26 Vol. 発 行日:2 0 0 7 年 1 2 月1 5日 発 行 人:横田 正仲 イノベーションこそ、成長と進歩の原動力 ∼成長し続けるためのクリエイティブ・マジック∼ 3M社 欧州・中欧・アフリカ地域担当 副社長 ポール・D. ロッソ 先端技術は、 しばしばマジックと区別がつかない。 私たちが るのがリーダーの役割なのだ。 やっていることは多くの人にとってマジックのように見えるらしい。 し 3Mは、ニッチ市場でいくつかの成功製品を創出してい かし、 マジックのように見えるものも、 実は私たちなりの発見であり、 る。成功する製品とは、プロセス、カルチャー、そしてイ 革新である。 「世の中に存在しない製品の開発」 を志向し、 新しい ンスピレーションの3つを併せ持ったものであり、この三 世界を切り拓き、 より安全で快適な世界をつくり出す。 そしてお客 者が一体化したとき、エキサイティングな製品が誕生す 様に笑顔をお届けする。 そうした信念のもと、 3Mは、 1902年創業 る。お客様が「ワォ」と叫びたくなるような感動と興奮が 以来、 今日に至るまで、 5万種類を超える製品を開発してきた。 生まれる。そうした製品は、単にお客様の声を聞いていた だけでは生まれない。あったらいいなという視点から作り 成 長と進 歩の原 動 力 出し、顕在化されていないお客様のニーズに対応すること イノベーションこそ、 成長と進歩の原動力であり、 それをお客様 が、平凡な製品とすぐれた製品との違いを分ける。境界線 と共に成し遂げようというのが、 私たちのビジョンである。 そして、 をもっと広げ、イノベーションを通じて、つねに新しい標 100年以上にわたって、 これを支えてきたのが4つの信念である。 準を実現するのが私たちの目標なのだ。 1つ目は、 「製品を改善する」 こと。 改善を続けることによってお 私たちは、イノベーションを育むにあたって、謙遜、正 客様の問題を解決することができるという確固たる信念である。 直、勤勉さを重視している。もちろん、個人の創造性は尊 2つ目は、 「プロセスや製品を学び、 改善・改良をするために好奇 重していかなければならないが、同時に機能横断的なチー 心を持つ」 こと。 新しいことを学ぶという開かれた気持ちを持って ムワークは不可欠である。私たちは共有の重要性を歴史を 仕事にあたるということだ。 3つ目は、 「退屈でつまらない市場に 通じて学んできた。そして、多くの技術はインフォーマル も、 過去になかったような爆発的拡大機会が眠っている」 という (非公式)なプロセスを通じて共有されている。エンジニ 信念である。 たとえば会社発祥のビジネスである研磨材製品は、 アは、自由時間を持っていてその時間を使って自分が好き 実は105年経った今でも、 日本でもっとも急成長している商品のひ なプロジェクトを研究することができる。これを3Mでは とつである。 そして4つ目は、 「低成長は人口動向・経済・価格など 「15%ルール」と言い、その活用によって多くのイノベー が原因のように見えるかもしれないが、 ほとんどの場合はイノベー ションがもたらされてきたのである。 という信念である。 ションの欠如とリーダーシップの弱さが原因」 「常識的な人は自分を周囲に合わせる。非常識な人は周囲 強力なリーダーを養成しながらイノベーションを続けることで、 い を自分に合わせようとする。したがって、すべての進歩は非 かなる環境の中にあっても勝ち抜いていけると信じている。 常識な人が起こす」バーナードショーのこの言葉は、まさに イノベーションのあるべき姿を示しているように思える。 イノベーションを育むために 個人の創造性を自由な風土で育み、それを共有し、リー イノベーションとは、偶然の産物ではなく、原則と実践 ダーシップをもって規律と両立させていく。そうして、世 が複雑に組み合わされて、はじめて生まれるものである。 の中に夢をもたらすマジックを、イノベーションによって これを達成するのは、すべて人であり、そうした人に対し 実現し続けていきたい。 て、権限の委譲と奨励を与えるのがリーダーである。言い 本原稿は、9/11弊社主催の『JMAC−i 換えれば、リスクを取りながら学ぶことを許す環境をつく トップマネジメントフォーラム』でロッ ソ氏が3M社エグゼクティブ・カンファレンスメンバー、住友スリーエム代表取締 役のお立場でご講演された内容をまとめたものです。
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