Contents - Academic Consortium 21

AC21
2011 年 10 月 15 日 No
Contents
10
巻 頭 言
巻頭言
グローバル人材の育成と
1
大学の責任
副総長・AC21推進室長
渡辺 芳人
第 9 回 AC21運営委員会報告
グローバル人材の育成と大学の責任
副総長・AC21推進室長
2
副総長・AC21推進室長
渡辺 芳人
渡辺 芳人
第 4 回 AC21学生世界フォーラム
生命農学研究科講師・
AC21推進室員
村瀬 潤
4
チュラロンコン大学
工学部准教授
Manoj Lohatepanont
5
成20年 5 月23日の「新たな発想で経済成長を続ける日本をめざして〜福田成長戦略
参加学生所感
6
IFPU 2011サマースクール
報告
10
環境学研究科都市環境学専攻 D1
三室 碧人
APAIE
NAFSA
教育発達科学研究科教授・
AC21推進室副室長
高井 次郎
2011年 AC21スペシャル・
プロジェクト・ファンド
採択結果について
メンバー大学紹介
華中科技大学
常務副学長
Lin Pinghua
ガジャマダ大学
国際部長
Rachmat Sriwijaya
AC21推進室より
持続的発展に向けた大学
とそのネットワークの役割
国際開発研究科准教授・
AC21推進室員
米澤 彰純
AC21推進室活動記録
イベント・カレンダー
AC21メンバー
AC21パートナー
留学生30万人計画のアイディアが具体的な「提言」の中に盛り込まれたのは、平
の取りまとめ〜」だったと思います。少なくとも、僕が認識したのはその時点です。
提言を行ったのは、経済界を代表する方々でした。もちろん、文部科学省、経済産
業省、外務省なども賛同していました。提言では、国際的な人材の強化の項目で、
『2015年までに高度人材30万人、2020年を目途に留学生30万人受入れ』と謳ってい
ます。その後、「教育振興基本計画」の報告書の中に、「留学生30万人計画」という
11
言葉が出てきます。最終的に、平成21年にいわゆるグローバル30(G30)プログラ
11
日本人学生の積極的な海外派遣、大学キャンパスの国際化が目標です。
ムが開始となるのです。もちろん G30のミッションは、留学生受け入れのみならず、
この時点で、世界的な潮流である「優秀な頭脳獲得競争」に政府、経済界を挙げ
12
て参画したという事が出来ます。ところが、リーマンショックを境に、経営不振に
直面した大手企業も多く、経済界からの「大学の国際化や留学生獲得」に対する支
援の声が小さくなっていったと感じています。それに追い打ちをかけるように、平
13
14
成22年の「事業仕分け」では、
「G30プログラムの一旦廃止」という結論が言い渡
されたのでした。G30プログラムはその後、「大学の国際化のためのネットワーク
形成推進事業」という名称で内容を手直しした上で、継続することになりました。
こうした G30に関連する一連の流れだけを見ていると、
「留学生の受け入れや、
日本人学生の海外派遣」を推進する風潮にブレーキがかかっているのではないかと
さえ思えてきます。
15
一方で、今年度新たな枠組みのプログラムが、文部科学省から出てきました。
Campus Asia に代表される「大学の世界展開力強化事業」と、いわゆるリーディ
16
16
16
16
ング大学院プログラムです。両プログラムは、性格の全く異なる内容ではあるもの
の、本質的には、学生が英語による講義を何の問題もなく受講する力、国際的な舞
台で自分の意見を表明し、多様な意見を尊重しながらも、議論を交わすだけの語学
力を身につけて卒業することを期待している点で、共通する内容を含んでいます。
すなわち、「グローバル人材育成」です。
G30で開講する講義は英語で行われますが、ほぼ同じ内容の講義が日本語でも開
講されているために、特定の教員の講義負担が大きくなるという問題を抱えていま
す。そこで、日本語で開講している講義の一定割合を「英語で実施」するという英
断を下せば、教員の講義負担はかなり解消されることが期待できます。しかし、パ
イロット的に大学院講義の英語化を試みた教員からは、「学生から、英語の講義に
1
は、語学力の低さからついて行けない」という不満が
出ているという報告が寄せられています。さて、どう
第 9 回 AC21運営委員会報告
したものでしょうか。
ここで、一つの提案をしました。学部 3 、 4 年次に
副総長・AC21推進室長
「講義を英語で受講できる程度の英語力を鍛える」た
渡辺 芳人
めのカリキュラムを開始することです。そして、理工
系の大学院講義の 3 割程度は英語のみで開講するので
す。学生には、その準備として、学部時代に積極的に
毎年 1 回開催される AC21運営委員会が、平成23年
英語力を主体的に鍛える努力が求められる事は当然
5 月15・16日の 2 日間にわたって、チュラロンコン大
です。
学で開催されました。通常、学生世界フォーラムが開
一方社会的に見ても、最近、経団連から「グローバ
催される年の運営委員会は、名古屋大学で開催してい
ル人材の育成に向けた提言」が発表されました(平成
ました。今回は、運営委員会のメンバー(含むオブザー
23年 6 月14日)
。その中で、企業側では「事業活動の
バー参加校)が学生世界フォーラムの雰囲気を体験す
グローバル化に伴う人事戦略として、国籍にかかわら
ることと、他のメンバー大学を訪問する良い機会であ
ず優秀な人材を採用・活用する動き」が活発になっ
ることを勘案して、学生世界フォーラム開催に合わせ
ており、社員に求められる能力の一つとして、
「社会
て、主催大学であるチュラロンコン大学を会場にしま
人としての基礎的能力に加え、既成概念に捉われず、
した。また、運営委員会終了後、メンバー大学である
チャレンジ精神を持ち続ける姿勢、外国語によるコ
カセサート大学を訪問し、教育・研究活動の様子を知
ミュニケーション能力、海外との文化、価値観の差異
ることが出来ましたので、こうした運営委員会の開催
に対する興味・関心などが重要」と結論しています。
方法も悪くないと考えています。
実際、ニュースなどで、日本人の国内採用よりも、留
参加大学は、運営委員会メンバーであるケムニッツ
学生や海外の大学から大勢の新卒社員を採用し始めた
工科大学(ドイツ;Eberhard Alles 事務局長ほか 1 名)
、
大手日本企業の事などを耳にする機会も多くなってい
チュラロンコン大学(タイ;Kua Wongboonsin 副学
ます。
長)、名古屋大学(筆者他 AC21推進室員 6 名)
、ノー
こうした国際化に関する最近の流れを見ていくと、
スカロライナ州立大学(アメリカ;Bailian Li 副学長)
、
本学の学生が、自分の希望するキャリアパスを歩める
上海交通大学(中国;Jun Xu 国際課主任)、アデレー
ように充分にトレーニングして社会に送り出す責任を
ド大学(オーストラリア;John Taplin 副学長)
、シ
持つ大学として、語学教育、特にコミュニケーション
ドニー大学(オーストラリア;Anton McLachlan 国
ツールとしての英語力強化に、全学を上げて取り組む
際部長)と、オブザーバー参加しているガジャマダ大
時期に来たと考えます。そこで、AC21の様な国際ネッ
学(インドネシア;Didik Purwadi 評議院議長ほか 1
トワークを、学生のためにこれまで以上に積極的に活
名)、ミネソタ大学(アメリカ;Molly Portz 国際プロ
用すべきなのではないかと考えます。AC21では、隔
グラム戦略室主任)、ステレンボッシュ大学(南アフ
年で学生世界フォーラムを開催し、メンバー校(10カ
リカ;Robert Kotzé 国際部長)、ストラスブール大学
国20校)から学生が一同に集まり、開催年ごとに設定
(フランス;Dominique D’
Ambra 教授・国際副学長室
したテーマに基づきセミナーや交流プログラムを実施
アジア担当)
、同済大学(中国;Zhenyu Li 国際部長
しています。また、メンバー大学間でサマースクール
ほか 2 名)、東北大学(中国;Xiaomei Xiong 副学長
に学生を積極的に派遣すべく情報交換を行っており、
ほか 2 名)です。
将来的には、国際スクーリングの開催も視野に入れて
います。この様に、学生が海外の学生と交流する活動
主な議題は、以下の 6 件です。
を増やしていくことが、求められていると考えます
1事務局の 1 年間の活動報告、2新メンバー候補大学
が、皆さんはどうお考えでしょうか。
の検討、3加盟大学の果たすべき役割、4運営委員の
任期制導入について、4スペシャル・プロジェクト・
ファンドの再定義、5AC21の新たな活動、62012、
2014年開催の国際フォーラムおよび2013年開催の学生
世界フォーラムの準備状況報告。
上記の議題から明らかなように、今回の運営委員会
2
Academic Consortium 21
AC21
は、これから AC21が向かうべき活動の方向性を議論
する重要な会議であったと思います。例えば、議題2
では、候補大学の選考に当たって、AC21の規模や加
盟大学の地域的バランスをも考慮した議論も行われま
した。現時点では、最大で25大学程度が適正規模と考
えている大学が多いようです。このように、大学数が
限られてくると、メンバーになっている全ての大学に
対して、AC21活動への積極的な参加が求められるの
は当然のことです。それが、議題3の「加盟大学の果
たすべき役割」へと繋がっていきます。現状では、全
ての加盟大学が常に学生世界フォーラムや国際フォー
ラム、AC21総会に参加しているという訳ではありま
せん。現在、どの程度のアクティビティーを求めるべ
きかについての共通認識を形成しようとしているとこ
ろです。
学術的な活動の強化という意味では、議題4スペ
シャル・プロジェクト・ファンドについても、大きな
修正を加えました。これまでも、 2 ヵ国以上の AC21
加盟 3 大学間で行われる共同研究やセミナーなどの提
案を審査し、承認された提案については財政的な支援
を行ってきました。すでに実施された共同研究など精
査すると、少数の教員で行われるプロジェクトが散見
され、AC21メンバー校の組織的な連携には結びつか
ないようなものも含まれていました。こうした高度に
専門的で学術的な研究は、他の研究支援機関からサ
ポートされるべきものと考えます。現在の AC21の予
「Academic Impact」と呼ばれる活動を行っています。
算規模や活動レベルを考えると、メンバー校間の組織
この組織は UNAI と呼ばれ、国連事務総長である潘基
的な連携を強めるようなプロジェクトを中心に支援す
文(パン・ギムン)氏が中心となって始まった活動です。
る事が重要であるという判断から、募集要項の見直し
国際連合のホームページ(http://unic.or.jp/ai/)には
を行っています。
下記のように紹介されています。
1 年以上にわたって検討してきた国際スクーリング
については、2013年 5 月にタイのバンコックで開催
アカデミック・インパクト(Academic Impact/AI)
する予定で議論が進んでいます。国際スクーリング
は、国連と高等教育機関を結びつけるグローバルな
は、AC21メンバー国を中心に、その周辺国の学生を
取り組みであり、2009年より本格化しています。国
も対象に、最先端の学術研究の成果を講義すること
連は、アカデミック・インパクトにおいて「人権、
を目的にしています。講師は、AC21メンバー校から
識字能力、持続可能性、紛争解決」の分野における
専門家を選抜し、主に修士レベルを対象に専門外の学
普遍的な10原則を定めています。全ての参加大学
生にも分かり易く、興味が持てるテーマで講義をして
は、毎年少なくとも 1 つの原則を積極的にサポート
頂くものです。2013年のスクーリングでは、
「Green
する活動が求められます。
Science and Technologies for a Sustainable Future」
をテーマにしています。今回は、パイロット的な開催
現在、世界中から多くの大学や大学間コンソーシア
となりますので、今後ともこうしたスクーリングを継
ムなどが加盟していますが、AC21の運営委員会では、
続的に進めるか否かは、今回の企画がどのように評価
UNAI に AC21として加盟することを決め、既に加盟
されるかで決まると考えています。
手続きを完了しました。今後、AC21の活動がこれま
最後に、AC21の国際的な存在感を大きくする取り
で以上に国際的に visible になり、UNAI の出版物に
組みを紹介します。現在、国連では、国連と高等教
AC21のロゴが印刷されるなど、様々な波及効果を期
育機関を結びつけるグローバルな取り組みとして、
待しています。
3
No.
10
第 4 回 AC21学生世界フォーラム
報告
地には太陽光発電を利用して水をくみ上げて供給し、
植生の回復に成功しました。商品作物の単作に頼って
いたかつての農業形態を見直し、目先の利益だけにと
生命農学研究科講師・AC21推進室員
村瀬 潤
らわれない自給率の高い農村が再生されました。セン
ターは普及や教育活動にも力を入れています。
参加した学生は、土壌、水、森林、農業活動の 4 つ
のグループに分かれてセンターの活動を見学し、ベチ
5 月15日~21日に、チュラロ
ベルソウの植栽も体験しました。また、
「足るを知る
ンコン大学(タイ)にて、第 4
経済」を実践する農家を訪問しました。その他に、国
回 AC21学生世界フォーラムが
際開発研究科米澤彰純准教授によるキーノートレク
開催されました。
「持続可能な
チャ、王室開発プロジェクト委員会の Ms. Kamolinee
農村開発」をテーマに開催され
Suksriwong による王室プロジェクトの紹介、元チュ
た今回のフォーラムには、15の
ラロンコン大学工学部准教授 Dr. Thavivonse Sriburi
AC21メ ン バ ー 大 学 か ら37名、
による足るを知る経済に関する講義を受けました。最
チュラロンコン大学から26名の
終日にはグループによるプレゼンテーションが行わ
ボランティア学生が参加しました。学部 1 年生から博
れ、この地域の取り組みと地球規模の気候変動やカー
士課程までの多様な学年構成と異なる専門性からなる
ボンバランスとの関連について熱心に議論されまし
学生たちが 6 日間、文字通り寝食をともにして 1 つの
た。
テーマに取り組む密度の濃い時間を過ごしました。
夜のレセプションでは、国別(参加学生の出身国
バンコクから南西にバスで 3 時間ほど下ったペッ
は14カ国に上りました)あるいはグループごとのパ
チャブリー県のファイ・サイ王立開発研究センターと
フォーマンスが披露され、それぞれの文化やお国柄の
その周辺のフィールドがフォーラムの舞台となりまし
違いを実感するとともに、参加者の強い連帯感が生ま
た。商品作物(パイナップル)の単作によって土壌の
れました。最終日は王宮とシャム博物館を見学後解散
浸食と耕盤の形成が起こり、砂漠化が進んでいたファ
となりましたが、解散後もグループで買い物に出かけ
イ・サイ地域では、1986年プミポン国王の命により、
るなど、親密な関係が築かれているのが大変印象に残
土壌改良、水源の確保、森林の再生、足るを知る経済
りました。遠く離れた相手と簡単に連絡が取れる現代
(Sufficiency Economy)の哲学に則った持続的農業
ですが、国際的な相互理解を進めるうえで、実際に顔
が進められました。乾燥に強く堅い土壌の中にも深く
を合わせて同じ時間を過ごすことの重要性を改めて認
根を張り巡らせるベチベルソウ(Vetiver Grass)を
識できる有意義なフォーラムとなりました。
パイオニア植物として植栽し、土壌浸食を抑えるとと
特筆すべきは、ホスト大学の素晴らしいホスピタ
もに有機物を加えて土壌を肥沃にします。雨季と乾季
リティです。チュラロンコン大学工学部 Dr. Manoj
の明瞭な区別があるタイにあって、降雨量が全国平均
Lohatepanont ならびに Dr. Phongphaeth Pengvanich
の半分以下であるこの地域では、水源の確保が森林再
の献身的なサポートとボランティア学生の卓越した企
生の重要な鍵となります。いくつもの小規模ダムやた
画力や行動力、温かく行き届いたサービスは、今回の
め池を作りそれらをつなぐことによって広範囲に水を
学生フォーラム成功のもっとも大きな要因であったと
供給することが可能になりました。水が十分にない山
思います。
名古屋大学からは 3 名の学生が参加しました。積極
的に各国の参加学生と言葉を交わし、プレゼンテー
ションでも活発に発言するなど、頼もしい姿を見せて
くれました。帰国後も交流は続いており、参加学生た
ちの今後の活躍が楽しみです。
*****
4
Academic Consortium 21
AC21
りのある「農村開発」に焦点を当てることに決定した
開催大学報告
のです。
テーマを決定した後は、フォーラムの流れを決めな
チュラロンコン大学
工学部准教授
ければなりませんでした。テーマは「持続可能な農村
Manoj Lohatepanont
されている例を知るのは非常に面白いのではないかと
開発」だったため、学生が実際に体験し、理論が応用
考えました。チュラロンコン大学はファイ・サイ王立
今回、AC21が、世界各国の
開発研究センターがある地域の研究開発に積極的に関
大学が集まる非常に活動的かつ
わっていることから、同センターが会場として選ばれ
発展的なコンソーシアムである
ました。その他の理由としては、特にフォーラムの実
ということが、改めて証明され
行委員の一人でもある Thavivongse Sriburi 准教授が、
ました。
同センターの発展に多大なる時間と労力を捧げてきた
チ ュ ラ ロ ン コ ン 大 学 は、
ということと、同センターの立地条件から、余暇を過
AC21の活動的なメンバーであ
ごすには最適な海沿いのリゾート地で、毎晩過ごす事
ることを誇りに思っています。
ができるのも魅力でした。
本学にとって、平成23年 5 月15日〜21日に、バンコ
今回のフォーラムは、学生を対象としていたため、
ク及びペッチャブリー県において、第 4 回学生世界
私たちは本学の学生にボランティアとして、出来るだ
フォーラムを開催する機会に恵まれたことは大変光栄
け協力してもらうことにしました。ボランティア学生
なことでした。私たちは、参加学生にとって最高の
たちは、誘導、食事、運営、音響、医療の 5 つのグルー
フォーラムにすべく、早くからその計画や準備に着手
プに分かれ、それぞれのグループが違った役割を果た
しました。ケムニッツ工科大学主催の第 3 回学生世界
し、フォーラムの開催前の準備及び開催中の作業を、
フォーラムが大成功に終わった後、私たちは本学で開
責任をもって行いました。また、彼らがフォーラム開
催するフォーラムの規模をさらに大きくし、フォーラ
催前に知り合いになることができる交流の場として、
ムによって生まれるネットワークをさらに広げようと
Facebook も重要な役割を果たしました。チュラロン
決めました。そして、この提案が他の AC21メンバー
コン大学の職員もフォーラム開催中はもちろん準備段
大学からも支持されたのは、喜ばしいことでした。
階から、コーディネーターとして彼らの指導とサポー
今回のフォーラムのテーマである「持続可能な農村
トにあたりました。
開発」は、今から約 2 年前に決定されました。テーマ
参加学生たちは、時折降る激しい雨の中、次々と到
を決定するにあたり、インパクトがあり、出来るだけ
着しました。幸運なことに、フォーラム開催中雨に
時勢に合ったものを選択するのは、なかなか難しいこ
よって、計画していたイベントが中止になることが
とでした。フォーラム実行委員会が主に工学部の教職
なかっただけでなく、運営委員会参加者と学生世界
員で構成されていたにも関わらず、前回のケムニッ
フォーラム参加者の合同集合写真を撮る間だけ、雨が
ツ工科大学でのフォーラムのテーマが工学系であった
止んでくれたことさえありました。
ことと、参加する学生の幅を広げ、学際的な集まりの
開会式の後、学生たちは海沿いのリゾート地である
場を提供したいと考えたことから、私たちは工学系以
ボーファイの宿舎に移動し、夕暮れ時の海岸沿いで氷
外のテーマを選ぶこととし、その結果、社会科学系の
割りを楽しみました。皆すぐに友達になり、この時、
テーマが最適だと判断しました。
「貧富の差」
、
「デジ
たくさんの新しい友情が
タル格差」
、
「持続可能性」の様な、今後も問題とされ
生まれました。
ることが考えられるテーマが候補にあがり、最終的に
次 の 日 か ら 2 日 間 は、
「持続可能性」
に絞られました。第 1 回学生世界フォー
フォーラムの 4 つのテー
ラム(於:名古屋大学)
、第 2 回学生世界フォーラム
マ「土壌改良」
、
「貯水池
(於:ポンゼショセ工科大学)
においても同じように
「持
システム」
、
「森林再生」
、
続可能な開発」に焦点を当てていたことから、恐らく
「足るを知る経済」につい
当時のフォーラム開催大学も私たちと同じように考え
て直接学んだり、テーマ
ていたのではないか、と考えました。それと同時に、
に沿った実演を体験した
これら 2 つのフォーラムとの違いを明らかにするため
りしました。非常に暑い
に、私たちはタイや他の多くの発展途上国に大変関わ
気候にも関わらず、彼ら
5
No.
10
は非常に熱心に学びました。ベチベルソウを植える穴
参加学生及びフォーラムに同行した AC21メンバー
を開けるために、 1 人 1 人が順番に固い地盤を少しず
大学のスタッフから、フォーラム後に非常に高い評価
つ掘りました。また、足場の悪い中、小さな丘を登っ
を頂き、チュラロンコン大学は今回の学生世界フォー
たり降りたりして、森林再生のために作られた自然を
ラムが成功に終わったことを、大変嬉しく思っていま
活用した貯水池システムの実演を見学に行きました。
す。AC21事務局及び AC21メンバー大学から、私た
その後、 2 つのグループに分かれ、それぞれ別の農家
ちへ向けられた信頼と敬意の念に心から感謝します。
を訪問し、農場見学もしました。これらの農場では、
改めて、チュラロンコン大学は、世界をリードする大
持続可能な農村開発における「足るを知る経済」の概
学で構成される重要なコンソーシアムである AC21のま
念がその応用例として取り入れられていました。
すますの発展に貢献していくつもりです。(原文英語)
日中の過密スケジュールにも関わらず、学生たちは
真夜中になっても海岸で暫く時間を過ごすなど、海辺
を満喫する時間を作るだけの体力と元気がありまし
た。学生のために計画されたムリガダヤバン宮殿見
学、王宮見学、チャオプラヤ川クルーズの様な社会見
学だけでなく、毎日夕食後に行われた様々なレクリ
エーションを通じて、学生たちは、お互いを知り今後も
ずっと続いて欲しいと私たちが願う友情を育む十分な
機会に恵まれました。国際色豊かなグループの中で活動
することによって得られる知識や経験に加え、学生たち
が将来、国際社会のリーダーとして活躍するのに役立つ
のは、この様な国際ネットワーキングだと思います。
*****
私たち 3 人は、バンコク・チュラロンコン大学の主
参加学生所感
第 4 回 AC21学生世界フォーラムに参加して
名古屋大学
加藤 紫帆(法学部) 木本 洋 (環境学研究科) 家田菜穂子(生命農学研究科)
催で行われた第 4 回 AC21学生世界フォーラムに名大
生代表として参加させていただきました。
「持続可能
な農村開発」という今回のフォーラムのテーマに基づ
いたワークショップやプレゼンテーションを通じ各国
の大学生・大学院生と交流を深め、他では得難い素晴
らしい 1 週間を過ごすことができました。
はじめに、ファイ・サイ王立開発研究センターでの
ワークショップでは、大規模なプランテーション経営
が招いた環境破壊と、それに対する解決方法について
学びました。特に、貯水池から山の斜面に沿って水を
汲み上げ常に散水するシステムを導入することで、樹
木の生育を助け、緑の山を取り戻しつつあるセンター
の成果が印象的でした。日本は水資源に非常に恵まれ
ているため、水資源の確保に多大な努力を必要とする
6
Academic Consortium 21
AC21
環境を目の当たりにすることは私たち日本人学生に
好きな仲間と美味しいタイ料理に囲まれて過ごした濃
とって貴重な機会となりました。また近隣地域で、持
密で“熱い” 1 週間は、私たちにとって決して忘れる
続的発展のモデルとされる農村を見学し、経済発展の
ことのできない宝物となりました。
ためには単に一時的な現金収入を増やすのではなく、
*****
次の世代までも同じ生産性を維持する必要があること
を学びました。
これらのワークショップや農村見学を通して学んだ
ことをもとに、私たちは今回のメインテーマである
「持続可能な農村開発」
に深く関わる 4 つのテーマ
(土、
水、森、そして生活の質)についてグループプレゼン
テーションをする機会をいただきました。国籍のさま
ざまな学生からなるグループディスカッションでは、
多様な意見を交換することができ、また、このような
場における優れたリーダーシップのとり方も学ぶこと
ができました。これらは、日頃「ディスカッション」
という場に慣れていない日本人学生にとって非常に新
鮮で、さらにこれを英語で行うことで、学生ながらに
大変貴重な経験をさせていただけたと思っています。
参加者同士の交流を目的としたレクリエーションも
盛んで、毎晩楽しいイベントが催されました。中でも
世界各国の学生からなる人種のるつぼ
思い出深いのが、バンコクの南方に位置するリゾー
ガジャマダ大学
Ahmad
Nasikun
ト地ホアヒン滞在中に開催された、参加者によるパ
フォーマンスです。タイの学生によるファッション
チュラロンコン大学
Rassadarie
Kanjanabose
ショー、ドイツの学生によるダンス、中国の学生によ
る歌など、10の異なる国々による出し物は、どれも特
色があって非常に面白かったです。ここで、ラオスの
学生 3 名が美しい歌声で“We are unity”と繰り返し
歌った後、とても印象的な出来事が起こりました。ま
ず、彼女たちが座っていた観客の手を取り、立つよう
に誘いました。すると、手を取られた参加者は別の学
生の手を取り、それが繰り返されて見る見る手から手
へと、参加者たちの長い列が出来ました。そしてつい
には両端の人どうしが手を繋ぎ、歓声とともに 1 つの
今回、大学の代表として学生世界フォーラムに参加
大きな円が作り上げられたのです。世界中から集まっ
し、まさに全人類の縮図の様な世界五大陸出身の参加
た学生によりこの大きな円が作られていく光景は、ま
者達と友達になることが出来たのは、大変光栄なこと
さに世界中の国々が手を取り合い、友好関係を深めて
でした。このフォーラムから得た知識や経験のお陰
いく様子を表わしているようで、今回の AC21学生世
で、文化の違いを超えた友情や、今回のフォーラムの
界フォーラムの目的を象徴する出来事だったと思い
テーマである持続可能な農村開発に関して、本当の意
ます。
味で自分たちの考え方や行動を大きく成長させること
最後に、この場を借りて第 4 回学生世界フォーラム
ができました。
に関わったすべての皆様に心からの感謝を申し上げた
今回の学生世界フォーラムでは、主に持続可能な農
いです。私たち世界各国からの参加者を笑顔で出迎
村生活に焦点があてられ、ファイ・サイ王立開発研究
え、いつでも元気いっぱいで接してくれたチュラロン
センターでは、 4 つのワークショップが開催されまし
コン大学の学生の皆さん、大変貴重なレクチャーをし
た。私たちは、それらのワークショップを通じて、王
て下さった先生方や施設の方々、そして世界各国から
室プロジェクトを概念的に理解するだけでなく、実際
集まった多彩な学術背景を持つ学生の皆さん、タイで
に体験することができました。その上、教室の外では、
出会った全ての素敵な仲間にこの感謝を捧げます。大
持続可能な開発における本当の課程を学ぶことができ
7
No.
10
ました。同研究センターでは、
「足るを知る経済」、
「ベ
たと思います。
チベルソウ」
、
「農業の新理論」の様な知恵が、いかに
レクリエーションやグループでの出し物、観光プロ
人々の問題を軽減し、生活水準を高める上で役立って
グラム等に参加することにより、参加者間の絆は非常
いるかを示す素晴らしい例について学ぶことができま
に強いものになりました。プログラムに参加しなが
した。
ら、たくさんの話をし、時には冗談を言い合い、議論
また、グループ発表の準備の時には、各自が自分は
もしました。そして、嬉しいことに、他の参加者と
リーダーとして課題を進めるのか、それとも協力者と
フォーラムをきっかけに知り合い、友達になることが
してリーダーをサポートするのか、グループ内での自
出来ました。私たちは、フォーラムで同じ世界を共有
分の立場を考えながら行動しました。これはグループ
し、友情に国境などないため、国、文化、学部、年齢
内でのリーダーシップやサポート能力を試される機会
の違いは全く問題ではありませんでした。今も異国に
でしたが、私たちは皆、異なる国々、異なる文化、異
住むたくさんの友達と連絡を取り合い、いつかまた会
なる専門、異なる学年であることを背景としているた
える日が来ることを願っています。
め、この様な状況は非常に大変だと思われました。し
友情は、グローバルネットワークを広げるために
かし、驚いたことに全員が非常に一生懸命に課題に取
も、私たちの将来のためにも非常に重要です。未来の
り組み、良い結果を出せるように協力し合いました。
リーダーにとって青春時代は財産となると言ってよい
今回のフォーラムでは、参加者間でも文化や国民性
でしょう。従って、もし、背景の異なる者同士が友達
の多様性を発見することができました。例えば、私た
になり、お互いを理解し合うことができたら、異文化
ちは、アメリカの現代的なダンスを楽しみ、それと同
に対する理解不足から生まれる憎しみや、現在抱える
時にラオスの伝統的なダンスにも驚かされました。欧
争いがなくなり、世界平和に向けてより良い関係を築
米の学生は、自分たちの意見を共有したり、新しいこ
くことができるのではないでしょうか。
とを学んだりすることに非常に熱心であるという特徴
私たちは、素晴らしい経験を与えてくれた AC21に
がある一方、アジアの学生は、全ての活動にその準備
感謝したいと思います。フォーラムがもたらしてくれ
の段階からコツコツと取り組むという特徴がありまし
た素晴らしい思い出と供に、これらの経験は今後も私
た。この様に多文化を認識することによって、前より
たちの心にいつまでも残るでしょう。
もお互いを認め、理解しあう事が出来る様になり、国
際社会でより良く交流を図ることができるようになっ
8
*****
(原文英語)
Academic Consortium 21
AC21
タイで、自給自足と持続可能性について学ぶ
活の質向上を目指した活動に関する問題について学ん
ステレンボッシュ大学
だりしました。フィールドワークでは、 2 つのグルー
Lelani Mannetti
プに分かれ、(それぞれのグループは、生態学から工
学、農学から人文科学の様に、様々な専門分野の学生
人類が生態系に与える影響の
で構成されていました。)農家を訪問し、統合された
変化によって、私たちは資源枯
農業によりどんな恩恵が実際にもたらされているかに
渇、気候変動、飢餓、干ばつの
ついても学びました。様々な農業技術を実践し、様々
様な複雑な地球の変化に直面し
な農作物を生産することによって、地元の人々は単作
ています。自然環境と人間社会
により生じる土地の退化を防ぎ、その一方で収入を多
はどちらも複雑な力によって導
様化し、市場変動によって受けるリスクを回避してき
かれるため、これらの問題を解
ました。これらの方法を実行している農家において
決しようとするのは、本来、難
は、将来的に運用コストを下げ、収入を増やすことが
しい取り組みです。従って、AC21の様な学術ネット
可能になり、最終的には経済的な安定を得ることがで
ワークは、知識や経験を共有し、それらを交換できる
きるのです。「足るを知る経済」の考えの下で、タイ
場を設けることによって、先述の様な複雑な問題に対
では多くの王室開発プロジェクトが支持されており、
応しようとしています。特に、AC21は学生世界フォー
十分な配慮、バランス、弾力性の下で実行されれば、
ラムを開催することによって、未来のリーダーや意思
これは生活の全ての側面において基本となるでしょ
決定者になるだろう私たち学生に、国際的な問題につ
う。
いて学び、意見を交換する機会を与えてくれました。
また、フォーラム中の様々なグループ活動によっ
2011年 5 月、 2 年に 1 度開催される学生世界フォー
て、私たちはお互いをよく知ることができただけでな
ラムの第 4 回目となる今回のフォーラムが、
「持続可
く、持続可能な資源開発、資源活用、小規模・大規模
能な農村生活」というテーマでチュラロンコン大学
な科学技術についてグループで発表を行うなかで、人
(タイ・バンコク)に於いて開催されました。フォー
間関係におけるスキルを磨くこともできました。最
ラムには14カ国、16大学を代表する60人以上の学生が
も重要なことは、私たちは皆友達になることができ、
集まり、世界状況における現代の問題に直面するこ
国際的な友情関係を築き、国際的な考え方を培い、
とによって、国際的な経験を積むことができました。
AC21のネットワークを強化し、フォーラムの目的を
フォーラムの目的は、学生たちが農村での活動につい
達成することができたことです。個人のレベルでは、
て実際に経験を通じて学び、自分たちの国の視点から
持続可能な方法でもっと自立し、社会の中で自然と調
議論しながら、ネットワークを構築することでした。
和をとりながら生活をしつつ、個人から様々な分野の
発展途上国にとって重要な要素である持続可能な農村
人々まで交流することによって、アカデミック能力や
開発は、地方社会の発展だけでなくインフラの発展や
リーダーシップ能力とともに、包括的対人能力を発達
地方経済の発展にも焦点を当てています。この様に農
させる事が大切だとフォーラムから教えられました。
村地域に実際に滞在するよりほかに、持続可能な農村
しかしながら、チュラロンコン大学から私たちに至
開発について学生が学べるもっと良い方法があるで
る所で向けられた笑顔、寛容さ、心からのホスピタリ
しょうか。
ティー、そして参加者の一生懸命学び、友達を作ろう
私たち参加者は、ペッチャブリー県で 3 日間過ご
とする熱意がなかったなら、これらの経験は特別なも
し、ファイ・サイ王立開発研究センターを訪問したり、
のにはならなかったでしょう。
土壌改良、灌漑技術、森林再生構想、地元の人々を生
9
(原文英語)
No.
10
IFPU 2011サマースクール報告
環境学研究科都市環境学専攻 D1
三室 碧人
プションとして都市再生の一躍を担う企業の本社も訪
問しました。具体的な講義テーマは下記の 5 つの観点
から構成され(ガバナンス、都市の持続性、経済発展、
住宅政策、小売業戦略)
、バルセロナが採択した 3 段
階戦略(都市内の公共空間創出、建築物の立替、そし
て空港・鉄道などの大規模インフラ投資)の紹介を筆
頭に、各国での取り組み事例や課題を学ぶことがで
青い空と輝く太陽。笑顔溢れる都市バルセロナ in
き、今後の研究に向けた新たな視点を取り入れる絶好
スペイン。
“世界で最も夏季を快適に暮らせる都市”
の機会とすることができました。
の第 1 位に選ばれるこの都市で開催されたのが、今回
具体的な 1 日のスケジュールは、毎日 9 時から13時
私が参加した第 4 回 IFPU 2011サマースクールです。
まで講義が行われ、13時から16時までは休憩を意味す
IFPU とは、2007年10月にカナダのモントリオール大
る現地のシエスタ習慣に則り、ゆっくりとした昼食時
学の提唱で設立された新しい大学コンソーシアムで、
間を過ごしました。また、 5 日間のうち 2 日間は、16
International Forum of Public Universities の 略 称 で
時からバルセロナの都市再生において重要な役割を
す。現在 4 大陸20か国21大学が加盟しており、多様
担った 2 つの企業の本社を訪問しました。 1 つ目は、
な地域との国際的な人的ネットワーク構築を目指し
都市再生プランの調査・計画・実行の中心的役割を果
ています。
たした Barcelona Regional という政府系シンクタン
IFPU2011サマースクールは、大学院生(博士課程
クの企業で、 2 つ目は、低環境負荷の交通機関として
後期課程)を対象に開講され、本年度の開催期間は 7
有名な路面電車を運行する Tram Barcelona という交
月11日からの 5 日間で、名古屋大学からは学生が 2
通企業であり、オペレーションルームや整備基地など
名、教員が 1 名参加しました。他の参加者は、世界10
も視察することができ、交通研究を行っている筆者に
か国(アルゼンチン、カナダ、スイス、スペイン、中
は最高の現場見学でした。
国、チェコ共和国、ハイチ、ポルトガル、日本、メキ
最後に、世界各国の様々な専門家を目指す大学院生
シコ)から計12名の学生と計10名の講師が集結し、英
と知り合えたことは大変嬉しかったです。一方で、日
語を共通語に活発な交流をしました。討議の主題は
本人が積極的に海外に足を運び、日本の国際的存在を
「THE XXI CENTURY CHALLENGES TO URBAN
示すことの重要さも実感をしました。名古屋大学には
AND REGIONAL PLANNING: FROM THE CITY TO
様々な留学支援制度が整備されているので、ぜひ情報
MEGALOPOLIS」であり、巨大都市が抱える課題や
をチェックして、有効に活用することを強くお勧めし
解決策について講義やディスカッションが行われ、オ
たいです。感謝。
10
Academic Consortium 21
AC21
は多くの APAIE 参加者が訪れ、AC21の今後のイベン
APAIE
トの宣伝を行う等、AC21の広報を幅広く行うことが
(Asia Pacific Association
for International Education)
できました。
APAIE 会場では、AC21のメンバー大学である吉林
大学、アデレード大学からの参加者と、今後の AC21
の活動および発展について話し合う機会を持つこと
ができました。AC21事務局は、今後も APAIE にブー
AC21事務局は、 3 月 9 日〜11日に台北で開催され
スを出展することにより、AC21メンバー大学だけで
た APAIE2011に名古屋大学と AC21の共同ブースを出
なく、その他の大学とも積極的に情報交換を行い、
展しました。AC21事務局が APAIE にブースを出展す
AC21のさらなる発展を目指し活動を続けて行く予定
るのは、今回で 4 回目となりました。今回もブースに
です。
れ、年次大会では国際教育交流業務に携わる大学人の
NAFSA
ため、さまざまな know-how に関する情報交換や実
2011年度 NAFSA 大会に参加して
教育発達科学研究科教授・
AC21推進室副室長
高井 次郎
践の発表、各種研修やワークショップ、ネットワーキ
ングのためのイベントなどを開催しています。
本年度は、日本版の NAFSA である、在日留学生
問題研究会(Japan Association for Foreign Student
Affairs=JAFSA)がわれわれ日本の大学にとっては
重大なセッションを開催していました。東日本大震
去 る 5 月 29 日 か ら 6 月 3 日 の 間 に、NAFSA
災を受けて、 4 月から日本に留学予定であった海外
(Association of International Educators)の2011年度
の学生が東北地方はもちろん、日本全国に多数いた
大会がカナダ・バンクーバー・コンベンション・セン
ことを懸念して飛び入りで開催されたセッションで
ターにおいて開催されました。名古屋大学からは、筆
ありました。日本留学にまつわる風評被害の影響は
者が出席しました。NAFSA とは、世界150カ国以上
名古屋大学も受けており、名大自慢の 1 年留学プロ
の3,500機関に所属する10,000人強の会員から組織さ
グ ラ ム NUPACE(Nagoya University Program for
11
No.
10
Academic Exchange)の参加予定者の 4 割近くが急
因がそれぞれの国の外務省が発令する海外渡航自粛勧
きょ留学をキャンセルまたは延期しました。JAFSA
告にある様子も明らかになりました。福島原発の爆発
セッションでは、JAFSA、文科省および東北大学の
直後から大半の国では日本を危険地域に指定し、それ
留学生センター教員がパネルを構成し、それぞれの立
に伴い各大学は学生の派遣を中止することになってし
場から日本留学の安全性をアピールしていました。
まいました。現在では渡航禁止処置は大概の国では解
筆者自身も、AC21恒例のケムニッツ工科大学主催
除されておりますが、メディアが大げさに報道してい
の NAFSA ブレックファスト・ミーティングにおいて、
る国もあるため、留学生の親が引き留めている場合が
名古屋大学の震災への対応を紹介し、留学の安全性に
多いようです。
ついて訴えました。地震などの自然災害が例外的なで
今回の NAFSA は日本の大学にとって、こうした海
きごとである AC21メンバー校の出席者からは、名古
外メディアの歪曲された報道によって築き上げられた
屋大学の安否確認システム、災害プロトコル、災害管
風評被害に対応するための重要な大会でした。その中
理室の設置、被災地学生への大学施設の開放、被災地
で、少数の聴衆ではありましたが、名古屋大学の安全
域への人材派遣など多くの関心を引き、質疑が長引く
性をアピールできたことに意義のある参加であったと
ほどでした。その議論の中で、今回の風評被害の主原
思います。
学の「Design of Ligands for Extraction of Au (CN)-2
2011年 AC21
スペシャル・プロジェクト・
ファンド採択結果について
and AuCl4- 」です。これらのプロジェクトについては、
次号の AC21通信に報告が掲載される予定です。
AC21スペシャル・プロジェクト・ファンドにつ
いては、毎年募集を行う予定です。応募可能なプロ
ジェクトは、AC21の継続的なプロジェクトに発展す
る可能性のある、または、AC21の発展に寄与する研
今回で 3 回目となる AC21スペシャル・プロジェク
究・教育・国際交流に関するプロジェクトの実施で、
ト・ファンドは、今年は 2 月28日に締め切られ、AC21
AC21メンバー大学が 2 カ国 3 大学以上参加する共同
運営委員会メンバーによる審査の結果、 2 件のプロ
プロジェクトであることが条件となっています。来年
ジェクトが採択されました。
以降の募集に向けて、AC21メンバーとのプロジェク
採 択 さ れ た プ ロ ジ ェ ク ト は、 名 古 屋 大 学、 カ セ
トの企画などをさらに推進するため、ガイドラインの
サート大学、チュラロンコン大学の「Collaborative
改訂を行うなどの取り組みをしました。このプロジェ
Computational Studies of Cellulose Degradation in
クト・ファンドを通じて、AC21メンバー間の交流が
Ionic Liquids for Biofuel Production」 及 び、 ス テ レ
ますます発展していくことが期待されます。
ンボッシュ大学、ケムニッツ工科大学、シドニー大
12
Academic Consortium 21
AC21
メンバー大学紹介
華中科技大学
常務副学長
Lin Pinghua
華中科技大学は、全 AC21メ
5 つの国家主要研究所の拠点ともなっています。近
ンバーとの国際交流・国際協力
年、社会的影響が高まるにつれ、本学は受け入れる学
関係を促進したいと考えていま
生のレベルを引き上げています。一方、卒業生たちは
す。本学は、中国政府によって
求人市場でも企業の間で非常に評判が良く、95%以上
指定された国家重点大学のひと
の就職率を誇っています。世界有数の大学となるべ
つであり、華中科技大学の前身
く、本学は100以上の高等教育及び研究機関と提携し
と同済医科大学、武漢城市建設
ています。毎年、世界中から1,000人以上の著名な研
学院が合併して設立されまし
究者や専門家が、本学を訪問したり、学生に講義を
た。また、国家の211プロジェクトと985プロジェクト
行ったりしています。1983年から本学は、東北大学、
に初めに参加した大学のひとつでもあります。
名古屋大学、九州大学、慶応大学、京都大学薬学部、
本学は、 9 つの省を結ぶ水・陸の交通の要所として
東京大学工学部を始めとする20以上の日本の大学と研
知られる湖北省の省都武漢市に位置します。キャンパ
究者や学生の交流を目的とした協力関係にあります。
スは467万平方メートルの敷地に十分な研究施設を備
また、ルネサスエレクトロニクスや、ツネイシホール
え、非常に美しい環境と素晴らしい周辺地域に恵ま
ディングス株式会社、富士通グループの様な企業とも
れ、“緑豊かな大学”という評判を享受しています。
密接な関係を維持しています。
1,000人以上の教授、1,300人の准教授、24人のアカ
デミー会員を擁し、留学生を含む正規の学生は、 5 万
華中科技大学は、AC21メンバーの本学訪問を心よ
人を超えます。研究力の強みを生かし、本学は武漢光
りお待ちしております。
電子工学研究所、武漢国立高磁場センターを所有し、
13
(原文英語)
No.
10
ガジャマダ大学
国際部長
Rachmat Sriwijaya
インドネシア最古の大学とし
りました。1949年に設立されてから、本学は、学ぶ意
て、ガジャマダ大学は60年以上
欲のある人なら誰にでもその場所と知識を提供してき
にも渡って先駆者としての立場
ました。また、大学の方針として、学生の意志を非常
を維持し、人間本位の技術革新
に尊重しており、これは結果として学生にとって非常
を目指し、そして最も大切なこ
に役立つこととなっています。ガジャマダ大学がイン
ととして、国内の何千もの大学
ドネシアで唯一、“人民大学”(Universitas Rakyat)
の中で教育的なリーダーシップ
の称号を与えられる理由にもなったこの様な高いレベ
をとり続けています。
ルの地域社会貢献は、自然に近隣地域の人々と関わり
1949年にわずか 5 つの学部でスタートした本学は、
ながら、大学内でも調和と協力が実現されている時に
現在、18の学部と大学院、専門学校、70以上の一般プ
のみ、最も世界的な取り組みが実行されやすいという
ログラム、 5 つの学部課程国際プログラム及び、国内
信条に基づいています。
外のパートナーと提携する数多くの共同教育プログラ
従って、これらの特色によって、ガジャマダ大学は
ムがあります。世界の大学の基準からすれば随分と新
インドネシアの有名な高等教育機関の中でも、基礎教
しい大学ですが、本学が大きな成長を遂げたことがご
育、国際化、社会サービス面の遂行において最も優れ
理解頂けるでしょう。
ています。
本学は、卓越し、自立し、パンチャシラ(インドネ
改革をしたいのであれば、まず前例に倣いなさい、
シアの建国 5 原則)に基づき、国家や世界から必要と
という価値は世界情勢が変わっても今なお、生き続け
され、福祉に貢献する世界レベルの研究機関を目指し
ています。過去62年間に渡り、質の高い教育を提供し
ています。さらに、大学にとってその様なゴールは、
続けてきたことから、ガジャマダ大学はその前例とな
達成して終わりというものではなく、そこからさらに
るにふさわしいと大学であると考えます。すなわち、
上を目指す手段であると認識しています。
今なお、見本となる大学であるということです。
その上、地域に対する一貫した貢献によって、本学
は国内だけでなく海外の大学とも一線を画すこととな
14
(原文英語)
Academic Consortium 21
AC21
来的な展望を開く上での大学の役割について、本質的
AC21推進室より
な疑問が投げかけられたのです。大学が、“環境に優
持続的発展に向けた大学と
そのネットワークの役割
しく”“持続可能な”社会の実現を目指して、原子力
エネルギーの開発・利用に深く関わっているのは紛れ
もない事実です。人材開発に関しては、日本のトップ
国際開発研究科准教授・AC21推進室員
の間ではリーダーシップと管理能力の欠如が指摘され
米澤 彰純
ています。今回の震災を受け、学内外の地域において
2011年 3 月11日に東日本を襲った歴史的な大震災
ていましたが、特に日本語でのコミュニケーションが
は、その後何カ月もの間、余震が続くなどの影響を与
難しい学生に提供された情報の透明性に関しては、厳
え続けています。名古屋大学は、地震や津波の被災地、
しい見方もありました。
原発事故のあった福島第一原子力発電所からは400km
現在日本では、国際社会で積極的に働くことができ
以上も離れていたため、直接の被害はありませんでし
る人材の育成について、ますます議論が交わされてい
た。しかしながらこの悲劇は、国際社会における持続
ます。大学教育を通じて習得される一般的かつ基本的
的発展に向けた大学とそのネットワークの役割につ
な能力だけでなく、英語の様な国際的な共通言語での
いて、日本全国及び全世界に重要な問題を提起しま
コミュニケーションスキルももちろん不可欠です。こ
した。
れらの能力に加え、文化的背景が異なる同僚たちと意
名古屋大学の学生や教職員も、多くの被災者を救済
志の疎通を図る能力や、多文化グループをまとめた
するために様々な活動に参加しました。例えば、被災
り、統率したりする能力も持ち合わせることが強く期
地の瓦礫の撤去作業、医療活動、コミュニティケアに
待されています。
従事した人もいれば、今回の災害を分析し、科学的に
私は最近、チュラロンコン大学で開催された第 4 回
信頼できる情報の提供に努めた人もいました。また、
AC21学生世界フォーラムに参加した学生たちと、多
被災者救済募金を呼びかける運動や、東北地方の農産
くの事について議論する機会がありました。多くの参
物の安全性を訴える運動も展開されました。研究室に
加者が既に多文化環境における高いコミュニケーショ
被害が出た研究者を、ケムニッツ工科大学、名古屋大
ン能力を持ち、初めて出会った時から友達づくりを楽
学をはじめとするいくつかの大学が一時的に受入れる
しんでいる様子は、正直、私の予想を大きく超えてい
ということもありました。
ました。私は、AC21メンバー大学の若い学生間のネッ
私たち大学関係者は、教育、研究、その他の社会的
トワークを通じて、より良い未来が約束されていると
サービスを通して、世界的な福利の向上を目指した知
確信しています。それぞれの社会には、それぞれ違っ
識の創造と活用を目指しています。私たちは社会から
た役割があり、各大学の役割も社会状況の中に深く組
素晴らしい才能を預けられている立場にあります。そ
み込まれています。AC21の知識や才能を通じて、よ
の意味で、自分たちの学術的、専門的な活動を通じて
り良い社会を実現する方法は 1 つとは限りません。是
それらの才能を社会に還元することが、私たちの最大
非、私たちの活動に参加して下さい。そして、これら
の責務といえるでしょう。しかし今回、研究と教育と
の問題について話し合いを続けましょう!
留学生に対する安全性と情報提供は概ねよく配慮され
いう、私たちの中核となる活動そのものの意味と、将
学生からの質問に答える筆者(左)
15
No.
10
AC21推進室活動記録(2011年 4 月~2011年 9 月)
2011.4.21
第95回 AC21推進室会議
2011.5.30-6.1 NAFSA 参加
2011.5.11
第96回 AC21推進室会議
2011.6.16
第97回 AC21推進室会議
2011.5.15-16
第 9 回 AC21運営委員会
2011.7.11-15
IFPU サマースクール参加
2011.7.21
第98回 AC21推進室会議
2011.9.22
第99回 AC21推進室会議
(於:チュラロンコン大学)
2011.5.16
カセサート大学訪問
イベント・カレンダー
2012.6
第 6 回 AC21国際フォーラム(於アデレード大学)
2012.6
第10回 AC21運営委員会(於アデレード大学)
2012.6
第 5 回 AC21総会(於アデレード大学)
2013.[TBA]
第 5 回 AC21学生世界フォーラム(於同済大学)
2013.[TBA]
第11回 AC21運営委員会(TBA)
2014.[TBA]
第 7 回 AC21国際フォーラム(於ステレンボッシュ大学)
2014.[TBA]
第12回 AC21運営委員会(於ステレンボッシュ大学)
2014.[TBA]
第 6 回 AC21総会(於ステレンボッシュ大学)
2015.[TBA]
第 6 回 AC21学生世界フォーラム(於ストラスブール大学)
2015.[TBA]
第13回 AC21運営委員会(TBA)
AC21メンバー
AC21パートナー
アデレード大学 *(オーストラリア)
中部電力株式会社
ガジャマダ大学(インドネシア)
伊藤忠商事株式会社
カセサート大学(タイ)
日本ガイシ株式会社
華中科技大学(中国)
トヨタ自動車株式会社
吉林大学(中国)
ケムニッツ工科大学 *(ドイツ)
シドニー大学 *(オーストラリア)
上海交通大学 *(中国)
ステレンボッシュ大学(南アフリカ共和国)
ストラスブール大学(フランス)
チュラロンコン大学 *(タイ)
同済大学(中国)
東北大学(中国)
名古屋大学 *
南京大学(中国)
ノースカロライナ州立大学 *(アメリカ合衆国)
フライブルグ大学(ドイツ)
北京大学(中国)
ミネソタ大学(アメリカ合衆国)
ラオス国立大学(ラオス)
* は AC21運営委員会メンバー
AC21
No.
10
2011年10月15日
編集 ・ 発行 国際学術コンソーシアム
(AC21)
推進室
〒464-8601 名古屋市千種区不老町
名古屋大学
TEL 052-789-5684
e-mail office@ac21.org
URL http://www.ac21.org