べると極めて低い(1)。インヒ て FVIII または FIX をバイパスする必要があるかもし ビターは治療の主軸となる補充療法を無効とするた これらのバイパス止血製剤を使用した場合の有効性 め,止血治療を困難にすることに加え,手術をより を予測するための簡便な検査がないことに加え,こ 危険なものとする。したがって,インヒビター保有患 れらの治療薬は小さいながらも明らかな血栓塞栓症 者の治療は困難であるとともに,多大な人的・経済 誘発リスクを伴い,かつ非常に高価である(5)。 BU/mL)では,活性化凝固因子含有製剤を使用し れない。しかし,残念なことであるが,現時点では 的資源を必要とする(2)。 インヒビター保有血友病患者の治療では,次の事 項が基礎となる。 ● 時宜を得たインヒビター診断と徹底した経過観察 ● ● 16 インヒビター保有患者における大手術や長期定期 投与は,依然として困難かつコスト高であるととも に,不明確な部分が残されている。 CCC には次の能力が要求される。 インヒビターの除去 ● インヒビターを速やかに診断することができる。 止血治療 ● 出血時に最適な止血治療を行うために,患者を注 特別寄稿:血友病医療に対して欧州がとるべき基本的方針 意深くモニタリングすることができる。 ● 周術期に適切な処置を施すことができる。 ● インヒビター除去治療を速やかに開始することが できる。 ● ● patients with haemophilia and inhibitors. Haemophilia 2007; 13: 38–45. 教育と研究 血友病の医療と研究を発展させていくためには集 至適手法でインヒビター除去治療を継続すること ができる。 学的アプローチをとらなければならない。欧州の国 血友病性関節症の発症を予防または遅延させるた 家間で,そして異なる言語間で教育と治療に関する めの方法を計画できる。 情報を共有することが奨励される。 欧州の血友病コミュニティーにとって極めて重要な 教 育:欧州の血友病患者が現在直面している重 問題が多数未解決である。例えば,① ITT において 大な問題として,本疾患を専門とする医療従事者の 使用すべき治療薬とその投与量,② 異なる臨床状 減少が挙げられる。 血栓止血分野を専門とする医師のリクルートと教 況においてどのバイパス止血製剤を選択すべきか, その至適投与量は? ③ インヒビター保有患者におい 育を促進することを目的に,この分野の専門医を養 てバイパス止血製剤を使用した定期投与は可能であ 成するための新たなカリキュラムが最近開発された るか? 有効であるか? ④ これらの治療薬の使用に (これに関する文献が,現在国際雑誌への投稿の直 伴う高額なコストをどのようにマネージすべきか? な 前段階にある) 。しかし,より多くの医師にこの分野 どについては未だ明確な答えが見いだされていない。 の門を叩いてもらうためには,より一層の努力が必 これらの問題に対する答えは,臨床試験によっての 要なようである。看護師,理学療法士,他の医療ス み見いだすことができると考えられ,特に健康関連 タッフについても,現在進行している専門教育を継 QOL とコストも検討項目に含めたランダム化比較試 続し,この分野の医療を発展させていく必要がある。 研 究:血友病に関するさらなる研究が必要であ 験での検討が好ましい。 欧州は,この分野における臨床研究を促進・発展 させる場として,さらに,インヒビター治療のため り,優先すべき分野を以下に列記する。 ● 分子修飾を加えた FVIII 製剤および FIX 製剤の開 の全国・国際登録を支援し,様々な治療におけるよ 発(消失半減期が長く,かつ免疫原性の抑制され り正確な有害事象出現頻度を提供していく場として (1) た凝固因子製剤) 適しているかもしれない。 基本的方針 9:参照文献 1 Wight J, Paisley S. The epidemiology of inhibitors in haemo philia A: a systematic review. Haemophilia 2003; 9: 418–35. 2 Gringeri A, Mantovani LG, Scalone L, Mannucci PM. Cost of care and quality of life for patients with haemophilia com plicated by inhibitors: the COCIS Study Group. Blood 2003; 102: 2358–63. 3 White G, Rosendaal F, Aledort L et al. Recommendation of the scientific subcommittee on factor VIII and factor IX of the scientific and standardization committee of the International Society on Thrombosis and Haemostasis. Thromb Haemost 2001; 85: 560. 4 Astermark J, Morado M, Rocino A et al. Current European practice in immune tolerance induction therapy in patients with haemophilia and inhibitors. Haemophilia 2006; 12: 363–71. 5 Astermark J, Rocino A, Von Depka M et al. Current use of bypassing agents in Europe in the management of acute bleeds in ● インヒビター出現の予防法 ● 遺伝子治療(2) ● 関節内血腫に続く関節破壊の病因(3) ● 血友病患者とその家族の QOL ● 新たな凝固因子製剤投与法の開発(特に,定期補 充療法を行っている患児のための投与法) 基本的方針 10:参照文献 1 Pipe SW. The promise and challenges of bioengineered recombinant clotting factors. J Thromb Haemost 2005; 3: 1692–701. 2 Lillicrap D, VandenDriessche T, High K. Cellular and genetic therapies for haemophilia. Haemophilia 2006; 12(Suppl. 3): 36–41. 3 Valentino LA, Scheiflinger F. Future aspects of hemophilia research and care. Semin Thromb Hemost 2006; 32(Suppl. 2): 32–8. 17 Full Translation: B. T. Colvin, et al. Section 3: Compendium of haemophilia care guidelines 第 3 節:血友病治療ガイドラインの要約 された。このグループは,2 年間にわたり現行のベス トプラクティス・ケアとベストプラクティス・ガイド Country Document ラインをレビューするとともに,欧州における血友病 European Medicines Evaluation Agency (EMEA) EMEA/CPMP/BWP/2879/02/rev 1, 23 June 2004, CHMP Position Statement 2004 on CreutzfeldtJakob Disease and Plasma-derived Konsensus Empfehlungen zur Hämophilie-Behandlung in Deutschland, Hämophilie-Blätter 2/ 2000, �Gesamtstrategie Blutversorgung angesichts vCJK�, Bericht der Arbeitsgruppe PaulEhrlich-Institut/Robert KochInstitut, 2001 Nemes László N. A haemophilia elõfordulása, öröklõdése, diagnosztikája, szövõdményei, kezelési alapelvek. Hematológia 2006 Gringeri A. et al. Italian guidelines for the diagnosis and treatment of patients with haemophilia and inhibitors. Haemophilia 2005; 11(6): 611–9. Mauser-Bunschoten E.P. et al. Treatment protocols in the Netherlands. Haemophilia 1998; 4(4): 428–9. Mauser-Bunschoten et al. Product choice and haemophilia treatment in the Netherlands. Haemophilia 2001; 7(1): 96–8. Berntorp E. Guidelines on treatment of haemophilia in Sweden. Haemophilia 1998; 4(4): 425–6. http://www.shg.ch Several comprehensive guidelines on management of haemophilia and allied disorders, including guidelines on the selection and use of therapeutic products to treat haemophilia and other hereditary bleeding disorders. Haemophilia 2003; 9(1): 1–23. UKHCDO (http://www.ukhcdo.org) Guidelines for the Management of Hemophilia (http://www.wfh.org) 医療を提供している側とそれらの医療サービスを受 Germany Hungary Italy Netherlands Sweden Switzerland UK World Federation of Hemophilia けている側のニーズを評価してきた。また,この過 程では血友病患者組織の代表者と血友病専門看護 師へ助言を求めた。 本稿は,今日の欧州において将来の血友病医療・治 療を憂える血友病専門医の視点を代表するものである。 また,本稿は,著者欄に記載されていない次のワー キンググループ会員を含めて全会一致で承認されたも のである: Ludlam C, Edingburgh; Mannucci PM, Milano; Altisent C, Barcelona; Aronis S, Athens; Auerswald G, Bremen, Batorova A, Bratislava; Cid AR, Valencia; De Moerloose P, Geneva; Dolan G, Nottingham; Fraga M, Porto; Hermans C, Bruxelles; Holme PA, Oslo; Katsarou O, Athens; Klamroth R, Berlin; Kotsi P, Athens; Lambert T, Le Kremlin Bicetre; Ljung R, Malmö; Makris M, Sheffield; Mantovani L, Napoli; Mingot Castellano EM, Malaga; Negrier C, Lyon; Nemes L, Budapest; Oldenburg J, Bonn; Pasi J, London; Pabinger I, Wien; Peerlinck K, Leuven; Rocino A, Napoli; Santagostino E, Milano; Schved J-F, Montpellier; van den Berg M, Utrecht; von Depka M, Hannover; White B, Dublin; Windyga J, Warzawa 謝 辞 実り多い議論をいただいた世界血友病連合 (WFH) 前プレジデントの Brian O’Mahoney 氏,European Haemophilia Consortium プレジデントの Hubert Hartl 氏,血友病専門看護師の Kate Kahir 氏,Christine Harrington 氏に深謝する。 Interdisciplinary Working Group による今回の研 究は,Baxter 社からの無制約の助成金により支援さ れた。 第 4 節:著 者 本稿は,欧州 19 ヵ国からの血友病専門家 45 名か らなる Interdisciplinary Working Group により作成 18 利害関係に関する宣言 我々は,利害対立やバイアスをもたらしうる利害関 係を一切もちあわせていないことをここに宣言する。
© Copyright 2024 Paperzz