◀ 前のコラムを見る ▌Legal Update▐ ミャンマー腐敗防止関連法令及び公務員の贈答品受取ガイドライ ンの紹介 地平・ミャンマーチーム 1. ミャンマーにおける反腐敗関連の法令沿革 ミャンマーは、1948年腐敗防止法(Suppression of Corruption Act, 1948)を制定し、他の国と 同様に刑法上の賄賂供与罪1を始め、種々の法規上など公務員の犯罪に対する処罰規定をおいてい ます。しかし、長い間の軍部独裁と蔓延した公務員の不正腐敗により、「腐敗はミャンマー文化 の一部」と言われるほど、腐敗関連規定がその実効性を喪失しているとの評価を受けてきました。 し か し 、2012年 の 市場開放以後、 ミ ャ ン マ ー 政府 は 、2013年国連 反 腐 敗 協 約 (UN Convention against Corruption)に165番として加入しただけでなく、東南アジア諸国反腐敗連合(South East Asia Parties Against Corruption)に加入し、腐敗剔抉(てっけつ)に対して対外的な意志を現し ています。 このような意志の一環として、2013年腐敗防止法(Anti-Corruption Law, 2013) 2を公布し、これを 基に、2014年腐敗防止委員会(Anti-Corruption Commission)を設立しました。 1 ミャンマー刑法(Penal Code, 1861) 第161条ないし第165条に賄賂供与罪などに対する処罰規定をおいています。 2 ミャンマーの公務員監視組織である特別監察局(Burea of Special Investigation)は、2005年に腐敗防止法の草案を作った が、多くの議論の末、2013年に公表されました。 1 〒120-020 Seoul | Tel 82-2-6200-1600 韓国ソウル市西大門区忠正路60KT&G西大門タワー10階 Suncheon | Busan | Shanghai | Ho Chi Minh City | Hanoi | Phnom Penh | Email master@jipyong.com Vientiane | Jakarta | Yangon | Moscow | Tehran ◀ 前のコラムを見る 一方、アウン・サン・スー・チー氏が率いる民主主義民族同盟(National League for Democracy) 中心の新政府は、2016年に発足するやいなや、より強化された公務員の贈答品受取ガイドライン (以下「ガイドライン」)を公布することにより、ミャンマー新政府の不正腐敗の剔抉意志に対し て外国人投資家から注目を受けています。上記のガイドラインの内容は次のとおりです。 2. 公務員の贈答品ガイドラインの概要 (1) ガイドラインの意味 去る4月1日、大統領室は、大統領室長官アウン・サン・スー・チー氏の名義で公務員の贈答品受 取ガイドラインを公表しました。本ガイドラインは、日付としては、ミャンマーの代表祝日であ るティンジャン(Thingyan)3連休に合わせて公表されましたが、今回の祝日だけに局限されたガイ ドラインというよりは、新政府の公務員社会内の不正腐敗の剔抉意志を示す動きとして解釈する 必要があると見えます。 一方、本ガイドラインは、いわゆる賄賂として解釈されない一般的な慣行であり、授受された 「贈答品」に対する厳格な基準を提示したという点において意味があります。したがって、本ガ イドライン上において授受が認められない贈答品に該当する場合、刑法上の賄賂に該当する余地 もあると見られます。 3 Water Festival(水祭り)とも言い、1年の厄運を水で洗い流す祝祭であり、4月12日から4月16日までの期間を言います。 2 〒120-020 Seoul | Tel 82-2-6200-1600 韓国ソウル市西大門区忠正路60KT&G西大門タワー10階 Suncheon | Busan | Shanghai | Ho Chi Minh City | Hanoi | Phnom Penh | Email master@jipyong.com Vientiane | Jakarta | Yangon | Moscow | Tehran ◀ 前のコラムを見る (2) ガイドラインの適用及び範囲 本ガイドラインによると、公務員は、原則的に、ガイドライン上において例外として該当する場 合を除いて、職位と関連して如何なる贈答品を受け取ることは禁止されます。ここでの贈答品と は、貨幣、金、銀、航空チケット、飲食及び飲料、宿泊、ゴルフ場会員権など金銭的価値をもつ 全てを含み、適用される公務員にはミャンマー政府の公務員だけでなく、民間が含まれる政府委 員会(Commission)メンバーも含まれます。本ガイドラインは、原則的に、公務員をその対象とします が、公務員に贈答品を提供する者も一応のガイドラインとして参考にすることができます。 (3) ガイドラインの例外条項 本ガイドラインによると、次のような場合、例外的に認められます。 (a) 25,000チャット価値以下の贈答品受取(但し、1年において同一の個人及び団体から受け取っ た贈答品の総価値が100,000チャット超過は不可) (b) 職務と関係ない個人的な贈答品及び家族間の贈答品受取 (c) クリスマス及び仏教四旬節の贈答品の場合、100,000チャット価値以下の贈答品の受取 一方、外国政府(foreign government)から受領した次のような贈答品も例外的に認められます。 また、外国政府が提供する贈答品の授受を拒否することが外交的に欠礼となると判断される場合 には、上級機関へ報告や伝達する条件で上記贈答品を受け取ることは可能です。 (a) 400,000チャット価値以下の贈答品 (b) 公式的な出張費(航空チケット及び宿泊) (c) 奨学金 (d) 医療費 3 〒120-020 Seoul | Tel 82-2-6200-1600 韓国ソウル市西大門区忠正路60KT&G西大門タワー10階 Suncheon | Busan | Shanghai | Ho Chi Minh City | Hanoi | Phnom Penh | Email master@jipyong.com Vientiane | Jakarta | Yangon | Moscow | Tehran ◀ 前のコラムを見る (4) ガイドラインの違反時における処罰 本ガイドラインは、処罰条項を規定していません。また、贈答品を提供するものをその対象とし ていません。本ガイドラインは、国会の同意が必要ない大統領令の形式で制定されているため、 処罰規定を含めるには限界があると思料されます。しかし、許容される贈答品の範囲に対する限 界を規定しているため、このガイドラインの範囲を超える贈答品の腐敗防止法及び1861年の刑法 上賄賂に該当するものと解釈される可能性が高く、この場合、刑事処罰される可能性があります。 (5) まとめ 本ガイドラインの内容を要約してまとめると、次の表のようになります。 区分 内容 禁止義務 公務員は、自身の職位と関連して如何なる贈答品を授受してはならない 適用対象(公務員) ミャンマー政府の公務員、委員会に所属する民間人 貨幣、金、銀、航空チケット、飲食及び飲料、宿泊、ゴルフ場会員権など金銭 贈答品 的価値をもつ全てのもの (a) 25,000チャット以下の贈答品受取(但し、1年に同一の個人及び団体から受 け取った贈答品の総価値が100,000チャット超過は不可) (b) 職務と関係ない個人的な贈答品及び家族間の贈答品受取 例外的な許容 (c) クリスマス及び仏教四旬節の贈答品の場合、100,000チャット価値以下の 贈答品の受取 (d) 外国政府が提供する400,000チャット価値以下の贈答品、公式的な出張 費、奨学金、医療費など贈答品の受取 本ガイドライン上、処罰規定はないが、腐敗防止法または刑法上の処罰可能性が 処罰規定 ある 4 〒120-020 Seoul | Tel 82-2-6200-1600 韓国ソウル市西大門区忠正路60KT&G西大門タワー10階 Suncheon | Busan | Shanghai | Ho Chi Minh City | Hanoi | Phnom Penh | Email master@jipyong.com Vientiane | Jakarta | Yangon | Moscow | Tehran ◀ 前のコラムを見る 3. ガイドラインの意義‐賄賂防止法令の処罰基準として作用 本ガイドライン以外にも、大統領室は、連邦政府の長官級公務員が本人の近い親・姻戚を個人秘 書として任命することを禁止するなど、新政府はミャンマー公務員社会の変化を強く要求してい ることが伺えます。 一方、上記ガイドラインは許容される贈答品の範囲を定めているため、投資家がミャンマー政府 の公務員に贈答品を提供する場合、その基準として見ることができるでしょう。また、国際商取 引において、外国公務員に対する賄賂提供防止のための協約(Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions)の適用を受け、上記協 約に基づき、外国公務員に対する賄賂防止法(以下「国際賄賂防止法」)を制定し、外国公務員に 対する賄賂提供者を処罰する国では、上記ガイドラインの範囲を超える贈答品の授受は、国際賄 賂防止法に基づき、自国において処罰される可能性があることに注意する必要があります。 <終わり> 5 〒120-020 Seoul | Tel 82-2-6200-1600 韓国ソウル市西大門区忠正路60KT&G西大門タワー10階 Suncheon | Busan | Shanghai | Ho Chi Minh City | Hanoi | Phnom Penh | Email master@jipyong.com Vientiane | Jakarta | Yangon | Moscow | Tehran
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