Vol. 22, No. 5

Vol.22 No.5 September – October 2006
Contents
ii
SEMIの最近の活動から
P.1 巻頭言:グローバルな組織 SEMIの役員就任にあたり
P.2 2006年SEMI役員会P&P 報告
P.3 SEMICON West 2006 報告
P.4 第30回 セミコン・ジャパンの開催
P.6 SEMIとSEAJによる新イベント開催のお知らせ
−ISTF(Industry Strategy and Technology Forum) 2006−
P.14 ナノテクノロジーとEHS
−マイクロエレクトロニクス産業の立場からの概観−
P.16 特許出願から見たナノテクノロジー
P.18 トップ技術で世界をリードする太陽光発電
P.20 フラットパネルディスプレイ
(FPD)
市場の現況
P.21 中国での半導体産業投資の発展
P.22 開発秘話:産業用超小型放射光源「AURORA」
P.7 米国通信:Resilientということ
P.24 豊橋技術科学大学の産学連携
P.8 情報通信を支える次世代高周波電力
トランジスタ - GaN HEMT -
P.26 SEMI新会員企業のご紹介
P.10 SEMIマーケット・レポート
P.12 パワーエレクトロニクスの最近の動向と
今後の期待
P.28 SEMI Newsコラム:詩的感性
iii
FPD の 展示会「FPD International 開催 の
ご案内
SEMIの最近の活動から
暑い暑いと思っていましたが、
いつの間にか抜けるような青空の高さにすがすがしさを覚える
季節がやってまいりました。
7月にはSEMICON Westがサンフランシスコで開催されました。グローバルな展示会の改善
を試みた今年の目玉として、
いくつもの新機軸を取り入れ、事前のプロモーションにも従来にな
い意気込みで取り組んでまいりました。はっきりと眼に見える変更が数多くあり、参加された皆
様には「今までと変わった」
という強い印象を与えることができたのではないかと自負しており
ます。また会期中にSEMI会員総会が開催され、
会期直後にはSEMI役員会が行われました。ここ
では、日本から新たに役員となった日立ハイテクノロジーズの中野様が紹介されました。本件
は項を改めて報告させていただきます。
さて日本ではかねてからご案内の通り、
この 12月にはセミコン・ジャパン 30周年、STS( SEMI
25周年を迎えます。昨年のセミコン・ジャパン開催直後から、SEMIジ
Technology Symposium)
ャパンのスタッフは、会員会社の代表から構成される委員会と緊密に連携して作業を進める
傍ら、SEMICON Westをはじめ各地域のSEMICONショーの最新の状況を把握し、展示内容
や運営についてグローバルなSEMIのノウハウを学んでまいりました。STSもまた、会員企業の顧
客や関連団体からの委員も加えた幅広いメンバーで企画を進めてまいりました。いまや世界
最大のSEMICONショーとなったセミコン・ジャパンを、会員会社や関係する皆様のご協力によ
り成功させていくことで、各地域のSEMICONショーにもさらに前向きの刺激を与えてまいりた
いと考えます。
ところで、10月には、長い歴史を持っていたISSジャパンを発展的に解消し、SEAJとの共催という
形で新たに計画したISTFが横浜で開催されます。両団体の緊密な協力のもと、2日間にわたり、
高い密度でパッケージされたビジネスとテクノロジーを学び討論する場として、
このISTFが日本
の半導体ならびに関連業界を一層成長させるきっかけになるものと確信しております。また翌
週には、同じ横浜で、日経BP社と共催のFPD Internationalが開催されます。こちらはフラットパ
ネルディスプレイの国際的な展示会であり、FPD産業の中核となったアジアにおける情報のハ
ブとして、
ネットワーキングのまたとない機会となります。これら二つの共催事業は、SEMIの今後
の発展の方向性を探求し、具体化していく上でも大変重要なものです。
以上申し上げた重要なプログラムがこれから年末にかけ実施されます。10月横浜、12月幕張
で、一人でも多くの皆様にお目にかかるのを楽しみにしております。
SEMIジャパン 代表
セミコン・ジャパン出展社説明会(大阪)
SEMI FORUM JAPAN 会場に
て
2006, 9-10
Contribution Article
グローバルな組織SEMIの役員就任にあたり
−業界全体の健全な発展を目指して−
株式会社日立ハイテクノロジーズ 執行役常務 中野 和助
去る7月12日、米国カリフォル
ここで私達の一日の生活を振りかえりますと、
“おはよう”で始
ニア州サンフランシスコで開
まり
“おやすみ”で終わります。当社、日立ハイテクノロジーズ
催されましたSEMI年次総会に
のビジネス領域を半導体産業に当てはめますと、この挨拶の領
おいて、KLA - Tencor 社の
域を越えるものとなっております。当社には商事部門と自社製
Richard P. Wallace氏(CEO)とともに、グローバルな組織であ
品製造部門があり、商事部門では、シリコンウェーハ、液晶用各
るSEMIの役員に選出され、就任いたしました。SEMI会員の皆様、
種材料、エレクトロニクス部品、電子デバイスなどを仕入れて販
SEMIの方々“
、会員のためのSEMI”
を目指し、業界の寄与に貢献
売しております。また商権確保の観点でグローバル展開を図っ
したいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。
ており、海外拠点を多く持っております。
さて、半導体産業の過去、未来を見ますと、市場は下図に示され
ンス部門、液晶&HD 製造装置部門、表面実装機
(チップマウン
ますように、
ター)
部門があります。市場変化が激しい半導体産業、液晶産業
1. 米国大統領選挙(次回2008年11月4日)
を装置・材料の両面から捉え、
「おはよう から おやすみ」まで
2. オリンピック
(次回北京2008年8月8−24日)
のように、原材料から、パソコン、液晶テレビに装着される基板の
に影響されていると理解しております。
市場をチップマウンターのニーズで捉えることなど、商社、自社
このような中で、半導体産業の牽引力は、パソコン→携帯電話&
製品を抱えていることが当社の強みでもあります。
インターネット→デジタル家電と言われております。さらに一歩
社内の各所から得られる半導体、液晶事業に関係することを、
自社製品製造部門としては、半導体製造装置部門、ライフサイエ
進めて牽引力の中身を見ますと、パソコン【MPU動作周波数に
「異なる断面から捉えること」に役立てたいと思っております。
、携帯電話&
よる性能向上からMPU1watt当たりの性能向上へ】
インターネット【データ転送速度】
、デジタル家電【動画処理&画
SEMIの活動は、SEMICONショーによる展示会、セミナーの開
素数】となっており、パソコン向け半導体業界では、現在パラダ
催、装置/材料の国際標準規格化、市場統計等の情報提供等、技
イムシフトが起こっていると理解しております。また、現在の半
術とビジネスの両面から非常に幅広いものとなっております。一
導体業界に対し市場の成熟論も出ておりますが、一方で見方を
方で半導体業界は、従来の記憶、演算を中心とした世界からよ
変えれば、過去と異なり大きなマイナス成長がなく、GDPの成
り人間に近い知覚の世界へ踏み出し、新しい潮流が着実に動き
長に寄与できる業界と、ポジティブに捉えております。
出しております。先ほども触れましたように、パソコンの世界では、
Windows VISTAの市場投入計画により、グラフィック市場で市
場構造が変化、またMPUのアーキテクチャーも大きく変化し、新
たな競合とともに新たなビジネスチャンスが生まれてきております。
SEMI組織の中における役員会の役割は、会員企業から選出さ
れた地区代表者として、SEMIの全世界に拡がる活動について討
議し、基本方針を決定することにあります。私としましては、先ほ
ど触れました弊社の強みを、最先端技術、最新製品の情報発信
の場であるSEMICONショーをはじめ、国際経営者会議、スタン
ダード関連プログラム等のSEMIのイベントを通じて生かし、現在
動きつつある新しいビジネス潮流の方向性およびそれに伴う技
術動向について、SEMIより発信することによって、会員企業の
方々にいち早く動向を把握していただきたい。これにより、SEMI
の存在意義を高め、業界のより健全な発展を目指し、また業界団
1. 半導体製造装置市場は半導体市場にリンクして上昇、下降する
体として各国に対する発言を行う等、世界中の半導体ユーザー
2. Supply Chain Managementの進化とともに半導体市場の変化
および関連企業、関連団体から信頼され、会員の皆様に役立つ
が穏やかになり、半導体製造装置市場の変化も穏やかになる
SEMIに貢献したいと考えております。
3. Supply Chain Managementの進化とともに、マイナス成長が起
こりづらくなった
9-10, 2006
是非とも皆様のご教示とご支援をお願いいたします。
1
P&P Report
2006年SEMI役員会P&P 報告
SEMIジャパン代表
熊谷 多賀史
SEMIは国際的な組織であり、その運営の重要事項は各国の会
アドボカシーの責任者も兼ねている Vicki Hadfieldからは、
員会社から選出された役員により協議、決定されている。
Intellectual Property
(知的財産)問題に関するアップデートが行
P&PとはPolicy & Planning Meetingのことで、SEMIのインターナ
われた。さらに、前チェアマンであるEd Segal氏が議長を務めた
ショナル役員会の年3回ある会議の中で、7月のSEMICON West
SEMI内規に関する臨時委員会の報告があり、昨年から今年にか
直後に行われるものである。ちなみにあと2 回は、3 月の
けて実施した、会費値上げに伴って多数のフィードバックを受け
SEMICON Chinaの期間中にMini P&Pとして、また12月のセミ
たSEMIの意思決定等に関し、今後見直しを行い、より一層役員
コン・ジャパンの期間中に次年度予算の承認を中心とした役員
会の機能を高めるための検討を進めていくことが確認された。こ
会が行われる。
のほかにも、業界動向のインプットや、重要な事項を取り扱う新
P&Pは名前の通り、SEMIの活動の方向付けをする大切な役員
委員会の発足に関する論議などが行われた。その後、役員なら
会と位置付けられており、3回のうち唯一SEMICONショーとは
びにSEMIの幹部スタッフがMembership、Exposition、Standard、
時期も会場も変えて行われている。今回の P&Pに先立ち、
FPDの4つの分科会に分かれた討議を行った。これらの委員会に
SEMICON West期間中にサンフランシスコで行われた会員総
参加したSEMIのスタッフは、あらかじめ分担して作成した資料を
会では、新たな役員の紹介、ならびに今回辞任された元大日本
元に情報提供を行った。熊谷はMembership分科会に参加した。
スクリーン製造
(株)
の大神信敏氏の紹介が行われた。新任役員
以下に各分科会の主なトピックを列挙する。
の一人には、日本から
(株)
日立ハイテクノロジーズの中野和助
Membership
氏が選出された。
●
会費値上げ後の会員資格更新の推移について報告。北米で
はM&A
(Mergers and Acquisitions)
による会員数の減少が目立
さて本年のP&Pは、SEMICON West終了後7月14日から16日に
かけ、カリフォルニア州ソノマのFairmont Sonoma Mission Inn &
つ。会費収入としては予算に対し未達。
●
今後準会員
(デバイス/パネルメーカーなど)
の加入促進を、ス
タンダード製品の拡販と組み合わせて進めることを提案した。
Spaを会場に行われた。上記の3回の役員会のうちでこのP&P
だけは、会場を別な場所に移動し、日程も別にとって、十分に
Exposition
SEMIについて論議を尽くしてもらおうというのが狙いであり、
●
SEMICON Westで試みたリエンジニアリングの方策の紹介
ここ数年はSEMICON West会場からあまり遠くはないが、日常
と評価。イメージ刷新に注力し、今後各地域のSEMICONシ
のビジネスを束の間離れられるリゾート地を会場としている。
ョーにも成果を反映していく。
メンバーとしては、上記会員総会で紹介された
(株)
日立ハイテ
Standard
クノロジーズの中野和助氏と、KLA-Tencor Corporationの
●
報告と今後の方向について論議した。
Richard Wallace氏が今回から新たに加わることとなった。先の
会員総会で正式に就任された、初の台湾出身の SEMI 会長
5月に発足したMTF(Manufacturing Technology Forum)の
●
スタンダードのコミュニティにより、もっとSEMI会員やスタン
ダード利用者が増える方向で再検討することとした。
Archie Hwang氏が議長を務めた。
FPD
グローバルなFPD戦略について論議した。
初日は夕刻に配偶者を含めて会場近くのワイナリーを全員で見
●
学、その後ワイン貯蔵用のカーブの一部にしつらえたテーブル
分科会終了後の全体会では、各分科会の討議内容の報告を受
を囲んでのディナーとなった。ここでは新任の役員が先輩役員
け、質疑応答を経て今後の方向が確認された。
やSEMIのスタッフと話をしたり、各地域選出の役員が他地域の
役員と交流するなど、打ち解けた雰囲気の中で活発なコミュニ
続いて3日目は、今年度のSEMIの事業計画の詳細な進行状況が
ケーションがなされた。
討議された。2日目の各分科会の討議とそのまとめの余韻が残
る熱心な論議がなされ、全体を通して年末の役員会へ向けての
明けて2日目には、新チェアマンArchie Hwang氏の挨拶に引き
準備やアクションが確認された。最後に、退任される役員の挨拶
続き、SEMIのCEOであるStanley MyersがSEMIの最近の活動を報
と記念品贈呈があり、役員会は無事終了した。次回は12月のセ
告した。ここではSEMIの幅広い活動全般にわたり、過去6ヶ月間
ミコン・ジャパンの時期に開催され、来年度のSEMIの事業計画
の成果や改善について紹介した。また、北米の地域代表であり、
と予算が審議承認される予定である。
2
2006, 9-10
SEMICON West 2006 Report
SEMICON West 2006 報告
−開催に合わせ業界が最新ニュースを発表、盛り上がりに拍車−
去る7月11日
(火)
から13日
(木)
にかけて、サンフランシスコ・モ
スコーニセンターで、36回目のSEMICON Westが開催された。
前工程と後工程の展示が、再び同時に開催されるようになって
二回目の開催である。後工程の展示会場は3階建という構造上
の特徴から、昨年来、来場者導線の工夫が迫られていた。今回
は、その3階のフロアに、Emerging Technologiesやキーノートス
ピーチのセンターステージを、また、今年の新企画であるTechX
POTs(テックスポット)のセミナー会場を設け、来場者が足を
向ける工夫が施された。また、その高い天井と大きな窓を生かし、
少し遊び心のあるビアホールも設けられていた。明るい日差しの
中、久しぶりの交流を楽しまれる姿が散見され、SEMICON West
の一つの特徴である業界交流に一役買っていた。
グローバルに、業界の比類ない交流の機会を提供する場となる
ことを目指し新たに企画されたのが、TechXPOTsであり、また
品や新規企画のニュースを発表し、また、テキサス州オースティ
SEMICONNECTという来場者サービスである。TechXPOTsと
ンのSamsung社の新300mm工場の話題や、AMD社が展示会直
は、製造生産性、新技術、後工程とデバイスの微細化をテーマに
前に発表したニューヨーク州への300mm工場新設のニュースも
した「展示会の中の技術セミナー」である。展示ブースの近く
展示会の盛り上がりに貢献した。展示会の期間中、新規提携で
で同じテーマの技術実演をすることにより、一層の賑わいをみ
パ ート ナ ー 同 士 と な っ た Carl Zeiss NTS社 と SII Nano
せ、SEMICON Westの新特徴として位置付けられていた。また、
トリプルビーム装置
Technology社がFIB-SEMダブルビーム、
SEMICONNECTでは、ブース訪問のプランニングの助けとな
「XVision 300」の新製品、ASML社はTWINSCANTM 露光装置
るよう、事前に来場者に展示会情報を提供し、訪問すべき出展
の500台目の出荷を発表した。
社とのマッチングサービスが行われた。
このような中、会場には全世界の大手ICメーカーの代表が来場
展示会場内では、1,250社3,300小間の出展社が、3棟あるモスコ
し、サプライヤとのミーティング用に用意されていた会議室を、
ーニセンター全てを埋め尽くし、その内200社以上が初出展であ
AMD、Hynix、IBM、Intel、Micron/IMFT、Qimonda、Samsung、
った。ナノテクノロジーで作られたゴルフボールの景品や手品シ
STMicroelectronics、Texas Instrumentsなど各社が積極的に利用した。
ョーで来場客を楽しませながらの、Applied Material社のナノテ
国際的な会議でよく知られているSEMICON Westでは、今年も
ク製造システムが多くの目を引いた。キーノートスピーチでは、
ITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)の夏
企業提携と協力の必要性の高まりがテーマとして取り上げられ
季会議が行われ、イベントの期間中100以上のスタンダード会議
た。スピーカーのSteve Appleton氏(CEO & President, Micron
が開催された。
「Bulls & Bears
(株市場の前進と後退)
」と題したセミ
Technology)は、Micron Technologyでは他社とのパートナー関
ナー会場では、SEMIが国際金融コミュニティーに対して半導体市
係を育成することが戦略的目標の基本になっていることを語った。
場の前向きな動きを発表した。
また、Guy Dubois氏(Group Vice President, Strategic Projects, Front End
今年のSEMICON Westでの反響の一つは、ファブレス企業か
Technology and Manufacturing)のスピーチの中で、ST社の顧客、サ
らの来場客が予想以上に多かったということがあげられる。今後
プライヤ、時には競争相手との提携の作り方を説明し、ST社が
の業界動向の一つの大きな指標かもしれない。
(SEMI HQ, Tom Salmon)
「提携マニア」と時々言われるのも一つの自慢だと述べた。キー
ノートと技術プレゼンの中で、他のテーマとしてよく聞かれたのが、
来年の開催予定は以下の通りである。
DFM(Design for Manufacturing)とDFT( Design for Test)であっ
SEMIジャパン展示会/プログラム部
た。一方、展示会の開催に合わせて、出展企業、ICメーカーから
Tel:03.3222.6022 Email:jshowsinfo@semi.org
重要な発表がなされ、会場の外でも賑わい感が増していた。
●
SEMICONON West 2007
SEMICON Westの前の週には、東京エレクトロン
(株)
(
、株)
アド
会期 7月17
(火)
∼19日
(木)
バンテスト、
(株)
日立ハイテクノロジーズ、
(株)
ニコンなどが新製
会場 サンフランシスコ モスコーニセンター
9-10, 2006
3
SEMICON Japan 30th Anniversary
第30回 セミコン・ジャパンの開催
半導体業界最大のイベント
「セミコン・ジャパン」
は、おかげさまに
ジャパン2006では、以下のパビリオンを設け、集中展示を行い
て今年30回目の開催を迎えます。また同時に、併催イベントの
ます。
STS
(SEMIテクノロジーシンポジウム)
も25周年開催となります。好
・MEMSパビリオン
調な業界状況にあってセミコン・ジャパンは今年も規模を拡大し、
・ナノテクノロジー・パビリオン
小間数は史上最多であった2000年の3,940小間を上回り、すで
・太陽光発電パビリオン
に4,400小間を超えております。各社からさまざまなご協力をいた
・ベンチャー・パビリオン
(月)
・5日
(火)
の説明
だいて、フロアプランも何とか完成し、9月4日
・製造エンジニアリング・パビリオン
会で皆様にお届けすることができました。
誠に有り難うございます。
(祝祭)
」開催
■「セミコン・ジャパン30周年記念ガーラ
「記念ガーラ
(祝祭)
」
を開
セミコン・ジャパン30周年を記念して、
■Sharing Expertise, Making Innovation
催いたします。ガーラは、エレクトロニクス技術の進化と発展、半
−協働によるイノベーションの創出−
導体産業の発展を業界をあげて祝う記念行事で、記念講演会
30回を迎える今年のテーマは、昨年に引き続き
「Sharing Expertise,
とディナー・パーティーで構成されます。記念講演会には、京セ
Making Innovation−協働によるイノベーションの創出−」です。
ラの創業者である京セラ
(株)名誉会長 稲盛和夫氏、2001年
と
“価値”を高
セミコン・ジャパンでは、2001年より展示会の“質”
ノーベル化学賞受賞者の理化学研究所 理事長 野依良治氏を
めようと、ご出展社と事務局が手を携え、展示会の活性化を図
お招きし、独自の経営哲学や人材の育成・活用などについてご
っております。セミコン・ジャパンの“質”
と
“価値”
とは、展示会場
講演いただきます。講演会後に、着席式のディナー・パーティー
において「半導体業界の今日と明日が具体的に見えること」
「半
を開催いたします。
導体ビジネスの場、交流の場であること」の実現です。この“質”
また、ガーラの収益金は、日本の高校生を対象とする、ハイテク
と
“価値”
に沿った展示会の改善を図るため、SEMIジャパンで
分野への認識を高める教育プログラム
「SEMIハイテク・ユニバ
は各種施策をご出展社代表である委員会の皆様と討議し、継
ーシティ」
に役立てられます。このプログラムは、次世代を担う高
続的に改善、実行に移しております。
校生に科学や数学が実生活においてどのように応用されている
これに沿って、セミコン・ジャパンでは、今年もまた多数の実機・
のかを楽しく教え、半導体に親しみを持ってもらうとともに、マイ
実物によるデモンストレーションがショーフロアー狭しと操り広げ
クロエレクトロニクス産業の大きな可能性を伝えることを目的とし
られ、最先端の技術が発表されます。まさに日本の製造業の裾
た教育プログラムです。
野の広さ、技術力が、世界の英知が結集されます。さらに、ご
ガーラの参加申込みは、10月上旬よりWebサイトで受付開始する
出展社とご来場者が互いに高い専門性・技術をシェアしていた
予定です。
だく
「ビジネスの場」
「交流の場」が実現されます。展示会を通じ、
(月)
17:00∼21:30
会期:2006年12月4日
さらなるイノベーションの喚起、半導体業界の明日をともに創出し
会場:帝国ホテル 孔雀の間 (東京都千代田区)
てまいります。
参加募集数:500名
の より
対象者:半導体および電子ディスプレイ関連業界の経営幹部
■セミコン・ジャパン 2006 特設イノベーションホール
(税込)
料金:35,000円
近年、半導体製造に関わる部品・材料の技術は、MEMSやナノ
テクノロジーはじめ、そのフロンティア領域を伸ばしております。セ
また、ガーラのほか、セミコン・ジャパン30周年開催を記念して、
ミコン・ジャパンでは、昨年より、幕張メッセの1-8ホールと9-11ホ
30回連続出展企業の表彰、記念DVD製作、記念出版、半導体
ールを繋ぐイベントホールで、近年注目されるエマージングテクノ
の業界構造を分かりやすく紹介するコーナー等、さまざまな企画
ロジーにフォーカスした集中展示を行っております。パビリオン展
が進んでおります。
示、セミナー、シンポジウムとの連携、プレゼンテーション、またご
(月)
より
展示会入場事前登録は、www.semi.org/sj06にて10月2日
出展社同士のコミュニケーションの場も設け、ご出展社、ご来場
開始いたします。
者にとってたいへん実りある企画となっております。セミコン・
セミコン・ジャパン2006にご期待ください。
4
2006, 9-10
New Event, ISTF 2006
SEMIとSEAJによる新イベント開催のお知らせ
−ISTF(Industry Strategy and Technology Forum)2006−
SEMIと
(社)
日本半導体製造装置協会
(SEAJ)
は、共同主催によ
■プログラム概要
(火)
・11日
(水)
の2日間、パシフィコ横浜
(横浜市
り、本年10月10日
プログラムは変更される場合があります。
「ISTF
(Industry
西区みなとみらい)
において、新イベントSEAJ/SEMI
第1日目
(10月10日)
2006」
を開催いたします。
Strategy and Technology Forum)
・基調講演
ISTFは、SEMIが1987年以来19回開催してきた半導体製造装
「カーエレクトロニクス動向」
と、SEAJが1997年以
置・材料の経営戦略セミナー
「ISS Japan」
日産自動車 最高技術顧問
を統合した新たなイベント
来 10回開催してきた「 SEAJ Forum」
大久保 宣夫 氏
で、半導体およびFPD業界に対して包括的かつ国際的な最新
技術・マーケティング情報の入手・交換および人的交流の場を
提供するものです。両団体が協力して、そのネットワークを駆使す
・基調講演
「インテルの半導体ビジネス戦略」
(仮題)
ることにより、デバイスメーカー、装置メーカー、部品材料メーカー、
Intel Corporation, Corporate Vice President,
研究開発コンソーシアム、大学、地方自治体が一堂に会し、半
General Manager, Technology Manufacturing
導体およびFPD業界のさらなる飛躍に向けた議論を深める場と
Engineering,
して、日本における業界最大級のフォーラムを実現することを目指
Jai K. Hakhu 氏
しております。
「躍進する半導体産業−変わることか
本年第一回目のISTFは、
ら始まる成長−」
をメインテーマに掲げ、さまざまな視点から議
・ビジネスストラテジーセッション
「躍進する半導体産業−変わることから始まる成長−」
論を深めます。初日は、午前の「基調講演」
と午後のパネルデ
半導体関連分野の成功企業のマネージメントに、それぞれの
ィスカッションを含む「ビジネスストラテジーセッション」ならび
ベストプラクティスを語っていただきます。特に今回は、人材活
に「レセプション」が予定されています。二日目は、午前・午後
用や事業ポートフォリオの変革、企業文化といった、より根源
を通し、
「個別製造技術」
、
「技術・ロードマップ」
、
「装置・ストラ
的な経営力にフォーカスします。
、
「市場動向」の5つのカテゴリーにわたる
テジー」
、
「FPD関連」
・レセプション
合計11セッションが、講演やパネル形式、セミナー形式によりパ
半導体関連業界のエグゼクティブが一堂に集います。情報収
ラレルに進められます。
集およびネットワーキングの構築に活用いただけます。
ISTF 2006は、半導体およびFPD業界関係者、約1,200名の参加
を予定しています。
(10月11日)
第2日目
ISTF(Industry Strategy and Technology Forum)2006
・マーケットトレンドセッション
会期:2006年10月10日(火)
・11日(水)
・アプリケーショントレンドセッション
会場:パシフィコ横浜(横浜市西区みなとみらい)
・装置サポートセッション
(社)日本半導体製造装置協会(SEAJ)
主催:SEMI、
・次世代ファブリケーションセッション
申込:WEBサイトにて受付中 www.istf2006.org/
・エマージング技術セッション
申込:9月30日まで早期割引料金適用
・環境セッション
参加費用(消費税込)
:
・実装・組立セッション
9/30(土)までにお申込 10/1(日)以降にお申込
みの特別料金
みの料金
10/10(火)
1日目のみ参加
¥34,000
¥40,000
10/11(水)
2日目のみ参加
¥27,000
¥32,000
10/10(火)
・11(水)
両日参加
¥49,000
¥58,000
6
・テストセッション
・ウェ−ハプロセスセッション
・リソグラフィ/計測・検査セッション
・FPDセッション
皆様のご参加をお待ち申し上げております。
お問合せ先:SEMIジャパン イベント受付
Tel:03-3222-5993 Email : jeventinfo@semi.org
2006, 9-10
US Report
米国通信:Resilientということ
パシフィック・ドリームス・インク 代表取締役 酒井 謙吉
冒頭から皆様方には恐らく聞きなれない英単語が出てきて恐縮
自身を思い描いてみるのです。そのようなイメージ作戦により、
を引いてみますと、
「弾力性の
です。英和辞書でこの“Resilient”
プッツンと切れかかった相手からの舌戦や感情の爆発に対して
ある」
「
(逆境や病気などから)
すぐに立ち直れる、すぐに元気にな
も、それらに穴をあけられたり、壊されたりすることなく、はじき
る」というような意味が載っています。文字通りに取れば、何か
返していくという心のありようなのです。英語で、機関銃のよう
にぶつけられたり、ぶつかったりしても、その衝撃をはじき返す
にまくし立てられたり、早口で何を言っているのかわからない
だけの柔軟性があり、決して壊されたりするようなことがない、
ときにも、同じようなイメージを思い浮かべて、自分を追い込む
簡単に元の状態まで修復することができるという解釈をしてみ
ような状況から自分を解き放ちます。感情的になっている人間
ることができます。実は、このResilientという言葉に含まれ、意味
が、冷静な人間から自分の感情を受け止めてくれ、落ち着いた
するところの人間の気質は、異文化で人が異なった環境に対応
返球をしてくれるのであれば、その感情は次第に落ち着いていき
する上で、きわめて重要な要素となっているのです。
ます。異文化の中では、誤解やコミュニケーション不足から来る
この聞きなれない言葉を初めて私が耳にいたしましたのは、数
予期していないことにぶつかるものなのですが、それらも冷静
(Human Resource:人事関係)
セミナー
年前に参加したあるHR
に受け止め、ゴムボールをトスするがごとく、相手に優しく投げ
でのことでした。特定のセミナーの正確なタイトルなどは忘れて
返してやることをイメージするのです。
しまいましたが、成功する経営者やHRマネージャーに必要不可
トップに立つ者や、リーダー
このようなResilientという特性は、
”Resilientの名詞形)
が挙げられ
欠な気質として、この“Resilience(
としてチームを引率する人にとりましては、とりわけ重要な資質
ると当時のセミナー講師が盛んに強調していたのが今でも耳の
であるということがよくお分かりいただけるのではないでしょ
奥に残っています。
うか。日本人として海外に出向き、商談や技術の打ち合わせや
結果が第一とされるアメリカの職場環境では、高レベルのスト
交渉を任されている方々は、仮に肩書に「長」がつかない方であ
レスは常につきもので、結果を出さないことには会社や上司か
っても、会社や組織を代表して海外まで行っているわけですか
らはまともな評価は得られませんし、リストラの対象にさえな
ら、まさにリーダーであります。また海外の相手先はそのように
りかねません。そのような環境下にあっては、ときに“プッツン
見なしているはずなのです。残念なことに、その辺の自信や自尊
と切れる”社員や部下が出てくる現象が発生します。このよう
と呼ぶ)
が十分ではない日本の方が
心
(英語では、
“Self-Esteem”
な社員や部下に上司として対応しなければならないときに、同
海外では時々散見されます。
じく上司も切れていたのでは、事態を悪化させるばかりであっ
Resilientになるということは、何も軟弱になったり、相手に媚を
て、アメリカでは
(元)
社員からの訴訟の主要因にさえなっていま
売るようなことではないわけで、そこにはしっかりとした自己の
す。このようなストレスの大きな職場環境を異文化環境にあて
明確な確立が要求されます。海外に行って、相手国会社との商
はめ、シミュレーションしてみることができます。習慣や言葉の
談や交渉経験を積むことによって、日本人としての意識がかえ
違いから発生するストレスやフラストレーションは、誰でも異
って鮮明となり、日本にいたときにはあまり意識していなかっ
文化の中で働いたことのある人であれば、ご経験がきっとおあ
た自己であるとか、自尊心というものに目覚めることがよくあ
りのはずです。そのような異文化の環境の中で、ストレスやフラ
るようです。アメリカでは、小学生のときからこのSelf-Esteemを
ストレーションとうまく付き合い、職場で円滑な人間関係を続
高めるように教育を施しています。
けていくためには、どうしたらよいのでしょうか。
考えてみれば、Self-Esteemの高い人ほど、Resilientであるようで
アメリカでは、70年代後半から80年代にかけて、心理学の分野で
す。確かな自己が確立しているから、他人のちょっとやそっとの
顕著な発展が見られました。大学では、多くの心理学の講座を開
切れごとで自分までが動揺してしまうようなことがあまりないか
設するところが当時目白押しで、書店では、心理学の書籍コーナ
らだと思います。異文化によるストレスやフラストレーションは、
ーを常設しているお店がほとんどで、現在に至ってもこの趨勢
小さなことが鬱積して起こることが多いですから、些細なことで
にあまり変化は見られません。そのような心理学的な多くの研
鬱積が起こらないように、日頃からイメージを作っていくことが大
究対象や実践的なカウンセリング手法のアプローチから導き出
事でしょう。ときには、身近でそのような話を聴いてくれる人を持
されてきたのが、このResilientという言葉であり、ストレスいっぱ
つこともとても重要なことだと思います。英語では、身近にいて話
いの状況でも切れない、めげない、諦めないといった心の持ちよ
”共
を聴いて静かに相打ちを打ってくれる人を
“Sounding Board(
うを例示的に描いた対処法なのです。
鳴板)
といいます。当然ですが、Sounding Board足りうる人も
ちょうど、ゴムボールや羽毛でできたクッションのように自分
Resilientな人であるわけです。
9-10, 2006
7
SEMI Standards
情報通信を支える次世代高周波電力トランジスタ−GaN HEMT−
沖電気工業株式会社 研究開発本部 佐野 芳明
1. はじめに
携帯電話、インターネットモバイルなどの急速な発展により、次
世代無線インフラ構築の必要性が強く認識されている。2GHz
帯を使用する第3世代のIMT 2000をはじめ、準ミリ波・ミリ波に
至る各種の無線システムが開発・計画されている。たとえば北米
で設置されている無線基地局を図1に示す。このような多用途、
大規模なシステムを広く普及させるには、高出力、高周波動作、
さらに小型、低コストの電力トランジスタが必須となってくる。しか
図2 各種の化合物半導体電子デバイス
(シリコン)
、GaAs
(ガリウム砒素)
素子では、それぞ
し、従来のSi
Bipolar Transistor)
などがある。
れ高周波動作、出力性能などに限界が見えてきた。
GaAs MESFETはしきい値電圧の制御性が良く、製造も比較的
(窒化ガリウム)
結晶は、結晶成長技術の飛躍
新素材であるGaN
容易なことから、高速動作のデジタル集積回路に多く用いられてき
的進歩により、青色LED、青色レーザーなどが実用化されている。
た。InP系HEMTも含めてGaAs-HEMTは、高度なエピ成長技術
一方、高いGaNは絶縁破壊電界、早い電子飽和速度などの材
が必要なものの、高電子移動度の2次元電子を利用してさらに高
料的特長を持つことから、Si、GaAs素子を超える次世代の大電
速・高周波で動作するため、衛星放送受信アンテナの低雑音ア
力、高周波電力トランジスタ実現の期待があり、活発に研究開発
ンプや、高速動作を必要とする光通信用の各種集積回路に用い
が行われている。
られてきた。HBTは複雑な結晶構造を必要とし、プレーナ構造で
ここでは、次世代無線通信が求める高周波電力素子の概要、そ
ないため、大規模集積化に難点があるが、素子としては高周波特
( Gallium Nitride-High Electron Mobility
して、GaN-HEMT
性、低雑音、低歪みなどに長所があり、GaAs FETと各分野で競
Transistor)
素子の研究開発の現状について述べる。
合している。窒化ガリウムは発光素子、照明素子として市場を拡
大しつつあるが、一方、その材料物性は電子デバイスとしてきわめ
て優れた特性を持っている。GaAs-HEMTと同様に高電子移動
度の2次元電子を利用する GaN-HEMTは、熱伝導性に優れた
SIC
(シリコンカーバイト)
基板上に作製できるため、高周波大電力
素子としてこれまでにない特性が期待されている。
3. GaN-HEMT素子
次に、高周波電力素子の観点からSi、GaAsなどと比較しながら、
当社におけるGaN-HEMT素子の開発状況について述べる。
図1 北米の山頂に設置された多用途無線基地局
図3に、Si、SiC、GaAs、GaN素子について、各物性特性から概算
した高周波電力素子としての特性指数および特性比較を示す。
2. 各種の化合物半導体高周波素子
ジョンソン指数、キー指数は、パワートランジスタとしての性能指
GaAs素子は、電子移動度、飽和電子速度が高いことから、高速、
数である。絶縁破壊電圧は出力特性と関係する。電子飽和速
高周波で動作するため、数GHz∼数十GHzで動作する各種のア
度と電子移動度は高周波特性と関係する。GaNは、ワイドバン
ンプ、情報処理集積回路が生産されている。図2に分類するよう
ドギャップであることから、GaAsおよびSiと比較した場合、高温
に、半絶縁性 GaAs 基板に直接イオン注入して動作層を作る
、絶縁破壊電界はGaAs、Siの約10倍と
で動作でき
(∼300℃)
MESFET
(Metal Semiconductor Field Effect Transistor)
、基板
いう高信頼性動作、また電子飽和速度はSiの約2.7倍、GaAsの
上にAlGaAs/GaAsヘテロエピ成長を行い、2次元電子を利用する
約1.3倍などという高出力・高周波動作の特性において優位な
HEMT
(High Electron Mobility Transistor)
、および、エミッタ、ベー
特徴を持っている。さらに、Al、Inを用いてヘテロ接合(たとえ
(Hetero
ス間にInGaP/GaAsなどを形成し動作効率を高めたHBT
を持つHEMTの形成が可能であるため、
ばAlGaN/GaN接合)
8
2006, 9-10
SEMI Standards
短ゲート化しても高電圧動作させることができる。これらの特徴
より、GaN-HEMTはGaAs系デバイスの数十倍の出力性能が
期待できるため、次世代の高周波・高出力トランジスタとしての
期待が大きい。
図5 各種化合物半導体材料・電子デバイスのレーダーチャート比較
らに高出力化を図るため、素子の大型化を進めている。
5. 今後の展望
2003年に発表されたGaN電子デバイスの市場予測を図6に示
図3 各種化合物半導体材料・電子デバイス特性のレーダーチャート比較
す。しかし今日現在、図のような市場があるとはいえない。理由
として、新デバイスがまだ充分にシステム市場に認識されていな
4. GaN-HEMT素子特性
い、材料コストが高く素子の製造コストが競合素子に対して充
GaN-HEMT素子は、ゲート電極を半導体に埋め込むリセスゲ
分に下がっていない、等が考えられるが、製造上の課題もまだ
ート構造によって特性の改善を図ることができる。当社が開発
多く存在している。
しかし、200Wを超える出力や既存デバイスの数十倍となる電力
密度も報告されてきている状況は革命的であり、次世代の無線
システムを支えるデバイスになっていくと確信できるものである。
図4 リセスゲート構造GaN-HEMTの構造断面図
してきた素子構造を図4に示す。
本素子は、
1)高Al組成のn+-AlGaN電子供給層を採用できるため、2次元
電子濃度が高い
2)
ソース・ドレイン電極の下に高濃度なn+-GaN層を設置してい
るため、コンタクト抵抗が低い
3)
ゲート電極直下の半導体層を掘り込んで
(ゲートリセス技術)
図6 GaN電子デバイスの市場予測
おり、寄生抵抗(ソース抵抗)
が小さいなどの工夫を施してい
るため、相互コンダクタンス
(利得、gm)
が大きいなどの特長
日本語版SEMIスタンダード・アップデート2回付きCD-ROM
を持っている。
初回のご購入手続きのみで、引き続きアップデート分の商品準備
が整い次第、お手元にお届けいたします。
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図5に世界トップの525mS/mmという高gm特性を記録したリセ
スゲートGaN-HEMTのDC特性を示す。
として、ゲート長0.15μmの素子にて70GHzを
高周波特性(fT)
得ている。また、高出力用に設計した構造において耐圧が
200V以上、出力特性として2GHz帯で50W出力を得ている。さ
9-10, 2006
9
Market Statistics
SEMIマーケット・レポート
世界半導体製造装置受注額は2005年6月をボトムに上昇カーブ
グローバルネット株式会社 代表取締役 武野 泰彦
■デジタル家電が牽引する半導体市場
■2005年6月をボトムに受注が右肩上がり
2000年のITバブル崩壊後に減少したエレクトロニクス市場が、
World Wide SEMSの2005年6月までの集計結果が出た。世界
2002年から右肩上がりに拡大している。2000年は、PCの2000
半導体製造装置市場は、2005年6月の23億3,700万ドルをボトム
年問題、インターネットの設備投資と携帯電話の需要拡大によ
。2006年5月の世界半導体製造
に受注額が上昇している
(図1)
り、未曾有の市場になった。2000年以降、DVD機器、デジタル
装置受注額は、前月比5.5%増の38億1,600万ドル、6月の販売額
カメラ、携帯電話、ノートブックPC等の半導体応用製品が市場
が前月比7.1%増の40億9,000万ドルだった。現在の投資状況や
を牽引した。2005年から大型FPDTVや携帯音楽プレーヤーの
装置の稼働率などを考えると、従来のシリコンサイクルからはず
需要が拡大した。筆者は、2000年にすでにこのような市場にな
れ、新しいカーブを描いていることがわかる。半導体製造装置
ると予測したが、今後は大型FPDが家庭に入り、ホームサーバ
の合計推移をとって比較する。
市場(販売額)
の上半期(1∼6月)
ー市場が登場していくと予想される。現在は、FPDテレビもサ
2000年上半期の受注額は268億1,800万ドルであった
(図2)
。し
ッカーワールドカップの終了とともに需要が一段落している。一
かし、2001年の上半期受注額は、前年同期比49.3%減の135億
方、新しくSuica等のキャッシュレスが携帯電話にも機能される
8,600万ドルと激減した。2002年の受注額も、前年同期比29.3%
ようになり、キャッシュレス時代の扉が開かれつつある。2008年
減の96億100万ドルと減少した。2003年同期受注額も5.7%微減
の北京オリンピックが目前となり、多少のぶれはあるものの、デ
の90億5,400万ドルと復調の兆しが現れ、2004年同期受注額は
ジタル家電市場は、アジアを中心に右肩上がりに拡大すると予
前年同期比122.3%増の201億2,900万ドルと、シリコンサイクルの
想される。
ピークになった。2005年の同期受注額は、前年同期比約28.5%
1.80
Booking(受注額)
Billings(販売額)
B/Bレシオ
Booking(受注額)
Billings (販売額)
B/Bレシオ
1.60
3,500
1.40
3,000
1.20
2,500
1.00
2,000
0.80
1,500
0.60
5,000
1.20
1.00
4,000
100万ドル
100万USドル
4,000
1.40
6,000
0.80
3,000
0.60
B/Bレシオ
4,500
2,000
1,000
0.40
500
0.20
0
0.00
5 6 7 8 9 10
5 6
1 2 3 4 12
6 7 8 9 10
12
11
1 2 3 4 5
11
1 2 3 4 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月 月
2004年
2005年
0.40
1,000
0.00
0
2006年
図1 世界半導体製造装置市場の月別推移(SEMI/SEAJ)
0.20
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
図3 日本の半導体製造装置市場年別
(1∼6月)
合計推移
(SEMI/SEAJ)
8,000
1.40
Booking(受注額)
Billings (販売額)
B/Bレシオ
7,000
1.20
6,000
1.00
0.80
4,000
0.60
3,000
0.40
2,000
0.20
1,000
0.00
0
2000年
図2 世界半導体製造装置市場年別
(1∼6月)
合計推移
(SEMI/SEAJ)
10
B/Bレシオ
100万ドル
5,000
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
図4 米国の半導体製造装置市場年別
(1∼6月)
合計推移
(SEMI/SEAJ)
2006, 9-10
Market Statistics
減少の143億9,000万ドルとシリコンサイクルの下降局面に入るか
はないだろうか。ROWと中国市場を合計した上半期販売額の
と思われたが、2006年は前年同期比45.4%増の209億3,300万ド
推移を見ると、2006年上半期受注額は31億5,400万ドルとなった
ルと、2004年の受注額を追い抜く結果となった。今後も大きな
。
(図8)
経済や政治上の問題がない限り、上向きのカーブを描くと予想
2006年6月の受注額は、前年同月比130%増の7億2,300万ドル
される。
と、活況を感じさせる。
日本市場の2006年上半期受注額は、前年同期比14.9%増の42
このように、日本市場が他の地域と比べるとトップシェアを維持
億5,100万ドル、販売額が前年同期比18%増の49億900万ドルと、
しているが、前期比の伸長率を見ると、米国、台湾、中国や
。米国市場の2006年の同期受注
二桁増の伸びになった
(図3)
ROW市場が急拡大していることがわかる
(図9)
。
額は、前年比約13%増の29億7,900万ドル、2006年販売額は、
前年同期比21.8%増の36億2,900万ドルと絶好調となっている
4,000
。2006年6月の受注額は、前年同月比41.6%増の5億9,900
(図4)
1.40
Booking(受注額)
Billings (販売額)
B/Bレシオ
3,500
万ドル、6月の販売額も54.1%増の8億5,200万ドルとなった。台
3,000
1.20
1.00
湾市場の2006年受注額は、前年同期比89.1%増の49億900万ド
0.80
B/Bレシオ
比52.5%増の7億9,800万ドルとなった。韓国の2006年同期販売
100万ドル
2,500
。2006年6月の受注額は、前年同月
ルと大幅に拡大した
(図5)
2,000
0.60
1,500
(図6)
。
額は、前年同期比51.8%増の34億4,800万ドルと増加した
2006年6月の受注額は、前年同月比8.9%増の6億4,200万ドルで
0.00
0
2000年
14億5,300万ドルとなった
(図7)
。2006年6月の受注額は、前年同
6,000
Booking(受注額)
Billings (販売額)
B/Bレシオ
5,000
0.20
500
あった。欧州の2006年上半期販売額は、前年比約3.7%微減の
月比31.8%増の3億4,400万ドルなので、通年では微増するので
0.40
1,000
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
図7 欧州の半導体製造装置市場年別
(1∼6月)
合計推移
(SEMI/SEAJ)
1.60
4,500
1.40
4,000
1.60
Booking(受注額)
Billings (販売額) 1.40
B/Bレシオ
3,500
1.20
1.20
3,000
4,000
0.60
2,000
100万ドル
0.80
B/Bレシオ
100万ドル
3,000
2,500
0.80
2,000
0.60
B/Bレシオ
1.00
1.00
1,500
0.40
0.40
1,000
1,000
0
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
0.20
500
0.00
0
0.20
0.00
2000年
2006年
図5 台湾の半導体製造装置市場年別(1∼6月)合計推移(SEMI/SEAJ)
4,000
3,500
2001年
2002年
2003年
2005年
2006年
図8 ROWと中国の半導体製造装置市場年別
(1∼6月)
合計推移
(SEMI/SEAJ)
1.20
1,200
1.00
1,000
0.80
800
3,000
日本
北米
2,000
0.60
1,500
千ドル
Booking(受注額)
Billings (販売額)
B/Bレシオ
B/Bレシオ
2,500
100万ドル
2004年
台湾
600
韓国
0.40
400
0.20
200
ROW
欧州
1,000
500
中国
0
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
0.00
図6 韓国の半導体製造装置市場年別
(1∼6月)
合計推移
(SEMI/SEAJ)
9-10, 2006
0
1月
2月
3月
4月
5月
6月
月
図9 2006年世界半導体製造装置月別地域別受注推移
11
Semiconductor Design
パワーエレクトロニクスの最近の動向と今後の期待
半導体新技術研究会 代表 村上 元
今年も暑い夏で、地球温暖化の影響を感じさせられる局所的な
水害や世界規模の天候不順など、自然現象の猛威も拡大してき
ている。これは、太陽からの放射エネルギーの増大のほか、化石
燃料の燃焼に伴う二酸化炭素のバリヤーが大きな原因となって
いる地球温暖化が引き起こす海水温の増大や、人口爆発による
食料確保のための森林の伐採、それに伴う砂漠化、都市化による
二酸化炭素吸収能力の大幅な減少などに起因していると言われ
ている。世界規模の文明化は、年々生活レベルの向上を求め、ま
すます大量の電気エネルギーを必要とする。低消費型半導体素
子作りに関係者の英知を集合させることが、緊急の課題であり、
最近のパワーエレクトロニクスのパッケージ関係技術を紹介する。
図2 三洋電機開発のPDP放電回路モジュール例
1. 白物家電の電力制御
エアコン・冷蔵庫・洗濯機など、いわゆる白物家電といわれるモ
消費型ディスプレー対応の半導体開発への取組が緊急課題で
ーターを使用した家電製品電力が、年々その機能を増大させて
あり、高耐圧駆動ICの開発や高放熱実装のできるCOFなどへの
いるが、低消費型電力制御の開発技術で消費電力の抑制が進行
開発要求が強くなってきている。一方PDPは、LCDより目に優し
している。なかでもインバーター駆動では、駆動素子はバイポー
い画像で、明るい光より暗い光を好む傾向にあるアングロサク
ラからIGBTやパワーMOSFETになり、素子構造はプレーナーか
ソン系の欧米人や高齢者に好まれる傾向にある。PDPの電力消
らトレンチ構造による素子の内部のオン抵抗の低減が進行して
を発生制御するサスティ
費は、プラズマ放電時の電圧
(約180V)
いる。一方実装技術は、パワー素子の個別実装から、DCからAC
ン回路の低消費電力技術として、モジュール化が進行している。
に変換し、電力制御回路するマイコンや、IGBT・ツェナーダイオー
(株)
が開発しているパッケージ技術例である2)。
図2は三洋電機
ドなど、構成半導体部品を放熱性の高い銅のリードフレーム上に
このモジュールは、高放熱樹脂をラミネートした銅箔をアルミの
回路を実装するパワー半導体モジュール方式になってきている。
板に貼り合わせた基板を使い、回路パターン形成した後、サステ
三菱電機
(株)
は、
この方
ィン回路形成に必要な半導体素子等を搭載する。モジュール化
式のインバーター回路
することで、回路全体の放熱性を高めるとともに、素子駆動時の
モジュール商品で業界
電圧変動バラツキを抑え、低価格化を同時に実現させている。
をリードしている。今年
3. ハイブリッド
(HV)
自動車の電力制御
の春に同社が発表した
地球温暖化の最大の原因とされるガソリン燃焼から放出される
製品
(図1)
の資料による
と「最先端パワーチップ
技術で新開発した低損
二酸化炭素の増大を抑制する技術として、ガソリンと電気併用型
図1 三菱電機発表インバータ用パワー
半導体モジュール
(株)
から発売された。
ハイブリット自動車が、1997年トヨタ自動車
それ以来、石油枯渇問題による価格高騰や、BRICsの自動車数
失のCSTBTTMを内蔵したことにより、インバーターシステムの
量の増大などによる加速度的な二酸化炭素対応から、HV自動
従来比25%省電力化が実現し、放熱性に優れた高熱伝導絶縁シ
車への要望が高まり、HV型自動車の開発発表が自動車各社か
ートの採用により、熱抵抗を従来比20%以上低減し、高い放熱特
ら行われている。HV自動車は、ニッケル水素電池を多数個直列
性を実現」したとしている 。
に繋いで、300V程度の高いDC電圧を発生させる。高いDC電圧
2. 薄型TVの電力制御
を120度位相の異なる3つのAC電圧に変換してモーターを駆動
映像装置は、より高精細・高輝度・大型化が進行し、CRTから薄
する。電池からモーター駆動までの送電の電力消費を効率良く
型TVに変換が進行している。なかでも液晶TVは、年々大画面化
行うために、高いDC電圧に昇圧する方法が取られている。図3に
により、またバックライトの大型化と本数増により、消費電力が
モーター駆動電圧の関係を、
トヨタ自動車
(株)
発表資料などか
拡大している。画面の大型化は液晶駆動素子の駆動電圧増大を
らプリウス車の駆動方式を比較して纏めた3)。1世代目は、電池の
招き、動画性能向上のためにフレーム周波数は、毎秒60フレーム
DCで得た電力をそのままモーター駆動にしていたが、2世代目
から120フレームなどへと増大する。そのうえ、演色性を広げる
からは電池の電圧を下げながら
(電池の小型化の実現)
、昇圧回
工夫として、LEDバックライトの導入や、蛍光管の多色性が求め
路を設けてモーター駆動電圧を500Vに高くしている。今後、バス
られ、バックライトの消費電力が増大している。そのために、低
など大型車両へのHV化が進むと、さらなる高耐圧化のニーズが
1)
12
2006, 9-10
Semiconductor Design
図3 トヨタ自動車プリウスのHVモーター駆動電圧例
図4 ルネサステクノロジ開発LFPAK例
高まると予想される。自動車用は、カーナビなどによる車外情報
との通信、安全性快適性のためのセンサー搭載、エネルギーの
効率的使用など、各種エレクトロニクス技術の融合により、車シ
ステム全体の安全性が求められている。高級車では100個程度
のマイコン、100個を超えるモーターやアクチュエータなど電流
制御素子の融合が必要とされ、パワーエレクトロニクスが最も重
要市場と位置付けられ、開発が進行している。
4. 携帯情報機器の電力制御
ワンセグ携帯電話の台頭、音楽機器の小型化、
ノートパソコンの
普及などにより、携帯型情報端末の電池寿命の長期使用化が強
く求められている。リチウム電池の充放電回路DC-DCコンバー
ターに使う、パワーMOSトランジスタの低電力消費化が進めら
れている。パワーMOSのオン抵抗の低減のために、半導体素子
構造の改良とパッケージ実装技術の改良が進行している。図4に
図5 高放熱銅材料例(日立電線資料)
(Loss Free Package)
(株)
ルネサステクノロジの開発したLFPAK
を示す4)。LFPAKでは、素子とリードフレームの接合に金のボー
ルバンプを用いている。金線の長さを低減することにより低イン
ダクタンス化、低抵抗化が図られている。金線接続部の接続抵
抗を低減する構造としては、素子を直接プリント基板など配線基
板につける製品も開発されていて、米国IR社、Fairchild社など
からも製品が出されている。
5. パワーエレクトニクス用材料
伝送路の伝導ロスを少なくする材料や素子構造の研究開発が進
行している。半導体基板には、シリコンより耐電圧が高いシリコン
カーバイト
(SiC)
の適用開発が進行している。素子間を誘電体分
図6 高放熱グラファイトシート5)
離したり、絶縁基板上に半導体層を設けるSOIなどの技術開発
が目白押しである。一方、パッケージ材料の開発研究も盛んで
パワーエレクトロニクスは、高耐圧半導体素子技術とパッケージ
(株)
が纏めた銅材料の電気伝導と強度
ある。図5は、日立電線
技術が融合して特長ある製品が開発されていく。この分野でも、
の関係をプロットしたものである。半導体材料には、低オン抵抗
日本の半導体産業が世界をリードしていくために、半導体メーカ
化と高い放熱性のために高い電気伝導度を持つ無酸素銅
(OFC)
ーと材料メーカーのなお一層の協調と開発努力に期待したい。
の材料をベースとした高導伝型材料が使われている。図6は、パ
<参考文献>
ナソニックエレクトロニックデバイス北海道
(株)
が開発した、銅
1)三菱電機
(株)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2006/0411.htm
材料よりも高い放熱性を有するグラファイトシート絶縁体材料で
2)第17回半導体新技術研究会シンポジウム資料
ある。グラファイトは、炭素を繋げてシート化した材料であり、
3)トヨタ自動車
(株)
技術誌 TTR 2005年8月
平面方向の電気伝導度は、純銅の2倍と高いので、半導体素子か
4)第11回半導体新技術研究会シンポジウム資料
から発生する熱を速やかに横方向に分散することができる 。
5)パナソニックエレクトロニックデバイス北海道
(株)
技術資料
5)
9-10, 2006
13
EHS
ナノテクノロジーとEHS
−マイクロエレクトロニクス産業の立場からの概観−
東京エレクトロン株式会社 井深 成仁
本文は、以下のSEMI Webに掲載された
「SEMI Nanotechnology
のはほとんどない。
を抜粋し翻訳したものである。
EHS Policy Statement」
空気中の粒子の特性は、粒子の性質(拡散、凝集等)に依存し、
http://content.semi.org/cms/groups/public/documents/membersonly/
正確で、携帯可能で費用効率の高い測定技術が、人体への汚染
p038786.pdf
の可能性を理解する基本であることを示唆している。光酸化製
品には、多くの実験方法や、透過による皮膚の状態を考慮したさ
ナノテクノロジーとは、物質をナノサイズ化した際に生じる特性を制
らなる研究が必要であるとはいえ、多くの条件下で、ナノ粒子の
御し、活用することであり、巨大な可能性をもたらす。多くのナノ応
皮膚透過は、日焼け止め等の消費財に限定されるだろう。カー
用製品は、EHSにも重要な利益をもたらすことが期待されている。
ボンナノチューブは、マウスを使った実験では、明らかに微細な
ナノスケールのドラッグデリバリーデバイスは、抗癌治療、特に腫
カーボングラファイトよりも肺毒性(炎症、肉芽腫等)があり、そ
瘍対策で開発されている。近い将来、ナノスケールデバイスは、
の純度(触媒の残留量等)が毒性に影響するかもしれない。二
腫瘍に対する抗癌剤になると同時に、初期段階で癌を発見する
酸化チタンとシリコンの研究は、毒性と表面塗布等の粒子特性
ようになるかもしれない。修理や修復は、ナノパーティクルの可
の事実に反した実態を一般化するような(粒子が小さくなるの
能性を象徴している。現在の研究は、ナノパーティクルが土壌や
に伴い、毒性が強くなる)複雑な関係を明確にする。
地下水の汚染物質に反応し、毒性のない合成物に改質する可能
一方で、高い関心を保証することはできないと結論付ける研究も
性を反映している。医療用インプラント、抗菌コーティング、自動
ある。
車用安全機能、清浄水、低コストクリーンエネルギー等、他のア
デュポンの研究者は、粒子が小さいほど毒性が大きいという社
プリケーションも、EHSに関わるメリットが期待される。
会通念を乗り越えようとしている。さまざまな変数が、材料、形
しかしながら、EHSへの潜在的リスクもまた存在している。
状、電荷、化学組成、表面積、結晶構造、凝集特性、粒子数、合
サイズが小さいため、人工ナノ粒子は、同じ物質の塊のものに比
成方法の毒性に作用している。まだ結論が出たわけではないが、
べ表面積の比率が高く、そのため表面に出ている原子も多い。こ
デュポンの調査研究では、
「ナノ」であることが、より大きな粒子
のことは、接着性、触媒、化学反応性等物質の持つさまざまな特
より毒性が強いことを意味してはいないし、山のような研究結
性に影響を及ぼす。物質のユニークな特性がEHSのリスクに関
果から導き出された一般論は正しくないかもしれないというこ
係するか否かについては、まだわからないことが沢山ある。予備
とを示唆している。ライス大学の研究者は、水溶性のカーボン
調査では、人工ナノ粒子の毒性は、同じ組成でより大きなものと
ナノチューブは、非水溶性のナノチューブより非常に毒性が少
は異なるかもしれないことがわかっている。しかしながら、未知の
ないことを発見している。さらに、この研究では、ちょっとした化
物質の中には、ナノサイズでかなり変わった特性を示すものや、
学的修正でカーボンナノチューブを無毒性にすることもわかっ
物質の構造が変わるところで、作業者、消費者、環境等へのリス
た。ライス大学は、チューリッヒにあるXL保険と、テキサス州ヒ
クとなる可能性のあるものがある。
ューストンにあるブリッジトゥサステナビリティと協力し、保険の
ナノテクノロジー活動の全てにEHS問題があるわけではない。
掛け金算出方法を用いて、量子ドット、ナノチューブ、バッキー
ナノテクノロジーはさまざまな材料とプロセスを包含する広範
ボール等、ナノマテリアル関連の5つの市場の製造プロセスの
な用語であり、材料、プロセス、アプリケーション等の種類間の
危険性は、石油精製のような一般的産業よりも少ないという結
相違が、リスクアセスメントに対する一つの包括的アプローチ
論を出した。中でも、ナノチューブとAlumoxaneナノ粒子の製造
では十分でないことを示唆している。リスクのレベル差は、ナノ
の危険性は、ワインやアスピリンと同等であった。
材料、製品、製品のライフサイクルの違いから来るものと考えら
“ウォッチドッグ”
や、NGOは、応急手当
政府、業界、大学、そして
れている。多くのアプリケーションの汚染は、有限または管理可
と、ナノテクEHS関連の調査の増加を要求している。
能なので、悪影響の可能性は低い。多くのナノ材料は、新たな健
基本的な科学情報が、潜在的リスクの算定や防御のため必要で
康安全へのリスクを引き起こすことはない。現在の不安要素の
あるということが、研究、ビジネス、環境団体の非常に高度なレベ
ほぼすべては、材料中に固定された、というより浮遊している人
ルで合意されている。ナノ粒子は、必ずしも同じ物質の大きなも
工的ナノ粒子やナノチューブの潜在的リスクに関連している。
のと同じ反応をするわけではないので、研究には、ハザードや汚
最大の懸念は、さまざまな環境下のナノ材料の動きについて、現
染の算定、リスク管理のために均一で科学的根拠のあるアプロ
時点でほとんど何もわからないということである。これまでの研
ーチが必要である。
究には、既存の超微粒子に関する調査や研究と同様に、浮遊ナ
ナノテクEHSにはさらなる財政支援が必要であるとする複数の
ノ粒子の人体の健康への潜在的影響について懸念を与えるも
グループや団体がある。
14
2006, 9-10
EHS
ウッドローウィルソン奨学金センターのエマージング、ナノテク
果を比較することができ、その結果、潜在的リスクを明確にする
ノロジーに関するプロジェクトは、政府の支援する国内外のリ
過程が前進する。一貫した用語なしには、規制法案は施行され
スク関連調査の概要を作成中であるが、ここで、ナノテクノロジ
ない。ANSIは、2004年にNSP(Nanotechnology Standards Panel)
ーはEHSに意義があるとしている。大学や、スタートアップの起
を設立し、国際的にナノテクノロジーの利用について自発的、合
業家の中には、新ナノ材料に関する極めて興味深い発見をして
意のとれた規格を作るための調整・推進に当たっている。
いるところがある。2005年7月英国王立協会(UKの科学アカ
ANSI-NSPは主に、ナノテクノロジーの用語、材料特性、テスト、
デミー)と日本学術会議は、
「ナノテクノロジーの社会的影響に
測定、特性手順を取り上げている。
関する対話」を発行した。2団体は、EHS関連の調査への資金
アプリケーションや製品分野でのナノテクノロジー開発は急速に動
供与は不均衡なほど小さいということで合意している。2005年
いており、EHS関連の問題への注目も増加している。EHS規格の制
11月の米国下院科学委員会の資料によると、専門家達が、現在
定作業が進行中である。
のNNIの総予算の4%以下ではハザード算定には十分でないと
2005年1月には、ASTMインターナショナルで、E56委員会がナ
いう論議を繰り広げている。例えば、Lux ResearchはNNTIに
ノテクノロジーとナノマテリアルの規格やガイダンスを作成す
現状の2∼4倍にあたる年間1億∼2億ドルの資金供与を要求し
る委員会として設立された。ISO/TC 229技術委員会、ナノテ
ている。保険会社Allianzは、OECDと協力し“小さなことが重
クノロジーには、米国の委員が主導しているWG3のEHS委員会
を発行した。報告書で
要:ナノテクノロジーのチャンスとリスク”
を含めて3つのWGがある。規格関連の詳細については、ナノ
は、リスク問題の更なる独立調査に対する資金支援に言及し、
テクノロジースタンダードサマリードキュメント参照。
ヨーロッパでの専門の調査センターの設立を提案している。
NIOSH、ヨーロッパのNanosafe Iおよび数団体が、作業者の安全
広範で多様な研究には、EHSへの的確な言及が求められている。
を守るガイダンスを配付している。
半導体と化学品業界の代表者(SRCとChemical Industry Vision
ナノ粒子の毒性に潜むメカニズムについてのより信頼性の高い
2020を通じて)は、2005年11月に調査の優先順位を明確にした
情報が入手できるまで、作業環境での汚染を監視する測定技術
ジョイントレポートを発行した。
が何になるかははっきりしないだろう。
“安全なナノテクノロジ
1)毒性評価のためのテスト方針
ーへのアプローチ”の中でNIOSHは、ほとんどのプロセスや
2)粒子毒性評価のための最良の計測
業務にとってナノ粒子に対する大気汚染の制御は、一般的なエ
3)汚染監視手順
アロゾルへの汚染を削減するために用いられる広範な製造制
4)
リスク評価手順
御技術と類似している、としている。NIOSHはさらに、リスク管
5)EHSおよび社会影響に関する情報交換と教育
理プログラムは、汚染のリスクが最小になるような適切なステ
EHS調査活動とその結果得られる知識基盤は、プラットフォーム、
ップを保証するために導入されなければならないとしている。
用途、機関を横断し、国際的に調整しなくてはならない。
このようなプログラムの中には、作業者に対するナノ材料の正し
現在、リスク管理問題と、調査の優先順位付けの理解を促進す
い扱い方、汚染が発生しそうな箇所での工学的制御(排気等)
る知識ギャップの識別という観点で、活動に一時的混乱が発生
を導入するための手順や基準、個人的防護関係(衣服、呼吸装
している。多くのナノテクノロジー開発は、国家の資金提供で主
置、使われている、あるいは着用すべき)の種類を記述した文書
導されているが、EHS活動は、現実的には国際的になり得るし、ま
の作成等の教育や訓練も含めるべきである。Nanosafe Iの最終
た、なるべきである。ISO TC229には、EHSを扱うワーキンググ
報告書では、作業現場でリスク管理をするためのいくつかのアプ
ループがある。米国NNIのClayton TeagueはこのWGのチェア
ローチ、プロセス適正化、プロセスの分離、局地的排気、個人的
である。OECDでは、ナノテクノロジーのEHS問題の国際的議論
防護設備等を示唆している。
の場を主導している。詳細はまだ明らかにされていない。米国下
作業者の安全という観点では、汚染リスクは、人工ナノ粒子を扱う
院科学委員会の証言で、国際的ナノテクノロジー調査会社Lux
時に発生しやすい。
Researchは、ナノテクノロジーのEHSリスクに言及している多くの
ナノ粒子の生産は、通常完全な密閉とそれゆえに作業者から発
団体、機関を国際的に統合するための明確に識別された記録文
生する汚染の提言を求めている。一般的に、ガス中でナノ粒子を
書を要望した。
生成する、使う、または、粉末としてナノ材料を作成したり、ある
標準的なテスト方法、測定法、用語の欠如が、
リスク評価をより困
いはスラリ/緩衝材/溶液ナノ粒子のプロセスはナノ粒子を放出
難にしている。
することで、大きなリスクを引き起こしがちである。製造システム
適切な安全基準とナノ粒子に関する規則の制定は、環境や生物
(洗浄、廃棄、吸塵システムの塵)は、沈殿しているナノマテリア
圏の大気環境、作業場所の汚染、ナノ粒子の毒性効果等の測定
ルを攪拌すれば、ナノ粒子への汚染になる。ナノ材料を含んだご
技術の信頼性によって左右される。ナノマテリアルについて統一
みの流れと関連する汚染もまた発生する可能性がある。
した用語は、今のところ存在しない。さまざまな種類の物質が正
ナノテクノロジーのガイダンスのほとんどは、現時点では、現状の
確に定義されている場合のみ、別の組織や国のリスク評価の結
規制の下にあるが、専用の規制を作ることは可能である。
9-10, 2006
15
Nanotechnology
特許出願から見たナノテクノロジー (フラーレン、ナノカプセル、巨大分子)
ことぶき特許商標事務所弁理士 伊藤 信和
■序文
よび巨大分子について特許出願の公開状況を調べてみた。ど
特許庁では、平成12年度から特許情報を活用した「技術動向
れも、将来大きく花開こうとしている技術である。
の分析と発信」を行っており、特許出願技術動向調査報告とし
フラーレンとは、炭素クラスターの総称で、サッカーボール形状
て発表している。研究開発した結果が特許出願に結びつくため、
のようなC60が有名である。フラーレン内に水素を閉じ込める
他者の特許出願の状況、他国の特許出願の状況を把握すること
水素貯蔵剤などの応用分野が提言されている。
により、技術の方向性、研究開発の動向を把握することができる
ナノカプセルは、ナノメーターサイズのカプセルを作り、そのカ
からである。特許庁が行っている調査テーマは、8分野(ライフ
プセル内に薬剤などを入れて、的確に運ぶための機能を持たせ
サイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料、エネルギ
る技術である。特に医薬関連、燃料電池などに関しての応用分
ー、製造技術、社会基盤、フロンティア)が中心となっている。
野が提言されている。
たとえば、SEMI関連の会社が興味を抱くようなテーマとしては、
巨大分子とは、分子量が1万程度以上の高分子であり、ベシクル
表1に示すようなものがある 。
インク、熱硬化性樹脂などで応用分野が提言されている。
1)
技術動向を知る上では、出願して18ヵ月後に出願公開された公
開公報を調査することがよく行われる。筆者も同様に公開公報
■調査結果
で以下の調査を行った。米国も2000年11月末以降の米国出願に
日本に関しては、フラーレンに関する特許出願が他国に比べて
ついては、原則、出願から18ヵ月後に公開するようになった。こ
多い(図1)
。フラーレン技術に関しては、特に2004年以降、大企
のため、2002年以降は、米国、欧州および日本の三極において、
業からベンチャー企業まで多くの特許出願が公開されている。
同時期に公開された公開公報を調べることが可能となっている。
2002年から2003年までソニー
(株)
が燃料電池用の出願公開が多
かったが、2004年以降三菱化学
(株)
によるフラーレン材料の特
■フラーレン、ナノカプセルおよび巨大分子
許出願が多く公開されている。ベンチャー企業として、
(株)
イデ
ナノテクノロジーとは、あらゆる物質をナノメートル(1m の 10
アルスターおよびフロンティアカーボン
(株)
により、出願公開が
億分の1)サイズまで小さくするテクノロジーの新分野である。
2005年にそれぞれ10件ほどなされている。民間企業だけでなく、
ナノテクノロジーの分野は広く、IT、マイクロマシン、バイオ、医
公的機関による出願公開も多い。たとえば、
(独)
科学技術振興機
療などの分野はもちろん、コスメの分野でも注目されている。そ
構および
(独)
物質・材料研究機構、ならびに京都大学による出願
の一方で、現時点では実用化されているものは少なく、基礎研
公開がある。最近の公開件数の増加を見ると、日本が得意とす
究段階のものが多い。
る、量産または応用技術に近づいていることの現れかもしれない。
今回は、ナノテクノロジーの中で、フラーレン、ナノカプセルお
ナノカプセルの出願公開件数は、2005年に日本が米国に追いつ
いている(図2)
。前述の
(株)
イデアルス
表1
情報通信関連
ナノテクノロジー・材料関連
17年度 ・有機EL素子
・液晶表示装置の画質向上技術
フランスのL'OREAL社による出願公
16年度 ・プラズマディスプレイパネルの構造と製造方法 ・インクジェット用インク
・半導体製造装置プロセス管理技術
15年度 ・光集積回路
・半導体試験・測定システム
・LSIの多層配線技術
・光触媒
14年度 ・SOI(Silicon On Insulator)技術
・半導体設計支援
(EDA)
技術
・ナノテクノロジー −ボトムアップ型技術
・フォトマスク
開が2005年に6件あることが起因してい
る。L'OREAL社は、2002年から2004年
にかけて毎年1件の出願公開件数であ
ったことから、ナノカプセルを使った医
13年度 ・システム・イン・パッケージ技術
・カーボンナノチューブ、光半導体、走査
・プログラマブル・ロジック・デバイス技術 型プローブ顕微鏡
・半導体露光技術
・高記録密度ハードディスク装置
12年度 ・次世代フラットパネルディスプレイ
・薄膜形成技術
・チップ・サイズ・パッケージ
・ナノ構造材料技術
16
ターによる出願公開件数が3件あるが、
薬・化粧品に特許戦略を描いているこ
とが伺える。
巨大分子の技術に関しては、日本および
欧州の二、三倍ほど米国で出願公開され
ている状態が、2002 年以降続いている
(図3)
。出願人を調べてみても、特にある
2006, 9-10
Nanotechnology
図1
図3
企業が多く特許出願している傾向はなく、多くの企業が、1、2件毎
年出願しているようである。なお、米国大学による出願公開が目
立つ。まだ、巨大分子の技術が基礎研究の段階であるためであ
ると思われる。
■調査方法
以上に説明するデータは、翻訳による誤差をなくすため、次の英
文キーワードを使って部分一致検索をした(表2)
。また、検索対
象は、公開公報の「発明の名称」および「要約書」である。な
お検索ツールは、米国、欧州および日本の公開公報が検索可能
図2
2)
な有料データベースDELPHION(登録商標)
を用いた。なお
「+」は、いずれか一つを含めば検索対象となることを意味する。
表2
項目
フラーレン
ナノカプセル
巨大分子
検索式
fullerene + C60 + C70 + C72 + C84
nanocapsule + nanodroplet + nanoemulsion +
nanocage
dendrimer + vesicle + supramoolecul +
synthetic DNA + large molecule
<参考資料>
1)http://www.jpo.go.jp/shiryou/gidou−houkoku.htmを参照。
すべての報告書が掲載されている。
2)https://www.delphion.com/
ナノテクノロジー/MEMSニュースレター創刊のお知らせ
SEMIでは、本年4月に、ナノテクノロジー分野、MEMS分野のニュースレターをそれぞれ創刊しました。このニュースレターは、ナノテ
クノロジー・MEMS分野のグローバルな最新技術、市場情報をお届けしています。
PDF形式により、電子レターで、希望されるSEMI会員企業の皆様にお送りします。
春号 ナノテクノロジーの記事より
:
春号 ナノマーケットオーバービュー
春号 特集 −世界のナノテクノロジー関連団体や組織の紹介−
春号 ナノテクノロジー分野のSEMI会員企業紹介 −Nano Dynamics, Perlast−
当該分野に興味をお持ちの皆様には、ぜひお読みいただくことをお勧めします。
お申込みは、下記用紙をダウンロードし、必要事項をご記入の上、ファックスにて送信ください。
・ナノテクノロジー:
http://content.semi.org/cms/groups/public/documents/membersonly/p038758.pdf
申込用紙 http://content.semi.org/cms/groups/public/documents/emergingtech/p037935.pdf
・MEMS:
http://content.semi.org/cms/groups/public/documents/membersonly/p038759.pdf
申込用紙 http://content.semi.org/cms/groups/public/documents/emergingtech/p037937.pdf
9-10, 2006
17
Solar Cell
トップ技術で世界をリードする太陽光発電
立命館大学総長顧問・教授 / JOPRE会長、大阪大学名誉教授 濱川 圭弘
1. 創造の神プロメテウスからの警鐘
材料ならびにセル構
太古の昔、火を使うことを覚えた人類は、これを暖房、調理、照明
造の低コスト化と大
そして通信にも利用してきた。やがて火の利用は日常生活のほか
面積化に研究開発の
にガラス細工や装飾品、陶芸など芸術品の製作にも使われ、こ
力点が置かれ、その
れが芸術を開き、文明を伝えてきた。ところでジェームス・ワット
成果としてほぼ1/50
に始まる産業革命によって、火の利用のための燃料は草木から
という桁違いの低コ
石炭、石油、天然ガスへと進歩した。またこれから生み出される
スト化を達成するこ
文明の利器も、蒸気機関から内燃機関、そして電気エネルギーの
とができた。一方、高
発生とその応用へと拡がりをみせ、現在では交通、運輸からあら
効率化については、
ゆる文明活動の根元を賄うまでに発展した。エネルギーが文明
現在量産化され市販
活動の「米」
(主食)
であると云われる
“ゆえん”がよくわかる。
されている単結晶シ
さて、文明活動を支えてきたエネルギー資源は、利用技術の進
リコン電池をアモル
歩とともに、その主流は石炭から石油そして気体燃料へと変遷し
ファスシリコンで挟
てきた。こうした変遷の底流を探ってみると、経済の大原理が作
み込みダブルヘテロ
用していることに気付く。すなわち、エネルギーの工業化に伴う
接合した三洋のHIT
大量消費に応じるため、その利用技術も大量生産と大量貯蔵、
..
大量輸送システムに適合したより便利で低コスト化ができるエネ
セルが世界最高の
ルギー形態へと選択肢が移されてきた。例えば、COP-3京都会
陽電池では特殊な表
議で問題にされたCO2(二酸化炭素)の発生率を炭素換算量
面処理を施したダー
(C-gr:カーボングラム単位)で述べると、石炭火力発電が322、
クブルーセルが17%
重油火力発電で258、そしてLNG発電で178それぞれC-grとなっ
(いずれも12.5cm角)
ていて、時代の進歩とともに省エネルギー化が進められてきた。
の世界最高効率を樹
しかしながらここでの問題は、CO2の発生率ではなく、自然が持
立している。図1ならび
つ自浄作用を遥かに超えた環境負荷の激増とエコロジーサイク
に図2-A・Bがこれらの
ルの破壊なのである。例えば、化石燃料の大量消費による大気
実例を示している。
汚染と地球の温暖化、冷蔵冷凍技術の進歩による海洋資源の乱
また、使用するSiの
獲によって、有史以来保たれてきた生体系のエコロジーサイクル
量が500分の1、活性
21.5%、また多結晶太
が破壊されつつあり、その結果、海洋の温度上昇、凶暴化する暴
層の厚さが 0.6 ミク
風雨(ハリケーン、モンスーン、台風)それから極地帯の凍土融解
ロンで済む省資源・
によるメタンガスの大量放出などは、まさに自然の自浄作用破壊
省エネ型として注目
あかし
あかし
図1 三洋HITセルの構造とその出力特性
図2-A ダークブルーセル
(右)
と
(左)
一般の多結晶Siセル
図2-B ダークブルーセルの出力特性
の証拠と考えられる。これらの証拠は、創造の神プロメテウスか
されているアモルフ
ら現代社会に対する警鐘なのかもしれない。
ァス太陽電池では、同じくモジュール効率にして9∼10%のもの
2. 今や変換効率も生産量も世界のトップ
が市販されるまでになった。
21世紀の人類文明の維持発展には、今後もエネルギー需要が伸
ここ数年、さらに低コスト化・高効率化を目指したスタック型と
び続けることは明らかである。中でも、東南アジア・東アジア地
いう新しい構造の太陽電池の開発が始まっている。これは例え
域はこの10年で全世界の平均のほぼ2倍の経済成長を達成し、
ば、アモルファスシリコンと多結晶もしくは微結晶シリコン太
その上人口の増加率も先進諸国のほぼ2倍で増え続けている。そ
陽電池を二階建てにして、太陽光線のスペクトルをこれまでの
の結果、過去数年のエネルギー需要の伸び率は世界平均の2倍
一口でなく、二口で食べようという新構想に基づくもので、1993
であり、このままの成長カーブでいくと、2025年にはアジア太平洋
年に大阪大学がボトムセル(1階部分)に現在の多結晶シリコン
地域が世界の一大エネルギー消費地域に成長するとともに、この
を用いて図3に示すように、効率21%が発表された。この効率は
地域が地球上で公害の一大発生源となることは明らかである。
当時の単結晶より高く、コストはアモルファス太陽電池なみと
1974年のサンシャイン計画発足以来、最初の16年間は主として
いえる次世代型太陽電池である。また図3はボトムセルの微結
18
2006, 9-10
Solar Cell
晶をPECVD で製作
し、いわばプラズマ
CVD一貫システムを
目指した超薄膜2端子
型スタック型セルの
出力特性を計算機実
験で求めた結果を示
したもので、現在実験
的に得られているア
図3 a-Si/poly-Si スタック型太陽電池の構造
(a)出力特性
(b)
モルファスシリコンな
らびに、微結晶シリコ
ンの物性定数を用い
て最適化設計すれば
18.4%まで出ることが
準理論的に確認した
ものである。図 4は、
最近鐘淵化学工業か
ら発表されたこの型
の研究室レヴェルの 図4 a-Si/nc-Si 二層タンデム太陽電池の
実験的検証
セルの出力特性を示
カネカソーラーで出されたこのデータは現
在の世界記録で、ハイブリッドセルという
14.7%は世界新記録 商品名で量産化されている。
したもので、得られた
である。なお、同社で
はこの型のモジュール
の量産化に入っており、455mm×910mmの大型モジュールで初
図5
世界の太陽電池出荷量
期効率12.3%は、薄膜系次世代型太陽電池としては抜群の性能
を誇っている。わが国の太陽光発電技術はこうした性能面での
先進性に加えて、その生産量についても、図5に示すように1998
年に米国と肩を並べて以来、政府の助成制度が効を奏し、2001
年には米国を抜いて世界第一位となるまでに成長した。
3. 新エネルギー産業の創設 −2030年には化石燃料発電を代替−
前節でも述べたように、わが国で製造されている太陽電池は、単
結晶シリコン、多結晶シリコン並びにアモルファスシリコン太陽
電池の全てにおいて、その性能は世界のトップランナーとして
その技術を誇っている。前節最後に述べたa-Si/nc-Siタンデム
型太陽電池についても、その技術的完成度の点で、他国を大き
図6 太陽光発電産業の誕生を目指したロードマップ
く引き離した技術水準にある。
コストが半分以下になるという種類の商品である。図6に示す
こうした観点から、
太陽光発電技術研究組合(PVTEC)を中心に、
ように、現在のモジュールコストは量産スケールが年産20∼50
2030年を目指したこの分野の技術的ロ―ドマップを同組合の将
MW、これがここ数年の間に50∼100 MW程度にまで上がる
来ビジョン委員会で検討された結果、2031年の時点で7円/kWh
見込みであることから、2010年には太陽光による発電コストが
程度に下がるものと予想されている。
現在の電気料金1kWh当り26円を割り、2020年には現在の火力
現在は、いずれも1Wあたりのモジュールコストにして、国産品
発電並みの14円/kWh、2030年には7円/kWhの原子力発電の
で300∼350円程度で、1974年のサンシャイン計画発足当初と比
コストに平準化できるという試算までされている。さて、そうし
べて40∼50分の1の低コスト化に成功した。太陽電池はトランジ
た量産化の実現とともに、太陽光発電システムの概要について
スタやICと同様の半導体製品であるため、量産化によるスケー
も、新技術の進歩によってシステムそれ自身も大きな変革が予
ルメリットが大きい。つまり、量産スケールを一桁大きくすると、
測できることを夢見て頑張りたいものである。
9-10, 2006
19
FPD Industry
フラットパネルディスプレイ(FPD)市場の現況
SEMI HQ, Ed Hall / DisplaySearch, Charles Annis
FPD市場は2005年に健全な成長を遂げ、この傾向は2006年以降
も数年間継続するものと期待される。成長の結果、生産量が増
大し世代の進んだ製造工場(ファブ)
が建設されてきた。
液晶ディスプレイ
(LCD)
が普及し、携帯電話、ポータブルゲーム
機、MP3、携帯情報端末
(PDA)
、
ノート型パソコン、テレビ、冷蔵
庫など、ほとんどあらゆる製品に使用されている。大型テレビは、
大画面と高輝度表示で現在最も注目されている。この結果、FPD、
特にLCDの需要が急増しており、DisplaySearch社の予測によれ
ば、FPD市場は今年の880億ドルから今後2年間に1,080億ドル以
上に拡大するという(図1)
。
薄膜トランジスタ(TFT-LCD)は、2005年以降、FPD市場の80
パーセント以上を占める最大の技術セグメントである(図2)
。
伝統的に、LCDパネルはガラス基板であり、最初は小さなシート
から発達し、現在は非常に大きなものまである。図3に示すのは、
図1 FPD市場予測
基板の世代別設備投資と今後4年間のTFT生産能力の相対的
な内訳である。
「FPD Panel Fabs」データベースで報告されているように、24ヵ所
以上のファブが第5世代/第6世代のパネルを生産し、8ヵ所以上
のファブが第7世代/第8世代の分野に参入している。シャープ
は、第8世代の分野への参入を発表した最初のパネルメーカーで
あった。三重県亀山市のシャープの工場では、大型の第8世代基
板を2006年第4四半期に生産する計画である。
2006年3月に、Chi Mei Optoelectronics(CMO)
は、
「台湾で初めて
第8世代LCD工場の建設を計画しているパネルメーカーである」
と発表した。CMOの発表によれば、この第8世代工場で2008年
5月に大量生産を開始するという。
シャープは既に、2005年7月に、
「第8世代 LCD製造工場のため
に、およそ46億ドルを投資する計画である」
と発表した。S-LCD
社は、Samsung Electronicsとソニーとの合弁会社であるが、同社
図2 各ディスプレイが市場に占める割合の予測
(各年の総額を100%とする)
の最近の発表によれば、第8世代基板でパネルサイズが2,200×
2,500 mmのものを計画しているという。同社は約20億ドルの投
ルの大台に達する。製品能力を増強し生産性を向上するため、
資を計画中で、生産開始は2007年秋を目標にしている。
各社は大型パネルの生産に向けて動き始めている。さらに大型
大型のパネルを生産する動きは、LCDパネルメーカーにとって
のTVディスプレイ、コンピュータ・モニタを開発するためである。
重要である。生産能力の増強、生産性の向上、40インチ以上の
今のところ、LCD市場は活況を呈している。2010年には1,020億
大きなLCDパネルの製造を目指しているからである。
ドル産業に成長し、FPD全体では1,200億ドルに達する見込み
より大きな新世代の基板のほかに、依然として中小型基板も生産
である。
している多くの会社がある。例えば、AU Optronics
(AUO)
、Chi
この記事のデータの一部は、FPD Panel Fabsとよばれるデータベ
Mei
(CMO)
、China Picture Tube(CPT)
、HannStar、日立、LG.Philips、
ースの最新版が出典である。このデータベースはDisplaySearch
Samsungなどは、320×400mm以降の各サイズの中小型基板の
によって作成され、SEMIで販売している。
LCDパネルを生産している。中小型サイズのパネルは、主として
FPD Panel Fabsは、LCD市場における業界動向および会社成長を
携帯用電子製品に使用される。
追跡するのに理想的な参照データベースである。掲載会社は500
FPD市場は急速に成長しており、来年までに売上高が1,000億ド
社を超え、a-Siおよびp-Si TFTの分野、ならびに他のFPD技術、
20
2006, 9-10
FPD Industry
例えばプラズマ、AMOLEDおよびPMOLEDの会社がある。こ
のデータベースは、日本、韓国、台湾、中国、欧州および北米を
含む世界中のファブに関して詳述している。
FPD Panel Fabsデータベースの第2四半期版(2006年4月に発
売)は、進んだ世代のファブに関する情報を提供している。小さな
サイズのFPDファブに関する情報はもちろんである。内容として
は、会社名、ファブ名称およびタイプ、生産日、パネル・サイズ、
ディスプレイ技術、基板の世代およびサイズ、キャパシティ、ファ
ブのコスト、その他の豊富な情報を満載している。
FPD Panel Fabsデータベースについては、以下のURLをご覧ください。
図3 ファブの世代別TFT生産能力(歩留まりを考慮せず)
http://wps2a.semi.org/wps/portal/_pagr/116/_pa.116/165
中国での半導体産業投資の発展
SEMI China, Samuel Ni・Lily Feng・David Yu / SEMI HQ, Dan Tracy
中国は、電子産業全体、特に半導体分野が最も活発な地域の一つ
部品製造技術や機械加工能力が不足しているなどの問題を抱え
である。2000年以来、多数の意欲的な製造プロジェクトが中国で
ている。輸入した部品やサブシステムに対する高い関税も問題
発表された。しかし、2005年には産業の状況が低迷したため、多
である。中国政府は、国内装置市場の成長を促すため、部品や
くのプロジェクトが遅延、中断、またはあっさり中止という結果に
サブシステムのサプライヤが中国で能力を開発することを奨励
なった。ただSMIC、華虹国際半導体、ハイニックスST半導体な
している。中国でサプライチェーンが構築されるにつれて、国内
どによる投資に伴って、受注が前年比で240%上昇し、中国での
の装置メーカーは将来の成長のために、こうした開発を活用でき
設備投資の見通しは改善してきた。
ると期待される。
しかし、中国の市場力学はほんの数年前と比較しても異なって
中国でサプライチェーンが成長すると、他の電子産業分野でも
きている。地元の銀行や自治体は、プロジェクトの支援や資金提
能力が強化される。一つの例はTFT-LCDパネルの製造である。
供に慎重になってきた。先端技術や巨額の外国投資をもたらす、
世界規模のTFT-LCDパネルメーカーの大多数が、安い人件費を
一流半導体メーカーによる製造プロジェクトは支援を受けやす
利用するために中国に液晶モジュール
(LCM)
組立工場を作っ
い。
「経験の浅い」新興企業、特に従来のプロセスに重点をおく
た。上海SVA-NECとBOEの両社が第5世代パネルを製造してい
企業によるプロジェクトは、海外の半導体メーカーとの強固な提
るように、中国でのパネル製造は増加している。さらに、昆山龍
携関係がない限り、資金提供を受けることが非常に難しい。
騰光電(Info Vision Optronics)は第5世代パネル製造のための
一流のデバイスメーカーは課題に直面しているため、資本支出
工場を建設済みであり、上海天馬は第4.5世代TFT-LCDプロジ
に慎重になり、中国の一流メーカーは資本コストを削減するため
ェクトに3億8,700万米ドルを投資する予定である。
に中古装置を幅広く受け入れている。中国での新しい傾向は、製
TFT-LCD製造に対する要求条件が厳しいため、国内の装置メ
造工場が国内の装置メーカーと提携して、国産装置や国内開発の
ーカはあまり好調ではない。現在のところ、TFT-LCD製品の国
プロセス手法を整備していることである。こうした提携によって、
内装置メーカーは3社あるが、バック・エンドのセルとモジュール
製造工場が安価な装置を利用できるようになり、中国の半導体
のプロセスの能力を持つに留まる。
産業の展望が徐々に変化する可能性がある。
中国で半導体およびFPDの製造能力が拡大するにつれ、国内企
中国の装置ベンダーの一部は、政府資金や海外のベンチャー資
業と海外企業の両方で構成されるサプライチェーンが成長し、デ
本家による援助を受けて、200 mmと300 mm用のツール
(たとえ
バイスメーカーとパネルメーカーを支えることになる。
ば、拡散炉、表面調整、CVD、その他の装置)
をいずれも開発済
この記事の情報はすべて、
SEMIがWEB上で有料で提供する市場調
みまたは開発中である。国内で開発されたツールは、国内の製造
査(2006 China Semiconductor Wafer Fab and Foundry Outlook、
China
工場での量産には使われていない。ただし、主要チップメーカーの
Domestic Front-end Semiconductor Equipment Manufacturing
一部は、このようなプロセスツールを評価中または評価予定である。
Capability、 China TFT-LCD Industry Report)
に基づいています。
国内の装置メーカーは、部品やサブシステムの供給源を地元に
これらの報告書については以下のURLをご覧ください。
持ちたいと望んでいるが、現在のところ、地元のサプライヤには
http://wps2a.semi.org/wps/portal/_pagr/116/_pa.116/171
9-10, 2006
21
Topics
開発秘話:産業用超小型放射光源「AURORA」
株式会社SEN(旧 住友イートンノバ)相談役 橋 令幸
1. はじめに
化を行い、電磁石8個を直線部で繋ぐ周長15.7m(平均直径5m)
1980年代前半、ULSIのリソグラフィ技術として縮小投影露光法
のSRリングの概念をまとめた。折しも、究極の小型化といわれる
を用いるフォトリソグラフィ技術の進展が目覚ましかった。し
単体超伝導電磁石を用いたSRリング(単体超伝導SRリング)
かし、限界解像度がサブハーフミクロンへの壁を超えて“光でど
「COSY」の開発が西ドイツで行われているという情報がもたら
こまで微細化が可能か?”
という問いには回答がない状態であっ
された。1985年早々再検討の必要に迫られ、対抗上直径1mの真
た。一層微細化の進む1990年代へ向けて、エキシマレーザー、
円軌道をもつ単体超伝導SRリングの開発に挑戦することになっ
EUV、X線、電子線等を用いる技術の研究開発が盛んに行われ
た。最大の問題点は、強磁場単体磁石内の真円軌道に、いかにし
ていた。何が本命になるか、さまざまな可能性が探求される中で、
て外から電子ビームを打ち込んで安定に乗せるかということで
シンクロトロン放射光(SR)
を用いるX線リソグラフィ
(X線リソ)
あった。このような入射方法に関する発表された知見は、その当
も一つの有力な候補とみなされ、半導体メーカーによる放射光
時はなかった。この問題について、大学や研究機関の加速器の
源(SRリング)を利用した研究が盛り上がっていた。IBMは自前
専門家と意見交換もしたが、有用な知見は得られなかった。しか
の小型SRリングをもつX線リソ施設の建設計画を1980年に発
し、COSYでは、この問題に何らかの解決策を既に見出している
表、国内では1984年にNTTも厚木研究所に小型SRリングの
のではないかと考えられた。我々としては、自分たちで新たな方
設置計画を決定、ソルテックのような共同研究組合の発足も構
法を考え出すほかはないという思いを強くした。
想され、X線リソへの取り組みが急速に熱を帯びつつあった。こ
4. 共鳴入射原理の発見
うして、西ドイツのコージイマイクロテック
(COSY)
社をはじめ、
1985年、産業機械事業部で加速器の物理設計を担当していた高
日米欧で小型SRリング開発のさまざまな取組みが始まった。
山猛技師(当時)が合流し、この問題を共に考えることになった。
2. 開発への経緯
そんなある日、思いついたことがあると言って厖大な数式の書
住友重機械工業株式会社(住重)
は、1970年に大阪大学向けの大
かれたノートを彼から渡された。数式の展開に間違いは見当た
型サイクロトロンの製作を手がけ、その後1980年代初頭までに大
らなかったが、加速器物理の常識からすれば大胆な仮説に基づ
小20台近い各種加速器を大学や研究機関等に納入して、加速器
いて数式が展開されていた。この方法でうまくいくかどうかは自
メーカーの地位を確立した。当時、加速器事業の母体は産業機
明ではなく、仮説の検証が必要であると考えた。そこで、この入
械事業部にあり、事業基盤の安定化と発展のために産業用や民
射方法に基づく単体超伝導SRリング概念の計算機シミュレー
生用標準機種の品揃えを必要とした。この新規事業開発には原
ションによるフィージビリティ・スタディを実施することとした。
子力開発本部が主体となった。1983年頃から産業用SRリングの
このシミュレーションのためには、当時はまだ大型コンピュータ
市場調査を開始し、1984年には本格的な開発の検討を始めた。開
の時間利用に頼らなくてはならなかった。住重トップマネジメン
発プロジェクトは、X線リソのシステム(SRリング、光ビームライ
トの強い関心と理解を得て予算措置が計られ、シミュレーショ
ンおよびアライナーを含む全体)を対象とし、開発の進捗に応じて
ンの実施にこぎ着けた。結果は刮目すべきものであった。入射
順次人材の補強を計った。社内の関連部門(加速器技術、原子
電子ビームに適切な物理的条件が与えられれば、入射の解が
力関連技術、極低温・真空技術、
メカトロ・制御技術等)からの精鋭
あることが示された。新しい入射方法の発見であり、
「共鳴入射
に加えて大学・研究機関等からも10名の逸材を得て、最終的には
法」と名づけて特許を取得した。
総勢約30名のチームを構成した。その中心的なリード役は、住重
5. ユニークな要素機器開発
の加速器事業と歩みを共にしてきた豊田英二郎主席技師(当時)
こうして1985年末までにマイクロトロンを入射器とする単体超
であり、私はこの年住重に入社して、本プロジェクトのSRリング開
伝導SRリング「AURORA」の概念設計ができあがった。リング
発の技術責任を担うこととなった。
自体は、大きく分けて超伝導磁石系と軌道系の二つの系で構成
3. 新しい概念への前奏
した。構成要素は、超伝導磁石系が超伝導コイルと鉄のポール
1984年当時、世界的には30を超えるSRリングが物性などの研究
とヨークであり、軌道系は超高真空槽とその中の磁気チャンネ
用として稼動していた。これらはセクター型の電磁石と直線部
ル、静電インフレクター、パータベータ、レゾナンスジャンパー、
を組み合わせたリング状のもので、入射用加速器まで含めると
ビームガイド、高周波加速空胴、ビーム診断装置等ユニークなも
大掛かりな装置・施設であったが、加速器技術的には確立された
のであった。これら機器の本格的な開発は、従来の概念に基づ
ものであった。当初はこれらを参考にして小型化を狙った最適
く小型化のやり方とは全く異なった方向を目指したもので、チー
かつもく
22
2006, 9-10
Topics
図1 真空槽中に配置されたユニークな軌道要素機器
ムが1986年から基盤研究を担う平塚研究所に移って行った。
図2 完成した
「AURORA」初号機、単体超伝導SRリングとマイクロトロン
めには150MeV電子ビームのリングへの入射、650MeVまでの加
「AURORA」の実現は、適切な物理的条件を与えるべきこれら
速と蓄積に成功して、光ビームラインポートからの放射光を観測
入射軌道要素機器や超伝導電磁石の開発の成否に懸かることに
した。こうしてユニークな単体超伝導SRリングの卓越した性能が
なった。各機器は、新しい入射方法実現のためのユニークな機能
実証され、世界最小SRリング「AURORA」が完成した(図2)
。
に加えて、直径1mの円軌道上ないしはその近傍の極めて狭隘な
光ビームラインとアライナーの開発も成就して、1990年代前半、
空間に全て配置しなくてはならないこと、電子から軌道平面内に
X線リソのシステムとして半導体デバイスメーカーによるX線リソ
発せられる大強度の放射光を遮ることなく外部に放出するため
の開発研究に用いられた。
の仕掛けを要すること等、設計・製作には生半可ではない新たな
7. おわりに
考案と工夫を必要とした
(図1)
。実は、
「AURORA」の最初の技
住重は、
「AURORA」で培った技術をもとに、超伝導並みの強
術発表を、1986年の米国での加速器応用の国際会議で行い、そ
磁場を発生する常伝導磁石を開発し、1995年、世界最小の常伝
の帰途ブルックヘブン、バークレー、ウィスコンシンなど研究所や
導レーストラック型のSRリング、産業用「AURORA-2S(
」フッ
大学を訪ねてSRリングの専門家と議論を交わした。誰もが、
トプリント:3×5m2)と研究用「AURORA-2D」の開発にも成
「AURORA」の独創的な概念には強い関心を示したが、技術上
功した。これによって、より経済効率の優れた放射光源の供給が
の困難さを挙げてその実現性には疑問を呈した。そんな困難な
可能となった。単体超伝導「AURORA」は1996年に立命館大
技術課題を、上記チームが知恵と技術を結集して克服した。要素
学に移設、
「AURORA-2D」は広島大学に設置され、ユニーク
機器の技術開発は、文字通りステート・オブ・ザ・アートに値する
な研究用SR光源として活躍している。
「AURORA-2S」は、元祖
ものであった。興味深い秘話がそれぞれにあるが、紙面の都合で
「AURORA」の後を受けて住重田無の技術開発センターに設
省かざるを得ない。ちなみに、上述の西ドイツのCOSY開発で
置され、1990年代後半まで半導体用のX線リソ開発に供せられ
は、結局リングへの電子の入射問題を解決できずに、単体超伝
た。半導体分野では、その間KrFやArFなどのエキシマレーザー
は、世界で唯一の「単体
導リング方式を断念した。
「AURORA」
によるリソグラフィ手法が進み、現在半導体デバイス生産の主役
超伝導SRリング」開発となった。
を担っており、X線リソの出番はないままである。
6. 世界最小SRリングの完成
SRを用いるX線リソは、直線性を生かした高アスペクト比の3次
要素機器の開発の進捗に伴って、
「AURORA」実現の機運が
元構造の微細加工技術として卓越したポテンシャルを有してお
高まり、プロト機を田無製造所内に建設することになり、1988年
り、LIGA、TIEGA®など、マイクロ/ナノ加工プロセスとして、医療
に製品初号機を製作し、1989年春から性能実証試験を実施した。
やバイオ、半導体や液晶、光学素子、分析装置などの分野の
入射用マイクロトロンは、150MeVという高いエネルギー故に前
MEMSやキーコンポーネント製作への応用が広がっている。住
例がなく、開発を急ぐために当時世界最高エネルギー(100MeV)
重 では、一 度に 1 0 本 以 上 のビームラインを利 用 できる
のマイクロトロンを有した米国ウィスコンシン大学との共同開発
「AURORA-2S」の量産性能を武器に、LIGA&TIEGA®ファンド
を始めた。しかし、折からの日米半導体摩擦の激化で同大学か
リーを立ち上げ、さらにそれを超えた事業展開を目指している。
ら開発継続を断ってきた。共同開発は途中で挫折し、結局単独
開発を余儀なくされた。思いがけない負荷増大となり、それだけ
最後に、本開発に多大に貢献し、まだ働き盛りで1999年に急逝し
全体開発スケジュールの遅れが生じた。それでも1989年11月初
た故高山猛主任技師の冥福を祈る。
9-10, 2006
23
Topics
豊橋技術科学大学の産学連携
豊橋技術科学大学 副学長・教授 米津 宏雄
1. 豊橋技術科学大学の特徴
豊橋技術科学大学は工学部のみの単科大学である。全国の各都
道府県にある高等専門学校(高専)の卒業生が3年生に編入で
きるように30年前に創設された大学であり、長岡技術科学大学と
双子の関係にある。定員の8割は高専からの編入学生であり、1
年生から入学する学生は定員の2割である。創設時から、日本の
技術が高度化することを見据えて、学部と大学院修士課程の定
員はほぼ同じであり、学部・大学院一貫教育を進めてきている。
さらに、創設時の教授の1/3は企業等の出身者であり、現在まで
その精神は引き継がれている。このように、産学連携の考えは大
学創設時から取り込まれている。
図1
豊橋技術科学大学の
産学連携研究組織
2. 国立大学がおかれている環境
等に関する問い合わせは知的財産・産学連携本部の産学連携部
平成16年度から国立大学は独立法人(国立大学法人)になった。
が窓口になり、そこに所属するコーディネーターが企業と該当
学長のリーダーシップを発揮し易い組織構造になり、学内の組
教員とのパイプ役をする。もちろん、企業の方が直接教員とコ
織も自由に編成できるようになった。運営面では、国からの予算
ンタクトして、共同研究等を具体化する例は多い。
は毎年1%削減され、人件費もほぼ同様に削減される。そこへ少
共同研究を具体化する段階になると、契約等の事務は研究協力
子化である。企業的に言えば、資金難、人員削減、顧客の減少と
課が担当する。契約に含まれる特許等の扱いには知的財産部が
いった厳しいリストラ的な経営環境である。
関わる。企業と大学の共同発明に関しては、企業の優先実施権や
一方、研究面から概観すると、大学は、機械、材料、電気・電子、情
企業の単独保有等、各種のオプションを企業と大学で話し合って
報、化学、建築・土木、エコロジーといった幅広い分野にわたる小
決める。そこでは、できるだけ柔軟な対応を図っている。
さな専門店の集合体である。優秀な教員が長年育んできた研究
大学に隣接する形で
(株)
豊橋キャンパスイノベーション(略称
成果は宝の山である。これらの研究成果が企業の手によって実
TCI)がある。TCIは、本学の教職員、同窓生および関係者の出
用化されれば、大きな国益になる。しかし、分野が広過ぎること、
資により設立され、TLOの承認を受けている。大学の特許を企業
学会以外での研究成果の発表の場が定まっていないこと等から、
に紹介する活動、本学教員による技術相談、本学とのセミナーの
これらの成果を企業がよく見える形にはなっていない。
共催、省庁からの産官学の受託研究の管理等、大学では実施し
産業構造としては、製造前の途上国へのシフトに伴い、技術の流
にくい諸々の産官学連携活動を行っている。その外側に、本学と
用を知的財産権で守らなければ、将来やっていけなくなる。法人
豊橋市や商工会議所が呼びかけてできた
(株)
サイエンス・クリエ
化に伴い、それまでほとんど教員個人に属していた特許権は、大
イトがある。産学連携研究面では、本学と地元企業が連携して受
学に属することになった。
けた国の大型プロジェクトに関する管理組織や地方企業と本学
このような状況を背景にして、本学の産学連携に関する活動を
とのパイプ役等の産学交流事業を担っている。
以下に紹介する。
4. 企業との共同研究
3. 産学連携研究を担う組織
日本の大学の研究シーズは法人化以前から冊子等で公開され
産学連携研究に関わる本学の組織を図1に示す。企業から見た
ていたが、企業との共同研究を歓迎するテーマか否かわからな
窓口は、知的財産・産学連携本部の産学連携部である。産学連携
いとうクレームがよく聞かれた。このため、本学では法人化を機に
研究に直接関わる研究・開発組織は、研究基盤センターとベンチ
“企業と共同研究をしたい”
あるいは“共同研究をしてもよい”
とい
ャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)およびインキュベーショ
う研究テーマだけを集めてリーフレットにし、「共同研究候補テ
ン・センターである。そのほかに、本学の研究の特色を強く表し
ーマ」として広く流布している。最近の共同研究の件数は、図2
ているリサーチセンター群がある。教員は、
「系」と称する組織
に示されているように、着実に増加している。奨学寄付金の件
に属し、そこでの研究が基盤になっている。企業からの共同研究
数は、バブル崩壊後は企業が共同研究へシフトして減少傾向が
24
2006, 9-10
Topics
続いていたが、法人化を機に増加傾向に転じた。奨学寄付金は、
表1 VBLプロジェクトにおける半導体関連分野の研究テーマ
(平成18年度)
企業からの寄付金や財団からの研究助成金が主なものである。
医療用マイクロデバイスおよびスマートセンサの開発研究
前者については、間接的、直接的に共同研究の要素を持っている。
無転位III-V-N混晶−シリコン構造によるワンチップ光・電子融合システムの開発
受託研究の多くは、各省庁の研究プロジェクトを企業と本学が
研究グループを組んで受けたものである。この件数も法人化を
機に増加している。このように、法人化の少し前から現在まで産
知能性基板を用いたスマートセンサの開発
近接場光応用デバイスの研究開発
表面弾性波でフォトンを制御する知能フォトニックデバイスの研究
集束イオンビーム技術を用いた機能集積化デバイスの形成に関する研究
学連携活動は確実に増えている。
次世代プロセスツールと素材の開発研究
今年、平成18年度に開学30周年を迎えるに当たり、3年間にわた
モノリシック光電子融合デバイス実現の基礎的研究
っていくつかの記念事業を計画・実行している。特に、産学連携
ナノ真空デバイスとCMOS集積回路の融合プロセス開発
組織を強化し、企業との共同研究を倍増する計画を立てている。
カーボンナノチューブを用いた集積化型ナノ電子源とデバイス応用の研究
そこでは、企業と大学を結ぶコーディネーターを増やして、その
CMOS-MEMS集積化技術によるユビキタスマイクロセンシングシステムの開発
活動を関東まで広げる計画である。なお、いくつかの企業とは包
括契約を結んでいる。そこでは、定期的な会議が開かれ、討議の
者数は多く、それを機に共同研究に発展する例が見られる。
中から個別の共同研究が生まれている。
さらに、開学以来毎年、企業の技術者向けに「集積回路技術講
習会」が開かれている。7月末に1週間かけて、nMOSの集積回
路を参加者が作製し、評価して理論との対比を行う。この講習会
奨学寄付
共同研究
は、企業の技術者が将来集積回路の全体像を知ることが難しく
なるであろうという、開学時の教授陣の考えによってスタートし
た。その予測は、LSI時代になって実証され、今年26回目を迎えて
受託研究
無事終了した。
産学連携の詳細は、本学のホームページ(http://www.tut.ac.jp/)
を参照されたい。
図2 外部研究資金件数の最近の推移 平成16年度に法人化
6. 今後の課題
大学の研究は、広い分野にわたって、基礎から応用まで各種各様
5. 特徴的な研究と産学交流活動
である。半導体等の実験系の研究は、文科省から交付される教育
平成14年度から始まった21世紀COEプログラム(研究拠点形
研究費ではやっていけない。外部資金と呼ばれる、文部科学省や
成)の制度は、それぞれの大学がどの分野に強くなっていくか
他省庁からの科学研究費補助金(科研費)や受託研究費、企業
を促すものであった。本学では、
「インテリジェントヒューマンセ
等からの共同研究費や奨学寄付金が必須である。大学の基本的
ンシング」
(電子・情報分野)と「未来社会の生態恒常性工学」
(エ
な使命に
“知の創造”
という、基礎研究がある。これには主に科研
コロジー分野)の二つが初年度に採択された。学内では、これら
費や受託研究費、あるいは奨学寄付金が充てられる。応用研究に
のCOEの中核部分をリサーチセンター(図1参照)にして、
“強
は主に共同研究費が充てられる。
い分野をより強くする”
ように支援している。さらに、次の中核とな
このことからわかるように、共同研究は、大学全体の研究から見
る新しい芽を育てるための支援策を進めている。
れば一部である。さらに、即製品になるような研究シーズは一般
本学の特徴の一つとして、半導体分野の教育研究活動があげら
に少ない。しかし、応用研究には基礎研究から発展したものが多
れる。VBLの教育研究主題は「機能集積化知能デバイスの開
いことから、眠っている研究シーズは多い。企業の研究者と大学
発研究」であり、COEも深く関わっている。VBLは、シリコンの
の教員がどのような協力関係で共同研究を行うかによって、その
集積回路から化合物半導体のエピ・デバイスまで扱うことができ
成果は決まる。現状では、製品開発にセンスのある企業の研究
る、世界的にも稀な研究環境を有している。VBLに参画している
技術者が、共同研究を通して製品化に適した研究成果を発掘し、
研究テーマの多くは半導体関係であり、シリコン系のセンサー
その可能性を検証することが鍵であろう。もちろん、大学の教員
と集積回路を一体化したチップから化合物半導体のエピ・デバ
にも、製品開発のセンスを共同研究を通して磨くことが必要で
イスまで含まれている(表1)
。この研究環境を生かして、化合物
ある。しかし、米国の大学教員のように、自らベンチャー企業を
半導体の発光素子をシリコンの集積回路に自在に組み込んだ光
経営するようにならなければ、そのセンスは本物にはならない。
電子集積回路の研究もされている。また、VBLでは、特定のテー
国を挙げて産学連携が叫ばれ続けている中で、このような方向
マに絞ったシンポジウム等を毎年開いている。企業からの参加
性を持つ教員は着実に増えている。
9-10, 2006
25
SEMI Membership
SEMI新会員企業のご紹介
−日本で入会された会員企業をご紹介します−
■会社名 1)
所在地、連絡先 2)
代表者 3)
設立年度 4)
取扱製品
5)
半導体/FPD製造装置・材料関連売上高
3)1987年
4)世界各国への申請代行業務、日本国内の製品安全認証、
電磁環境試験(EMC)
および評価試験業務等
■株式会社アルファウェーブ
5)−
1)〒862-0924 熊本県熊本市帯山1-24-25
■サムタク株式会社
1)Tel: 096-386-8801
1)〒194-0215 東京都町田市小山ヶ丘3-5-6
URL: http://www.alpha-w.jp
2)代表取締役 桝永 雅彦
1)Tel: 042-798-6080 URL: http://www.sumtak.co.jp
3)2002年
2)代表取締役社長 小島 功男
4)オンライン支援ソフトウエア、データ収集ソフトウエア、パー
3)1963年
フロロエラストマー製品、各種装置部品、設計・製作
4)ロータリエンコーダ、リニアエンコーダ、磁気式センサ、カウ
ンタ、その他付属品の製造販売
5)−
5)−
■株式会社喜多製作所
1)〒590-0535 大阪府泉南市りんくう南浜4-27
■シェフラージャパン株式会社
1)Tel: 07-2485-1900
1)〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜2-3-12新横浜
Email: info@kita-mfg.co.jp
1)URL: http://www.kita-mfg.com
スクエアビル
2)代表取締役 喜多 敏明
1)Tel: 045-476-5900 Email: info-japan@schaeffler.com
3)1969年
1)URL: http://www.schaeffler.com
4)コンタクトプローブ、エレクトロニクス関連製品、精密金属部品
2)代表取締役社長 バーンド ツェンガー
5)22億円
3)1987年
■株式会社熊防メタル
4)高精度テーブルベアリング、リニアガイドシステム、ボールネ
1)〒861-8037 熊本県熊本市長嶺西1-4-15
ジサポートベアリング、各種標準ベアリング、ダイレクトド
1)Tel: 096-382-1302 Email: ymaeda@kb-m.co.jp
ライブモーター
1)URL: http://www.kb-m.co.jp
5)−
2)代表取締役社長 前田 博明
■進和テック株式会社
3)2001年
1)〒160-8343 東京都新宿区西新宿3-16-6
4)金属・非金属の表面処理加工品(化学処理、化学めっき、
1)Tel: 03-5352-7202 URL: http://www.shinwatec.co.jp
電気めっき、陽極酸化、電解研磨)
の開発、製造
2)取締役社長 渡邊 正典
5)−
3)1946年
■KBセーレン株式会社
4)クリーンルーム設備および関連機器、HEPA/ULPAフィル
1)〒530-0001 大阪市北区梅田3-3-10梅田ダイビル14F
1)Tel: 06-6345-5074
Email: k.ohtake@kbseiren.co.jp
1)URL: http://www.kbseiren.com
ター、レーザーマーカー、レーザーマーキングシステム
5)−
■株式会社住友金属ファインテック
2)代表取締役社長 島田 亮一
1)〒582-0004 大阪府柏原市河原町1-22
3)2005年
1)Tel: 072-972-1962 URL: http//www.smi-finetech.co.jp
4)スーパークリーンルーム対応高性能ワイピングクロス
2)代表取締役社長 淺井 武二
1)原糸からの一貫製造工場にてさまざまなご要望に対応可能
3)1945年
5)−
4)研磨装置をはじめとする機械装置の設計、製作・各種基板の
■株式会社コスモス・コーポレイション
精密研磨加工・研磨廃液高度処理
1)〒519-0501 三重県伊勢市小俣町明野319
5)−
1)Tel: 0596-37-0190 Email: machinery@cosmos-corp.com
■ゼネラル物産株式会社
1)URL: http://www.safetyweb.co.jp
1)〒164-0001 東京都中野区中野2-18-2
2)代表取締役 濱口 慶一
1)Tel: 03-3383-1711 Email: info@general-bussan.co.jp
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2006, 9-10
SEMI Membership
1)URL: http://www.general-bussan.co.jp
3)1979年
2)代表取締役 菅野トシ江
4)超精密非接触三次元表面性状測定機タリサーフCCIシリー
ズ、超精密表面形状・粗さ測定機フォームタリサーフシリーズ
3)1982年
4)高周波テストソケット、バーインソケット、LSIテスター用リン
グや同軸ブロック、医療、分析機器等の高圧電源、RFID他
5)−
5)−
■株式会社ナノシステムソリューションズ
1)〒 135-0064 東京都江東区青海 2-41-6独立行政法人産
■双日マシナリー株式会社
業技術総合研究所臨海副都心センター内
1)〒103-0022 東京都中央区日本橋室町3-2-15日本橋室町
センタービル10F
1)Tel: 03-5520-8881
1)Email: http://www.nanosystem-solutions.com/toiwase/t-form.html
1)Tel: 03-5204-5641 URL: http://www.sojitz-mac.com
1)URL: http://www.nanosystem-solutions.com/
2)代表取締役 長久保 敏
2)代表取締役社長 芳賀 一実
3)2004年
3)2004年
4)半導体製造装置、MEMS関連装置、二次電池関連装置、
4)半導体製造および検査装置、光学関連機器、画像取込およ
ディスク・液晶関連装置、スマートカード・電子タグ製造装置、電
子デバイス製造・検査装置
び画像解析機器の開発設計・製品の製造・販売・メンテナンス
5)−
5)−
■株式会社ネオス
■株式会社SOKUDO
1)〒650-0001 兵庫県神戸市中央区加納町6-2-1神戸関電
1)〒600-8009 京都府京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町
88番地K・I四条ビル
ビル7階
1)Tel: 078-331-9381 URL: http://www.neos.co.jp
1)Tel: 075-256-8245 URL: http://www.sokudospeed.com
2)代表取締役 戸來 誠晴
2)代表取締役社長/CEO
3)1954年
末武 隆成
3)2006年
4)工業用化学薬品製造・販売、IC関連の精密洗浄
4)半導体関連コータ・デベロッパ
5)26億円
5)−
■ヒメジ理化株式会社
■有限会社竹内広告
1)
〒671-2111 兵庫県姫路市夢前町杉之内17
1)〒540-0026 大阪市中央区内本町1-2-8TSKビル10階
1)Tel: 079-336-3221 Email: sales@himejirika.co.jp
1)Tel: 06-6941-6227 Email: info.takeuchi-ad@vanilla.ocn.ne.jp
1)URL: http://www.himejirika.co.jp/
1)URL: http://www.takeuchi-ad.co.jp
2)代表取締役社長 尾上 博章
2)取締役社長 竹内 一真
3)1965年
3)2004年
4)各種照明用ランプバルブおよび理化硝子製品、半導体用石
4)ヤフーおよびグーグルにキーワード検索した際に、その検索
のトップに表示させる広告の取り扱い。
5)−
■ダイセル化学工業株式会社
1)〒590-8501 大阪府堺市堺区鉄砲町1
1)Tel: 072-227-3111
URL: http://www.daicel.co.jp/
2)代表取締役社長 小川 大介
3)1919年
4)フォトレジスト用材料(モノマー、ポリマー)
、low-k膜用有機
材料、および各種有機原材料
5)−
■テーラーホブソン株式会社
1)〒141-0021 東京都品川区上大崎4-5-37山京目黒ビル
1)Tel: 03-3494-5110 Email: mail-box@taylor-hobson.co.jp
1)URL: http://www.taylor-hobson.co.jp/
2)代表取締役 市川 清和
9-10, 2006
英製品など石英硝子加工製品
5)−
SEMI会員制度について
SEMIには、半導体およびFPD産業に従事する企業や団体にご入
会いただいています。
■ 業種による4種類の会員区分
①正会員(Corporate Member)
半導体およびFPD関連業界に装置・材料、部品等を供給されて
いる企業が該当します。
②準会員(Associate Member)
半導体およびFPDデバイスの設計、製造、販売に従事されている
企業が該当します。
③賛助会員(Allied Member)
研究、教育、規制機構、協会・団体等が該当します。
④関連会員(Affiliate Member )
半導体およびFPD関連業界に出版、コンサルティング、保険、運
送等のサービスを提供している企業が該当します。
27
Column
SEMI Newsコラム:詩的感性
水野 修
歌はメロディーから覚える。
それに陽は、さらさらと
同じ歌を数回聴くとメロディーはほぼ頭に入るが歌詞まではな
さらさらと射してゐるのでありました。
かなか覚えられない。また、歌詞は忘れてもメロディーはあまり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
忘れない。だからカラオケでは字幕スーパーが必要となる。
(リベラル社、中原中也選書より)
歌で名曲といわれるものはほとんどがメロディーからきている。
歌詞のゆえに名曲といわれるものはあまりない。
夜になぜ陽が射してゐるのか、などと思ってはいけないのだろ
しかし、歌というものはまず詩があり、その詩のイメージに合う
う。詩人のメルヘンとはそういうものなのだろう。中也の詩は
ようなメロディーが付けられて完成するものだろう。したがっ
筆者のような凡人が理解・納得できる範囲を超えている。そもそ
て詩はけっして従属物ではない。
も詩とは理解・納得するものではなく、何かしら感じ取るものが
ところが、歌を聴く側にとってまず印象に残るのはメロディー
あればそれでよいのかもしれない。
である。歌詞は従属物に近いものになる。だから詩の中に意味
詩は感性である。詩的感性を持ち合わせていない者が、優れた詩
不明の言葉があったり難解な詩であったりしてもあまり気には
を理解できるはずもない。優れているかどうかさえも分からな
ならない。にもかかわらず、知らない曲の詩だけを読んで難解だ
い。中也の詩集を読んだ時の筆者の強烈な印象は、中也とは頭
ったりすると、途端に気になるから不思議である。
の構造が根本的に違う、ということであった。
そういう詩について考えている。
いわゆる演歌の詩は分かりやすい。題材はほとんどが酒、恋、別
先日、前述のO氏の次の一文が新聞に載っていた。詩人が文章
れ、寂しさ、などだから現実そのものである。
を書くとこうなる、という実例と思える。断っておくがO氏は長年
演歌ではないが、人生の機微や哀歓を歌った歌謡曲も多い。そ
ビジネスの世界に身を置いた人であり、単なる作詞作曲家では
ういう曲を得意とする有名なシンガーソングライターがいる。自
ない。多才というにふさわしい人物である。
身で作詞作曲したものを自身でも歌うが、それらの曲をトップ
「……記憶の不思議を思う。
『記憶する』
という作業は私が私と
クラスの歌手も多く歌っている。その作詞作曲家をO氏とする。
して意識している私、私のコントロール下にある私が為している
O氏の詩には時々難解な言葉や表現が用いられる。部分的には
作業ではない。私の中に在る私でない私、その中の記憶装置と
難解だが、全体としてはその意味と雰囲気は理解できる範囲に
いうものが、私の意識や意思と関係なく、勝手に諸事から特定の
ある。
事を選び取って記憶しているのである。換言すれば私の人生の
詩的な表現ができるのは才能である。誰でもできることではない。
描き手はその私でない私なのである。……その私の中の私でな
い私について少なからず考証してみよう……」
歌の詩から一般の詩に範囲を広げると、多くの詩人が実に色々
要するに、記憶というものは恣意的な取捨選択ができない、と
な詩を書いている。分かりやすい詩もあれば難解な詩もある。
いうことを言っているように思えるのだが、それを詩的に表現す
たとえば中原中也という詩人がいた。生前はあまり認められず、
るとこうなるのだろう。文学的でも芸術的でも哲学的でもない。
花が咲いたのは死後である。明治40年山口県に生まれ、昭和12
筆者には詩的としか言いようがない。
年、30歳の若さで死んだ。今は故郷の山口県湯田温泉に中原中也
筆者はこういう文章に軽い拒否反応を覚えるのだが、これもま
記念館ができて、その業績が研究・展示されている。
た筆者とO氏とは頭の構造が違うからであろう。というよりも
中也の詩は独特である。例えば「一つのメルヘン」という作品に
筆者が即物的であり、詩的な感性が欠けているからであろう。
次のような部分がある。
欠けているのは残念だが他人の感性を羨むこともない。個性だ
28
秋の夜は はるかの彼方に、
からである。
小石ばかりの河原があって、
即物的感性ならば筆者も十分にあると思っている。
9-10, 2006
9-10, 2006
2006年
1月8日(日)∼11日(水)
Industry Strategy Symposium(ISS)U.S.
カリフォルニア
1月11日(水)∼13日(金)
Strategic Materials Conference(SMC)
カリフォルニア
2月8日(水)∼10日(金)
SEMICON Korea
ソウル
2月28日(火)∼3月3日(金)
Global FPD Partners Conference
30回記念開催 セミコン・ジャパン 2006
12月6日(水)∼8日(金)史上最大規模で開催
展示会入場事前登録開始
皆様のご支援のもと、本年、セミコン・ジャパンは記念すべき30回目の開
万国津梁館 沖縄
3月21日(火)∼3月23日(木)
SEMICON China
上海
3月28日(火)∼3月30日(木)
FPD China
4,400小間以
催を迎えます。
景気回復の明るい兆しの中、
おかげさまにて、
上海
上のご出展申込をいただいております。
4月4日(火)∼6日(木)
10 月 2 日からはホームページ上で展示会入場事前登録が始まります。
30回という節目を迎え、さまざまなイベントを企画しております。
詳細はhttp://www.semi.org/sj06をご覧ください。皆様のアクセスをお待
SEMICON Europa
ミュンヘン
5月9日(火)∼11日(木)
SEMICON Singapore
ち申し上げております。
シンガポール
お問い合わせはSEMIジャパン展示会/プログラム部まで。
6月12日(月)
・13日(火)
Tel:03-3222-6022 Email:jshowsinfo@semi.org
SEMI FORUM JAPAN
グランキューブ大阪
6月14日(水)∼16日(金)
FPD Taiwan
台北
7月11日(火)∼13日(木)
SEMICON West
サンフランシスコ
9月11日(月)∼13日(水)
SEMICON Taiwan
台北
10月3日(火)
・4日(水)
SEMI Expo CIS
モスクワ
10月10日(火)
・11日
(水)
Industry Strategy and Technology Forum(ISTF)2006
パシフィコ横浜
(SEAJとの共同主催)
10月18日(水)∼20日(金)
FPD International
パシフィコ横浜
(主催:日経BP社 共催:SEMI)
10月31日(火)∼11月2日(木)
SEMI Nano Forum 2006
サンノゼ
11月5日(日)∼11月8日(水)
International Trade Partners Conference
ハワイ
12月6日(水)∼8日(金)
セミコン・ジャパン
幕張メッセ
8月29日 教育プログラム「ハイテク・ユニバーシティ」日本初開催
*予定は変更される場合があります。
8月16日 2006年第2四半期の半導体製造装置統計を発表
8月29日 2006年第2四半期のシリコンウェーハ出荷面積を発表
7月13日 SEMI会長にHermes EpitekのArchie Hwang氏が就任
7月12日 「カレル・アーバネック記念賞」受賞者発表
7月11日 SEMI 半導体製造装置のコンセンサス予測を発表
7月10日 セミコン・ジャパン30周年記念ガーラ(祝祭)開催について
SEMI ジャパン
〒102-0074
東京都千代田区九段南4-7-15
Tel: 03.3222.5755
Fax: 03.3222.5757
SEMI OnLine:www.semi.org
Email:semijapan@semi.org
©2006 SEMI ジャパン
発行人:熊谷多賀史 編集人:浦田玉恵
2006年
SEMI News 9-10月号 2006年9月19日発行(隔月刊)
最近のニュースリリース
www.semi.org/news
SEMI News
September - October 2006
SEMIイベント・カレンダー