中東・アフリカニューズレター vol.6 世界に広がる模倣品の問題

Middle East & Africa Focus Group
Tokyo
Newsletter
February 2013
中東・アフリカニュースレター vol. 6
世界に広がる模倣品の問題
― エジプトにおける現状と展望
模倣品とは、いわゆるニセモノ商品のことで、著名なメーカーのデザインを真
似た商品や商標を無許可で使用した商品などの態様があり、模倣された被害企
業の知的財産権を侵害する製品である。
模倣品の多くは中国で製造されており、これらが海外に拡散する経路をみると、
その一部はフリーゾーン制度が充実しているUAEのドバイの港を経由し世界
中に広がるという流れが存在していることがわかる。自動車部品に関する調査
結果 1をみると、同調査に回答した日本企業の事例では、模倣品の約 8 割は中
国で製造され、また第三国を介して販売される模倣品のうち約 3 割はUAEを経
由している。ドバイに集積した模倣商品は、アジア各国や他の中東諸国と同様、
膨大な量がエジプトに流入しており、エジプトの消費者は、模倣品と知りなが
ら(あるいは知らずに)、それらを非常に容易く購入している。模倣品の中に
は、日本製品やそのロゴを模倣したものも多いため、日本企業は対応に苦慮し
ているところである。
エジプトにおける模倣品の現状
多くの日本企業にとって、エジプトは非常に重要かつ将来性のある市場である。
2011 年、日本からエジプトへの輸出高は約 13 億ドルに達している。日本製品
は、その高い品質によって、エジプトの消費者の評価が非常に高い。しかしな
がら、エジプト市場における日本製品の人気・信頼は、日本企業の会社名、ブ
ランド名を利用した模倣品の誘発にもつながっている。
日本企業は、自社の製品の模倣品が流通する結果、逸失利益という形で相当な
規模の経済的損失を被っている。これに加え、模倣品は一般的にその品質が本
来の製品より劣るため、消費者が模倣品と知らずに購入することで、模倣され
た企業のブランド価値が低下することも免れない。
また、経済的損失にとどまらず、模倣品は、消費者の生命、身体を害すること
さえある。品質に問題のある模倣品の使用により、消費者が負傷または死亡す
る事故が頻繁に報じられているが、こういった事故は、会社名、ブランド名、
製品名、ロゴ等を模倣された本来無関係の企業が訴訟に巻き込まれるという事
態を引き起こすこともある。
1
「偽造品・模倣品の拡散実態調査」(レポート No.107)(一般社団法人日本自動車
工業会、2008 年)http://www.jama.or.jp/lib/jamareport/107/index.html
模倣品対策における問題点
上記のとおり、エジプトにおいて流通している模倣品は、海外で製造されたも
のがエジプトに輸入され、販売されているケースが多い。そこで、模倣品被害
を被る企業にとって、第一の課題は、いかにエジプトの税関において模倣品を
発見し、輸入差し止めを行い、そしてエジプト市場への流入を減らすかである。
現状、エジプトの税関職員は模倣品の真贋判定を行う十分な能力を有している
とはいえないが、当該能力を養うための訓練を行うことにより、税関において
税関職員が模倣品を自主的に発見する確率は改善できるものと思われる。しか
し、税関における模倣品取締りを実効的に行うためには、税関に対する真の権
利者による積極的な関与が有効に機能するよう、税関のルールが改正される必
要がある。
エジプトでは、知的財産権を侵害する商品が輸送されたと考える理由がある場
合、真の権利者は、税関当局に対し、検査のために当該商品を差し止めるよう
申し立てることができる。しかし、当該申立てを行うためには、差し止めの対
象となる商品の価額の 25%に相当する保証金を提供しなければならない。差
し止めの対象となる商品の内容・数量によっては、この保証金は相当な金額に
及ぶ。さらに現在の規定では、保証金は申立て後 10 日以内に提供されなくて
はならず、10 日以内に提供できなかった場合、差し止めを申し立てた商品は
市場に流通してしまう結果となる。エジプトに事業の拠点を有していない日本
企業の場合、本社が保証金を手配しなければならないところ、海外送金には一
定の日数を要するため、この要件は相当な負担となる。
日本企業にとっての第二の課題は、エジプトの裁判所に対して、知的財産権を
保護することの重要性、ならびに模倣品の流通を適切に抑止しない場合には製
造業者のみならずエジプトの消費者にも被害が及び得ることを説明し、理解し
てもらうことである。残念ながら、現状では、模倣品に関する訴訟について、
エジプトの裁判所においては、日本企業が満足できる救済は得られないことが
多い。
模倣品対策の将来の展望
このように、エジプトにおける模倣品対策において、日本企業は依然としてさ
まざまな困難に直面しているものの、近年、日本とエジプトの両国において、
模倣品対策に対する意識が高まりつつある。
例えば、模倣品と疑われる商品を税関において差し止めるのに必要となる保証
金の額について、現在の商品価額の 25%という水準から減額することがエジ
プトの政策立案者によって議論されている。いまだ減額が決定されるには至っ
ていないものの、この議論は望ましい方向への一歩であると評価することがで
きる。
日本政府やその関連団体も、エジプトや中東における模倣品対策の進展のため
にさまざまな活動を行っている。2012 年 12 月、経済産業省及び日本貿易振興
機構(ジェトロ)は、エジプトにおける模倣品対策をテーマとするセミナーを
開催した(当事務所がスピーカーとして参画)。また、ジェトロが事務局を務
め、多くの日本企業が参加する国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)は、中
東地域における知的財産保護に関する問題を研究するワーキンググループを
設置しており、同ワーキンググループに対し、当事務所は専門家として、エジ
プトにおける状況についての意見を提供した。
エジプトにおける模倣品対策について、日本企業の権利を適切に保護し、ひい
ては日本製品のブランドに信頼を置くエジプトの消費者を保護するためには、
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模倣品被害を受けている日本企業のみならず、日本政府およびエジプト政府に
よるさらなる協力が不可欠である。
ベーカー&マッケンジーのカイロ事務所の専門家は、次のような事項について、
今後適切な方向で法令や実務の改善が進むかどうかが、エジプトで企業が安心
して事業活動を行うために重要な課題となるであろうと話す。

上記で説明した差し止めに必要な保証金(商品価額の 25%)を減額また
は廃止する。

法令の改正を通じて、権利者や当局による積極的な関与により、裁判所の
判決を待たずに、速やかな模倣品の差し止めや破壊等の措置を可能とする。

知的財産権に関する当局が複数あって相互の情報提供がなされていない
現状を改善し、1 つの当局に権限や情報を集約する。さらに、国境税関に
知的財産局を設置する。
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かの法律事務所のオフィスを指します。
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