第360号(2015年09月30日発行)

北里大学医学部ニューズ
CONTENTS
第13回医学部ニューズ写真コンテスト応募作品「仲良し」
(華藤 誠さん)
■北里大学病院長に再任されて…………………………………2
■北里大学東病院長就任挨拶……………………………………3
■北里大学北里研究所病院長就任挨拶…………………………4
■北里大学メディカルセンター病院長就任挨拶………………5
■北里大学東洋医学総合研究所長就任挨拶……………………6
■准教授就任挨拶……………………………………………………7
■講師就任挨拶………………………………………………………8~10
■栗原克由教授が警察協力章を受章………………………………10
■医学部教員教育セミナー報告……………………………………11~13
■海外選択実習報告会報告………………………………………14,15
マーブルク大学
■平成27年度オープンキャンパス報告… ………………………16
■研究室紹介 整形外科学………………………………………17
■部活紹介 卓球部………………………………………………18
2015.9
No.360
北里大学病院長に再任されて
-北里大学病院と医学部のこれからの3年間-
北里大学病院長 海 野 信 也
(教授・産科学) 平成27年7月1日に理事長より辞令をいただき、大学病
分に力を発揮し、医学部の相模原市寄附講座「地域総合医
院長をもう1期担当することになりました。これまでの3
療学」の活動とともに、しっかりとした連携体制をとるこ
年間、医学部の皆様には本当にお世話になりました。様々
とを通じて、地域包括ケアシステムの時代で大学病院がは
な場面で多大なご助力を賜り、新病院への移転という、非
たすべき役割を明確化できると考えております。そのため
常に困難と思われた事業を遂行することができました。改
には、大学病院、東病院の双方の新規部門を発展的に運営
めて心より御礼を申し上げます。
していく必要があります。大都市とへき地が共存する相模
さて、10年の長きにわたって続いてまいりました「新病
原市に所在する北里大学医学部-北里大学相模原病院群だ
院プロジェクト」は、本年5月25日の新東病院開院で、既
からこそ可能な高度先進医療と地域医療貢献の両立を目指
存棟解体とその跡地の新患者用駐車場建設、外構工事を
してまいります。
残して主要部分が終了したことになります。長い工事期間、
②新専門医制度対応
医学部の皆様には非常なご不便をおかけしてまいりました
平成29年度にはじまる新専門医制度では、初期臨床研修
が、来年春には、バス停や書店への通路問題を含め多くの
を終えた医師は、研修基幹施設が提供する19の基本診療
問題を解消できると期待しているところです。
科の研修プログラムから一つのプログラムを選択し、後期
医学部、病院には、今後の3年間に取り組む必要のある
研修を開始することになります。平成27年8月の現時点で
いくつかの大きな課題があります。ここではそのうちの3
各診療科のプログラム整備指針がほぼ出そろい、研修基幹
点について、簡単にご説明し、再任のご挨拶とさせていた
施設となるためのプログラムの作成が急ピッチで進められ
だきます。
ています。当然のことですが北里大学相模原病院群として、
①北里大学病院、東病院の一体運営と、地域医療システム
と深く連携した医療提供体制の整備
全基本診療科について魅力ある研修プログラムを整備して
まいります。
北里大学病院と東病院は、北里大学相模原病院群として
③臨床教育研究棟の建設とそれを活用した臨床教育体制の
可能な限り一体運営を行います。そして、超高齢社会の
充実
ニーズに適切に応え、それを担う人材を着実に地域に送り
平成29年秋に完成する臨床教育研究棟には、医学部5、
出していく新しい大学病院のモデルとなる病院群を構築す
6年生、初期臨床研修医、各基本領域の専門医をめざす専
るという、新病院プロジェクトがめざす目標に向かって進
攻医の居室、これまで以上に充実したスキルスラボを整備
んでまいります。大学病院の超急性期機能と東病院の回復
する予定です。急速に進む卒前・卒後の医学教育改革に対
期リハビリテーション、在宅支援、小児在宅支援機能が十
応し、教育研修環境の充実を進めていきます。
大学病院既存棟解体工事現場からの医学部と大学病院
− 2 −
北里大学東病院長就任挨拶
北里大学東病院長 宮 岡 等
(教授・精神科学) 2015年7月1日付けで北里大学東病院長に就任しました
人関係者とそのご紹介の方では割引料金を実施しています
医学部精神科学の宮岡等です。私が医学部に着任したのは
ので、ぜひご利用ください。
1999年5月であり、それ以来、東病院精神神経科長という
新しい東病院では、超急性期医療を担う北里大学病院の
立場で東病院の変遷をみて、改革に加わってきました。そ
機能分化を考えつつ連携を密にして、体の病気の亜急性期
のような流れの中、2015年5月末のリニューアルオープン
から回復期、こころの病気の急性期から回復期を支えます。
は東病院にとってまさに新しい時代のはじまりであり、こ
具体的には、大学病院から自宅や施設に退院する患者さん
の大切な時期にどのように舵を取っていくか、責任の重さ
の移行段階を担当し、また地域の病院やクリニックと適切
を痛感しております。
な連携をとって紹介や逆紹介ができる病院を目指したいと
大学の施設の一部ですから、医学部の教職員には当然の
考えています。海野信也大学病院長は、大学病院と東病院
ように東病院のことを詳しく知っておいて欲しいと考えて
が一体運営を行い、
両者が一体であることを表すために
「北
いますが、これまでの歴史をみますと、なかなか「医学部
里大学相模原病院群」という呼称を提唱しておられますが、
関係者みんなの東病院」という理解には至っていない状況
東病院も、地域からみれば、現在以上に、大学病院と東病
もわかっていますので、この場を借りて簡単にご紹介します。
院を合わせて「北里」とみられるような体制作りを心がけ
北里大学東病院は北里大学病院から700mの距離にあり
ていくつもりです。そこでの東病院は他に例をみない新し
ます。1986年4月に開院して以来、消化器疾患治療センター
いタイプの病院に育てるつもりです。また医師新臨床研修
(消化器内科、外科、内視鏡科)、神経・運動器疾患治療セ
制度施行後は大学病院といえども医師不足の診療科が少な
ンター(神経内科、運動器外科、リハビリテーション科)、 くないですし、2年後の新専門医制度開始後は、全国的に
精神神経疾患治療センター(精神神経科)を中心とする診
医師の配置がさらに変わる可能性があります。大学病院と
療を行ってきました。
東病院が連携をとった「北里大学相模原病院群」は、地域
新大学病院開院によって、消化器内科、外科、運動器外
との連携まで視野にいれた特徴ある研修システムを作らね
科が大学病院に移ることになったため、組織を再編し、精
ばなりません。
神神経疾患治療センター、神経内科疾患・神経難病セン
新しい東病院は、
『患者さん中心の医療』
『共に創り出す
ター、在宅・緩和支援センター、小児在宅支援センター、 医療』
『人としての尊厳の維持』
『自立支援・回復支援』を
めまいセンター、心臓二次予防センター、リハビリテーショ
理念として掲げ、
全人的医療の実践を目指しています。
「東
ンセンター、認知症センター、健康科学センター(人間ドッ
病院に来て本当に良かった」
と言っていただけるような
「良
ク)を設けました。診療科としては以前から診療に当たっ
質で高度」かつ「温かく、人に優しい」病院にし、それを
ていた精神神経科、神経内科、神経耳科、リハビリテーショ
医学部の学生教育や医師教育で若者に伝えることが職員一
ン科、循環器内科に加え、新たに総合診療科、小児科など
同の目標です。ご意見などは遠慮なくお寄せください。ど
が担当しています。健康科学センター(人間ドック)は法
うぞよろしくお願いいたします。
東病院外観
東病院 1 階フロア
− 3 −
北里大学北里研究所病院長就任挨拶
北里大学北里研究所病院長 土 本 寛 二
北里大学北里研究所病院は北里柴三郎先生が明治26年、
体的な交流の進展につきましては、既にいくつかの診療科
港区白金の地に創立した土筆ヶ岡養生園を前身とし、社団
において来年度の計画も進んでおりますが、今後さらに多
法人北里研究所時代は研究所の付属病院として、平成元年
くの医学部の先生方とお会いし、協議させていただく機会
設立の現北里大学メディカルセンターと共に運営されてま
も増えることと思われますので、宜しくお願いいたします。
いりました。
当院は「心ある医療の実践」を理念に掲げ、
臨床(診療・
私は、現在の病院が新病院棟を開院する前年の平成10年
予防)・教育・研究・危機管理の4本の基本方針、加えて
に院長を拝命、平成20年の学校法人北里学園との統合後は
部門間に壁のない「チーム医療」を基礎に運営されており
常任理事、3年前より再度病院長に就任し、この度引き続
ます。これは北里柴三郎先生の理念であり、北里医学その
き病院長を務めさせていただくことになりました。
ものと考えており、変わるものではありません。
当院は、北里柴三郎先生が初代学部長を務めた慶應義塾
新執行部は「選ばれる(強い専門性を持ち、
競争力があり、
大学医学部との歴史的関係により、設立以来、主に慶應関
患者も職員も誇りをもって喜びを感じることができる)病
係の医師により運営されてきましたが、平成20年の法人統
院つくり」をビジョンとして掲げ、既に活動を始めており
合を機会に北里大学に仲間入りし、北里大学医学部の協力
ます。医療の未来を予測することはできませんが、創造す
のもと、医師をはじめとする人事交流が進んでいます。
ることはできます。私たちは「臨床(診療・予防)
・教育・
私は今回の任期中に、慶應義塾とは良好で強い連携を継
研究において日本で有数な北里医療」を創造する決意でス
続しながらも、本学医学部および4病院間の交流を本格的
タートしました。
に加速し、名実ともに北里大学の都心にある病院として、
北里研究所病院は皆様とともに進化を目指し進んでまい
北里医学の発展に努めてまいりたいと思っております。そ
ります。
のスタートとして、医学部の先生にも参画していただき、
新しい執行部体制を構築いたしました。
〇副院長
氏 名
渡 邊 昌 彦
菊 池 史 郎
所属・職位
診療部長
*医学部教授・外科学
臨床教育センター長
*医学部教授・医学教育
研究開発センター4病
院連携教育研究部門
常 松 令
診療部消化器内科部長
朝穂 美記子
看護部長
職務分掌等
診療担当(主)
人事・教育担当
診療担当(副)
病院改革担当(主)
渉外担当、研究担当
危機管理担当
診療担当(副)
病院改革担当(副)
看護担当
定例教育講演会(平成27年6月29日)
:新執行部所信表明
○病院長補佐
氏 名
神 谷 紀 輝
石 井 良 幸
入 江 啓
月 村 泰 規
島 田 恵
所属・職位
診療部呼吸器外科部長
*医学部教授・呼吸器外
科学
診療部消化器外科部長
診療部泌尿器科部長
*医学部教授・泌尿器科学
診療部スポーツ整形外科
部長
診療部救急科部長
職務分掌等
人事・教育担当
危機管理担当
病院改革担当(副)
機器整備担当
救急・手術担当
医療材料担当
外科系救急
内科系救急
診療技術部担当
この実現は医学部長の東原正明先生をはじめとする執行
部の先生方および統括病院事業本部長の渋谷明隆先生のご
理解、ご協力によるものと感謝いたしております。また具
4病院執行部セミナー準備会(平成27年7月27日)
:チームメンバー
前列左から、菊池史郎副院長、筆者、渡邊昌彦副院長
後列左から、島田恵院長補佐、松原肇薬剤部長、朝穂美記子副院長、常松令副
院長、武石年弘事務部長
− 4 −
北里大学メディカルセンター病院長就任挨拶
北里大学メディカルセンター病院長 廣 瀬 隆 一
(講師・神経内科学) 本年7月に北里大学メディカルセンター病院長に就任い
も含めた総合的な見地で、病気の治療・予防を図り健康で
たしました。当病院は、平成元年4月に北里研究所創立75
豊かな生活を送れるようにすることです。地域医療の本質
周年記念事業として、埼玉県北本市に研究所組織ととも
は、健康面での不安や問題を解決し、疾病の予防、治療、
に北里研究所メディカルセンター病院として開院しました。
リハビリテーションを通じて住民が安心して暮らせる医
平成20年に北里学園との統合により学校法人の病院として
療・福祉環境を提供し実践することでもあります。私たち
再スタートし、
その後病院名も北里大学メディカルセンター
の病院がめざすものは、地域の医療機関、福祉・行政機関
に改名いたしました。さらに、内沼栄樹前病院長のご尽力
と連携しながらその中心的な存在になることです。
と医学部のご協力・ご理解により平成27年1月からは医学
医療は細分化し高度になり、各診療科においても専門医
部教育病院として認定され、卒後研修のみならず医学部学
としての技量を研鑽することはますます重要ですが、全人
生の卒前教育も担う病院として新しくスタートしました。
的な見方をできる医師を育てることも医療機関の大事な義
当病院は埼玉県の中央に位置し、埼玉県県央医療圏北部
務です。幸いなことに当院は、地域住民と最も近い立場に
の地域医療支援病院に指定され、地域の基幹病院として地
あり、患者さんが直接アクセスしてきますので、多くの問
域医療に貢献しております。また、災害拠点病院、臨床研
題を抱えた患者さんが対象であり、一つの専門領域のみで
修指定病院、各学会専門医養成認定機関として、地元への
解決できることは少なく多面的な見方をする必要がありま
貢献のみならず、若い人材育成の場としても充実した環境
す。また、多職種が異なった立場からアプローチするチー
を提供しています。開院当初は、病床数200床でスタートし、
ム医療を実践できる環境にあります。若い医師が多くの臨
地元医師会のご理解をいただきながら増床を行い、現在は
床経験を積みながら、
「よい医療人」を育てる格好の場所
稼働病床数334床です。
と考えています。
恵まれた自然環境と院内には多くの絵画が展示され、
「絵
現在、病院では学校法人の指導下に、経営改革プロジェ
と緑のある病院」として地元住民に親しまれています。“地
クトを立ち上げ諸課題に取り組み始めました。平成27年度
域文化の担い手となる病院でありたい” と言う北里研究所
は「地域医療を追究し学べる病院」をビジョンとして行動
顧問、大村智先生のお考えのもと多くの美術品が収蔵され
計画を立て、教職員全員が共通意識を持ち改革に取り組ん
た大村記念館は、各種研究会にも利用され、病院で開催さ
でいます。20数名の医師でスタートした病院も、医学部・
れる市民コンサート、市民講座とともに地域への情報発信
大学病院の協力を得ながら診療科の充実を図り、本年度は
の場となっています。相模原とは圏央道を利用すれば1時
80数名の医師による診療体制が可能になりました。今後も
間半ほどで連絡でき、病院間のシャトルバスも運用されて
医学部、大学病院と連携をとりながら教育機関としてふさ
います。
わしい病院となり、若い医師が活躍できる場を提供したい
私自身は昭和54年に卒業後、田崎義昭神経内科学教授に
と考えています。卒業生諸君、北本に集え!
師事し大学院を終えたのち、創成期の大学病院救命救急セ
ンターのスタッフとして、当時日本トップクラスの救急医
療の現場で臨床経験を積んできました。平成元年に埼玉県
に新病院を開設するにあたり企画準備室から参加し、神経
内科の責任者として開院を迎えました。脳血管障害以外の
神経内科疾患の経験はあまりありませんでしたが、大学神
経内科の協力を得ながら徐々に診療範囲を拡げ、現在では
多くの神経疾患の診療にあたっています。
当病院のモットーは北里柴三郎先生の精神に基づき、常
に研鑽に励み、診療・教育・研究等の諸活動に取り組み、
真心をもって患者さんに向き合い、地域医療に貢献するこ
とです。医療の目的は病気を治すのみならず、衣食住環境
− 5 −
北里大学メディカルセンター外観
北里大学東洋医学総合研究所長就任挨拶
東洋医学総合研究所長 小田口 浩
7月1日、花輪壽彦前所長の任期満了に伴い、北里大学
上にわたって人間に利用されてきたという明確な歴史的事
東洋医学総合研究所の第5代所長を拝命いたしました小田
実に基づいており、十分な数の臨床経験が積まれた、歴史
口浩と申します。私は1987年に慶應義塾大学医学部を卒業
的根拠を有する医学です。
した後、同大学の研修医となって心臓血管外科学(循環器
東洋医学総合研究所は、1972年に日本で最初の漢方医学
病学)を修め、2003年に北里大学大学院医療系研究科東洋
の総合的な研究機関として設立されて以来現在に至るまで、
医学コース(指導教授:花輪壽彦)に入学、2007年に修了
わが国における漢方医学関係の診療や研究に注力し、漢方
しました。同年、北里研究所東洋医学総合研究所(現・北
医学発展のために尽力して参りました。2008年には社団法
里大学東洋医学総合研究所)に入職し、以来漢方医学(漢
人北里研究所と学校法人北里学園が統合して、学校法人北
方薬や鍼灸による治療を中心にした日本の伝統医学)の臨
里研究所となったことを受け、当研究所は大学の附置研究
床、研究に従事しております。
所と位置づけられ、漢方医学教育の場としての役割も担う
心臓血管外科は血流を物理的にコントロールする、どち
ようになりました。1986年にはWHO(世界保健機関)の
らかと言えば工学的な領域で、漢方医学の対極に位置する
伝統医学協力センターに指定され、以来現在に至るまで
と考えられます。私自身、心臓血管外科に身を置いていた
WHOへの協力活動を通じて世界の人々の健康にも寄与し
ときは漢方にはまったく興味がなく、というよりも、漢方
ております。また当研究所の漢方鍼灸治療センターは、一
を考える背景が全くなかったといってよく、現在でも出身
人一人の心身状況の違いに配慮した、最高レベルの漢方医
医局の集まりにいくと、少し奇異の目で見られることがあ
療(漢方薬・鍼灸治療)を提供できる場として内外から高
ります。しかし最近では、心臓の手術後に漢方薬を使用す
い評価をいただいております。
ることで合併症を減らせる可能性があるという研究発表も
医学 部 教 育と漢 方医学との関係について述 べますと、
出てきており、漢方医学は西洋医学のすべての領域に入り
2001年、漢方医学は医学部モデル・コアカリキュラムに採
込んでいると考えて間違いありません。
録され、すべての医学部学生が漢方について学ぶことにな
さて、よく誤解されるのですが漢方医学は中国の医学で
りました。ただし、十分な漢方医学教育を行える人材を擁
はなく、日本の伝統医学です。起源は古代中国医学ですが、 している大学はごく一部で、大半は急場しのぎの漢方医学
6~7世紀に日本に伝来して以来、日本の文化や風土に合
教育を行っているのが現状のようです。この点北里大学は、
わせて変容され、発展しました。特に江戸時代には、鎖国
長年にわたり日本の漢方医学界の指導的立場を維持し、人
の影響もあってか日本独自の医学として隆盛を誇り、現在
材、伝統医学知識、伝統医学技術、伝統医学に欠かすこと
の漢方医学の基礎が確立しました。漢方医学は、自然科学
のできない古典史料など、どれをとっても他の追随を許さな
に基礎をおく西洋医学とは異なった視点で患者を診断・治
い豊富さを誇る東洋医学総合研究所を傘下に収めておりま
療することを目指した学問です。一つ一つの病因を解決し
す。医学部附属医学教育研究開発センター教授である花輪
ていくのではなく、病因同士が複雑に絡み合って形成され
前所長と協力し、この東洋医学総合研究所の資源を北里大
た症状や兆候に対し、多成分を有する漢方薬や多数の経穴
学の医学部教育に十分に活用できるよう努力して参る所存
で構成される経絡に対する鍼灸刺激で治療することを内容
です。北里大学医学部で学んだ学生が、西洋医学に加えて
とする学問であり、西洋医学的視点ではなかなか理解が困
漢方医学にも十分精通し、真に患者さんの役に立つ医療を
難な領域です。ただ、いくら西洋医学が発展してもすべて
提供できる
の患者さんの悩みを解決できる訳ではなく、現実に漢方医
能力を身に
療は多くの患者さんに支持され、最近の調査では医師の9
つけられる
割程度が漢方薬を処方した経験があるなど、漢方医療は日
よう、全面
本の医療に不可欠の存在
的にサポー
となっております。よく、 トするのが
薬局調剤風景
サプリメントなどによる
東洋医学総
相補/代替医療との違い
合研究所の
を質問されます。確かに
役目である
漢方・鍼灸の科学的根拠
と考えてお
は希薄ですが、2000年以
ります。
− 6 −
東洋医学総合研究所外観
准教授就任挨拶
飯 塚 高 浩
(准教授・神経内科学) 平成27年7月1日付で神経内科学の准教授を拝命致しまし
来の神経症候学では説明困難な異常運動でした。当時は原因
た飯塚高浩です。この場をお借りしてご挨拶を申し上げると
不明であり、4例中2例は失外套状態となり無反応状態が半
ともに、西山和利主任教授に感謝申し上げます。
年から1年以上持続しました。機能回復は不可能と思われま
私は島根県出身で、県立出雲高等学校を経て昭和56年に北
したが、半年から5年以上かけて全例が緩徐に回復しました。
里大学医学部に入学しました。昭和62年に卒業後、北里大学
当時、当科に在籍されていた現慶應義塾大学神経内科学主任
医学部神経内科学(当時の田崎内科)に入局しました。田崎
教授の鈴木則宏先生が、私の主治医の代診をされていた際に、
義昭教授は、神経内科学の初代教授であり、
「ベッドサイドの 「治すのが我々の使命ですから」と人工呼吸器装着下で昏睡状
神経の診かた」の著者でもあります。学生に対して厳しくも情
態にある患者さんのご家族に説明されたと後で聞き、主治医
熱的、かつ流暢な語り口で教鞭をとられ、患者を診るだけで
として「ど、どうしよう」と大変驚いたのを覚えております。
診断できるという神経診断学の魅力、論理、そして脳の神秘
本邦では、平成6年頃から「急性非ヘルペス辺縁系脳炎」
に魅せられて入局しました。その後、神経内科は古和久幸教授、 の名称で類似例が学会で発表されていましたが、学会でも疾
坂井文彦教授、望月秀樹教授、そして現在の西山和利教授へ
患概念をめぐって混沌としており、感染症なのか自己免疫疾
と引き継がれました。
患なのかさえもわかっていなかった時代でした。一方、我々
一方、私は坂井教授のご紹介で、平成6年から2年間テキ
は、ある英文誌「Brain」にこれら4例の臨床像を投稿した際
サス大学南西部医療センターに留学し、海外での教育・診療・
に、reviewerの一人から貴重な助言を得ました。そこで、平
研究体制を直接見る機会を得ました。
「何かしたい」という想
成18年12月27日に、ペンシルベニア大学のJosep Dalmau教授
いを持ち続けながら帰国し、現在に至っております。
にemailを送り、抗体測定をお願いしました。その結果、4~
私の主な研究テーマは、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)
、 7年間凍結保存していた検体から4例全例、抗NMDA受容体
頭痛、および自己免疫性脳炎です。一見、マイナーな領域に
抗体という新規の抗体が検出され、遂に確定診断に至りまし
見えますが、視点を変えれば「シナプスの機能・代謝障害に
た。我々の論文は、平成19年の秋にNeurologyの電子版に掲
基づく中枢神経疾患」という、壮大で、生命科学と脳機能の
載され、これを契機に本邦でも本疾患に対する認知度が急速
根幹に関わる重要な領域と言うこともできます。これらの特殊
に上昇し、早期診断・早期治療が加速化したと感じています。
な疾患の病態に興味を持ち、臨床的側面から研究をしてきま
その後も、アメリカ、スペイン、イギリスと、北里にいながら
した。
世界の有名な教授陣と協力し、新規の抗体を有する自己免疫
平成2年4月、出向先から戻った病棟医1年目の時、35歳
性脳炎を共同で報告する機会を得ました。その他、家族性片
の女性が総合外来に搬送されました。頭痛に引き続き徐々に
麻痺性片頭痛という特殊な片頭痛発作の病態の解明にも貢献
意識障害が出現し、左半身にmyoclonusが周期的に出現して
してきました。現在、臨床神経学の編集委員の一人としても
いました。当時講師で、
私の恩師の一人である畑隆志先生に
「こ
働いております。
の病態を解明しなさい」と言われたのが、MELASにかかわ
上記の研究は、当科在籍中過去28年間に諸先生から学び、
るようになったきっかけです。当時はMELASという疾患概念
自分の眼で一つ一つ確認した臨床データをまとめたものです。
すら知りませんでしたが、後にMELASと判明し、MELASの
中には湧き起こるひらめきと衝動、どこからともなく聞こえ
S「脳卒中発作に似て非なる発作」に興味を持ち、取り組んで
てくるお告げまで、持てる五感と六感を十分に活用しました。
きました。ある国際学会の教育講演で「片頭痛では神経細胞
多少推論が先走りしたこともありましたが、病態仮説を自ら
の興奮性の亢進が基盤にある」ということを知り、これは、ま
の視点で構築し、世界に発信し続けたいという想いでやって
さにMELASの「S」にも通じる病態であると確信し、平成14
きました。
年に「神経細胞の興奮性の亢進がMELASのSの病態に深く関
尚、平成27年4月から北里大学東病院で勤務しております。
わっている」とNeurologyに報告しました。翌年には「急性期
高齢化を迎えて医療現場では、しばしば、CureからCareへの
脳病変は周期性てんかん放電を随伴しながら血管支配域を超
変換が必要であると言われていますが、中長期的には、診断
えて周辺皮質に緩徐に進展する病変である」と第2報を、また、 とCareに終わることなく、あえて、Careから治療(Treat)す
MELASの頭痛発作の発症機序についてもNeurologyに連続し
る神経内科を目指したいと思います。これを実現するには、神
て報告しました。平成17年には「Sは非虚血性神経血管イベン
経難病に関する臨床治験を積極的に導入し「神経難病の病態
トである」という仮説を提唱し、CurrNeurovascResに報告し、 解明と克服に向けた治療戦略」という強いメッセージを打ち出
その5年後に、Future Neurologyに新しい視点でその続編を
すことにより、地域における「神経難病治療の拠点病院」と
執筆しました。
しての役割を果たせるように努力したいと考えております。さ
一方、平成11年から5年間に高度な意識障害にもかかわら
らに、自己免疫性脳炎の診断・治療の向上にも積極的に貢献
ず奇妙な不随意運動が持続する若年女性の脳炎患者4例を経
したいと思います。最後に、これまでお世話になった諸先生
験しました。共通する症状は口顔面を中心とする難治性の不
に感謝を申し上げるとともに、本年2月に急逝された故濱田潤
随意運動であり、まるで何かに取り憑かれているかのような従
一先生のご冥福をお祈りします。
− 7 −
講師就任挨拶
秋 本 峰 克
(講師 形成外科・美容外科学)
平成27年4月1日付けで医学部形成外科・美容外科学講
初めはスキルの習得に追われ、全体を見回せずに経過した
師を拝命しました秋本峰克と申します。この場をお借りし
時間でしたが、大学院卒業時には達成感も味わえ、基礎研
てご挨拶申し上げます。
究の素晴らしさを感じ臨床復帰への決意も少しだけ揺らぎ
私は平成12年3月に25回生として北里大学医学部を卒業
ました。
し、同年5月に北里大学形成外科に入局しました。研修医
また解剖学教室の御厚意により、医学部2年生の解剖実
1年目を北里大学病院で過ごし、2年目に長野厚生連北信
習のティーチングアシストとして自らも3年間学ぶ機会
総合病院形成外科に出向しました。大学病院から長野県の
を頂きました。手術場から離れ、学生とともに人体構造を
地域基幹病院への出向で生活環境も、対象疾患も激変しま
学んだ時間は大変貴重な経験であり、その時の知見は今の
したが、この2年間の経験が医師としての基礎となりまし
私の財産でもあります。当時一緒に学んだ学生達が卒業し
た。その後は横浜南共済病院整形外科、横須賀共済病院外
医師となり、ともに手術し、私の手術の麻酔を担当し、と
科で研修をさせていただきました。現在のような臨床研修
もに救急外来で診療を行うことは本当に喜ばしく感じま
医制度もなく、科の選択プログラムが少ない中で、伝統的
す。この経験も今後に役立てて、数年後の学生の姿を見据
に整形外科、外科の研修を含んだレジデント教育制度が魅
え、到達目標を意識した学生教育を実践していければと思
力で当教室を選びました。外科系研修の後に大学に戻って
います。
からは病棟医として勤務しました。救命救急センターでの
大学院卒業後は再び形成外科・美容外科の一員として診
勤務も研修医時代を含めて3度経験させていただきました。
療をさせていただき現在に至ります。教室のご指導のおか
形成外科・美容外科の教育システムの一つである詳細な術
げで数年のブランクも感じず、大学院時代の手術ができな
前検討は、手術場での不安を払拭し、将来出会う困難な症
い不安も忘れて手術を行っています。当科の対象疾患は幅
例を克服できます。当時カンファレンスで内沼教授に褒め
広く、頭頂部から足先まで連日様々な手術が全身麻酔、局
ていただいた記憶は、フレッシュマン、チーフで一回ずつ
所麻酔で行われています。専門スタッフもいますが、外傷、
しかありません。今の自分の姿は病棟医時代に厳しくご指
皮膚潰瘍、足部壊死、皮膚良性腫瘍などは全員一丸となり
導いただいた先輩方のおかげと感じています。
対応しています。私は主に腫瘍、再建を担当しています。
一方、研究に関しましては、平成20年4月に北里大学大
皮膚悪性腫瘍、悪性軟部組織腫瘍は切除範囲も大きく、組
学院医療系研究科に入学し、解剖学(当時亀田単位)で
織欠損に対して再建も必要となります。手術部位や術式も
Hes1ノックアウトマウスの解析を行いました。Hes1(hiary
症例に応じて異なり、術式が直前、術中まで定まらないこ
and enhancer of split 1)は胎生期において重要な転写因
とも多々あります。これらの疾患は我々だけの力では太刀
子で、現在でも世界中でその機能解析が行われ多くの論文
打ちできず、皮膚科や放射線科の先生方と診療にあたって
が発表されています。当初亀田芙子教授から頂いた研究
います。相模原市のみならず県内、隣接都県の施設からも
テーマは『マウス下垂体隆起部の胎生期発生にHes1が与
ご紹介を頂いており、武田啓教授の目指す北里でのみ可能
える影響について』でした。初めての基礎研究で何もわか
な集学的治療を実現できればと考えています。また様々な
らず解剖学教室のスタッフの方々に支えられ無我夢中でス
科の先生方と協力して解決すべき症例も多く、風通しの良
タートした研究で、形成外科とあまり(ほとんど)関係の
い診療が行えるよう努力してまいります。
ない分野であることに気付くのに1年かかりました。幸運
近年、形成外科手術手技の一つの皮弁に対して、血管新
にもその間に下垂体隆起部、後葉、視床下部の胎生期発生
生を行うことで壊死率の改善をはかる基礎研究の機会を再
に与える影響を見いだすことができました。臨床で接した
び与えて頂きました。結果も少しずつ出せています。今後
ことのない下垂体、視床下部を顕微鏡で覗く毎日の中で、
も臨床を意識した基礎研究を診療と並行して行っていけれ
マウスの顔面形態を観察するようになりました。形成外科
ばと考えております。まだまだ未熟ですが教室の発展に全
の対象である頭蓋、口蓋などの小さな変化に疑問を持ち相
力で取り組もうと思います。何卒ご指導ご鞭撻を賜ります
談した結果、その変化も論文にまとめることができました。
ようお願い申し上げます。
− 8 −
講師就任挨拶
新 井 久 稔
(講師・救命救急医学) このたび、平成27年4月1日より医学部救命救急医学講
指導のもと、「晩発型アルツハイマー型認知症患者におけ
師の職を拝命いたしました新井久稔と申します。簡単です
る大脳白質病変と動脈硬化、関連疾患、生活習慣との関連」
がこの場を借りてご挨拶と自己紹介をさせていただきます。
に関して論文をまとめさせていただきました。認知症に関
私は、埼玉県出身で、北里大学に入学後、神奈川県に住
しては、いわゆる周辺症状の気分の易変性や興奮・妄想な
んでからもう25年近くが経とうとしています(初めて相模
どを呈して精神科を受診するケースが多いため、今後も精
大野駅に来た時が昨日のように思い出されます。ずいぶん
神科医としての視点から臨床や研究に関与できたらと考
駅周辺も変わりましたが、年月が経つのは早いなあと感じ
えております。
ます)。大学時代は、アメリカンフットボール部に所属し、 このたび、4月から救命救急・災害医療センターに勤務
部活の仲間達や友達といろいろと楽しい学生生活を過ごさ
させていただくことになりました。救命救急センターは、
せていただきました。
救急医の先生達や他の様々な身体科からのローテートの先
北里大学医学部を卒業後、平成11年に北里大学精神神経
生達も来られており、その中で精神科医として今までの臨
科に入局させていただきました。精神科を選んだ理由は、
床の中で経験させていただきましたものを自分なりに表現
学生時代に臨床実習で精神科を回らせていただいた時に、 していけたらと考えています。実際に救命救急センターで
患者さんのカルテに生育歴から現在に至るまでの経過が細
勤務させていただき、自殺企図で搬送される患者さんの割
かく記載されているのを見て、その人の人生そのものを見
合の多さを改めて感じました。特に重要と思われたのが、
ているようで、大変興味深く感じたのが大きかったと思い
救命救急センターに自殺企図で搬送された患者さんで救命
ます。また、精神科の先生達の優しい温和な雰囲気が、自
できた人の再発予防に関して、どのように関わっていくの
分に合っている感じがしたこともありました。
が良いかということです。また、精神疾患患者さんの臨床
北里大学東病院の精神科で、宮岡等教授の御指導のもと
において、患者さん自身の精神症状に対しての対応が当然
約2年間臨床研修をさせていただきました。その臨床研修
中心となりますが、周囲の家族や関係者への影響も大変大
期間に、私は救命救急センターを3か月間ローテートさせ
きいものがありますので、家族への関わりが重要となって
ていただきました。精神科は自殺企図のリスクのある患者
きます。引き続き日々の臨床を大事にしながら、どのよう
さんの対応や、精神科病棟に入院中の精神疾患患者さんの
な対応が良いのか検討していけたらと思います。
身体疾患の急変の対応が必要な場面もあり、短い期間でし
今後行いたい臨床研究としては、今までの臨床経験をふ
たがその時に救命救急センターで教えていただいたこと
まえて、精神疾患と身体合併症に関連した研究を中心に、
は、その後の臨床においても大変役立ったと感じました。
他科(身体科)の先生達と議論しながら行えたらと考えて
その後出向となり、相模台病院と秦野病院の精神科で様々
おります。また、救命救急センターにおいて、特に自殺企
な精神疾患患者さんを担当し、先輩の先生達に御指導をい
図に関連した臨床研究も精神科医の視点から行えたらと考
ただきながら臨床経験を積ませていただきました。特に相
えております。
模台病院は9年以上常勤医として勤務させていただき、高
久しぶりに大学で勤務させていただきますと、周囲には
齢者を中心に精神疾患患者さんの主に身体合併症に関し
後輩の先生達の方が多くなっていましたが、自分自身が先
て身体科医の先生達とお仕事をさせていただきました。そ
輩の先生達から教えていただいたものや、自分が臨床の場
の臨床経験は、現在私自身が興味を持って勉強している精
で経験させていただいたものを後輩の先生達に少しでも伝
神疾患患者と身体合併症に関しての大きな土台となって
えていけたらと思います。私自身も引き続き一つ一つ臨床
おります。また、学位論文は、認知症に関して研究を行い、 を中心に勉強していきたいと思います。今後ともよろしく
高橋恵准教授(北里大学北里研究所病院精神科部長)の御
御指導のほどお願い申し上げます。
− 9 −
講師就任挨拶
杉 本 孝 之
(講師 形成外科・美容外科学)
2015年4月1日付けで北里大学医学部形成外科・美容外
科・美容外科学の口唇口蓋裂診療班チーフとして診療・手
科学講師を拝命しました杉本孝之と申します。この場をお
術を担当しています。
借りしてご挨拶を申し上げるとともに、内沼栄樹前教授、
口唇口蓋裂は体表奇形では頻度が高く、500人に1人程
武田啓教授、優しい杉本佳香先生、かわいい子供たち、医
度の割合で発生します。口唇・鼻などの審美的側面と言
局員の方々に心から感謝を申し上げます。
語・咬合などの機能的側面を持ち、その手術には繊細さが
私は北里大学医学部の26回生で、2001年に卒業後、頭頸
要求されます。生後間もなく治療が始まり、1歳ごろまで
部領域の手術に興味があり、北里大学形成外科・美容外科
に2回程度の手術を行います。以後も成長に伴う変化の修
に入局しました。私の人生はもともと、恵まれたタイミン
正術や歯科矯正治療、言語訓練などを行い成人に至るまで
グと驚異的な忍耐力で成り立っています。北里大学病院で
の長い期間をかけチーム医療を行っています。再建領域・
の研修後、2年目からは長野県佐久総合病院や湘南鎌倉総
美容外科領域と並ぶ形成外科の花形です。真皮縫合もでき
合病院、横浜市立市民病院、救命救急センターなどに出向
なかった私にたくさんのチャンスと適切な指導をしてくだ
させていただきました。365日on callなど非常につらかっ
さった医局員の先生方に改めて感謝申し上げます。手術
た思い出がありますが、研修医制度の確立していない時代
のできる形成外科専門医を育てるには10年以上の長い歳月
にもかかわらず、外科学・整形外科学など様々な経験をさ
と、たくさんの執刀経験が必要です。私も若い医局員の先
せていただきました。2005年からは形成外科専門医取得の
生方に同様のチャンスと指導を与えてあげられるよう努力
ため大学病院で高度な手術症例を経験させていただきまし
し、また医学部講師として研究と教育にも十分な努力を惜
た。2009年からは横須賀共済病院形成外科に出向し、耳鼻
しまないよう頑張っていく所存でございます。
科との再建手術などたくさんの手術を執刀させていただき
今日の私があるのは、様々な経験をさせて頂き、温かく
ました。将来自分も医長として自立し、血管吻合を用いた
見守って頂いた武田啓教授をはじめ、多くの先生方の御指
再建手術で活躍したいと思っていましたが、小児先天奇形
導によるものと感謝しております。この場をお借りして厚
専門の神奈川県立こども医療センター形成外科で研修する
く御礼申し上げます。まだまだ未熟ではありますが、微力
チャンスを与えていただき、2011年から2年間口唇口蓋裂
ながら北里大学の発展に貢献していけるよう、これからも
手術を勉強させていただきました。ほぼ毎日口唇形成術・
精進して参りますので、今後とも御指導・御鞭撻のほど宜
口蓋形成術を経験し、2年間で600症例以上の手術にかか
しくお願い申し上げます。
わりました。そして現在、歴史ある北里大学医学部形成外
栗原克由教授が
警察協力章を受章
察部外者に対して授与される記章で、警察における民間
人への最高位の表彰です。
栗原教授は、平成6年より、神奈川県で発生した約
法医学の栗原克由教授が、平成27年7月1日、警察庁
15,000体以上の異状死体の検案・解剖を行ってきました。
長官から警察業務の協力者に贈られる「警察協力章」を
また、オウム真理教(当時)による坂本堤弁護士一家殺
受章、7日に神奈川県警本部で伝達式がありました。
害事件でも遺体の鑑定を行うなど、犯罪捜査の分野にお
警察協力章は、特に顕著な功労があると認められる警
いて多大な貢献をされました。
警察協力章(右)と
神奈川県警察本部長章
受賞祝賀会で挨拶をする栗原教授
− 10 −
医学部教員教育セミナー報告
三 枝 信
教育委員長 (教授・病理学)
気の遠くなるような暑さの中、8月7日(金)
・8日(土)
するような講義法が話題となった。1日目の最後のセク
の2日間にわたり、夏の恒例行事である第26回医学部教員
ションとして、昨年度のベストティーチャー賞を受賞した
教育セミナーをオンワード総合研究所人材開発センター
衛生学の星佳芳先生より医学教育に関するご講演を頂いた。
(横浜市都筑区)で開催した。今年はメインテーマとして、 2日目は、参加者による1日目のセミナー内容に関する
「北里大学医学部の教育について/学生に魅力ある教育と
アンケート集計結果の報告から始まった。開催者側として
は(マイクロティーチングを含む)」「学習者の適切な評価
は緊張の走る瞬間である。タスクフォースとしての仕事内
とは」を掲げ、最終目標は、「北里大学医学部の教育ニー
容はまずまずの評価であったが、医学分野別認証に関する
ズを理解し、よりよい講義方法を実践できる」「学習に沿っ
説明がやや不十分であったようだ。続いて、特別講演とし
た適切な評価方法を選択し、評価することができる」とし
て、東北大学教育情報学研究部教授の北村勝朗先生に、
「魅
た。セミナーは、各教育単位からの選出された40名の参加
力ある講義の組み立て方」と題したご講演を頂いた。“魅
者(4名の初期研修医を含む)が7班に分かれて、与えら
力(魅力ある講義とは)”、“熟達(医学生の熟達化過程と
れたテーマに関して議論し、そのプロダクトを全体会議で
講義)”、そして “指導(教員による指導と講義)
” の3部
討議するワークショップ(WS)形式で行った。
構成で、学生が学習に関して「自分で自分をナビする」よ
開講式、オリエンテーション後に、他己紹介(ペアに
うになるにはどのような教育・指導法が有効・必要かにつ
なった相手を参加者全員に紹介する)で参加者同士のアイ
いて学んだ。講演後の質疑応答も活発で、参加者の関心の
スブレイクを図った。緊張感が解れたところで、開催者側
深さを物語っていた。引き続き、本セミナーのもう1つの
より北里大学医学部の教育の特徴をカリキュラム変遷の観
テーマである「評価」に関するグループワークを行った。
点から説明し、さらに、現在ホットな話題である医学分野
評価に形成的評価(学習単位・研修の途中の評価)と総括
別認証(国際認証)について解説した。その後、セミナー
的評価(過程終了時の評価)があることを初めて知った参
参加の証拠となる集合写真撮影を行い、いよいよWS開始
加者は少なくないであろう。グループワークで独自の評価
となった。WS1として、
「良い学生指導とは」をテーマに、
方法を作成し、全体討議を通じて評価法に関する知識を深
ワールドカフェ(カフェのようなリラックスした雰囲気で
めると同時にその実践方法を学んだ。最後に、2日間のセ
行う話し合いで、一人のホストを残して、参加者はラウン
ミナー全体の総括として、学生の学習へのモチベーション
ドごとにテーブルを移動して話し合いをする)形式で討議
の維持と能動的学習意欲の開発には、
どのような講義内容・
した。昼食後は、約4時間をかけてマイクロティーチング
形態および評価法が良いかについて討議した。いくつかの
による講義手法の検証を行った。具体的には、まず、
グルー
斬新な意見もあり、開催者側にとっても今後の医学部教育
プ内で選出された講義担当者が、メンバーの前で日常行っ
を拡充する材料として非常に有益なものであった。WS終
ている講義を10分間行い、その様子をビデオに撮影する。
了後に参加者全員で20秒スピーチを行い、本年度のセミ
担当者は自分の講義方法を映したビデオを確認後、自己評
ナーは閉講となった。
価する。一方、グループメンバーから講義手法(アイコン
毎年、本セミナーの開催にあたり、教務課や医学教育研
タクト、話し方、スライドの内容など)に関するフィード
究開発センターの職員の方々には、多大なるご支援を頂い
バックを頂くことによって、自分の講義法を検証し改善す
ている。前日の会場設営に始まり、当日の進行、そして、
る手法である。この作業を通じて参加者の多くは、自身の
終了後の後片付けなど、全面的に本セミナーを支えても
講義法に関して何らかの有益なものを得たはずである。休
らっている。この場をお借りして、心から感謝を申し上げ
憩を挟んで、WS2は「講義に必要な要素とは」について、 たい。最後に、このセミナーが北里大学医学部教育の発展
グループディスカッションを行った。全体討議では、学生
の一翼を担っていると信じているのは私だけでないことを
が勉学に対するモチベーションを維持し、能動的に学習を
祈る。
− 11 −
医学部教員教育セミナー報告
-熱いぞ教育-
廣 瀬 隆 一
(講師・神経内科学) 8月7日~8日に開催された教員教育セミナーに参加し
義に必要な要素とは」
「評価をどうするか」など教育者に
てまいりました。私は20数年教育の現場から離れており、
必要な要素をいろいろな意見を聞きながらまとめましたが、
最近の教育手法には疎く戦々恐々で参加しました。
その過程自身が教育にとって必要なコミュニケーションス
私自身は、当時斬新的な系別総合教育と2年間の臨床実
キルを上達させることと感じました。また、10分間のミニ
習教育を受けてきました。系別総合用の教科書もなく、各
レクチャーを行い、自らの講義をビデオで振り返りながら
先生が手作りのプリントで授業をされており、準備も大変
互いに評価し合ったことはこれからの講義に実践できるこ
なことだったと思います。しかし、系別総合は実臨床では
とでした。
非常に役立つ考え方で、ひとつの疾患を診断、治療するに
いかに学生のモチベーションを高め、考える力を身に着
は解剖学から生理学、病理学、診断学、治療学を頭の中で
けさせ、早期にプロフェッションとしての体験教育をさせ
整理・統合しながら問題解決をしています。また実習で多
るかなど、“熱いディスカッション” が繰り返されました。
くの臨床経験をしたことは、卒後すぐに患者さんと臆する
ベストティーチャー賞を受賞した星佳芳先生が「私には医
ことなく接する自信につながりました。しかし、この理想
師を育てるという特権を持っている幸せがあり、教育がな
的な教育システムも国試合格率を担保するためには、ある
ければ医学部にいる必要がない」と語られたことが印象的
程度の犠牲を払わなければならないことも現実です。
でした。
さて、セミナーでは5~6人のグループによるワーク
“熱い(暑い)
” 2日間でした。最後にタスクフォースの
ショップ形式で与えられた課題を解決し、プロダクトを得
先生方ありがとうございました。
るという方式で進められました。
「よい学生指導とは」
「講
医学部教員教育セミナー報告
関 有香子
(助教・総合診療医学) 去る平成27年8月7日~8日の2日間、オンワード総合
ことによって共有されていく、とても良く考えられたセミ
研究所人材開発センターにて教員教育セミナーが行われ
ナーでした。
ました。
また、所属グループにも恵まれました。実験動物学の佐
私は今年4月より、在宅医療の現場から縁あってここ北
藤教授を中心に、それぞれが忌憚なく意見を述べ合う絶妙
里大学にて念願の教職につくことが出来ました。ケアマ
なバランスのグループで、大変勉強になりました。とくに
ネージャー等地域での教育経験から、教えることには多少
10分間ずつ一人一人が講義をしてビデオに録り、自ら振り
の自信を持っておりましたが、実際に教員として教えてみ
返りながらグループからのフィードバックをもらう「マイ
ると、伝えたいことを学生に十分に伝えることが出来ず、
クロティーチング」は、自分の課題とはっきり向き合う
「何か違うけれど、何が違うんだろう?」という漠然とし
チャンスとなりました。他の先生方の教材・教授法を拝見
た疑問から先に進めずにいました。そんな私に、今回の教
し、未来の医師を育てるためには、わかりやすさだけでな
員セミナーはとてもタイムリーなものでした。
く、質・量ともに十分な準備が求められるのだと痛感しま
まず素晴らしいと感じたのは、タスクフォースと呼ばれ
した。
る実行委員の先生方が、「北里大学医学部の学生教育を改
ベストティーチャー賞の星先生、翌日の東北大学北村教
善したい」という具体的かつ明確な課題のもとに結集して
授の御講演は、内容もさることながら、教授法も大変勉強
おられた点です。一般的医学教育の話をしているのではな
になりました。
く、他でもない北里大学の医学教育を改善するにはどうし
盛りだくさんで気力体力ともに尽くした、大変有意義な
たらいいのか、という課題が、ワークショップに取り組む
2日間でした。
− 12 −
医学部教員教育セミナー報告
猪 狩 知 美
(研修医1年次) 平成27年8月7日~8日に開催された第26回医学部教員
われた、学生教育における問題点についてのディスカッ
教育セミナーに参加させていただきました。今回のセミ
ションでも、6年間で学ぶ座学や実習と、医師になってか
ナーの主なテーマは、①北里大学医学部の教育について、
らの実臨床とのギャップが問題のひとつとして上がってい
学生にとっての魅力ある教育とは、②学習者の適切な評価
ましたが、星先生の講義は実生活だけでなく実臨床にもつ
とは、でした。様々な分野で働く先生方から貴重で興味深
ながるものであり、学生の興味がわくように講義を組み立
い意見や講演を聴くことができて大変有意義な時間となり
てているということを知り感銘を受けました。
ました。
それぞれのテーマにおけるディスカッションや講演を通
中でも印象的だったのは星佳芳先生の講演でした。星先
じて、教員が講義内容やそれに伴う配布プリントやパワー
生は昨年のベストティーチャー賞を受賞されており、受賞
ポイント等、どれほどの準備、工夫をして講義をしていた
者としての講演をして頂きました。学生の頃は、衛生学は
のかを改めて実感しました。また、より良い教育には、教
たくさんの数字が並び、覚えることが多くて難しい学問で
員だけでなく学生も自分自身が受ける医学部教育について
あると感じていましたが、星先生の講義はたいへん興味深
考えることが必要であると自分の学生時代を振り返って反
く、いつも始まる前からわくわくしていました。今回の講
省もしました。今回の教育セミナーに参加させていただい
演で星先生の講義のおもしろさの秘密が少し解明された様
たことによって改めて医学部教育について考えることがで
な気がしました。それは、衛生学をすべて身の回りのこと
きました。このような貴重な機会を頂き心から感謝してお
に置き換えて講義されているということです。1日目に行
ります。本当にありがとうございました。
集合写真
− 13 −
海外選択実習報告会報告
国際交流委員会 委員長 岩 渕 和 也
(教授・免疫学) 本年は、海外選択に応募する5年生はじめ将来選択実習
会等でも、重ねて周知して参りたいと考えております。
を希望する可能性のある1~4年生に多く集まって欲しい
昨年マギル大学のProf. Henry R. Shibataがご勇退され、
という気持ちで、例年より早い6月12日(金)に6年生に
またカルガリー大学は完全に失地となった訳ではないもの
よる海外選択実習の報告会を開催致しました。東原正明医
の、現在いくつかの理由で派遣を見合わせており、英語圏
学部長にご臨席賜り、マーブルク大学(独)への留学1グ
(正確にはマギル大学のあるモントリオールはフランス語
ループ3名(関紗也加君・金子千夏君・黒子由梨香君)の
が主)のカナダ2校への派遣が出来ない状況になっており
みの報告でありましたが、目論み通り下級生が多く参加し
ます。現在、英語圏では米国のマサチューセッツ大学とハ
てくれて盛会でありました。選択実習第1・第2タームで
ワイ大学の2校のみが派遣先となっておりますが、前者で
マーブルクから戻った金子君にはやや余裕があったものの、
はTOEFL iBT93点以上が、後者では枠を確保できるか否
全タームをドイツで取った黒子君と関君はまさに帰国直後
かという問題とskype面接という関門があり(平成28年度
の報告会でした。しかし、3名で作り上げた報告は集まっ
は幸いなことに枠が確保出来、さらに現時点で先方の選考
てくれた後輩諸君の留学気運を高める立派なプレゼンでし
に既に1名が合格しています)、留学は簡単ではありませ
た。その気持ちが冷めぬうちに、守屋利佳副委員長に来た
ん。私はいくつか英語圏の大学を増やして任期を終えたい
る海外選択実習の応募スケジュールと実際に関してご説明
ものだと考えておりますが、個人的な伝手で当たった感じ
頂きました。次頁には3名が今年のドイツ留学体験を短く
ではこちらも容易ではありません。また、幸いにも英・米・
披露してくれておりますので、ご高覧賜れば幸いです。
豪などの医学校と協定を締結できた場合にも、クリニカル
さて今回、候補者の留学先変更によって関係各方面に多
クラークシップを行うにはバイリンガルレベルの英語力が
大なご迷惑をおかけしたことは劈頭お詫びしなければいけ
必要とされることには変わりありませんので、留学希望の
ないところでありました。選考プロセスで、先方への連絡
学生さんは是非さまざまな機会で一般的な英語はもちろん、
をしていない時点では選択志望校は変更不可能ではないの
医学英語を深く学んで欲しいと思います。また北里大学医
ではないかと、私個人として考えたことに問題があったと
学部はそのような環境にあると思っております。
反省しております。申し訳ございません。国際交流委員会
最後になりましたが、本年も杉田裕保さん(4月より獣
内、さらに教育委員会・教授会では多くの議論があり、当
医学部に異動)、後任の堂野真楠さん、加藤絵美さんはじ
初の志望校選定とそのmotivation letterをより重視すべき
め教務課員の皆様、文書作成に関して佐藤久美様に大変お
であるとのご意見を多数頂きました。それを受けて国際交
世話になりました。また本国際交流事業は医学部同窓会と
流委員会では、来年度募集分より選考に関する文書に、特
北里大学国際交流助成金よりご援助賜っております。心よ
別な場合を除き変更不可と明記致しました。この点は説明
り御礼申し上げます。
− 14 −
海外選択実習報告-マーブルク大学での経験-
第6学年 関 紗也加・金
黒子 由梨香
子 千 夏
黒子と関は平成27年3月30日から6月7日まで、オリエ
に分かれて実習をし、神経内科、小児科、皮膚科、産婦人
ンテーションを含めた10週間、金子は5月17日までの7週
科、耳鼻科を回らせていただきました。現地の学生と二人
間、ドイツのマーブルク大学に留学する機会をいただきま
三脚で、毎朝7時から患者さんの採血をしたり、ドイツ語
した。
が分からない分、回診の神経診察の所見から疾患を推測し
最初の週はオリエンテーションプログラムがあり、コロ
つつ学んだり、手術室で先生に一対一で鼓室形成術や子宮
ンビア、韓国、アメリカ、オランダ、ロシア、イタリア、 全摘術について教えていただいたり、充実した実習となり
トルコなどの、医学ではなく、主にドイツ語を学びに留学
ました。
に来た総勢40名ほどの学生たちと交流をしました。とりわ
週末にはミュンヘン、ベルリンをはじめとしたドイツ国
け思い出深いのは、インターナショナルディナーというイ
内やオランダ、ベルギーなどのドイツ周辺の国にも足を運
ベントで、国別でチームに分かれ、自国の料理を振る舞う
びました。色々な場所を訪れた中でも特に印象に残ってい
という企画でした。私たちは、リクエストの多かった手巻
るのはアウクスブルクに旅行に行ったことです。私たちが
き寿司とお好み焼きを作りました。マーブルクにはアジア
ドイツへ留学する前に北里大学に留学に来ていたウリーの
食材屋があり、材料には事欠きませんでした。お好み焼き
実家でお世話になり、ノイシュバンシュタイン城や美術館
は全員が食べられるようにと、ベジタリン仕様とそれ以外
を見て回りました。その際、美術館で働いているウリーの
に分けるという、日本ではあまり考えたことのなかった配
ガールフレンドに中を説明してもらいながら美術館を見る
慮をしました。
というとても贅沢な体験をさせていただきました。また朝
2週目に、今回の留学受け入れの担当をしてくださっ
昼夜全てでウリーのご両親が食事を作ってくださり、ドイ
た循環器内科のPankuweit先生にお会いし、今後のスケ
ツの家庭料理をも堪能することができました。ウリーには
ジュールを決めていきました。3人全員が、まずは循環器
マーブルクでもたくさんお世話になり、現地の医学生の
内科にて2週間実習をすることになりました。
パーティーなどに連れていってもらい、病院ではない違う
循環器内科では主にカテーテル室、心エコー、血管エ
場所での交流をする機会も与えてもらいました。
コー、ペースメーカー外来などを3人でローテーションし
今回のマーブルク大学への留学では、自分たちの目でド
て実習をしました。日本ではエコー検査の多くは検査技師
イツの病院の診療を見学し、また先生方やドイツの学生と
の方が行いますが、ドイツでは医師が、問診をしながら同
の交流を通じて、見聞を広げることができたと思います。
時に行っていました。血管エコーの外来を担当されていた
言語こそ分かりませんが、その分何とか英語でコミュニ
Portig先生は、頸部エコーでの頸動脈と頸静脈の見分け方、
ケーションをとろうと努力することで、そこから学ぶこと
静脈瘤の診かた、腹部大動脈のスクリーニング、膠原病に
が非常に大きかったです。このような経験ができたのは国
よる血管炎についてなど、幅広く教えてくださり、改めて
際交流委員会、教務課他、北里大学の多くの先生方、マー
循環器内科が全身を診る科なのだということを実感しま
ブルク大学の先生方のおかげです。本当にありがとうござ
した。
いました。
循環器内科での実習の後は、3人それぞれ思い思いの科
− 15 −
平成27年度オープンキャンパス報告
入試広報委員長 浅 利 靖
(教授・救命救急医学) 平成27年8月1日、2日、23日の3日間、今年も北里大
床検査診断学の狩野有作先生が「健康体で長寿社会を生き
学オープンキャンパスが開催されました。オープンキャン
抜く ︲ 虚血性臓器障害(脳卒中、心筋梗塞など)の予防対
パスは、北里大学の受験を考えている高校生やそのご父母
策について」
、薬理学の藤田朋恵先生が「自律神経作用薬」
、
に、北里大学がどのような大学であり、どのような特色が
腎臓内科学の青山東五先生が「腎臓病を理解しよう」
、病
あるかなどを知ってもらうための催しで、大学全体として
理学の原敦子先生が「乳がんについて学びましょう」
、救
の「大学紹介」、「入試対策講座」、「キャンパスツアー」と、
命救急医学の浅利靖が「外傷患者の診療」の講義を各々30
各学部での「進学相談会」や学部ごとに工夫を凝らしたイ
分ではありましたが、わかり易く熱の入ったお話をし、毎
ベントが相模原キャンパスで行われています。今年のオー
回、特に高校生たちは熱心に聞き入っていました。模擬講
プンキャンパス全体での参加者数は、昨年よりも406名多
義には、天気が悪く少ない時でも74名、多い時には160名
い8,422名で、このうち、医学部の参加者数は昨年より7
の参加者があり、平素の講義ではあり得ない立見聴講され
名増の1,294名と、ここ数年と比較して最多でした。
ている参加者もあり、まさに盛況で、医学生の模擬体験を
医学部の進学相談会では、①1日3回の学部説明会、②
してもらうことが出来ました。学生ラウンジでは教職員、
1日2回の模擬講義(30分/回)、③個別相談コーナー、 医学生による個別相談・懇談コーナーを設けて、受験生や
④在学生との懇談コーナー(推薦入試・選抜入試・学士
ご父母からの多種多様な質問に対応しました。特に遠方か
入学別)
、⑤施設見学(新病院の外来、医学図書館・医学
ら初めて相模原キャンパスを訪れたご父母は、食事はどう
部史料室など)
、⑥医学生の実習コーナー(点滴実習模型、 しているのか、買い物はどこでするのか、など一人暮らし
乳癌の触診模型など)
、⑦資料閲覧コーナー(学部要綱・
での生活面の不安を真剣な眼差しで質問され、数年前まで
医学部ニューズなど)、⑧DVD閲覧コーナー、⑨医学生の
高校生であった医学生が笑顔で返答している姿が印象的で
研究発表ポスターの展示コーナーなど、受験生のニーズに
した。施設見学では入試広報委員会でデザインしたTシャ
応えた盛り沢山の催しを用意しました。また、医学部ガイ
ツを着た医学生が、未来の後輩たちのために医学部と新病
ドブック2016年度版や過去3年間の入試問題を収載した入
院の間を何度も何度も往復しご案内しました。真新しく綺
学試験問題集、平成26年度海外実習報告書、医学部のオリ
麗な新病院の見学は受験生の入学意欲をかき立てていま
ジナルバック(ロゴ入りのオリジナルトートバッグや北里
した。
大学医学部の文字入りシャープペンシル)などを配布しま
今年の進学相談会も例年通り、医学部に興味を持つ受験
した。
生とご父母が多数来場され十分な情報発信が出来たと思い
医学部説明会は、北里大学医学部の沿革、基本理念、学
ます。さらに今後、良医を目指しやる気がある受験生を得
びの特徴、1年次から病院当直を体験し医学の専門分野を
るために努力していきたいと思います。皆様のご支援、ご
学ぶ教育プログラムや系統別総合教育、クリニカルクラー
協力をよろしくお願いします。
クシップを含めた臨床実習など本学独自の教育方法、入学
最後に、休日返上で未来の医学生のために努力してくれ
試験の概要などについて学生課職員より丁寧な説明が行わ
た医学生と事務職員の皆様に心から感謝申し上げます。
れました。その後の模擬講義は入試広報委員が担当し、臨
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研究室紹介
整形外科学
北里大学整形外科は、初代教授の山本真先生から2代目教授
髙 相 晶 士
(教授・整形外科学) んのための施設であります。
の糸満盛憲先生と引き継がれ、現在3代目として髙相晶士が主
手術を必要とする紹介患者数は増加傾向でありますが、手術
任教授とともに病院では科長を担当させていただいております。
枠の限度もあり、十分な件数をこなすことができないのが現状
歴史的には初代、2代の両先生は時代的背景もありましたが、
であるのは少し残念なことです。しかし、手術が必要な患者さ
災害外科つまり外傷と、股関節外科を教室の大きな研究と臨床
んには十分な配慮をするよう今後ますますの努力をし、より良
のテーマとされておられました。また今も大きな役割を果たして
い医療提供をしていきたいと医局一同決心を固めております。
いる骨バンクはお二人の残された大きな財産ともいえましょう。
また、運動器の障害、特に下肢の障害と脊椎の障害は術後す
現在の整形外科では、脊椎・脊髄チーム、股関節チーム、膝
ぐに退院することは困難な場合が多く、リハビリテーションが必
関節・足チーム、上肢チーム、スポーツチームに分かれ、診療
要であることも多いのが現実です。在院日数の短縮は困難とい
と研究を行っております。また、大学院生はおもに基礎研究に
う現実もありますが、新東病院で展開中の回復期リハビリテー
取り組む形となっております。大学所属の医局員は約40名となっ
ション病床を十分に使い、ベッド回転の効率化を図っておりま
ております。
す。この方法はきわめて有効であり円滑な入院、退院にますま
3代目の私こと髙相は、2010年10月より整形外科の統括を担
す利用していきたいと感じております。新病院での整形外科病
当させていただいております。私は脊椎・脊髄外科、脊柱変形
床数は約70床とスリムダウンしており、支援病院との連携を強
を専門とし、先輩お二人の教授のご専門も発展的に残した上で、
化することに尽力しております。
現在は私の専門を教室の大きな研究と臨床のテーマとしており
当整形外科では同種骨移植のための骨バンクを併設していま
ます。なかでも、脊柱変形は珍しい疾患でありますが、全国よ
す。こういった施設は日本ではわずか2施設であり、役割は大
り患者さんがおいでになり、日本でも有数の研究と治療に携わ
きいものです。
る機関となっております。
骨バンクは2007年3月には先進医療を行う施設として厚生労
最近は再生・移植医療にも力を注いでおります。神経再生の
働大臣の認可を受けて先進医療による同種骨移植術を開始しま
進歩は目覚しく、私たちの研究もすでに多くの成果を挙げ評価
した。また厚生労働省からの援助を受け、細胞を扱うことがで
されております。
きるクリーン度をもった、同種組織処理保存のためのクリーン
さらに、“痛み” の解決というものはまさに整形外科の基本です。
ルームを骨バンクに設立し、現在稼働中であり、全国からのシッ
この研究分野では日本のリーダーシップを担うべく日夜研究を
ピング依頼も多いのが現状です。新病院においても骨バンクは
進めております。
さらに進化を遂げ活動中であり、採取・保存の保険収載も申請
時代の流れの中でも、患者さんと手術の数は脊椎・脊髄外科
しているところです。
をはじめとして、大変多くなっておりますが、2014年5月より新
整形外科は専門の整形外科のみならず、救命救急センターや
病院が開院し、同時に新整形外科も活動を開始しました。また、
総合リハビリテーションセンターと協力した活動が必要です。と
東病院整形外科も本病院に2014年の12月をもって移動があり、
くに、救急救命センターとの連携はますます重要となり、外傷
整形外科の本病院と東病院に分かれての長きにわたる活動は幕
に対する対応は更に充実させていく予定です。また、新病院に
が下ろされ、2015年1月より両病院整形外科は一体化し、新た
おいては脊椎・脊髄外科外来および脊柱変形手術がますます増
な整形外科診療が開始されました。
加し、今まで中心であった関節外科手術を加えて、総手術件数
整形外科は診療・診断・治療の領域はきわめて広いものです。
も増えつつあります。また、スポーツ外来も開設し、時代のニー
その治療範囲は、頚部から下の全身の骨、関節、筋肉、神経な
ズに合わせた整形外科診療を進めています。診療のみならず、
どの運動器疾患全般、先天性疾患から加齢に伴う変性疾患、外傷、
研究と卒前、卒後教育にも熱心に取りくみ、医局一同、明日の
腫瘍、変形など運動器の全ての疾患・障害の診療と治療を行う
日本と世界をリードする整形外科を臨床、研究、教育のバラン
という、おそらく守備範囲は最も広い科であるといえるでしょう。
スを保ちながら発展させていく所存であります。
現在の新病院での診療体制は大きく変貌し、すべての整形外科
疾患を扱うこととなり、より良い整形外科医療を提供すること
ができるようになりました。以前は、本病院と東病院に分かれ、
専門分野ごとに診療を行ってきましたが、現在はすべての整形
外科疾患の診断と治療を新病院で行い、手術もすべて総合手術
センターで行っています。
新病院は特定機能病院であり、外来患者さんはできるだけ紹
介状の持参を求めていましたが、近日、完全紹介制度とする予
定であり、大学病院らしい高度医療の提供を容易に行うシステ
ムを確立する予定であります。
新病院においても、特定機能病院としての役割をさらに充実
させていく予定であります。北里大学病院整形外科は、基本的
には大学病院でなければ対応不可能な手術を必要とする患者さ
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集合写真
大学病院では、腰に消毒薬を携帯する医療従事者が数年前と比較すると圧倒的に増え
た。手指衛生に対する取り組みの一つである。取り組み始めた当初は『消毒薬を携帯す
る』ことが目的となっていた。また、現時点で世界的に推奨されている『正しい手指衛
生の仕方』を医療従事者が再確認し、再習得することも目的のひとつになっていた。し
かし、これらは感染伝播抑制の手段であり目的ではまだない。感染伝播を抑制するため
には、手指衛生を行うタイミングがあり、世界保健機構は 5 つのタイミングを提唱してい
る。患者接触前、清潔操作前、体液曝露後、患者接触後、そして患者周囲環境接触後で
ある。自分を病原体から守ることだけを考えると、患者接触前と清潔操作前が抜けてし
まう。そんなことは百も承知、と思われるかもしれないが、このタイミングで実践するの
は意外と難しい。言うは易く行うは難し、である。さらに病院全体で行うとなると尚更で
ある。19世紀の産褥熱防止から始まった手指衛生は進歩し、基本手技のひとつとなって
いる。皆さんはできていますか?(W・T)
部活紹介
卓 球 部
石 水 瑛理奈
第4学年 私たち医学部卓球部は、現在約25名で、年に6回ほ
他学部の人とも交流が持てます。
どある大会に向け、週に2回練習しています。卓球は
部員はとても仲がよく、遠征の際は皆で観光や食事
個人競技ですが、部員同士アドバイスし合い、日々皆
を楽しんだり、学年に関係なく大学生活や勉強のこと
で技術の向上を目指し頑張っています。
を話しあえたりする、アットホームな雰囲気の部活で
部員は大学から卓球を始めた者も多く、初心者でも
す。練習は週に2回なので、勉強との両立もしやすく、
たくさん大会に出場できます。またコーチにも来てい
兼部したり趣味を楽しんだりアルバイトをしたりする
ただいており、高いレベルでの練習や指導を受けるこ
ことができるのも、卓球部の魅力の1つです。
ともできるので、卓球の経験がある部員も存分に練習
これからも、各々の目標を達成することを目指し、
できます。他学部と合同練習を行うこともあるので、
卓球部を盛り上げていきたいと思います。
編 集 後 記
8月中旬までの酷暑とは打って変わり、今年の9月は「秋雨」
と呼ぶのにふさわしい天候が続きます。夏から秋への季節の移り
変わりが今年ほどはっきり意識できた年は、久しぶりだったよう
な気がします。
さて、7月1日から北里大学病院、北里大学東病院、北里研究
所病院、そして北里大学メディカルセンターの北里大学附属4病
院の執行部が新体制となりました。特に大学病院と東病院は機
能分離がより明確となり、主に大学病院が超急性期機能を、東
病院が回復期機能を担い、両病院が相模原病院群として一体化
する形で診療内容がリニューアルされました。また、圏央道の開
通で医学部と北里大学メディカルセンターとの距離は大幅に短縮
され、4病院は医学部の卒前、卒後教育を担う魅力ある施設とし
てますます発展して行くことが期待されます。
8月には恒例の教員教育セミナーが開催されました。このセミ
ナーは、本来教育の専門家ではないわれわれ医学部教員が、学
生講義のポイントやテクニックを身につけるための重要な研修会
ですが、単に医学知識の教授だけではなく、医師としての人間
形成に影響を与えることができる優れた教員の育成を目的として
います。泊まりこみの研修会での講演やグループワークを通じて、
今年も多くの参加者の目からウロコが落ちたことでしょう。
第6学年3名が海外選択実習報告を投稿してくれました。報
告の半分が「食レポ」になっている点がやや気にはなりましたが、
留学を敬遠する若者が増えている昨今、海外実習を積極的に楽
しむ余裕が感じられる微笑ましいものでした。ぜひ貴重な経験を
大切にして欲しいと心から願っています。
(M・I)
医学部ニューズ〔第360号〕
http://www.med.kitasato-u.ac.jp/
- 未 来 科 学 の 創 造-
2012年北里大学創立50周年
●発行責任者 東 原 正 明
2014年北里研究所創立100周年
●編集責任者 村 雲 芳 樹
〒252-0374 相模原市南区北里1-15-1
北里大学医学部内 医学部ニューズ編集委員会
TEL.042-778-8704
(直通)
FAX.042-778-9262
E-mail m-news@kitasato-u.ac.jp
●発 行 日 平成27年 9 月30日発行